複雑・ファジー小説
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- 【坂の街:更新】カタテマ【短編集】
- 日時: 2019/03/22 00:42
- 名前: R ◆0UYtC6THMk (ID: W7Can3CF)
どうも、初めましての方は初めましてRと申します。
今回は短編集に手を出してみました。
というのも只の現実逃避なだけなんですが。
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【お知らせ】
書き溜めはないので自分の調子で投稿スピードは異なります。
ご了承ください。
随分と久しぶりの活動になります。どうもこんにちは。
未完成の作品も多くあって申し訳ないのですが作者のやる気が維持しないのです(;・∀・)
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【作品一覧】
透明人間 >>1
星降る >>2
自由落下 ふりーふぉーる >>3
ウサギの田中君 >>4 >>14 >>18
天の声 >>5
リリアの目 >>11 >>12 >>13
カコノヒト>>16 >>17
客観的であり主観的見解 >>21
夜明けに沈む >>22 >>23
風の吹く街 >>24 >>25 >>26 >>27 >>28 >>29 >>30
この世界 >>31
手と手とて >>32
ペットボトルロケット >>35
以下、めんどくさいので略
- Re: 【風の吹く街:更新】カタテマ【短編集】 ( No.30 )
- 日時: 2015/08/03 22:27
- 名前: R ◆0UYtC6THMk (ID: J9PmynZN)
…!?
弁当がない。そう、僕の手が掴んでいるのは空気だけだった。いくら手のひらを開いて握ってを繰り返しても掴めるのは虚しさだけ。
単純な話だった。スイレンのことで頭がいっぱいだった僕は教室に弁当を忘れてきてしまった。
取りに帰ろうにも折角の空気を壊したくない。
僕は考えうるすべての行動パターンを頭の中でシュミレートして一つの答えに辿りついた。
「スイレン君……」
僕は唐突にスイレンに話しかけた。
返信は来ない。
「スイレン君?聞こえてるスイレン君?」
「うるせぇ……なんだよ」
殺意が含まれた視線が僕を指す。
「えっと……ごめん、何か食べ物くれない?」
正直この時は死を覚悟したね。良くても全身複雑骨折の生殺しだろうと鷹をくくっていたよ。
「…………ほらよ」
- Re: 【この世界:更新】カタテマ【短編集】 ( No.31 )
- 日時: 2015/09/05 01:50
- 名前: R ◆0UYtC6THMk (ID: J9PmynZN)
【この世界】
神様が何かを作り出すときは、必ず対になるものを一緒に作る。
例えば愛と憎しみ。
例えば強さと弱さ。
例えば僕と君。
僕が君を好きだといえば。
君は僕を嫌いだという。
それはどうしようもなく当たり前のことで。
なによりも美しい。
美しいということは、つまりは汚いということで。
そして、それもどうしようのないもので。
文句なら神様に言え。
そうは言うものの、たかだか人間の声なんて、神様に届く訳ないのです。
なのに僕たちは、ひたすらに叫び続けるしかなくて。
こんなに美しくて汚い世界になったのは、必然でなりゆきで。
先人たちが神樹の実、禁断の果実を口にしたからで。
結局は神様の手のひらの上の出来事。
- Re: 【風の吹く街:更新】カタテマ【短編集】 ( No.32 )
- 日時: 2016/01/01 00:37
- 名前: R (ID: WqZH6bso)
【手と手とて】
今年の冬は例年を遥かに上回る豪雪を記録したとのニュースを耳にした。
しかしながら僕にとって異常気象なんてものは武士にとってのクリスマスの様なもので、つまりは何の関係も無いものである。
何故かと問われれば、あまり言いたくはないがこう答えるだろう。
「引きこもりだから」
僕自身はこうなった事を認めたくはないし、誰かにそう思われたくはないのだが、世間一般ではそう呼ばれているんだから、僕が引きこもりに値することは紛うことなき事実だ。
なんにせよ家から出ないのなら外の天気がどうだろうと大抵の事象は僕には関係の無いことだ。
流石に地震や火事だとかは影響はあるが僕は生きる事に対して積極的な人間でもない。
命の危険に晒されることがあったら、あわよくば死ねるんじゃないかと思うまでもある。
あえて、あわよくばと付けたのは僕は、死ぬことに対しても積極的ではないからだ。
どこまでいっても中途半端で気力の無いのが僕という存在である。
少なくとも今の僕は。
僕にだって気力に満ち溢れ将来に希望の目を輝かせていた時期もあった。
毎日のように学校でイタズラをしては友達と叱られ、放課後には皆で集まってサッカーや野球をしていた。
しかし、今ではその記憶も自分が作り上げた幻想ではないかと思うほど輪郭がぼやけてしまった。
思い返すほどに心が抉られるような心地がするので、思考を一旦停止し時計の針へと目を向けた。
時刻は深夜零時を回った頃を指しており日付は一月一日、つまりは年明けを表していた。
お正月。僕にとっての年初めにして最大の難関である。
世間の人間はやれお年玉だ、やれ宴会だと騒いでいるがとんでもない。
僕の親族は正月には必ず本家の元へと顔を出すしきたりになっている。
例え熱があろうと医者に絶対安静と言われていようと連れていかれるのだから、ただの引きこもりが欠席しようなんて天地がひっくり返っても無理な話である。
とにもかくにも、この正月が僕にとって人生の転機であるのは間違いの無いことだ。
- Re: 【手と手とて:更新】カタテマ【短編集】 ( No.33 )
- 日時: 2016/01/21 10:23
- 名前: R (ID: aQG7fWp7)
一睡もせずに迎えた元日の朝、僕は普段のラフな格好と一転し、今は着ていない高校の制服を苦虫を噛み潰した様な思いで身にまとっていた。
半年の間着ていなかった制服は少しだけ窮屈に感じるようになっていて、僕は首元のボタンを一つだけ外して少しでも楽に感じるよう努めた。
本家に向かう身支度を終え、クローゼットの中からこの日のためだけに使われるマフラーを引っ張りだして家族の待つリビングへと向かった。
足を運んだ先で待っていたのは母と弟である。
僕の家庭は母子家庭なのでこれで全員揃ったことになる。
父は、母の家つまり僕がこれから向かう本家に婿入りという形で結婚したそうなのだが、まぁ察しがつくだろう。
ちゃんとした理由は母は教えてくれなかったのだけれど僕は逃げたのだと思っている。本家の圧力というのは色々と強いものがあるようで僕が同じ状況ならきっと逃げるだろう。
だから僕は父親がいないことに関しては全く否定的な感情は持っていない。
むしろ父親が凄いと思うまであるが、よく考えたらあの本家のことだ、もう父親は消されているのかもしれない。
何はともあれ僕達一行は母の車に乗りこみ片道2時間かかる田舎へと向かい始めた。
- Re: 【手と手とて:更新】カタテマ【短編集】 ( No.34 )
- 日時: 2016/01/22 12:21
- 名前: R (ID: jJ9F5GeG)
車に乗って開口一番、母はこう言った。
「もしかしたら今日、あんたのそれ治るかもしれないよ」
その言葉に僕は驚きを隠せず声を出そうとして少しむせてしまった。
「え、なんで?ほんとに?ほんとうなの?」
興奮を隠しきれない僕は、声を裏返しながら母の言葉に食いついた。
僕がこんなにも過剰な反応を見せるのには理由がある。
僕は呪われているのだ。
遠江家の呪い。それは母の家系に代々伝わって来たもので一つの代に必ず一人はその呪いを持ったものが生まれる。
何の因果かは誰にもわからない上に治し方すらわからず幾年もの間悩まされてきたのだ。
この呪いは僕が引きこもりになった理由の大元の原因に直結する。
この呪いを持って生まれた者は人の負の感情を敏感に感じ取ってしまうのだ。
小さな芽にすら反応し、常に落ち着くことが出来ず、しまいには吐き気や頭痛を起こしてしまう始末だった。
その殆どが第二次成長期を迎えた頃に発症し、死ぬまで付きまとう事になる。
中にはいつの間にか治っていたという者もいるようだが、それは本当に極小数で大体の人間は精神的ストレスにより長生きする事なく自ら命を絶っていくのだ。
だから母の言葉は今の僕が最も期待し最も欲していた言葉だったのだ。