複雑・ファジー小説
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- 【坂の街:更新】カタテマ【短編集】
- 日時: 2019/03/22 00:42
- 名前: R ◆0UYtC6THMk (ID: W7Can3CF)
どうも、初めましての方は初めましてRと申します。
今回は短編集に手を出してみました。
というのも只の現実逃避なだけなんですが。
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【お知らせ】
書き溜めはないので自分の調子で投稿スピードは異なります。
ご了承ください。
随分と久しぶりの活動になります。どうもこんにちは。
未完成の作品も多くあって申し訳ないのですが作者のやる気が維持しないのです(;・∀・)
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【作品一覧】
透明人間 >>1
星降る >>2
自由落下 ふりーふぉーる >>3
ウサギの田中君 >>4 >>14 >>18
天の声 >>5
リリアの目 >>11 >>12 >>13
カコノヒト>>16 >>17
客観的であり主観的見解 >>21
夜明けに沈む >>22 >>23
風の吹く街 >>24 >>25 >>26 >>27 >>28 >>29 >>30
この世界 >>31
手と手とて >>32
ペットボトルロケット >>35
以下、めんどくさいので略
- Re: カタテマ【短編集】 ( No.1 )
- 日時: 2015/02/12 22:32
- 名前: R ◆0UYtC6THMk (ID: J9PmynZN)
【透明人間】
どうやら僕は、たまに透明人間になるようです。
普段は至って普通なのに、ある瞬間から、ふと姿をくらますのです。
それは昔からのことで、今更どうこう言うことはないけど、みんなには知ってて欲しいことです。
僕はたまに透明人間になります。
みんなでご飯を食べるとき、みんなで教室でだべっているとき、みんなで遊ぶ約束をしている時も、そのタイミングに合わせたかのように僕はみんなから見えなくなってしまうのです。
しかも透明人間になってしまえば声すら届かなくなって、そして僕だけ
誘われてないことになってしまいます。
こういう時は透明になることが本当に憎くなります。
僕だって友達と遊びたかったのにって。
でも、なんで透明になるのか僕にはわかりません。
僕には超能力はないし、お化けだって見えません。
至って普通なはずなんです。
それなのに、まるで空気のように見えなくなって吸われては吐き出されてを繰り返すのです。
一体誰のせいで、何のせいなんでしょう。
僕は何もしていませんし、友達も何もしてないと思います。
悪いのはきっと世界なのでしょうね。
どうやら僕は透明人間になってしまったようです。
- Re: カタテマ【短編集】 ( No.2 )
- 日時: 2015/02/21 01:19
- 名前: R ◆0UYtC6THMk (ID: J9PmynZN)
【星降る】
突然だけど僕は夜の九時を回った頃、彼女と高校の前で待ち合わせをした。
急に待ち合わせに誘ったものだから、電話越しに聞いた彼女の声は実に不機嫌そうだった。
僕は待ち合わせの三十分前に高校前に着いた。
いつもならこの時間帯でもジメジメとした暑さが体にまとわりつくのだが、この日は不思議とそれを感じなかった。
ただ待つのも退屈なので僕は高校の周りを散歩することにした。
僕は夜になると田んぼのカエルが一斉に鳴き始めるような田舎に住んでいる。
昼間は蝉がジリジリだとかミーンミーンと騒ぎ立てている。
一日中生き物たちの鳴き声が止まない。
僕はそんな生き物たちの止まない合唱が案外嫌いではなかった。
カエルの声を聞きながら舗装された冷たいアスファルトの道をゆっくりと歩いた。
高校の周りを一周して校門に戻ってみると、そこには彼女が立っていた。
「遅いですよ。夜道で女の子を一人にさせるなんて、酷い人ですね」
そう言われて僕はケータイの時刻表示を見た。確かに今は九時を過ぎてはいるが経った五分だ。
「ごめんごめん。ちょっと散歩してたんだ」
彼女はより不機嫌になっていて眉間に若干のシワが寄っている。
どうやら言い訳をするのはやめておいた方が良さそうだ。
「それで、今日はなんで呼び出したんです?花火でもするんですか?」
彼女は白いパーカーのフードを整えながら言った。
「今日は、君に見せたいものがあるんだ。といっても、もう知ってるかもしれないけどね」
そういうと僕は軽い足取りで歩き出した。
彼女は眠たそうに欠伸をしながら、何も言わずに後をついてくる。
僕たちは学校の丁度裏にある舗装されていないむき出しの道を進んだ。
雑木林が広がる道を抜けると、開けた場所に出た。
広い草原の上に僕たちは立っていた。
「空を見上げてごらん。綺麗な星空だろう」
田舎の澄んだ空気のせいか、それとも僕たちの心がそう見せたのか。
青みがかった夜空に何十億個もの星が浮かんでいる。
それはまるで宝石箱で僕たちの思い出のようだった。
「綺麗ですね……でも、どうして」
彼女は不思議そうにこちらを振り返る。
僕は今まで秘密にしておいた大切な事を告げた。
「明日、僕は遠いところに引っ越すんだ。君とこうして過ごすのも、今日で最後だから一緒に星が見たいと思ってね」
彼女はただ驚いていた。僕たちの間に少しの静寂が訪れる。
そうして彼女がようやく言葉を発したとき、彼女は泣いていた。
「どうして……、どうして秘密にしていたんです?言ってくれたら、私だって……」
彼女は涙を拭って僕を睨みつけてきた。
最後の日だっていうのに今日は怒らせっぱなしだな。
僕は自分の思いを簡潔に伝えた。
「君のことが好きだったんだ。三ヶ月前、君と初めて会ったあの日から。でも、その時には僕はもうわかっていたんだ。引越しのこと。好きになってしまえば、愛してしまえば、離れ離れになるときの辛さは増す。だからせめて最後のこの日に全て伝えて、いなくなることに決めたんだ」
言い終えると僕は微笑んで__彼女は涙を流しながら、見つめあった。
「さようなら、君」
僕たちが出会うことはもうないのだろう。
美しい星空の下に残っているのは虚無感だけだった。
- Re: カタテマ【短編集】 ( No.3 )
- 日時: 2015/02/27 00:53
- 名前: R ◆0UYtC6THMk (ID: J9PmynZN)
【自由落下】
僕は落ちています。
どこに落ちているかは、わかりません。
落ちる速度は早くもなく遅くもなく、何事もないように落ちています。
そのあいだに景色はどんどん変わっていって、とっくに昔の景色は忘れてしまいました。
昔学校だったところは今ではただの廃墟です。
商店街はシャッター街になって人の流れも感じさせません。
庭の花も枯れてしまいました。
花瓶も植木鉢も、地面に叩きつけられ割れました。
植物には種があるのでそんなに気にしていませんが。
僕はどこまで落ちるんでしょう。
底が見えれば良いのですが、底は見えません。
今、頭から落ちているのですが、もし底が地面ならきっと即死でしょうね。
柔らかいスポンジであってほしいです。プリンでもいいです。
でも、何となく底がなんなのかわかる気もします。
僕の考えだと、僕はきっと底には着きません。
もしこの考えが違っていて、底があるとしても、足場はないです。
これは絶対です。何せ僕がそう思うのですから。
ということで僕は今から頭から落ちるのを止めます。
ひっくり返ったらもうそこに落下なんて事象はありません。
底なんてものの必要性もなくなります。
以上、僕以外の誰かの未来であり過去である話でした。
ご清聴ありがとうございました。