複雑・ファジー小説
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- 【坂の街:更新】カタテマ【短編集】
- 日時: 2019/03/22 00:42
- 名前: R ◆0UYtC6THMk (ID: W7Can3CF)
どうも、初めましての方は初めましてRと申します。
今回は短編集に手を出してみました。
というのも只の現実逃避なだけなんですが。
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【お知らせ】
書き溜めはないので自分の調子で投稿スピードは異なります。
ご了承ください。
随分と久しぶりの活動になります。どうもこんにちは。
未完成の作品も多くあって申し訳ないのですが作者のやる気が維持しないのです(;・∀・)
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【作品一覧】
透明人間 >>1
星降る >>2
自由落下 ふりーふぉーる >>3
ウサギの田中君 >>4 >>14 >>18
天の声 >>5
リリアの目 >>11 >>12 >>13
カコノヒト>>16 >>17
客観的であり主観的見解 >>21
夜明けに沈む >>22 >>23
風の吹く街 >>24 >>25 >>26 >>27 >>28 >>29 >>30
この世界 >>31
手と手とて >>32
ペットボトルロケット >>35
以下、めんどくさいので略
- Re: 【夜明けに沈む:更新】カタテマ【短編集】 ( No.25 )
- 日時: 2015/05/26 23:07
- 名前: R ◆0UYtC6THMk (ID: J9PmynZN)
風の吹く街1
昔の話をしよう。
僕が十五歳の誕生日を迎える年に、例の風によってまたひとり連れてこられたんだ。
その前に君たちが知っておくべき街の決まりごとがあるんだろうけど敢えて僕は書かないことにするよ。
この先僕に残された時間はそう長くないんでね。
おっと、言及は禁止だよ。
それより話を戻そうじゃないか!
その時やってきた人は実は今、僕の隣でコクコクと首を揺らして寝てるんだよね。
今彼女とか思ったでしょ。残念、大外れ。
でもちょっと惜しい。
正しくは「親友」だね。
あれから二年が経つけど彼以上に気心の知れた友人は未だ現れてない。
唯一無二ってやつさ。
そんな彼は自分を「スイレン」と名乗った。
スイレンは長身痩躯で清潔感のある少年だった。
特徴は外国で買ったものだという黒縁の眼鏡。その見た目と相まって女子に好かれそうな雰囲気を醸し出していたよ。
彼はこの街にたどり着いて三日後から街でただ一つの学校に通い始めたんだ。
ここで君たちも気になり始めているであろう僕とスイレンの馴れ初めを語っていこうと思う。
- Re: 【風の吹く街:更新】カタテマ【短編集】 ( No.26 )
- 日時: 2015/05/28 01:19
- 名前: R ◆0UYtC6THMk (ID: J9PmynZN)
正直言ってこの街に来たばかりのスイレンのことは、よく覚えていない。
この街の学校に通っていればわかるだろうけど編入生なんて珍しいものじゃないんだ。
あぁ、また編入生か、ぐらいにしか思わないね。
どちらかというと卒業していく人の方が気になるんだ。
まぁ卒業ってものがどういうことかはわかるよね。
昨日一緒に授業を受けてた人間が急にいなくなるっていうのは少なからず寂しい気持ちになるからね。
手に入れたものより失ったものの方が確実に心に残るんだよ。
まぁスイレンは人気者ではなかったよね。
特に男子受けは悪かったよ。
基本的にドライな性格で素っ気ないんだけど女子いわくそれがクールでかっこいいらしい。
それが気に食わないらしくてスイレンはいつも一人でいたよ。
それから僕とスイレンは何の接触もしないまま一ヶ月が過ぎた。
丁度、四限目終了のチャイムが鳴って昼休みに入ったときスイレンは文庫本片手にどこかに行こうとしてたんだよ。
よく考えたら天気のいい日は毎日教室から出ていってる。
ふと僕はそれを見て、疑問に思ったんだ。
いつもどこにいってるんだろう。
初めは他のクラスの人と昼食でも取るのかなと思ったけど違うよね。
だってスイレンが誰かといるのなんて見たことないんだ。
となると何をしているのか……。
彼の行動が普段は眠っている僕の好奇心を呼び起こしてしまったんだ。
そして僕はスイレンのあとをつけることにしたんだ。
- Re: 【風の吹く街:更新】カタテマ【短編集】 ( No.27 )
- 日時: 2015/06/24 23:20
- 名前: R ◆0UYtC6THMk (ID: J9PmynZN)
今思えば僕はその時初めてスイレンをまじまじと見たんだと思う。
今でも廊下をだるそうに踏み潰していく彼の背中を見てデイダラボッチみたいだと思った事を覚えてるよ。
スイレンは僕の学年の中で一二を争うくらい背が高いんだ。
しかもガタイが悪いわけじゃないんだけど細身だから尚更デイダラボッチ感が出てたんだよね。
スイレンの後をつけて辿りついた先は屋上だった。
でも、うちの学校の屋上は出入りが完全に禁じられてたんだよ。
何年か前に物騒な事件を起こした人がいたみたいでね。
勿論屋上のドアは鍵がかけられてたよ。蹴破って入ろうものなら音で誰かに気づかれる可能性もあるだろうしね。
するとスイレンはおもむろにポケットに手を突っ込んで何かを取り出し始めたんだ。
遠目からだったけどはっきりとわかったよ。あれは鍵だ。
思った通りスイレンはドアを開けてその向こうへと入っていったよ。
僕は迷ったね。このまま帰っても良かったんだけど僕の好奇心は自分が思っているよりも強かったみたいだ。
僕は屋上がどういう作りになってるのかよくわからなかったけど一応スイレンに気づかれないよう、なるべく音を立てず、するりと屋上へと足を踏み入れた。
- Re: 【風の吹く街:更新】カタテマ【短編集】 ( No.28 )
- 日時: 2015/07/23 22:52
- 名前: R ◆0UYtC6THMk (ID: J9PmynZN)
屋上に出て目に入ったのは淡く吸い込まれるような碧をした空とそれを覆い隠さんばかりの悪しき雰囲気を纏った巨人。
巨人の鋭い視線の先にいたのはなんとも頼りない僕の姿だった。
「なに?俺に何か用でもある?さっきから目障りなんだけど」
冷たい視線がスコールのように僕を降り注ぐ。正にヘビに睨まれたカエルだよね。
だけど僕がただのカエルのまま終わる訳がない。お察しの通り僕はひねくれ者だからね。
「あるからこうしてついて来たんじゃないか」
僅かにスイレンの眉が引き攣るのが分かって僕は半歩後ずさりした。
だってそうだろう、もし巨人を相手にするのなら立体起動装置でも持ってきてくれなきゃやってられないよ。
兎に角、僕は巨人が手を出してくる前に畳み掛けることにした。
「スイレン君ってさ、天気のいい日にはいつもどこかに出てるよね。それが僕の好奇心に火を付けちゃってさ。どうにも気になってついて来た次第さ」
スイレンはピクリとも動かず僕を睨み続けている。
僕は背中に嫌な汗を掻きながらも続けた。
- Re: 【風の吹く街:更新】カタテマ【短編集】 ( No.29 )
- 日時: 2015/07/29 11:39
- 名前: R ◆0UYtC6THMk (ID: J9PmynZN)
「別に何か裏があるってことじゃないんだ。本当に好奇心に任せた上での行動さ。目障りならついて行くのはやめるよ」
少なからず目障りだと言われた時用の策はあった。随分と陰湿な手だけどね。
でも、意外なことにその策は使わずに済んだんだ。
僕がそう言ってから三秒ほど沈黙が流れた。僕にとってはこれ以上ないほど緊張する三秒が過ぎた頃、スイレンはおもむろに口を開いた。
「…………勝手にしなよ」
そう一言言ってスイレンは入口からは丁度死角となる屋上の右端フェンス際に座り込んだ。
僕はそこから近すぎず遠すぎずの同じくフェンス際に座った。
何気なく空を見てみると屋上に上がってきた時よりも少しだけ蒼が深まった気がする。学校の向かい側にある県立図書館から出てきた小鳥がこちらに向かってきてはまた遠ざかるを繰り返している。
スイレンに視線を戻してみるとコンビニで買ったらしいパンを食べている。
さて、僕も昼飯の時間とするか。