複雑・ファジー小説

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【坂の街:更新】カタテマ【短編集】
日時: 2019/03/22 00:42
名前: R ◆0UYtC6THMk (ID: W7Can3CF)

どうも、初めましての方は初めましてRと申します。
今回は短編集に手を出してみました。
というのも只の現実逃避なだけなんですが。

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【お知らせ】
書き溜めはないので自分の調子で投稿スピードは異なります。
ご了承ください。

随分と久しぶりの活動になります。どうもこんにちは。
未完成の作品も多くあって申し訳ないのですが作者のやる気が維持しないのです(;・∀・)
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【作品一覧】
透明人間 >>1
星降る >>2
自由落下 ふりーふぉーる >>3
ウサギの田中君 >>4 >>14 >>18
天の声 >>5
リリアの目 >>11 >>12 >>13
カコノヒト>>16 >>17
客観的であり主観的見解 >>21
夜明けに沈む >>22 >>23
風の吹く街 >>24 >>25 >>26 >>27 >>28 >>29 >>30
この世界 >>31
手と手とて >>32
ペットボトルロケット >>35
以下、めんどくさいので略

Re: 【天の声:更新】カタテマ【短編集】 ( No.9 )
日時: 2015/03/23 16:17
名前: 風死  ◆Z1iQc90X/A (ID: g8eYpaXV)

えっと、読ませてもらいました。
中々に独特な世界観というかお話ばかりで、それでいてそれがちゃんと伝わる文章が良かったですね♪
想像力が羨ましいです!

Re: 【天の声:更新】カタテマ【短編集】 ( No.10 )
日時: 2015/03/23 22:13
名前: R ◆0UYtC6THMk (ID: J9PmynZN)

風死さん

ありがとうございます!
お久しぶりです!(`・ω・´)
自分の喜怒哀楽を作品にぶつけてストレス解消しているので
読み手の方に伝わっているかどうか心配でしたが、安心しました(^_^;)

Re: 【リリアの目:更新】カタテマ【短編集】 ( No.11 )
日時: 2015/03/25 23:03
名前: R ◆0UYtC6THMk (ID: J9PmynZN)

リリアの目



リリアの目は澄んだ紅色をしています。
紅色の目をした幼い少女の事を街の人たちはまるで化物の如く蔑みましたが、その街外れの村人たちは自分の孫のように可愛がりました。
この村には若者が住んでいません。
若者は成人すると皆、裕福な暮らしを求め街へと出て行くからです。

「リリアちゃん、何処へ行くんだい?」

リリアの里親をしているお婆さんが言いました。

「おばあさん。これから夕凪山の麓まで花をつみに行ってくるわ」

「そうかい。気をつけていくんだよ」

おばあさんは笑顔でリリアを見送りました。



リリアの住んでいる村は山のすぐ鼻の先にあります。
リリアは自分で作詞作曲した歌を一曲歌っただけで夕凪山の麓まで着いてしまいました。

「どこかしら。どこかしら。お花はどこかしら」

リリアは目当ての花を探して山の麓を散策します。
たくさん花は咲いていますが、リリアのお目当ての花は中々見つかりません。

「おかしいなぁ。前来た時には咲いていたのに。枯れちゃったのかな」

リリアは日が暮れるまで探し続けましたが一向に見つかりませんでした。
夕焼けの向こうではカラスが二羽悲しい声で鳴いていました。

「おばあさんが待ってる。帰らなきゃっ」

リリアは村へ向かって歩き出しました。その手にはお土産の山いちごがしっかりと握られていました。
疲れているからかリリアは重い足取りでゆっくりゆっくり歩きました。

ひゅっ。

後ろから風きり音が聞こえてきました。
リリアはちくっとした痛みを右腕に覚えました。

ばたっ。

リリアはその場に倒れ込みました。

Re: 【リリアの目:更新】カタテマ【短編集】 ( No.12 )
日時: 2015/03/26 18:59
名前: R ◆0UYtC6THMk (ID: J9PmynZN)

リリアが目を覚ましたのは、小さな山小屋のなかでした。
ここはどこだろう、と体を起こそうとしますが自分の体が不自由なことに気がつきます。
手足はロープできつく結ばれ、口はタオルのようなもので覆われていました。
リリアは山小屋の中を見渡しました。
リリアの他に人間は誰もいませんが小屋の片隅に銃が置いてありました。
リリアは自分の記憶を辿ります。
急に気を失ったことと腕に感じた痛みから推測するに麻酔銃でしょう。

「……これで…………かげつ……な」

ドアの向こうから人の声が聞こえます。おそらく二人。
きぃ、ドアの向こうには二人の男が立っていました。
みすぼらしい服を着た青年とおじさんでした。

「へぇ、珍しいな。マニアなら高く買ってくれるんじゃねぇか?」

おじさんが言いました。

「そうですね。おそらく当分は食うのに困ることはないでしょうね」

話を聞く限り、この人たちはリリアを売って生活費にしようと思っているようです。

「で生かしたまま売るのか?」

リリアの額に冷たい汗が浮かびます。

「いえ、街に向かうにはあの村を通る必要があります。バレる可能性もありますし、なかなか労力がいるので。値段は下がるでしょうがその珍しい目だけを売ってもかなり言い値が付くと思います」

Re: 【リリアの目:更新】カタテマ【短編集】 ( No.13 )
日時: 2015/03/27 01:37
名前: R ◆0UYtC6THMk (ID: J9PmynZN)

「だったらさっさとやっちまおう。あんまり長居してちゃ足が着くかもしれねぇ」
そう言っておじさんはズボンの後ろポケットからナイフを取り出しました。
ナイフの側面に映っているのは酷く怯えた表情のリリアです。

「あんまり小屋を汚さないようにしてくださいよ。なるべく証拠は残さないほうがいいですから。最低限の刺し傷だけ残して目をくり抜きましょう。あとは崖から落として事故を装う。村には年寄りしかいないのでこれだけすれば充分だと思います」

青年が冷たい目でリリアを見下ろします。その目は何人も殺してきたような濁った目をしていました。
おそらくこの人たちはそうやって生きてきたのでしょう。

「よし、じゃあやっちまうぞ」

鋭く光るナイフの切っ先がリリアに向けられます。
それからおじさんは何のためらいもなくリリアの心臓を貫きました。
リリアは叫ぶこともできず、ただ涙を流して死んでいきました。
虚しく死んでいったのに、相変わらずリリアの目は綺麗な紅色でした。


*         *         *        *


「……こんなもんでいいだろ」

おじさんはナイフに付いた血を拭いながら言いました。

「ええ。目をくり抜くこともできましたし、行きましょうか」

青年は瓶に入ったリリアの目をじっくりと眺めます。

がちゃっ。

山小屋の扉が開く音に二人は警戒しました。
ドアがゆっくりと開きます。
ドアの向こうには木漏れ日に照らされたリリアが立っていました。

「え?……」

青年もおじさんも瞳孔を開いてそこにいるモノを刮目します。
リリアの体には傷一つなく瞼の裏にはしっかりと紅色の目が二つありました。

「そんな……だって目はここにっ」

青年はもう一度瓶の中身をよく見てみました。
確かにそれはそこにあります。

ゴキッゴキッ。

二人の視界はそこで暗転しました。



*      *      *      *


「ただいま、おばあさん」

「おかエりなさイ、リリア。オソかったわネ」

「なかなか目当ての花が見つからなくて。ほらったった二輪しか見つからなかったわ」

リリアがおばあさんに花を手渡しました。
その花はリリアの目と同じように綺麗な紅色をしていました。


この花が枯れたのは四十年ほど先のはなしになるそうです。


           完


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