複雑・ファジー小説

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悠久のILIZA
日時: 2015/05/20 21:23
名前: みすず ◆5k4Bd86fvo (ID: 5PvEL/lW)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?mode=view&no=10315

初めまして ! ご存じの方はこんにちは !
駄作者みすずが複ファに降り立ってしまった ! ?
今回は人工知能VS人類のお話です

attention
・ちょっと都市伝説を元にしている
・兎で頑張るけどたまにしばらく放置あり
・どちらかというとシリアス(コメライ4 : シリアス6)
・アンチ、チェンメ、パクリは通報致しますので悪しからず
・永久放置ダッシュ逃げあり(主にネタ切れが原因で)
・駄作者は厨二病

"コメントをクレたオ客サマ"
黒陽 様

Re: 悠久のILIZA ( No.25 )
日時: 2015/05/26 21:52
名前: みすず ◆5k4Bd86fvo (ID: 5PvEL/lW)

続き

    *

案の定、ジェシカの予想した通りピアノは彼女達が乗ってここに来た車の後部座席にポツンと置かれていた

「うーん、運転してくれた人、気づかなかったのかな ? 」
「いや、それ以前にあのライくんが気づかなかっただけでも神業だよ。ハーちゃん素質あるね」
「そんな素質要らないよー」

ケラケラと笑いながら二人は来た道を戻ろうとし始めたときだった
ぽつ。
ジェシカの鼻先で空から落ちてきた水滴がはねる。上を見上げると空はより一層雲の厚みが増している
ぽつ。ぽつぽつ
雨は次第に量を増していき、次の瞬間にはざーっと雨が滝のように降り注ぎ始めた
建物の下へと二人は慌てて走る

ほんの三十分前、<ストライク>の本部に入ったとき辺りはそれほど雲がなかったから通り雨なのだろう
早く止まないかな、と呟いた彼女の横でミレイアがニヤニヤしながら何処ぞやの奥様のように右手をちょっとちょっという振りをした

「ねー、知ってる ? 雨に一番最初に当たった人ってアホなんだってー」
「ふーん……それ、私じゃん ! ! ? マジかぁ」
「大丈夫 ! 私今までに百回当たってるから」
「わざわざ、数えてたの ! ! ? 意外とそういうの気にするタイプなの ! ! ? というか、それ、多いか少ないか分からないよね ! ! ? 」

怒濤の勢いのツッコミの嵐にミレイアが若干、気圧されておお……と、何故か拍手をしたときだった

『………も、もし………ふ………いま……もしもし ? 聞こ、えてる ? 』
「あっ、ガイ兄 ! 聞こえてるよ、どうぞ」

ノイズ、雑音混じりで聞き取りにくいがガイアの声が聞こえてきた
出所が分からないジェシカが周りをキョロキョロと見回している横で、ミレイアは左腕にはまった時計に向けて話しかけていた
どうやら、通信機能も備わったもののようで次第に通信相手であるガイアの声も鮮明に聞こえるようになった。かなりの高性能だ

『とにかくさっきの場所まで来て、そこで話すから ! 任務が出た ! ! ! 』

『任務』という言葉に緊張感が高まる。ミレイアは厳しい面持ちで了解と告げるとこちらを確認するように見てくる
それに、ジェシカは引き締まった面持ちで頷く。それにミレイアは笑みを浮かべ再び二人は雨の中を駆けていった

これがジェシカにとっての、初任務の始まりだった

Re: 悠久のILIZA ( No.26 )
日時: 2015/05/27 21:58
名前: みすず ◆5k4Bd86fvo (ID: 5PvEL/lW)

人類黙示録 第三章……『暗黙の境界線<Implicit borderline>』

任務での目的地は<レイド>から歩いて三十分、車で十分の公認安全監視地域から少し離れた場所だった
一般人の多くは公認安全監視地域の中で保護のような形で暮らしている
しかし、それ以外の地域でも戦闘から身を隠すようにしてひっそりと暮らしているそうだ
今回は『戦闘祭』の翌日でもあるため、大半の者が寝ているらしい。そのため、起きている者、つまりライト達に仕事が回ってきたということらしい
一同は目的地の少し前で車を止め、雑草が生え放題の歩道を歩く。日夜戦闘は行われているが流石にクーデターからまだ半年ともなれば景色は少し閑散とした程度だった

「えっと、さあ……ライト」
「何だ」
「いや、あの……こういう場所で暮らしてる人達って逞しいね……無事なのかな」

ジェシカは失言の事もあってか若干抑え気味にライトに尋ねていた
一方のライトは至って何時もと調子が変わらないようだった、というより表情の表現が少ない性格なのだろう

「いや、AIはそういう奴を狙って労働源に組み込む。御偉いさんは労働源としては使えない、人質として使う方が有効活用法だからな」
「残酷……」
「あっ、あれが目的の老人ホームだね」

カルドが指差した先には半年より前から既に廃墟だったかのような老人ホームだった
壁の間に張り付く蔦、足元は一メートルを越える雑草が閑散とした景色により一層陰気さを足している
正面の玄関は鍵が壊れているのか完全に扉が開いていた
風がくもった窓に当たりひゅーひゅーと音を立てている
これらの比喩からするにこのままお化け屋敷として採用されてもおかしくない建物だった
ミレイアも微妙に退いているように見えた
それを他所にライトはリーダーらしく、というかリーダーだったのか。皆の前に立った

「皆、やってるから大丈夫だと思うがジェシカ、お前は初陣だ。相手の人数の分からないこの状況で猛進は」
「し、ま、せ、んー。これぐらい常識でしょ」
「いいか、決して一人で行動するな。必ず全員で動く……いいな ? 」

ライトの言葉に皆が頷く。ジェシカはごくりと緊張のあまり喉を鳴らした
そして、ライトを先頭に戦場の中に足を踏み入れていった

続く


Re: 悠久のILIZA ( No.27 )
日時: 2015/05/29 22:12
名前: みすず ◆5k4Bd86fvo (ID: 5PvEL/lW)

続き

老人ホームの中の有り様は酷いものだった。床から壁に向かってヒビが長く刻み込まれている
曇った窓ガラスから差し込む陽光は薄暗く中をぼんやりと照らしている。奥に向かって酷い静寂と孤独感のある闇を保っている

中には誰もいなかった

ジェシカ達が歩く度に木が軋むぎっ、という音しか鳴らなかった
長く続いたフローリングの廊下それだけに限らずドアが外れた部屋の中にも誰一人として存在していなかった
ライトがとても小さく歯軋りをする。しかし、そのぎりっという音もここではよく響いた

「誰もいない……よね ? 」
「情報では、複数の人間が住んでいる筈だ。奥に、進むぞ……」

ライトとガイアを先頭。その後にジェシカ、ミレイア、カルドと並んで一歩一歩と奥に進む

ぎっ、

奥に進むに連れ、深い深い闇が皮膚にまとわりつく。気味の悪い感覚が付きまとってくる
戻ることは今すぐにでも出来る。しかし、義務感に駈られて足がまた歩を進める

ぎっ、

ライトは今まで体験したことのない緊張に駈られていた。冷や汗が額から滑り落ち頬を伝っていく
隣で進むガイアも槍を両手で構えて、冷や汗を流していた
闇はどんどん深くなっていく
他の皆を置いて逃げ出すなんて事はライトのポリシーが許さなかった。そこまでリーダーシップという枷は、重くのし掛かって束縛してくる
剣を構え直すとまた歩を進める


ごすっ、


「_______________________________________________________________っ ! ! 」

ぞわり、と背中を悪寒が駆け抜ける。ごくりと溜まっていた唾を飲み込む
爪先が何かにぶつかった感覚。妙に柔らかくて冷たい物体

何かある______

無視してこのまま引き返したい。本能が危険信号を必死に発する
しかし、全身が金縛りにあったかのようにその場から動けなかった

何かある______

危険信号を発する本能に逆らい、体はまるで乗っ取られたかのように下に視線を落としていく
あと少しで見えてしまう。止めろ、見るな
視界が完全に下を向く。そこには闇に染まった黒い物体があった
ずっしり、と重みがある。黒い大きな物体、感触はまるで布に触れているかのような感覚

「ミレイア、時計」
「え、あ、うん」

ミレイアが腕に嵌めていた時計を渡してくる。アナログなら針を合わせるとこに指を当てる
この<テクナロディ>が造った時計は時計機能、通信機能、の他に懐中電灯の役割も補えるハイテクな物だった
本能はまだ危険信号を発している。しかし、物体の正体を知りたい好奇心に駈られライトはスイッチを押した
ぱちん、という音がして明かりが点く。瞬間、ライトは息を呑んだ

人の死体だと分かった

続く

Re: 悠久のILIZA ( No.28 )
日時: 2015/05/30 22:19
名前: みすず ◆5k4Bd86fvo (ID: 5PvEL/lW)

続き

横たわった死体はすっかり冷たくなっている。腐敗が進んでいない辺り死んだのは少なくとも今から二週間以内にはなっている筈だ
仏は痩せこけたボロボロの服を身に纏った恐らく十歳前後の少年だった
少年は負傷していたのか黒く固まった血溜まりができている
光に晒されたことで周りの皆も仏の存在に気がついたのか息を飲んでいる

「ひっ………… ! 」
「多分、衰弱死だ。しかし、後頭部に打撲の跡がある……もしかしたら、もうAIは待避した後」
「______きゃあぁあああぁあああぁあああぁあぁあああああああ ! ! ! 」

突如、少女と思われる悲鳴が施設に木霊する。木を踏みつけるドタドタという音が段々と近付いてくる
ライトは剣を上段に構えながら声を張り上げた

「全員、臨戦態勢 ! 相手が多数だった場合は一回外に連れ出す ! ! 」

ドタドタと走る音はすぐ突き当たりの角にまで迫ってきていた
刹那、ボロボロのワンピースを着た十歳に満たないであろう少女が涙を流し、息を乱しながら走ってきていた
そのすぐ後をAIが追いかけてきていた。容姿は熊、キリン、猫。動き方が本物と然程変わらないリアリティーがある仕上がりだが以前、空き地を襲撃してきたAIと同じ、オートマチック型と呼ばれる方のロボットだ
ライトは右手を皆の方へ突きだし、外へ移動する指示を出す
外で移動するに連れ、少女とAIも外へ飛び出してきた
皆は、各々の武器を突き出した

「来い ! ! ! 」

続く

Re: 悠久のILIZA ( No.29 )
日時: 2015/05/31 21:59
名前: みすず ◆5k4Bd86fvo (ID: 5PvEL/lW)

続き

    *

「来い ! 」

ライトの声と共に戦闘が開始される。前衛がライトとガイア、ジェシカとミレイア、カルドでバックアップする形になる
敵の数は15、相手の数の方が多い
ライトが先陣を機って走り出す

「<キャタラクト・ブレイド> ! 」

ライトは剣を目の前の熊型のAIに突き刺す。ビリッという音がしてライトが退くと同時に小規模な爆発を起こす
それを見計らい、周りから五体。一斉に突進していく
剣では一喝はできない。見たジェシカはピアノのキーボードを叩く

「<ローリング・ピアノ、ファ> ! ! ! 」

『ファ』の音が鳴り響いた瞬間、AIが痙攣して動かなくなる
ライトはその間にロボットを八つ裂きにしていく。ジェシカがほっと一息ついたのもつかの間
カルドがジェシカの足元に手榴弾を投げつける
手榴弾は破裂した瞬間に鼻をつく酸を撒き散らした
ジェシカが慌てて飛び退くと地面から装甲が半分溶けた土竜型のAIが顔を出す

「ありがとうね」
「当然の事をしただけだよ」

手榴弾を手で玩んだままカルドはニヤリと笑う
次にカルドは右手を突き出すとどういう構造かそこから伸びたワイヤーで先のAI三体を束縛、AIからビリッという音がする

「<爆発の大砲 ブラスト・バズーカ>、発射 ! ! ! 」

痙攣しながらも必死に足掻こうとするAIに刹那、右から野球ボール大の爆弾がぶち当たる
右に目を向けると肩にバズーカを乗せ構えたミレイアがいた

「ナイスだよ、カルドっち ! 」
「あのねー、一瞬こっちはワイヤーが溶けるかと思ったじゃん」
「あははっ、まさかー」
「ま、そうなんだけどね」

ジェシカは二人の会話から耳を離す、すぐそこではガイアが槍を振り回し、炎を吹きながらAIを薙ぎ倒していた
その横ではライトが最後の一体を両断した
仕事の終了にジェシカは自然と笑みが零れる
そして、庭に立つ大木の裏に隠れていた少女に近づいた
ぶるぶると震える少女に手を伸ばす

「こ、来ないで ! ! ! 」

何故か、少女はジェシカの手を払い除けると警戒したように彼女達を睨み付けたのだった

続く




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