複雑・ファジー小説
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- ナルシスト美少女の冒険記
- 日時: 2017/07/21 08:51
- 名前: モンブラン博士 (ID: mOILM.Mp)
久しぶりに新作を公開します。
今回はアクションファンタジーです!
- Re: ナルシスト美少女の冒険記 ( No.33 )
- 日時: 2017/08/22 19:50
- 名前: モンブラン博士 (ID: mOILM.Mp)
深夜に目が覚めた滝川達三人は、そっと宿を抜け出して古井戸へ向かう。
辺りを確認して誰もいないことを確かめると、彼らは古井戸を覗き込む。中に水は入っておらず下へ降りられるように足場が設けられていた。
滝川の合図により、彼らは人に見つからないよう細心の注意を払いながら古井戸の中に入っていき、一歩一歩階段を降りていく。全て降りた後に広がっていたのはトンネルを思わせる通路だった。作られてからだいぶ時間が経過しているのだろうか、壁には所々コケが生えている。
メープルは前を歩く二人より少し遅めに歩き、壁に触れて感嘆した。
「まさか井戸の中がこんな空間になっていたなんて驚きですね」
「広くて通りやすい作りになっていますね。でも、この通路は一体誰が何の為に作ったのでしょう? 城に何かあった時の脱出用なら異世界の言葉で場所を示したりしないはずですし……滝川様はどう思われます?」
「ボクはこの通路は城を誰かに奪われた時の為の反撃用に作ったんだと思う」
「反撃用、ですか?」
メープルが滝川の言った言葉をおうむ返しにすると彼女は頷き。
「そうでなければ皆にもわかるような言葉で書くはずだよ。
あくまでボクの推測ではあるけれど、この通路を作った人物は今回のような事態が起きることを、何らかの力を使って見越していた。
そして予想通りの出来事が起きても対処できるようにこの通路を作ったんだよ。
通路の場所を赤い文字で、それも日本語で書いたのもきっと場所が特定されたくなかったんだよ」
滝川の憶測を聞いたラグは腕を組んで歩みを進めながらも、府に落ちない顔をした。彼の表情を横目で見た滝川は何となく訊ねてみた。
「どうかしたのかな」
「もし滝川様の仮説が真実だとするならば気になることが二つあるのです」
「二つ?」
「まず一つは、この通路の生みの親はどうやって今回の事態を予測できたのか。そして二つ目は、なぜ異世界の言語である日本語で字を書くことができたのか……」
すると滝川はラグよりも先に歩みを進め、歩きながらその疑問に答えた。
「予測は予知能力を使えば容易にできるし、日本語で字を書けたのも、ボクと同じ異世界人で日本の出身か日本に留学経験があると考えれば説明が付く」
「ですが、この世界で予知能力を使える人間は極めて稀です。
この通路の状態からして数百年前に立てられたものとは考えにくい。
そうなると隠し通路はこの百年以内に立てられたものと考えるのが妥当でしょう」
「ラグ君、この世界に予知能力者が現れるのってそんなに珍しいことなの?」
「ええ、そりゃあもう。予知能力者が出現すれば世界がひっくり返るほどの偉業を成し遂げるでしょう。でも、それがどうかしたのです?」
「川村君から聞いた話だけど、先代魔王と闘ったカイザー軍の一人にソフィアって子がいたみたいだね。彼女は未来予知を使えたって川村君が言っていた。そしてボクのおじいちゃんは、この世界から見ると異世界人で、日本での留学経験があるから日本語の読み書きができるんだ。
そして、おじいちゃんとソフィアは上司と部下の関係。
つまり、ソフィアが未来を予知して隠し通路を設計し、出口の文字はおじいちゃんが書き記した……と考えるのは少し突飛な発想かな?」
「いえ。案外、それが歴史の真実かもしれません。今の仮説で考える全ての点で辻褄が合いますから。もっとも、確認する術はありませんが……」
「真実かどうか分からなくても、そうかもしれないと考えることでボクには希望が生まれたよ。もしこの道が本当におじいちゃん達が作ったものだったとしたら、ボクは期待に応えてみせる!」
拳を強く握りしめ鼻息荒く決意を固める彼女に、ラグとメープルは賞賛の拍手を送る。出口はもうすぐだ。
行き止まりの壁に辿り着いた三人は壁をスライドさせると、地図と同じように城の内部へと侵入できた。
深夜ではあるが宴でもしているのか、通路の先にはシャンデリアの明かりが煌々と灯っている。
ナルシスト美少女と少年執事、姫のトリオは兵士達に見つからないように階段を駆け上がりながら、城の作戦を司る参謀の部屋へと向かう。
部屋に侵入し参謀に催眠術をかけて拉致し、兵士の数や兵器の配置などを聞き出す算段なのだ。
ホテルのような大広間の階段を駆け上がり、同じような部屋ばかりが並ぶ場所へとたどり着いた。左右に全く同色同型の扉が並んでいるが、予め地図を持ってきた滝川達は迷うことなく参謀室を発見。
ラグとメープルが周囲に兵が現れないか警戒を強め、ドアノブを握って扉を開けて中へと突入する。
相手は文官であるため戦闘力は低い。自分とラグが二人がかりでかかればあっという間に捕らえることができるはずだ。
ところが部屋へ入った彼らを待ち受けていたのは、白いオールバックの髪に金色の瞳、白い軍服に身を包んだ長身痩躯の男だった。
「参謀長に用でもあるのかな、少年少女諸君」
「そうだ。君に用がある、参謀長!」
滝川は宣言するなり男に飛びかかるが、軽く足をかけられ思いきり転倒してしまう。
「参謀長? 生憎だが俺は参謀長などではない」
「!?」
「俺の名はシャドウ=グレイ、魔王軍最高司令官を務めている男だ。
表の表札だけを見て参謀長がいると信じ安易に突入する無謀さ、所詮子供の策など猿知恵に過ぎん」
- Re: ナルシスト美少女の冒険記 ( No.34 )
- 日時: 2017/08/31 16:18
- 名前: モンブラン博士 (ID: mOILM.Mp)
シャドウは右手を滝川達に向けると衝撃波を放つ。
その威力は凄まじく容易に壁や扉を粉砕し、三人も大広間へと落下していく。シャドウのいる参謀室から大広間まで三十五メートルもあり、まともに地面に叩き付けられたら彼らの命はないだろう。
だが、ここでラグが動いた。背中からジェットエンジンを搭載した飛行機の翼を出して、ジェットの力で舞い上がると滝川とメープルの身体を掴んでゆっくりと下降し、無事に着地したのだ。
「ラグ君、ありがとう」
「どういたしまして」
「ところでその羽はどうしたの? 魔法で出したのかな」
翼を指差し訊ねる滝川に彼はフルフルと首を振り。
「違います。滝川様とメープル様には教えていませんでしたが、僕はアンドロイドなのです」
「アンドロイド!?」
「はい。今まで黙っていて申し訳ございませんでした」
驚きのあまり声がハモった二人にラグは深々と頭を下げて謝罪する。
そんな彼に彼女達は。
「気にしなくてもいいよ。誰にでも隠したい秘密の一つや二つはあるからね。でも、これでラグ君に触れた時にどうして体温を感じられないのかわかって少しスッキリしたよ」
「安心してください。たとえラグ君の正体がアンドロイドでも、私達のお友達であることに変わりはありませんから」
「ありがとうございます! ボクはお二人に会えて本当によかったです」
ラグの緑の瞳には涙が溢れていた。アンドロイドであったとしても自分を一人の友達として接してくれる。スターはあくまでも主従関係であり、スター道場のメンバーとはそこまで親しい仲ではなかったラグにとって彼女らの言葉は心の底から嬉しさを感じられるものだった。
「友情ごっこは終わりかね」
上から声が聞こえたかと思うと、白いマントを翻しシャドウが降りてきた。ふわりと華麗に着地したシャドウの背後には騒ぎを駆けつけ多数の兵士達が最高司令官の指示を待っていた。兵士達はそれぞれ槍や剣などを得物にしており、シャドウの合図があればすぐにでも飛び出し、三人を始末する気満々であった。しかしシャドウは右腕で兵士達を制止し、口を開く。
「お前達は邪魔をするな。こいつらは俺一人で片づける」
血沸き肉躍る戦いを何よりも好むシャドウは鞘から愛剣を引き抜くと、三人に告げる。
「一人が代表で闘うか、それとも三人が同時に俺に挑むのか、どちらか選ぶがいい」
「フッ……そう結論を急がせないでおくれ。折角の勝負を面白いものにしたいのならね」
「口だけは大したものだな小娘よ。よかろう、三人で話し合いじっくり決めるが良い。
俺はいつまでも待ってやる」
シャドウは剣を床に刺し、腕組をして三人の作戦会議を待つことにした。
三人は円陣を組むような体制で作戦会議を始める。
メープルは戦闘力が無いので辞退、三人のリーダー的存在である滝川には体力を温存してもらうということにして、今回はラグがシャドウと闘うことになった。ラグは一歩前に出て、シャドウと対峙する。
シャドウは床から剣を引き抜き、フェンシングの構えをとる。
「代表はお前になったか」
「この勝負、勝たせていただきます」
「残念だがお前は俺に決して勝つことはできない」
「やって見なければわかりません」
「いや。俺にはわかる」
丁々発止のやりとりを繰り広げていた二人だったが、どちらともなく間合いを一気に詰めて戦闘が開始された。サーベルで猛攻を加えるシャドウに対しラグは剣を紙一重で全て交わしていく。
シャドウの速度を計算し無駄のない動きで避けることができるのは、ロボットであるラグならではだ。
「ハッ!」
ラグの正拳突きがシャドウの顔面を捉え、彼に命中。
クリーンヒットを受けたシャドウは宙を舞うが、素早く身を翻して着地。
「フフフフフフ、中々やるではないかロボット執事君。
並みの人間であれば最初の一撃で心臓を貫かれ死んでいたところだ」
シャドウは賛辞を贈るがラグはそれを無視して両肩のハッチを開く。
そこから現れたのは小型ミサイルを搭載したミサイルポットだった。
「ヤバイ! 逃げろーッ!」
巻き添えを食らっては敵わないとシャドウの背後にいた行動隊長が指示を出し、皆を一斉にできる限り遠くへ避難させる。
「FIRE!」
小型ミサイルは軌道を変えることなく真っ直ぐシャドウへと向かってくる。だが彼は微動だにせず正面からラグのミサイルを受けるつもりだ。
十数発のミサイルの雨がシャドウに降り注ぎ、轟音と共に壁や柱を吹き飛ばしていく。発生した爆風と爆煙のせいで滝川達は目も開けていられない。
「やったか……!?」
もうもうとあがる白い煙の中、滝川は勝利を確信した。
だが煙が晴れるとそこには服にさえ一切のダメージを負っていないシャドウが仁王立ちしていた。
「馬鹿な! あれだけのミサイルを食らってどうして生きていられるんだ!!」
滝川の問いにシャドウが金色の目を鋭く光らせ、キューッと口元を上げ答えた。
「念のために言っておいてやろう。俺は不死身だ」
- Re: ナルシスト美少女の冒険記 ( No.35 )
- 日時: 2017/09/06 20:43
- 名前: モンブラン博士 (ID: or.3gtoN)
ラグは無傷で立っているシャドウを鋭く見て語る。
「この世に不死身の存在などいるはずがありません。
あなたが無傷なのは何かしらの力が働いているはずです。
違いますか」
「滝川なら騙せそうだと踏んだのだがお前はそうはいかないようだな」
滝川に目をやり口を開く彼に対し、彼女はむっとして。
「ボクなら騙されそうだとは失礼な言い方だな」
「はっきり言って俺からすればお前は相当な愚か者に見える」
「今の発言を撤回してもらえないかな」
「残念だが却下する」
彼はラグに視線を戻すと、自らの右腕を煙状に変化させた。
「俺は自らの身体を自由自在に煙に変えることができる。
したがっていかなる攻撃も通用しない」
「先ほどあなたが無傷でいられたのも、ミサイルが着弾する直前に煙になったからなのですね」
「察しがいいな。その通りだ」
「ですが一度はうまくいっても二度目はできるかどうか、あなたの力を試させていただきます」
「ほほう。俺を試すとは大きく出たな。だが、ミサイルはもう弾切れであろう。次は何で攻撃をするつもりかな?」
シャドウの言う通りラグの両肩のミサイルは弾切れを起こしていた。
しかしながら全身が武器と表現しても過言ではないラグにとっては大した問題ではない。次は両膝のハッチを開き、先ほどよりも大きいミサイルを放出する。
「芸のない奴だ。同じ技が俺に通用すると思うか?」
向かってくる四発のミサイルに突進していき、斬撃を浴びせて一発ずつ一刀両断にしていく。真っ二つに切り裂かれたミサイルはシャドウを掠めて彼の背後にある階段に当たり爆発した。
「このような技など、能力を使うまでもない」
鼻で笑う彼にラグは両目を光らせ、赤い破壊光線を見舞った。ミサイルよりも遥かに速いスピードで放たれたビームをまともに食らったシャドウの腹には大穴が空いている。
ラグは彼の穴を凝視し笑顔を見せた。
「いつまで演技を続けているつもりですか」
「演技!?」
彼の発言に驚いた滝川が訊ねると、ラグは首を縦に振った。
見るとシャドウの腹に空いた大穴が塞がっていく。
「能力を使いましたね」
「ご名答。この能力がある限り、俺は無敵だ」
「ではその無敵の力を破ってご覧にいれましょう」
「できるものならやってみろ」
「行きます!」
両目を光らせたまま右腕を機関銃に変換し、レーザービームと機関銃の二段構えでシャドウに猛攻を加えていく。
身体に無数の穴が開き蜂の巣状態となるシャドウだが、その穴は瞬時に閉じられていく。全身を煙に変化してすぐに実体に戻ることを繰り返しているシャドウにラグの攻撃は全く通用していない。
そのうちビームに使うエネルギーも機関銃の弾の残量も尽きた。
「大層な口を利いておきながら、結局は無駄骨に終わってしまったようだな」
「いいえ。勝負はこれからですよ」
背中から翼を出して低空飛行し、シャドウにタックルを発動。
「策もなくただ突っ込んでくるとは愚かの極み。
お前はもう少し賢いと踏んでいたが、どうやら俺の見込み違いらしい」
「その言葉、花束をつけてお返しして差し上げますよ!」
魔王軍最高司令官は煙になりラグのタックルを無効化しようとかかる。
だが、身体が煙になることができない。
自らの身体に起きた異変に彼は目を大きく見開き慌てふためく。
「何故だ。なぜ煙になれぬ!?」
「僕はこれを待っていたのです!」
「貴様、謀ったな!」
ラグは敢えて何度もシャドウを攻撃することにより能力を乱用させ、体力切れを狙ったのだ。
能力を使用するというのは普通の攻撃よりも体力の消耗が激しい。
いかに魔王軍最高司令官であろうとも休みなしで連続して能力を繰り出すと、能力が使えなくなるのだ。
ラグのタックルからのエルボーの連続攻撃がヒットし、シャドウは壁に背中から激突。その威力で壁はひび割れてしまう。壁に追い詰めた敵を一気に畳みかけるのは闘いの定石である。
しかし彼はそうしようとはせずに後退し滝川の前まで来ると振り返って彼女にニコニコと笑顔で手を差し出した。それが意味するものは——
「滝川様、タッチですよ」
「ボクに花を持たせてくれるとはありがたいね」
「彼の能力は封じましたから、今なら滝川様でもいい勝負ができると思いますよ」
滝川はいつものように微笑し、ラグの手にタッチすると言葉を返した。
「それは違うよラグ君、ボクは彼に圧倒的な実力差で勝利する。
だってボクは天才だから」
シャドウは壁から抜け出すと金色の瞳を殺気立たせる。
「随分と舐められたものだな。
ならば俺もお前の自信を完膚なきまでにヘシ折る為に、恰好の舞台で闘わせてもらおう」
「ボクは君がどんな場所で闘おうとも必ず勝ってみせるよ」
「言ったな。では俺が勝ったらお前達を牢獄に入れる。
俺が敗北した場合は、この城の兵士の数、配置を全て教えた上で自由の身にしてやる。どうだ?」
「いいよ、この条件で乗るよ」
「決まったな。それでは付いてくるがいい」
マントを翻して歩みを進めるシャドウ。
その後を追う滝川達。
彼が行く先には何が待ち受けているのか、三人はまだそれを知らない。
- Re: ナルシスト美少女の冒険記 ( No.36 )
- 日時: 2017/09/06 21:31
- 名前: アンクルデス (ID: MSa8mdRp)
- 参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=615.jpg
お疲れ様です!1話から少しずつ読んでます!
異世界ファンタジーものいいですね!
主人公も強く、不動仁王に続き、相変わらずモンブラン博士さんの考えるキャラは本当に面白いです!
また来ますので、よろしくお願いします!
- Re: ナルシスト美少女の冒険記 ( No.37 )
- 日時: 2017/09/06 21:57
- 名前: モンブラン博士 (ID: or.3gtoN)
アンクルデスさんへ
ありがとうございます!
またリク依頼版にキャラ投稿しますね!