複雑・ファジー小説

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プリンセスは突然に
日時: 2017/10/14 00:45
名前: 梶原明生 (ID: SKF4GgT1)  

あらすじ

イギリスのケンブリッジ大学に通うジョージ。彼はテレビカメラの前で大変不思議な体験を語っていた。「私は凄く日本に興味がありまして、いえ大好きといっても過言ではありません。しかし私は貧乏学生で、とても日本には行けない有り様でした。しかし、ある人物が声をかけてきて、日本に行かないか。費用は全部こちらが出すからと言われました。すると私は何故かいきなり、憧れの日本に、いえ東京にいたんです。途方に暮れていた私を助けてくれたのが、知也と美子でした。しかし美子は何と、この国のプリンセスだったのです。正式には園部宮美子と言う名前で、天皇陛下の次男のお嬢さんになります。知也は全くの一般青年でした。これからお話しするのは、この二人の不思議な不思議な美しい叶わぬ恋の物語です。」旧知の親友を思い出すかのようにジョージは優しい目をしていた。果たして彼が体験した世界はパラレルワールドなのか現実なのか。憧れの美しき国「日本」のプリンセスを語った御伽噺は今始まる。

Re: プリンセスは突然に ( No.25 )
日時: 2018/05/11 05:29
名前: 梶原明生 (ID: 70vEHkeO)  

…一方美子様は、別れ惜しい「うまいもん亭」を離れ、一路京都へと向かった。帰省ラッシュは返って二人を目立たなくさせてくれた。「知也さん、ジーンズって意外と着やすいんですね。でもラフすぎて何だか落ちつかなくて。」「すみません。妹ので申し訳ないんですが、カモフラージュのためなんです。しばしご辛抱を。」「いえ、辛抱だなんて。ただあまり着たことがなくて、少しカルチャーショックを受けただけです。」席に座ることもままならず、知也は壁ドン状態で新幹線のエントランスに美子様と対面立ちしていた。10センチほどしか離れていない距離。互いの息づかいすらわかるこの境遇に、知也は動悸が止まらなかった。「いいカップル だね。素晴らしい ですよ。」傍らにいたジョージは腕組みして壁を背にして立ちながら二人を見ていた。「い、いや、そのたまたま…それにお守りしないと。」終始ニヤニヤするジョージ。「しかし 京都の お友達 本当 救い ありますか。」その言葉に美子様の表情が険しくなった。「はい。そのために家を抜け出したようなものですから。学習…中等科まで一緒だった千明ちゃんに会いたいんです。」そう言って固く唇を結ぶ美子様。森下千明。学習院中等科まで美子殿下の幼なじみにして親友の同級生だった。しかし、どういうわけか中等科卒業と共に両親と京都へ移り住んだ。そしてあろうことか、「皇室破壊同盟」なる組織に親子共々加盟し、今や両親が幹部にのし上がっていた。一時期洗脳にも似た同盟施設での教育に順応していたものの、やはり美子殿下との友情が忘れられず、友人を介して文通を続けていたのだ。それがパタリとなくなり、友人にすら会わない状態に。立場上、一国の殿下が公式に訪ねるわけにもいかず、真相を確かめに、お忍びで京都へ行く決心をしたわけだ。「例え考えが変わっていてもいい。せめて元気でいてくれてさえいれば。」切実な思いが美子様の口から漏れた。やがて新幹線は京都駅に着いた。おいでやすの看板がデカデカと掲げられている。三人が駅構内へ出た瞬間、知也のスマホが鳴りだした。「誰だろ。もしもし…」「よう、鎹君。9時の方向見な。」「え、時計を…」「じゃなくて左だよ左。」「あ、青木さん。いつの間に。」「おっと、確認したら見続けるな。これから俺達はつかず離れずで護衛する。いいな。」「は、はい。妹は、大丈夫ですか。」「心配いらない。無事送り届けたよ。内通者からバレたなんて報告はない。」…続く。

Re: プリンセスは突然に ( No.26 )
日時: 2018/05/14 17:07
名前: 梶原明生 (ID: q6woXfHh)  

…「良かった。」安堵した知也に美子様が願い出る。「電話貸してもらえますか。」「は、はい。いえ、拭いてから…どうぞ。」慌てて服で画面を拭く知也。「青木さん、ではご協力いただけますね。」「オフコース。武士に二言はありませんよ美子殿下。」「ありがとう御座います。では皇室破壊同盟施設に向かいます。」「仰せのままに。」決心した面もちでスマホを知也に返した。そんな時、東京駅に身長185センチはある長身のコート姿の男が降り立っていた。目は鋭く、近寄り難い風貌をなしている。キム ヨンジュン。朝鮮第8特殊軍団 諜報部の腕利きの工作員だ。「待ってたぞヨン。」「我が同胞よ。俺が必ず美子を捕まえてみせる。」更に鋭い目つきで、不法入国した日本の地を踏んでいた。その頃、美子様は先ほどの施設の正門前に知也、ジョージ、青木と立ち尽くしていた。福岡が戻ってくる。「青木一尉、調べたところ、森下千明は施設内部で監禁されてますね。ドローンカメラや内通者からの情報だと、可哀想に、かなり拷問を受けてます。森下夫妻公認での拷問なんですから呆れますね。自分の娘を何だと思ってんだか。」「なら行かなければ。」美子様は率先して前へ出ようとしたものの、青木一尉は肩を掴んだ。「待って下さい美子様。あなたが行けばあいつらの思う壺。助けだせませんよ。」「でも、千明ちゃんが…」「我々を信じて下さい。…とは言え、我々が踏み込んだら越権行為と見なされ、後で官公庁やマスコミ対応やらで厄介なことに。」知也は叫んだ。「君の出る幕はないとか偉そうなこと言って、か弱き美子様が前へ出ようとしてるんですよ。それでもあなた軍人ですか。たった一人の女の子も救えないなんて。」「やれやれ、特殊作戦群も形無しだな。福岡、やれ。」「了解。」言われた彼は、徐にポケットからリモコンを取り出した。「ドカーンッ」といきなり施設の分電盤が爆発した。「まさか、はじめから青木さん」「いや、知也君、君のお手柄だ。じゃ、美子様。水戸黄門20:45のお時間ですよ。」「水戸…8時…」首を傾げる美子様達。青木一尉達はタクティカルグローブをはめながら走った。「何だテメーら。」施設から出てきた男達は青木、福岡に罵声浴びせたものの、一瞬で叩き伏せられた。「イッツ・ア・ストロングッ」驚愕するジョージに知也は口をすぼめてどや顔になる。…続く。

Re: プリンセスは突然に ( No.27 )
日時: 2018/05/18 21:08
名前: 梶原明生 (ID: NOqVHr1C)

…「さて、美子殿下。青木一尉達が一階を地均ししてくれたみたいですよ。行きましょう、私達が護衛します。」端正な顔付きの女性隊員が美子様に耳打ちする。「千明さんは三階奥の開かずの部屋です。」「わかりました。」美子様と知也、ジョージと青木一尉のチーム数名は、皇室破壊同盟施設一階へと足を進めた。一方青木一尉等は二階階段で数名と戦っていた。相手の前蹴りを掴んで引き込み、階段下へ転がす。もう一人はトンカチで殴りかかるものの、福岡はかわし、足刀蹴り。手摺に手を叩きつけてトンカチを落とし、パンチをお見舞いして転げ落ちさせていった。「頑丈なステンレスドアか。気合い入ってんな。」「青木一尉、こちらもぬかりありません。」徐にポケットからセムテックスの爆薬を取り出してドアに貼り付けた。リード線を持ち、階段下の物陰に隠れる二人。 「ドカーン」と爆破され、ステンレスドアが開いた。「お見事。」二人は早速二階に入る。「おっと、武器を持ってのお出迎えとはなかなか礼儀正しいじゃねーか。」待ち構えていたのは数十人に及ぶ構成員達。「ならこちらも礼儀正しくしなきゃな。」二人はベルト脇にあったホルスターから特殊警棒を抜き取り、シャキンといい音を立てながら振って伸ばした。「ウァーッ。」叫び声を上げて突進してくる構成員達。警棒に足蹴りパンチと技を繰り出し、次々撃退して言った。「第二段階クリアってところですかね青木一尉。」「馬鹿、ゲームじゃねーんだぞ。」「はいはい。」残るは三階。二人は一気に階段を駆け上がった。しかし、そこにはプロレスラーと見紛うほどの男が二人待ち構えていた。「ラスボスってとこか。」「さっきゲームじゃねーってあんだけ…」福岡が言いかけるや否や走り出した青木。そのラスボスらしき男達に立ち向かった。しかし、頭突きを食らい、朦朧としつつも投げ飛ばされる前にラスボスの頭を両脚で挟み込み、体重をかけて倒すと顔面に踵蹴りを放った。落とした警棒を拾うと投げつけて隙を作り、渾身の落とし突きを叩きつけた。福岡は何とか回し蹴りでもう一人を倒す。「ハァ、ハァ、疲れるなこりゃ。」青木一尉が壁を背にして息を整えていると、護衛付きの美子様が上がってきた。「福岡、あの部屋だ。ピッキング頼む。」「ハァ、ハァ、り、了解。」彼はポケットから細長い道具を出して、奥の部屋のドアにこじ入れて開けた。「クリア。どうぞ美子様。」部屋の確認と千明の拘束具を外しながら叫んだ。…続く。

Re: プリンセスは突然に ( No.28 )
日時: 2018/05/25 06:31
名前: 梶原明生 (ID: Xc48IOdp)

…走るように部屋に入る美子様。かつての親友を抱き上げながら話しかけた。「千明ちゃん。助けに来ましたよ。」「美っちゃん。…来てくれたんだ。…嬉しい。」変わり果てた姿の親友を分け隔てなく接する美子様。福岡が肩を貸して部屋を出た。階段を下りると、一階には警察官の人集りが。「宗方一佐。…」「やぁ青木。京都県警には知り合いがいてね。お前達はいなかったことにするよ。代わりに今度こそ美子殿下を送り届けろ。」「まさか、最初からご存知で…」「まぁな。さぁ早く、その子を病院へ。」「了解。」満面の笑みを浮かべて施設を後にした。名残惜しい別れを告げて美子様は今度こそ皇居を目指した。日産Xトレイルに分乗して青木班のメンバーは帰省ラッシュを避けて、東京に向かった。しかしそれが返って仇となる。「福岡、気づいたか。」「ええ。後ろからSUV二台、車線追い越してこっちに近づいてますよ。」「厄介だな。多分ありゃ北の御一行さまだ。…美子様、多少荒っぽい運転になりますが、しっかり掴まっててくださいよ。」「わかりました。」美子様は知也の手を自然と握っていた。「香椎、お客さんだ、食い止めろ。」「了解。」先ほどの青木班の女性隊員が無線に答える。香椎達の車が追い越させないよう妨害するのだが…「青木隊長、一台抜かれました。申し訳ありません。 」「何だとっ…」無線越しに言葉を失う青木一尉。「キム ヨンジュンだな。香椎が抜かれるわけだ。」彼はボヤキながらダッシュボードの隠しスイッチを押してP8拳銃を自動引き出しから取り出してスライドを引いた。「福岡、左に寄せろ。…」「了解」…続く。

Re: プリンセスは突然に ( No.29 )
日時: 2018/06/11 18:30
名前: 梶原明生 (ID: SKF4GgT1)  

…青木の読み通り、右に出ようとするキム。「今だっ、右に切れっ。」福岡は一気にハンドルを回す。ぶつかる寸前急ブレーキをかけて退く。窓を開けた青木がP8拳銃を後ろに向けて発砲。「くそ、やっぱ防弾か。なら…」空弾倉を取り出し、他の弾倉と交換して握把から差し込んでスライドを引いた。再びキムのフロントガラスに向けて発砲。しかし今度は正確に一度撃った弾痕に15発全弾撃ち尽くす。「ちっ。」何と防弾ガラスを見事貫通した。間一髪でかわすキム。その後もカーチェイスを繰り返し、やむなく巻くために一旦青木達しか知らないセイフハウスに移動した。宗方一佐から怒号の電話がかかってきた。「どういうことだ青木。セイフハウスにって、一般参賀はどうするんだ。」「わかっています。プラン変更ですよ宗方一佐。キム ヨンジュン、ご存知ですね。」急に押し黙る宗方一佐。「 …や、奴が追跡したのか。」「はい。たまたま田舎道で車が少なかったからいいものの、巻けなかったら今頃大変でしたよ。一般参賀にも残念ながら彼女に代役を勤めてもらうしかありません。」「バカを言うな。よし、ヘリをむかわせよう。」「皇居まで飛ばすおつもりですか。 いけません、やつらも網をはってます。ヘリに対する作戦も練ってるはずです。ましてやキム ヨンジュンが相手なら尚更。大事を起こして美子殿下をテレビに晒し者にするかも知れませんし、最悪スティンガーでも使われたらひとたまりもありません。」「ではどうする。」「一般参賀後の1月5日に決行します。」「わかった。くれぐれも美子様を頼んだぞ。」「了解しました。」そのやり取りに違和感感じた知也が不思議そうに聞く。「あ、青木さん。1月4日のはずでは…」「 ん…ああそうだよ。敵を欺くには何とやらってね。さぁ、もう遅い。美子様、どうかごゆっくりお休みください。」「わかりました。ありがとうございます。」二階の部屋に移動する二人。こうして美子様、知也、 ジョージ、そして久美にとって、とんでもない年越しとなった。その頃、キム ヨンジュンはSUVのボンネットを叩いていた。「くそ、あんな護衛さえいなければ。」「どうするキム。このままでは…」「こうなったら探し出すか、都内に網を張り、事件を起こして晒し者にするしかあるまい。偽物の化けの皮を剥いでやる。」天空を睨むキムであった。…続く。





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