複雑・ファジー小説

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

プリンセスは突然に
日時: 2017/10/14 00:45
名前: 梶原明生 (ID: SKF4GgT1)  

あらすじ

イギリスのケンブリッジ大学に通うジョージ。彼はテレビカメラの前で大変不思議な体験を語っていた。「私は凄く日本に興味がありまして、いえ大好きといっても過言ではありません。しかし私は貧乏学生で、とても日本には行けない有り様でした。しかし、ある人物が声をかけてきて、日本に行かないか。費用は全部こちらが出すからと言われました。すると私は何故かいきなり、憧れの日本に、いえ東京にいたんです。途方に暮れていた私を助けてくれたのが、知也と美子でした。しかし美子は何と、この国のプリンセスだったのです。正式には園部宮美子と言う名前で、天皇陛下の次男のお嬢さんになります。知也は全くの一般青年でした。これからお話しするのは、この二人の不思議な不思議な美しい叶わぬ恋の物語です。」旧知の親友を思い出すかのようにジョージは優しい目をしていた。果たして彼が体験した世界はパラレルワールドなのか現実なのか。憧れの美しき国「日本」のプリンセスを語った御伽噺は今始まる。

Re: プリンセスは突然に ( No.10 )
日時: 2017/11/29 00:18
名前: 梶原明生 (ID: ztXTCvg/)  

…やがて二人は走りに走って路地を抜ける。しかしこれまた監視カメラのない行き詰まりに来てしまった。「ハァ、ハァ、いや、あなたお強いんですね。何かされてるんですか。」「いえ、とんでもない。ある方から少し護身術を習っただけです。男性相手に今度捕まったら二度は使えません。私もこんなことは生まれて初めてです。」「そうだったんですか。」息を切らしながら感心する知也。あまりそうもしてられないのに。「よぉお二人さん、残念。その二度と使えないお兄さん達が来てやったぜ。」「さっきは舐めた真似してくれたな。この落とし前どうつけるんだ。あ〜っ。」運悪く後ろは行き止まり。絶対絶命のピンチ。「あ、あ、あんたらにこの人は渡さない。」立ちはだかる知也に呆れ顔の二人。しかし…「お前ら落とし前どころか、不敬罪で死刑だぞ。」強盗犯の後ろから中背中肉だが、髪を短く刈り込んだ体格のいい男が声をかけた。「あ〜、何だテメーっ。婦警罪がどうしたって。」「だから諦めてとっとと消えろってことだ。」「うぜーっ。うぜーぜこいつやっちまうか。」「ああ。」男の襟を掴んで殴ろうとしたのだが、手刀で手首を極められたかと思ったら上段受けからの鉄槌が強盗犯の鎖骨に入る。「メリッ」とした音がした。もう一人に踵前蹴りで突進を防ぎ、振りかぶってくる拳をダッキングして左フックをお見舞いする。「まだやるか。」男は強盗犯に尋ねた。倒れて息を荒げる二人は首を横に振って苦しんだ。「よし、懸命な判断だ。あ、治療費は払わないよ。」今度は美子様に振り返った。二人を安全な場所へお連れし、歩きながら話した。「美子殿下…いえ、ここでは一般世界なので仕方ありません、美子様とお呼びします。私は陸上自衛隊特殊作戦群所属の青木一等陸尉です。どうか、皇室にお戻りください。園部宮家の方々が心配でおいでです。もう充分でしょう。」その話に知也は驚愕する。「み、み、美子様ーっ。」「ごめんなさい。騙すつもりはなかったんです。」「い、いや、そんな…でも、どうしてお忍びで。」「私は後ひと月でイギリス留学しなければいけないのです。その前にせめて外の世界に出てみたくなりました。もっともっと見てみたい。皇室の人間としてでなく、一人の女性として。」青木一尉が遮る。「ダメです美子様。この辺ならリーベホテルがいいでしょう。まさかやつらも安宿に泊まるとは思ってないでしょうし、そこで今日は一晩泊まってもらいます。」…続く。

Re: プリンセスは突然に ( No.11 )
日時: 2017/12/05 16:54
名前: 梶原明生 (ID: sdLb5.Z4)  

…「わかりました。」やけに素直になる美子様。やがてリーベホテルフロントに入る3人。「ここは僕にお任せください。」率先して前に出る知也。「宮本、久しぶり。」「おう、何だ鎹じゃないか。」「実は、知り合いを泊めたいんだが、いい部屋開いてるか。」「知り合いって…何だ、カップルか。それにしても不釣り合いだが。」「馬鹿、恐れ多いこと言うな。」「恐れ多いって何だよ。そりゃお客様は神様だけどよ。それぐらいの詮索お前相手ならいいだろ。」「とにかく、二部屋だ。」「はいはい毎度あり。」旧友の宮本は早速開いている部屋を用意した。青木が彼に立ちはだかる。「君はもういい、帰りたまえ。あ、このことは他言するなよ。もししたら刑務所行きだからな。里浦大学三回生の鎹知也君。」「どうしてそれを…」「ん、特戦群のオペレーターが教えてくれたのさ。」彼は耳を指差した。「さぁ、夢の御伽噺はここまでだ。帰ってバイトでもしな。ありがとよ青年。」知也の背中を押しながらホテルの外に出した。「ちょ、ちょっと…」彼はやむなく寒い夕方の中、トボトボと学生寮に帰った。青木一尉はホテルの見取り図を拝借すると通路、部屋、非常階段からトイレの貯水タンクまで調べ上げた。「クリア。美子殿下、お入りください。」「はい。」「私は隣にいます。くれぐれも明日までここでお過ごしください。私は朝までに私のチームでどう皇居までお連れするか検討しなければなりません。何かありましたらこの発信機で知らせてください。」彼はそう言って小型発信機を手渡した。「はい。でも様付けではありませんでしたか。」「ああ、すみません。ついそうお呼びするのがクセでして。…とにかくお願いしますよ。」「わかりました。ご苦労様です。」ドアを閉めたところから美子様のプライベート空間が始まる。スマホを取り出し、誰かに電話し始めた。一方とある居酒屋では…「バカやろうっ今何時だと思ってんだ知也。」「は、はい。すみません店長。色々事情がありまして…」「事情だぁーっ、オメー俺が元族にいた中卒だからってなめてんのか。このチェーン店任されるようになるまで俺がどれだけ苦労したと思ってんだ。」またもや元暴走族成り上がり組のお説教が始まった。運悪くスマホが鳴りだす。「テメー、スマホ切りやがれボケっ。俺に相撲取りみたいな暴行させる気かっ。」「すみませんっ」逃げるように出る知也。「バカやろうっ首だ首っ」声が遠退く時に電話に出た。「知也さん。」…続く。

Re: プリンセスは突然に ( No.12 )
日時: 2017/12/08 18:20
名前: 梶原明生 (ID: .2ijTo35)  

…「美、美、美子様。どうしてこの番号を…」「赤坂サカスで教えていただいたはずですが。」「あ、あ、そうでしたね。はは、忘れてました。…でも何故。あのゴツい怖そうな軍人さんは。」「大丈夫です。今はいません。それよりも知也さんに是非お願いがあります。」「は、はい。何なりと。」「フロントのお友達の方に…」美子様は何やら小声になって頼み込んでいる様子。それから数十分後。スマホで仲間に連絡中の青木一尉の部屋にフロントから電話が鳴る。「…だからな、頼んだぞ明日早朝に。うん。すまんがフロントがうるさいんで切るぞ。」仕方なく中断して受話器を取る。「あ、フロントで御座いますお休みのところ申し訳御座いせん。あの青木様に警察の方がお話があるそうなので…」それで連想したのがあの強盗犯。たれ込みはないと思ったが、やはりと思い、トラブル防止の為にも示談にしようと考えながらフロントに出向いた。「今だ鎹。」小声でスマホに呼びかけるフロント係。非常階段で待機していた知也がドアを開けて走り出した。「508号室…あった。」早速ノックする。「来て下さったんですね。」「はい。さ、戻ってこない間に。」知也は思わず美子様の手を握って走り出す。「す、すみませんつい。」「いいんです。先導お願いします。」「は、はい。」二人はすぐに非常階段を降りて行った。一方エレベーターで降りた青木一尉は冷や汗満載のフロント係を見て違和感を感じた。「おい、警察官は…しまった。」気付いた彼は構わず階段を駆け上がるものの、508号室は蛻の殻だった。「クソっ、お姫様にしてやられたぜ。まるで振り回される下級侍だなこりゃ。」苦笑混じりに独り言をボヤく青木一尉。その頃、知也と美子様は息を荒げながら歩道に佇んだ。「ここまで来れば、ハァハァ大丈夫でしょ。」「こんなドキドキ初めてです。ハァハァ、皇居や学習院では大冒険なんてありませんから。」「そうですか。ぼ、僕はもうこんな危ない橋は懲り懲りですよ。」一段落ついて偶然にも二人は目が合った。思えば今、美子様がここにいる。一生憧れても近づくことさえできない麗しき方。それ以上に今目の前にいる美子様は吸い込まれそうな美しさに溢れている。後1センチで唇が触れる所まできたのだが。「上司が怖くて飲めるかってんだっ。」酔っ払いのサラリーマンが二人を現実に引き戻す。「と、とにかく、僕の大学寮へ。」「はい。…」二人は再び歩き出した。…続く。

Re: プリンセスは突然に ( No.13 )
日時: 2017/12/16 20:14
名前: 梶原明生 (ID: doo.G8T9)  

…「あの、寮長さん。駐輪場に不審物があるみたいですが…」知也は寮長室から寮長を呼び出した。「何、鎹君本当かね。」「はい。」「わかった、いますぐ行こう。」寮長が外に出たタイミングを見計らって物陰に隠れてた美子様に合図する知也。閉まるその瞬間に寮の玄関に入る。「これがかい。ただのゴミじゃないか。」「あれーっ。不審物じゃなかったのか。やだな人騒がせな。ハハハ。」苦笑いの知也。「まぁでもゴミはよくないね。わかったありがとう鎹君。」「いえいえとんでもない。じゃあ寮に戻ります。」彼はそそくさと戻る。「美子様。もういいですよ。」エレベーター付近に隠れていた美子様に小声で呼ぶ。「お邪魔して大丈夫ですか。」「構いませんよ。皇居に比べたら心苦しい狭苦しい所ですが、宜しければ使っちゃって構いませんよ。ささっ、中へ。」「はい。」二人はエレベーターで部屋に向かった。「はいはい、どうぞどうぞ。あの、大したことないですが。」「いえ、とんでもない。お邪魔する身ですから。…それからその美子様もやめませんか。美子で構いません。」「そ、そ、そ、そんな無礼千万な真似できませんよ。美、美子様は美子様です。さ、こちらへ。このクッション未使用品なので座ってください。」慌てて奥の部屋を片付け始める知也。「これは何ですの。」「あーっこれはダメです。」ベッドの下から冊子のようなものを出したので、それを慌てて直す。お決まりのプライバシーだ。「すみません。殿方の秘密に触れるつもりでは。」顔を真っ赤にする二人。「あ、こ、こ、紅茶入れますね。アハハハ。」頭をかきながら台所に逃げる知也。美子様はふと机に目をやる。寂しい小さなクリスマスツリーの置物以外は建築物に関する書籍や図面などが溢れている。紅茶を持ってくる知也。「あ、それは…」「知也さんは建築家を目指されているんですか。」「いや、そんな大層なもんじゃ…でも、夢なんです。小さい頃から聳え立つ建物を見て、いつか自分のデザインしたデッカい建物を建ててやるんだって夢見て憧れてたんです。でも現実は厳しくて…建設会社にも就職できるか危ないご時世ですからね。建築家なんて夢の夢。」「そんなことないです。こんな立派なデザインを設計できる知也さんですもの。必ず建築家になれるに違いありません。夢を諦めないで…」「美、美子様。」手を取る美子様にしばし感動する知也だった。「たく、あの青年。隅に置けないな。」青木一尉は寮の外で呟いた。…続く。

Re: プリンセスは突然に ( No.14 )
日時: 2017/12/26 00:31
名前: 梶原明生 (ID: MqiTTCa3)  

…「いいんですか。美子様を一介の大学生ごとき輩の寮に。」日産Xトレイルの運転席で助手席の青木一尉に尋ねる福岡一曹。まだ25歳の細身の隊員で身長は182はある。双眼鏡を覗きながら答える。「なーに。ホテルよりはここのほうが工作員に見つかりにくい。それにあの青年。なにもできやしないしな。」「どうしてわかるんです。」「長年の勘てやつかな。それにいざとなれば盗聴器があるし。」「でも、発信機はホテルに置きっぱなしじゃ…」「ん、あれか。ありゃダミーだよ。本物は美子殿下の衣服にさりげなく付けといた。」「さすがは青木一尉。」言われた青木一尉は再び双眼鏡に目を移した。その頃、知也は美子様にケーキを差し出していた。「すみません。居酒屋の余り物もらったもんで。」「いえ、美味しそうですね。メリークリスマス。」「め、メリークリスマス。あ、美子様からそんなお言葉もらうなんてびっくりだな。」「いえ。キリスト大学に進学しますから。今日はイブですしね。」「そ、そうですよね。まさか美子様とクリスマス一緒に過ごせるなんて。僕は日本一の幸せ者です。アレ、何言ってんだろ。その…」「大丈夫です。わかってます。…あ、それはそうとバイトされてたんですよね。うっかりしてました。良かったんですかこんな…」「いえいえ。気になさらないでください。」笑ってごまかす知也。しばし二人は眠りにつくまで互いの話に夢中になり、まるで何年も前から知り合っていたかのような間柄になっていった。「美子様、いいですよ。シーツ新しいの二枚重ねにして、掛け布団もたまたま新しいのありましたから、ベッドで横になってください。僕はキッチンで寝ますから。」「そんな、悪いですわ。同じ部屋で休まれてはいかがです。」「そんな滅相もない。」「構いません。」渋々従う知也。「おやすみなさい。」「お、お、おやすみなさい。」美子様のお言葉に緊張解けない知也はベッドのすぐ下で横たわりながら今日一日の奇跡の余韻に浸っていた。静かに聖夜の静寂は辺りを包み込む。だが、翌日は静寂とは言い切れない出来事が待っていた。 …次回「予期せぬ追跡者」に続く。


Page:1 2 3 4 5 6 7



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。