複雑・ファジー小説

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プリンセスは突然に
日時: 2017/10/14 00:45
名前: 梶原明生 (ID: SKF4GgT1)  

あらすじ

イギリスのケンブリッジ大学に通うジョージ。彼はテレビカメラの前で大変不思議な体験を語っていた。「私は凄く日本に興味がありまして、いえ大好きといっても過言ではありません。しかし私は貧乏学生で、とても日本には行けない有り様でした。しかし、ある人物が声をかけてきて、日本に行かないか。費用は全部こちらが出すからと言われました。すると私は何故かいきなり、憧れの日本に、いえ東京にいたんです。途方に暮れていた私を助けてくれたのが、知也と美子でした。しかし美子は何と、この国のプリンセスだったのです。正式には園部宮美子と言う名前で、天皇陛下の次男のお嬢さんになります。知也は全くの一般青年でした。これからお話しするのは、この二人の不思議な不思議な美しい叶わぬ恋の物語です。」旧知の親友を思い出すかのようにジョージは優しい目をしていた。果たして彼が体験した世界はパラレルワールドなのか現実なのか。憧れの美しき国「日本」のプリンセスを語った御伽噺は今始まる。

Re: プリンセスは突然に ( No.1 )
日時: 2017/10/20 17:28
名前: 梶原明生 (ID: UvBorD81)  

登場人物紹介

園部宮美子内親王…天皇陛下のお孫さんに値するプリンセス。お忍びで園部宮家を出てしまう。
鎹知也…都内の二流大学に通う大学三回生。美子様と出会い、恋に落ちる青年。

ジョージ バレット…英国ケンブリッジ大学に通う貧乏大学生。日本が好きで、ある奇跡から東京に来てしまい、美子様達と出会う。日本語少しできますが口癖。

鎹久美…知也の妹で地元の高校生。

鎹雅也、美佐恵…知也、久美の両親。食堂経営している。

青木猛…陸上自衛隊特殊作戦群 第三小隊隊長。階級は一等陸尉、33歳。宮内庁皇宮護衛課から依頼され、失踪した美子様を少ない手掛かりから秘密裏に探し出して連れ戻す任務を請け負う。しかし美子様の人柄や回りの人々に絆されるうちに、期限付きで味方となる。

続く。

Re: プリンセスは突然に ( No.2 )
日時: 2017/10/25 17:32
名前: 梶原明生 (ID: JnkKI7QF)  

序章「美子内親王殿下」

…日の丸は今日も上がる。朝早い皇居赤坂御用地において、天皇陛下に今日一日の御日程が侍従長、河原正成氏から報告される。「陛下、今日の御予定で御座います。先ず執務室におきまして各書類への捺印。その後、神宮大官司御所にて拝啓。そして英国来賓との御歓談となっており、それに合わせまして御食事の方もハムエッグにオートミール。オニオンソテーにサラダとなっております。」モーニングを着こなした気品高い読み上げには、一つの美術を見せられているような光景だ。しかし。「わかりました。でも…それはそうと美子の件。少々気になるのですが。」「美子殿下のことでございますか。実は私も憂慮しておりました。園部宮家においても一番お気が強い殿下でありますから、あのような事を申されたのでありましょう。しかし私は、伝統ある由緒正しき学習院大学を卒業されるのが美子殿下にとって良いことかと。」陛下は聞きつつもお優しい目でお庭に目をやられていた。その頃、その渦中の美子殿下も起床されて女官に支度を手伝われていた。「由美さん。髪はもう私が整えますから。」「いいえ殿下、何をおっしゃいます。お小さい頃から私は殿下のお側で規子様と共にお世話をしてきたのでございます。これくらいはやらせてください。」「わかりました。」女官は愛おしむように髪を整えていた。「学習院をお辞めになっても殿下は殿下です。私はどこまでもついてゆくつもりですよ。」そう言った後に母である規子妃殿下が声をかける。「美子、御食事の時間よ。すぐに降りてきなさい。」「はい。」何かを決意したかのような返事をする美子殿下であった。「こちら狙撃班。定刻通りの業者トラック異常なし。付近も異常なし。」「警衛門皇宮護衛所壱、了解。」赤坂御用地近くを走るランナーですら彼等の存在には気づかないだろう。全身黒ずくめのスワットのような隊員は知る人ぞ知る、特殊皇宮護衛官なのだから。日々反体制勢力やテロリスト等から皇室を御守りしている精鋭中の精鋭だ。また、皇室の方々が外出する時も私服の特殊護衛官が就いてまわり、命懸けで御守りする仕事も担っている。ただ…この日だけは彼等も大失態をしてしまうのだ。…続く。

Re: プリンセスは突然に ( No.3 )
日時: 2017/11/01 15:49
名前: 梶原明生 (ID: 0zy7n/lp)  

…そうとは知らず、皇居衛門から1キロ圏内のビル屋上から監視している狙撃班も、撃つことのないPSG−1狙撃銃を構えて、スコープから平和な日常を見ていた。スポッター(観測手)が声をかける。「気を抜くな。平和で長閑な光景の中に敵は潜んでいるやも知れん。油断したら最後だ。」「了解、隊長殿。」握把を握り返して人差し指を引き金上に伸ばす狙撃手。その頃は美子殿下も食事を終わろうとしていた。父である園部宮仁豪親王殿下、母である規子妃殿下、そして弟の道人殿下が一つの大きなテーブルを囲むように座っていた。仁豪親王殿下が口火を切る。「美子。学習院を辞めて英国留学の後、キリスト大学へ行くと言うのは本当かね。何故学習院ではいけないのかね。」やさしく問いかけたつもりであったが、ナイフフォークを縦に置き、音を立てる美子殿下。「お父様。もう決意したことです。学習院大学の一部に不穏な勢力が幅を利かせはじめたことは既に承知しております。もはや学習院が学習院たる姿をなくそうとしているこの今。私はキリスト大学に未来を託したいと思った次第です。何を言われましても決意は変わりません。」「美子。…わかった。では思う存分学んできなさい。」この会話に納得いかない規子妃殿下。「待ってください。…美子。そうは言っても学習院大学よ。卒業してからでも遅くないと思うわ。」立ち上がって美子殿下は言い切った。「お母様。それでも美子の気持ちは変わりません。」「美子…」立ち去る美子殿下にそれ以上は声をかけることはできなかった。その頃、赤坂から遠くない都内の里浦大学学生寮では、目覚まし時計と格闘する一人の青年がいた。今年三回生となる鎹知也22歳。千葉県の食堂「うまいもん亭」の一人息子。妹は…スポーツ系女子高生の久美。たまに「美子様に似てるね。」とクラスメートから言われるらしい。兄の知也からしたら似ても似つかないただの妹だ。そんな彼は、一年予備校通いして親に拝み倒し、ようやく里浦大学建築デザイン科に入学して早三年。建築家になる夢よりバイトに追われる日々を送っていた。学びに来たのかバイトしに来たのかわからない毎日を送っている。大学、バイト、そして寮。楽しみは唯一睡眠だけ。しかも就活もままならないとあってはお先真っ暗。そんな彼にとって、何でもない日常が始まるはずだった。そう、あの時までは。…「イッケネーっもうこんな時間かっ、講義に遅れるよ。」想像通りの遅刻寸前独身男の慌てっぷり。…続く。

Re: プリンセスは突然に ( No.4 )
日時: 2017/11/06 19:10
名前: 梶原明生 (ID: 97SCsTUE)  

…「さすがにパンは加えないけどね。…言ってる場合じゃない。」自分でも下らない独り言とはわかっていたが、昨日の食パンの残りを食べながら服を着て急いだ。すると寮長さんからインターホンの電話。「鎹君かね。パソコン見たら外出になってないんで電話したんだ。」「ああ、すみません。ただの寝坊です。今すぐ出ます。」「いや、無事ならいいんだ。じゃあ行ってらっしゃい。」「あ、ありがとうございます。」受話器を急いでかけて玄関にMSバッグを肩掛けして靴を履いた。ここの大学寮は管理人室でパソコンを通じて出寮、居寮が各部屋ごと色分けでわかるシステムになっている。その上オートロックだから親御さんも安心して大学寮に行かせることができるわけだ。慌てて寮を出た知也は一路、里浦大学のキャンバスに向かった。「今日講義はここまで。半分は予定を変更して昨日来日したイギリス現代建築の第一人者とも言えるアッカーマンフォスターについて話したい。彼は今日、イギリス外務省トップと共に皇居にて陛下に謁見される予定らしい。…彼なら講義の途中から寝坊でコソコソ入り込んだりしないがね、鎹君。」ヤバいと感じて肩をすくめながら端の席に座る。「は、はい…」「君はこれで何度目かね。居酒屋のバイトで夜遅いのは君だけかね。その手の言い訳なら聞き飽きたよ。それとも美子様見たさに皇居付近に行ってたのかね。」女子大生達を中心にどよめきの笑いが起こる。「い、いえ…何も笑わなくても。」Twitterで美子様好きを公言したのが災いした。「ま、もっとも。美子様は君なんか見向きもしないがね。」またもやどよめきがが起こる。「そ、それは…」いきなり立ち上がって大声をあげた知也に、静まり返った講義室内。「い、言い過ぎじゃないでしょうか。失礼します。」精一杯反論した彼は淡々と室内から出ていった。「講義ボイコットかねっ。」教授の声はもはや遠吠えにしかきこえない。彼にとって初めての大学逃避行だった。しかしこれが後に彼の運命を大きく変えることになろうとは、まだ知るよしもないことだった。「何、今何と言ったっ。」皇宮護衛署署長があまりにも有り得ない出来事に、我が耳を疑った。それは一本の電話から始まったのだ。「申し訳ありません。大学まではご同行したのですが、途中トイレに行きたいと申されまして、それが…」「見失ったのか。」「は、はぁ。お手紙を残されて…」「馬鹿者、お前達ほどの者がついていながら何という失態っ。」…続く。


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