複雑・ファジー小説

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プリンセスは突然に
日時: 2017/10/14 00:45
名前: 梶原明生 (ID: SKF4GgT1)  

あらすじ

イギリスのケンブリッジ大学に通うジョージ。彼はテレビカメラの前で大変不思議な体験を語っていた。「私は凄く日本に興味がありまして、いえ大好きといっても過言ではありません。しかし私は貧乏学生で、とても日本には行けない有り様でした。しかし、ある人物が声をかけてきて、日本に行かないか。費用は全部こちらが出すからと言われました。すると私は何故かいきなり、憧れの日本に、いえ東京にいたんです。途方に暮れていた私を助けてくれたのが、知也と美子でした。しかし美子は何と、この国のプリンセスだったのです。正式には園部宮美子と言う名前で、天皇陛下の次男のお嬢さんになります。知也は全くの一般青年でした。これからお話しするのは、この二人の不思議な不思議な美しい叶わぬ恋の物語です。」旧知の親友を思い出すかのようにジョージは優しい目をしていた。果たして彼が体験した世界はパラレルワールドなのか現実なのか。憧れの美しき国「日本」のプリンセスを語った御伽噺は今始まる。

Re: プリンセスは突然に ( No.5 )
日時: 2017/11/08 22:46
名前: 梶原明生 (ID: 97SCsTUE)  

…「本当に、申し訳ありません。すぐに全護衛官に通達し、全力でお探しいたします。」「待て。…」署長は一瞬躊躇した。「先ずはお前達だけで内密に捜索しろ。今は英国顧問団との大事な時期だ。下手に動いてはまずい。追って指示するまで待て。」「はっ、畏まりました。」折り返し宮内庁トップに連絡する署長。「こ、これは一大事。然りとて、マスコミや各国に知れれば美子殿下の御身に関わる。」宮内庁トップが窮していたところを署長が具申する。「実はこんな時のためにと、外部組織に依頼できるホットラインを用意しておりました。その担当に連絡させて美子殿下を必ず…」「わかりました。頼みましたよ。」こうして署長はある男に白羽の矢を向けた。所変わって千葉県内の某施設。二人の自衛官らしい男が人型の的の前に立っている。そこから20メートルほど離れた所に身長175センチの体格のいい自衛官が拳銃をローレディで構えていた。「よし、ドーシードーっ。」男が叫ぶと先ほどの二人が、的の前を互いに行ったり来たりして小走りになる。「フッフッ」男は集中して拳銃を構えた。「パンパンパンッ」銃弾が、二人すれすれの間を通って命中。「さすがだな青木一尉。レンジャーの教官なら度肝抜く射撃訓練だろ。」「宗方一佐。こんな所にどうして…」「実はな。お前に折り入って話がある。」「命令ですか。今度の任務は何です。」「この女性を探してほしい。」「は…ちょっと待ってください。ふざけてますか。」一枚の写真を渡されてから、さすがに青木一尉でも聞き返したくなった。「ふざけてなんかない。それが任務だ。今朝早くに美子殿下が失踪した。事が事なだけに隠密裏に捜索しろとのお達しだ。勿論、隠密裏に皇居へお返ししなければならない。お前が適任だと担当官直々の御依頼だ。」それを聞いて青木一尉には覚えがあった。「まさか…黒宮。」「そう。元黒宮曹長。今は皇宮特殊護衛隊隊長だがな。そう、お前の同期にして親友でもある。」「わかりました。何であれ上官命令である以上、遂行ありきです。」「頼んだぞ。」「了解しました。」青木一尉は敬礼で返し、一路東京に向かった。その頃、清楚な女子大生風の姿に変装して目深に帽子を被られた美子殿下は、東京の人混みに紛れ込んでいた。全てにおいて新鮮だった。街、人混み、建物、音、そして空気。今ここに存在する私は何者でもない、ただの女の子。それが心地良かった。…続く。

Re: プリンセスは突然に ( No.6 )
日時: 2017/11/14 16:35
名前: 梶原明生 (ID: JnkKI7QF)  

…やがて美子殿下は監視カメラを避けながら、うまくすり抜けていた。「可愛いね、君さモデルに興味ない。」ナンパしてくる男。変装したとはいえ、これほど気品高く美しい女性が街中を歩いていれば網に引っかからないはずはない。「いえ、結構です。」「そんなこと言わずにさ、…あ、あれ、君どっかで見た顔だな。はて…」男が考えてる隙に逃げ出す。「ま、待てよ…あれ、見失った。」いくら人ごみとはいえ、今日は平日。さほどでもないのに、ナンパ経験豊富な彼でも見失うほど尾行を巻くのは美子殿下にはたやすかった。監視カメラの死角、尾行の巻き方。何故彼女はこれらを知って巧みにこなせるのか、誰が教えたのか。まだ極一部の関係者しか知り得ないことだ。やがて赤坂アークヒルズに到着する。その頃、知也も何をするでもなくただ街をぶらぶらするだけに到着していた。ビル街の中の森。まさに異世界に迷い込んだかのような光景だった。パフォーマーが拍手喝采を受けている。「居酒屋のバイトまで長いな。どうしようかな。」ようやくベンチに腰を据えた知也は高いビルが立ち並ぶ青空を眺めた。ふと視線を人並みに移すと、清楚でキレイな女性を目にした。一度見れば忘れるはずのない気品溢れる姿は、一生目に焼き付くだろう。と、同時に傍観者でしかない自分との対比に厚い壁をを突きつけられる瞬間でもあった。しかしその厚い壁は、ある落とし物から取り払わられることになる。「あ、財布にハンカチっ」我が目を疑った。何の弾みでか、割とごっそり落としているのに気づかない。親子連れの子供が拾おうとする。「ダメーっ、これはあのお姉ちゃんが落としてったものだから、僕が届ける。」呆気に取られる子供を余所に、気品溢れる女性の背中に声をかけた。「あ、あ、あのう…」女性はまたナンパかキャッチかと思い、早歩きになる。「あの、怪しい者じゃありません。財布とハンカチ落としてましたよ。」立ち止まってゆっくり振り返る女性。まるでシネマのようにとはこの事だろうか。知也は暫く心を奪われた。「美、美子様…」「あ、ありがとうございます。」差し出された財布とハンカチを取ると、また歩き出そうとする女性。「待ってください。」本来なら美子様は先ほどと同じく巻かなくてはいけないのだが、何故か足が止まった。彼との別れを拒むかのように。何かが彼女を引き寄せていた。「何でしょうか。」「あ、いや、その…良かったら僕が街を案内しようかなと思って、ハハハ。…」…続く。

Re: プリンセスは突然に ( No.7 )
日時: 2017/11/17 14:21
名前: 梶原明生 (ID: UvBorD81)  

…「ウフフッ。」美子様は唇に手をあてがわれて笑いを抑えた。「あ、いや、怪しい者じゃないですよ。いや多少は怪しいかな…で、でも、別にそんな変な意味じゃなくて、その…」女の子にめったに話しかけたことのない知也にとって、やはりハードルが高すぎたか。「わかりました。」「えっ…」「でもよく私が、この辺を初めてだとわかりましたね。」「あーっそれは…あの、何となく…かな。ハハハッ」苦笑いに手を後ろ頭にやる仕草で誤魔化そうとする知也。「でも、当たってますよ。田舎から出てきたもので、こちらこそ街を案内していただけたら光栄です。」意外な言葉に彼はしばし安心する。「ですよね。そうですよね。美子様がこんなところにいるはずが…他人の空似か。」「何が空似なんですか。」「あ、いや、何でもないですよ、ただの独り言で…そうだ、赤坂サカス、行きませんか。」「え…」一瞬顔が曇る美子様。そこには事前に監視カメラが多いことを調べていたからだ。「いや、あの、すみません。別にデート気分で言ったんじゃ…誤解しないで下さい。」「違います、そうじゃなくて。赤坂サカスは一度行って見たかったんです。お願いします。」「そうですか、良かった。」冷や汗拭く知也。二人はアークヒルズを出て、バスを利用することにした。その頃青木一尉は入れ違いでアークヒルズに来ていた。さすがにわかっているようで、見た目はとても自衛官には見えない服装で街を歩いた。「昔の訓練思い出すな。街中で降ろされていきなり写真一枚で手掛かりを探せってな。俺は一番にその写真の男を捕まえたっけ。まさか美子殿下をお探しする事になろうとはな。んっ…」それ以上に気になる人物達を見かけた。「あれはもしかして、中国情報部の奴らじゃないか。しかも朝鮮の工作員までいる。何故奴らがこんな所に。まさか、美子殿下を狙って…」物陰から不穏な様子を目撃する青木一尉「不味い。真っ先に俺が探し出さないと大変なことになる。」彼は気づかれないよう、人混みに紛れて姿を消した。そんなことも知らずに知也と美子様は赤坂サカスに到着していた。「ここが、かの有名な赤坂サカスです。」すっかりガイド気分で美子様を案内する知也。「わーここが。あっちょっと。こちら側通りましょ。」知也の服の裾を可愛く引っ張る美子様。そんな姿に知也は恋心を一気に射抜かれた。「ああ、そうですね、そうしましょう。」しかし彼女の視線は上ばかりキョロキョロ見回す。彼もさすがに気づいた。…続く。

Re: プリンセスは突然に ( No.8 )
日時: 2017/11/19 19:35
名前: 梶原明生 (ID: 97SCsTUE)  

…「もしかしたら監視カメラ、気にしてる。ま、まさか犯罪者…いや、こんな清楚で可愛い女の子に限って…いや、ありうる。もしかして猟奇殺人鬼、いや、男を騙して練炭自殺に見せかけて…そ、そんな…」頭の中であらぬ妄想が映像化される。「どうしました。先ほどから独り言を言われてるようですが。」「あ、いや、 その、僕ほら、あの、見た目通りの貧乏学生で…お、お金なんて全然ないっすよ。もう、部屋代すらカツカツでね。ハハハッ」冷や汗混じりに弁解する知也。「お金ですか。なら心配いりませんよ。女官…いえ、お手伝いさんの由美さんからいくらか餞別をいただいたのでこんなに。」ハンドバッグから万札の束を見せられて慌てる知也。「ちょ、ちょ、ちょっとマズいですよ。しまってしまって。」キョトンとする美子様。「どうしてです。」「いや、確かに治安はいいですけど、万が一ってこともありますよ。そんなものはしまっておいた方がいい。」「そうですか。申し訳ありません。」「あ、いや、そんなに謝らなくても…」深々とお辞儀される美子様に、知也は驚いた。そんな二人の異様さに気付く万が一な強盗犯二人が、運悪く札束を目撃していた。「今日はついてるな。」「まぁ待て。赤坂サカスだぞ、今はマズい。つけ回して監視カメラと人気のない所で…」「なるほど。」二人はニヤつきながら美子様達を尾行した。その頃青木一尉は場違いな場所を探しながらスマホで電話していた。「黒宮、お前何か俺に隠してることあるだろ。」「何の話だ。」「惚けるな。美子殿下はいくら優秀な皇室の方とはいえ、まるでジェイソンボーン並みに監視カメラと尾行をすり抜けられるわけないだろ。誰かが教えない限りな。そんなレクチャーできる人間は皇居では限られてくる。」「つまり俺か。」「誰が教えるよ。美子殿下の対処の仕方はまさに俺達特殊作戦群のやり方だ。他のやつはごまかせても、俺の目はごまかせんぞ。」「ふふ、さすがは我が友。ばれないでいて欲しかったが…実はお前に頼みたいことがある。」「何だ。」しばし街中で青木は黒宮の願いに聞き入った。そうしてる間に、美子様と知也は赤坂サカスの複合型施設を堪能していた。「いっけねー。もうこんな時間。」「どうしたんですか。」「あ、いや、あのー、居酒屋のバイトの時間なんですよ。もう帰らないと、店長おっかない人だから…」「それは大変ですね。お住まいはどちらですの。」「え、あ、里浦大学の大学寮です。」…続く。

Re: プリンセスは突然に ( No.9 )
日時: 2017/11/22 15:59
名前: 梶原明生 (ID: YHJNwyuz)  

…「なら今すぐ向かわれた方がいいですね。」「は、はい。でも、あなたはどうされますか、この後。」「私は…」勿論行く宛まで考えてはいなかった。「どこかホテルを取ります。」「あ、なら僕の知り合いがフロント係りしてるリーベホテルがありますよ。何なら、案内します。大学寮のすぐ近くだし。」「でもバイトは…」「大丈夫ですよ。すぐに行けば間に合いますから。」美子様は知也についていくことにした。「リーベホテルね。」先ほどの強盗犯が運悪く聞いていた。美子様と知也ははタクシーを拾ってリーベホテルに向かう。その頃ようやく青木一尉は赤坂サカスに到着していた。宗方一佐からTELがかかる。「近況を聞きたい。で、どうなんだ。」「はい、複数の男がTwitterなどで美子殿下らしい女性をナンパしたとかいうつぶやきがありました。臭う話から辿るとどうやら赤坂サカスに誰か同伴で来ていた模様です。」 「同伴。学習院仲間か。」「まだわかりません。どうも一般人のような臭いがするんですよ。」「先ほどの報告にあった中国情報部の話。やはり応援を行かせるか。」「やめて下さい。大勢で美子殿下を追いかけるのは、マーチングバンドを組んで叫びながら探すようなもの。知らせるようなもんです。とにかく俺一人で任務遂行しますから配慮はしないでください。」「わかった。では引き続き探索してくれ。」「了解。」スマホを切ると彼もまたタクシーを拾う。その頃美子様はリーベホテルに到着していた。無論、監視カメラを避けた場所で停める。「あの、さっきから気になってたんですが。…もしかして監視カメラを避けてません。いえ、別にとやかく人のことを干渉するつもりはないんです。でも気になったものですから。」知也は思い切って聞いてみた。「そうですか。実は…。」監視カメラも人気も少ない場所で立ち話したのが悪かった。「飛んで火にいる…とはこれだな、カップルさんよ。」「お前古いな。てなわけでさ、俺達ムショから出たばかりで金欲しいんだよね。命は助けてやるからさ、ハンドバッグと財布、よこしな。」突然の強盗に戸惑う知也。「あ、あなた達。な、何ですかいきなり。」「ごちゃごちゃ抜かすなヘタレがっ。」美子様を守ろうとした知也はいきなり殴られる。「結構可愛いじゃねぇか。俺達と連まねーか。」強盗犯が手を出した時。親指をひねられ、金的に蹴りが飛んだ。そしてハンドバッグでもう一人を殴りつける。「行きましょう。」知也は驚いた。…続く。


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