複雑・ファジー小説
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- 最強魔導師は商人をしている
- 日時: 2020/03/27 20:37
- 名前: マッシュりゅーむ (ID: .pwG6i3H)
『セイカゲ』で知ってくれた人はこんにちは。はじめましての方は初めまして。マッシュりゅーむです。
今作品は、僕が仲間と書いている『セイテンノカゲボウシ』、閲覧数4,000回を記念——ということを名目上に、僕が前からやってみたかった、僕個人の小説となっております。
〜文章での注意事項〜
ゴリゴリのファンタジーにしたいと思います。読みやすく、面白い小説になるように頑張りますので、よろしくお願いします。
題名で分かる通り、主人公は無自覚最強——最強まではいかずとも、そんな感じです。
こういった設定が嫌いな方もおられると思いますが、ご了承ください。
物語の世界は、この世界と違いますが、㎝やkmなどの物理の単位を新たに作るとややこしくなるので、それはこの世界でも同様とします。
- プロローグ ( No.1 )
- 日時: 2019/10/29 19:58
- 名前: マッシュりゅーむ (ID: KkB6tonB)
——あれは、10年も前のことだっただろうか。
何もない村。そう、本当にこの言葉で言い表されたような、そんな所に住んでいた。
寂しい風景、崩れかけそうな家屋達、すれちがう人々も、全員顔見知り——つまり、人口も数少ない、そんな場所だった。
だからだろうか。あの日——あの人を見た時の感動が、あんなにも大きかったのは。
その人物は、ただの行商人だった。この村へ来たのも、今考えてみればただ単に自分の商品を、資源が少なく、ひもじい生活をしている哀れな村人達に売り、搾り取ろうとしていただけかもしれない。
しかし、僕の目からはそれは———困っている人に、優しく手を伸ばしている救世主に見えた。
その時、僕は幼いながらに感動した。
なんて素晴らしい方なんだろう、と。
すぐに僕は母さんに、あの人は一体誰、と聞いた。
すると、どうやらここに品物を届けてくれる、「しょうにんさん」という人なのだと教えてくれた。
あの日から、僕の夢は変わっていない。
僕は、あの人みたいな、人を助ける仕事がしたい。そう、思い続けていた。
だから僕は——成人の15歳になり、王都へ出発するまでの後1か月を、商人になるための準備に費やしていた。
- 第一幕 第一章 ( No.2 )
- 日時: 2019/12/09 19:14
- 名前: マッシュりゅーむ (ID: fl1aqmWD)
「え〜と、次は……ここか」
そう呟きながら、地面に転がっている部品の一つに手を伸ばす。
昼に近づき、日差しが強くなってきた。額に汗が伝う。
「…よしっ!あとは……」
そんな中、僕——アースは、村の一角にある自分の家の庭で、あるものを作っていた。
家から少ししたところにある森から木を取ってきて、それで骨組みにあたる部分を今は作っている。
・・・
それから少しして——僕の目の前には、なかなかの大きさの荷馬車が出来ていた。
正確には、僕の体——僕の身長は約160cm——の半分ぐらいの大きさの車輪が4つついた、蓋のない棺桶のような大きい箱のにしか見えないが。
ちなみになぜこんなものを作っているかというと、やはり行商人と言ったら『馬車』のイメージが強いからだ。そして、後1週間で僕は親元を離れ、晴れて商人への道を歩み始める。その前に商人に必要なものを用意しておこう、と思ったのだ。
「よし、後は天幕だ」
独り言を言いながら、思考に耽ていた頭を切り替え次の作業へと移る。
天幕を張るための骨組みはもう完成している。ちょうど、大きな箱の辺からアーチ状に、しなる木の棒が5つついている感じだ。
そして、その上に張る幕の素材も準備してある。
「ほい」 ・・・・・
僕は空間に手を伸ばし、そして2体の大型モンスターを取り出した。
———超常魔法、【空間収納庫(アイテムボックス)】。
この世界に数多くある、魔法と呼ばれるものの一つだ。
魔法というのはランクが存在しており、簡単なものから初級魔法、中級魔法、上級魔法、そして一番上が超常魔法と呼ばれている。
その上にはさらに神聖魔法なるものもあるが……。現代では覚えている人は見つかっていないので、失われた伝説の魔法となっている、らしい。
僕が唯一得意と誇れるのは、この魔法という分野だ。
幼いころから興味を持って、魔法が使える父に教わりながら好きでやっていたのだ。
父曰く、超常魔法が使えるのは、王に仕えている宮廷魔術師でもいるかどうかわからないらしい。しかし、僕はそれが、僕を喜ばせるための文句だと知っている。なぜならこんな辺鄙な村に住んでいる父ですら、1つないし2つ習得しているからだ。お世辞でも褒めてくれたのだろう。実際言われて嬉しかったが。
ちなみに僕は、家に父が趣味で置いてある複数の魔導書——魔法の種類によって扱い方が書いてある——の超常魔法はすべて覚えた。
中には他より難しいものも2,3個あって苦労したが、最後には習得した。
そんな魔法だが、この【アイテムボックス】のように空間に関与するものは全て超常魔法らしい。理由は、ただ空間をまず感知するのが難しいから、だそうだ。
空間になんて簡単に関与できるのになぁ、と、取り出した2体のモンスターを眺めながら思う。もしかしたらそのことが書いてあった本が古いだけで、王都の方ではもう上級に下がっているかもしれない。僕はそう思っている。
「…よし」
これからこの、目の前にいるでっかいモンスターを解体し、皮を鞣して天幕にする。と、言っても解体は風魔法の刃でスパスパっ、とできるし、鞣すのも、毛と脂を取って柔らかくすればいいだけなので、魔法で片が付く。
魔法って便利だなぁ。
ちなみにこの大型モンスター達は、荷馬車の素材の木を伐採するときに、村に出てきたら危険かな、と思い、ついでに天幕にしようと討伐したものだ。
モンスターというのは、大気中の魔素——空気に交じっていて、生き物はこれを吸って魔力にし、人はこれを糧として魔法を放つ。『マナ』とも呼ぶ——が濃い自然、今回では森の中にいた動物が、必要以上に吸収してしまって狂暴化、肥大化したもののことを指す。
これから解体するのは、恐らく鹿だったものだ。
そして解体しようと魔法を発動しようとしたとき、四本足のこの鹿モンスターを見てふと思っ
た。
——あれ、馬車に必要な馬って用意してなくね?
「…………」
やってしまった。その存在を完全に忘れていた。
『馬』車と呼ぶんだから、そりゃあ、馬は必要だろ。何やってんだ僕。
「う〜ん……あ、あの魔法なら」
少し考えたらいい考えが浮かんできた。
・・・・・
早速実行に移すため、一旦モンスターを【アイテムボックス】に戻し、とある魔法を発動させた。
- 第一幕 第一章 Ⅱ ( No.3 )
- 日時: 2019/12/09 19:13
- 名前: マッシュりゅーむ (ID: fl1aqmWD)
目を閉じ、形をイメージし、体に流れている魔力をひねり出し、固め、そして魔法として出す。——これは昔からやっている、魔法を扱うときに必ず行う行為だ。
・
いつも通り、魔法が発動した手ごたえを感じ、目を開いてみると、そこには——二頭の馬がいた。
しかし、もちろんただの馬ではない。それは、どこか無機物的な冷たさがあり、生命としての息遣い、温かさが一切ない。
しかも、黒みがかっていて、光沢もあり、何か面妖な模様でさえもある。
それもそのはず、この馬たちは——今、僕が人工的に造ったものだからだ。
———上級魔法、【魔法式自律型守護者(ゴーレム)】
土属性魔法を使った人工的に造った金属の型に、命をつかさどる聖魔法の力で仮の命——魔力をエネルギー原としてできている——を宿した、言わば人形だ。
この【ゴーレム】は、今回は馬車の関係で馬の形にしたが、本来は城での護衛などとして造られるため、人型だ。
ちなみに聖魔法というのは、『聖』とついていて、回復魔法っぽいが、攻撃魔法の分類に入っている。
この世界の魔法は、相手に攻撃するための攻撃魔法、癒すための回復魔法、援護や、弱体化させるための支援魔法、ある一定の域、フィールドを自分の適したものにする、勢力範囲魔法の4つに分かれる。
その中で聖魔法は特別で、味方を回復することもできるが、本来の用途のため攻撃魔法だ。
それは——大昔、多く出現していたとされている、アンデッドという種類のモンスターへの唯一の攻撃手段だったからだ。
剣などで首をはねようとしても、頭がある限り復活する。そんな、不死身のモンスター達は、魂を癒す力のある聖魔法でしか消滅させられない。なので、これは立派な攻撃をするための魔法だ。
……まぁ、それは大昔にいた魔王が存在し、アンデッド達に力を与えていただけで、今はほとんど見かけないし、見かけたとしても普通に首をはねれば死ぬらしいけど。
しかも、その聖魔法も、その魔王を倒した〔勇者パーティー〕と呼ばれる五人の内の【聖女】様しか扱えず、それ以来見つかっていないらしい。
………じゃあなんで僕、使えるんだろう?
そう思って昔、母に聞いてみたのだがはぐらかされた。え、なんで?
まぁ、話したくないのなら話してくれなくてもいい。いつか来る時が来たら話してくれると信じているから。
と、考えても無駄だという結論に達したところで、とりあえず目の前の二頭の馬型【ゴーレム】に、ちゃんと動くかどうか確かめるため、命令をしてみようと思う。
これで動かなかったらまた調整をして、しっかりとしたものを造る。
「じゃあとりあえず……命令だ、向こうの村の出口まで走れ」
よし、どうなるかな。
そう思って【ゴーレム】のほうを見ると——そこには先程から作っている馬車もどきがあるだけで、何もいなかった。
「はれ?」
おかしい。今さっきまで確かにいたのに。不思議に思いながら、顔を右往左往させていると——
——バフッ!!
「ッ!?」
急に強い風が馬車のほうからして、思わず目をつぶった。
目を開けても、やはり何もない。しかし、僕の頭に、一つの可能性が浮かんだ。
急いで村の出口の方向を目を凝らして見る。それは、先程【ゴーレム】に命令していかせようとした位置だ。
すると——案の定、二頭の馬らしきものがそこに立っていた。