複雑・ファジー小説
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- ガルちゃん修羅ハウス
- 日時: 2020/08/26 18:38
- 名前: 梶原明生 (ID: PvE9VyUX)
お騒がせご意見番女優、遠藤奈美子と、ヘタレアイドルリーダー佐士原理央が女性専用書き込み掲示板「ガルちゃん」のファンだと公表したためテレビディレクターの星野が閃いた。「番組企画でガルちゃん書き込みユーザーを集めてシェアハウスに住まわせて日常を放送すると言うのは。」かくして、旧知の女優、遠藤を中心に続々都内某所のハウスにガルちゃん民が集まるのだが・・・事態は予想だにしなかった展開に・・・様々癖のあるワケアリ女性が一度に集い、笑いあり、涙あり、バトルあり、珍事ありのドタバタ活劇を繰り広げる。
- Re: ガルちゃん修羅ハウス ( No.20 )
- 日時: 2020/12/25 21:24
- 名前: 梶原明生 (ID: PvE9VyUX)
・・・「ちょっと私の部屋寄ってく。井上さんとは話したいことあるし。」「あ、そう。プリンくれるなら行ってもいいけど。」「奇遇、あるようち。へー意外だな、井上さんプリン好きなんだ。」そう言われてスキーにスパルタ教育は当たり前だと吠えていた父の姿を思い出す。唯一優しかったのはプリンを買ってきてくれる時だけ。そのスパルタが母との離婚の原因にはなったのだが、おかげで世界の銀メダルまでは取れた。そんなことを思い出しながら橋場の部屋に寄った。「へー、筋トレしてんだ。」彼女にとっても懐かしいトレーニング機器。紅茶を入れてプリンと共に居間に戻ってくる橋場。「それで、話って何。」「あなた、デリヘルしてたって噂本当なの。」「いきなり何聞くかって思ったらそんなこと。それがどうしたのよ。やってたって別に問題ないでしょ。」「そうね。確かに・・・でも芸能界にごり押しして返り咲きたいからって、子供捨てるのはどうかな。」「どういう意味。」「お姉さん夫婦に預ける手筈なんでしょ。」「ちょっと待ってなんであんたがそこまで・・・」「有希ちゃんがね、学校に行くとき話してくれたの。たまたま外に出てた時ね。」「あいつ・・・」「悪く思わないでね。私もいけなかったのよ。登校時しょぼくれてる二人に声掛けたりしたから。」「いいけど、ま、いずれわかることだしね。」「やっぱりこの企画に飛びついたのも、売名と東京にいるお姉さんに会えるからじゃない。」「だから何。姉さん夫婦は事業に成功しててお金持ちだよ。あの子たちに何が悪いって言うんだよ。それに芸能界に入れば売名だろうが何だろうが稼げる。そうすればあの子たちだって裕福に暮らせるんだ。」・・・続く。
- Re: ガルちゃん修羅ハウス ( No.21 )
- 日時: 2020/12/29 14:19
- 名前: 梶原明生 (ID: PvE9VyUX)
・・・「本人達は納得してなかったみたいだけど。」「うるさいねあんた。全くなんなのよ。人の家庭に首突っ込んで何様のつもり。それともカメラでもどこかで回ってるとか。」「いや、そうじゃないけど。」「なら黙っててよね。あの子達のことは私がよくわかってるんだから。あームカつく。」立ち去ろうとすう井上であったが。「プリンは食ってあげる。」「そこはちゃっかりしとるんか~いっ。」思わず突っ込みを入れる橋場だった。その頃、美弥子はとある病院に来ていた。不妊治療産婦人科である。「先生どうでしょうか。」「いや、どうでしょうかといわれてもね。高島さん、本来ご主人も見えられた方がよろしいんですが。」「無理言わないでください。彼は地元福岡でテレビ局アナウンサーしてるんですよ。都合はつきませんよ。」「それはわかりますがね、こればかりはあなただけの問題ではありませんしね。・・・ところでそれだけ離れているとなると、実際立ち入った話になりますがあっちの方は月何回ほどあるんですか。」「いえ、2月に一回くらいです。」「は・・・」医者も少し呆れた。それでどうして子供ができるのかと。「でも人口受精とか嫌なんです。自然妊娠じゃないと。それに2月に一回でも、その一回が濃密ですし、なんとかそれでできないものかなと思ったからこそ、こちらの医院を受けたんですよ。それなのに・・・」終始モヤモヤする診察だった。モヤモヤは葉山ひかるもだった。テレビに出たくらいでこんなにファンレターが来るなんて思ってもいなかった。無論、青山達の検閲済みではあるが。その中に湯楽定行なる人物の手紙が目を引いた。地元が同じで、電子機器メーカーの転勤で東京にいるとのこと。しかも手紙に丁寧さと思いやりを感じる趣。おまけにアニメ好きときた。・・・続く。
- Re: ガルちゃん修羅ハウス ( No.22 )
- 日時: 2021/01/06 15:28
- 名前: 梶原明生 (ID: PvE9VyUX)
・・・「あ、会ってみたいな。」ほくそ笑む葉山だった。その夜、集まったガル民でトピがまた立った。「旦那の仕事」と。酒井「ところで井上さん。あなたご主人と同居されてますが、その方のご職業は何ですの。」井上「は、そんなの聞いてどうすんの。別に何だっていいだろ。」酒井「ま、あなた口の利き方と言うものを知らないようね。だからご主人の職業も言えないのね。」「うざいなあんた。じゃージャーナリストにしとくわ。」酒井「ま、ジャーナリストってハハハ・・・私主人のお知り合いでその手の方を多く知ってますが、あんなダラけたジャーナリスト見たことないわ。」橋場「ほら、またマウント取りが始まったよ。」新山「これだから医者の嫁は・・・ハハハハハっ。」小原「もしかして風俗ジャーナリストだったりして。」井上からのレスが途絶えた。遠藤「え、マジ・・・」井上「あんたらおかしいよ。人の旦那の職業詮索して何が楽しいわけ。」橋場「あんたの子供のためだよ。」しばらく沈黙する皆。橋場「週刊誌にすっぱ抜かれてたから言うけど、今の旦那さん、もう4人目でしょ。あまり子供たちとうまく行ってないみたいだし、そこんとこ考えないと。」井上「大きなお世話。」以来井上からの投稿は途絶えた。酒井「これだから、お里が知れた人はダメなのよ。」こんな感じで延々とダメ夫婦談義に花咲いて夜は更けていった。休日になったある日、朝早くから春雄含めて珍しく井上は4人で出かけた。それをドア越しから見ていた橋場。「ははーん。お姉さんに会いに行ったな。」早速車に向かおうと廊下に出たのだが・・・「貝原主任。」「大方こんなことだろうと思った。お前の旦那さんから報告は受けてるよ。一体いつまで待たせる気だ。それに人の家庭に首突っ込むのがお前の仕事じゃないだろ。」そこに壁に背を預けて、腕組みしているスーツ姿の男はその名の通り貝原だった。「釣りで大事なことは何か知ってますか。」「あ、何だいきなり。ネット用語か。」「じゃなくて、・・・デカい魚を釣り上げるには先ず待ち続けることが大事だってことですよ。」「待ち続けて魚が腐ることもあるぞ。とにかく逸脱行為だ。お前を選んだのは人選ミスだったよ。」「それはこれからを見て判断してくださいよ。」「何・・・」それだけ言い残し、橋場は車に向かった。・・・続く。
- Re: ガルちゃん修羅ハウス ( No.23 )
- 日時: 2021/01/10 18:25
- 名前: 梶原明生 (ID: j4S7OPQG)
・・・お姉さん夫婦は都内の豪邸に住んでいた。金にシビアだったはずの姉。なのに何故か手の平返しに子供達の受け入れを許したのか。車を運転しながら橋場は自前のタブレットで検索していた。勿論裏ネットで。「おかしいわね。最近お姉さんの旦那の事業が経営不振で多額の借金を抱えてる。そんな状態で何で厄介な二人の子供を・・・何か臭うな。」橋場に一抹の不安が過ぎった。やがて井上達は首都高を降りて街にむかった。閑静なマンション街に着くと、駐車場に入って姉夫婦が待つ部屋へ。「1006号室か。」車中から望遠鏡で確認すると、彼女もまた駐車場を探した。「ほら、有希、スター、ご挨拶は。」「こんにちは」ドアで出迎えた姉に井上が子供達に促した。「久しぶりメイ。会いたかったわ。」デリヘルやった時は烈火の如く怒って絶交した姉とは思えないニコニコぶり。「さ、お上がりなさい。遠慮なんかいらないから。ささ、ここがあなた達の家になるのよ。」スターは思わずワクワクしていたが、有希は気乗りしない。春雄は男物の革靴が三つあったことに気付くが、ご主人の物だろうと、気にも留めなかった。・・・やがてそのご主人も交えてちょっとした昼食会になった。ご主人が二人に聞く。「どうだい有希ちゃん、スター君。気に入ったかいこの部屋。」「うん。伯父さんありがとう。」「う、うん、とっても・・」有希はやはり浮かぬ顔。ご主人は笑顔になりつつ、息を潜めて隣室に待機している男たちを見やった。風貌からしてまともな職業の男達でないことはわかる。やがて懇親が終わった井上達は、部屋を出て車に向かった。階段の上階に潜んでいた橋場がエレベーターに乗る井上達と入れ違いで動き出す。壁に盗聴器を付けてイヤフォンを当てる橋場。「赤沼さんよ、あれが珍しい血液型の男の子かい。」「ええ。本当に借金はチャラな上、数千万円貰えるんですよね。三輪さん。」「心配するなよ。お互い持ちつ持たれつ。うまくやれば万事心配なし。息子の命のために血液と臓器のドナーが必要で、何億って金出す富豪がいるんだ。心配ない。」「三輪・・・臓器・・・」橋場はすぐに車に戻った。・・・続く。
- Re: ガルちゃん修羅ハウス ( No.24 )
- 日時: 2021/01/17 15:07
- 名前: 梶原明生 (ID: PvE9VyUX)
・・・「やばい、奴等の目的は金。」そうとわかれば善は急げ。早速折り返してガルちゃん民マンションに向かった。エントランスで鉢合わせになる橋場と井上。「先帰ってて。・・・何、橋場さん。何か用。」「あなたに知らせたいことがあるの。」「何、またお説教かよ。」「そうじゃない。現実の話。あなたのお姉さん、借金だらけなの知ってた。」「え、どういうことよ。」「正確には旦那さんの赤沼さんが負債を抱えて倒産寸前ってことなんだけど。」「ちょっと待って。あんた何でそこまで知ってんの。仮に本当だとしても何のPTAだよ。」しまったと橋場にしては珍しくどもった。「ま、まあ、その、色々と噂をね。・・・」「だとして、それが何。」「だからおかしいと思わない。赤沼社長夫婦は負債を抱えてる上に長男次男を大学留学させている。それなのに快くあなたの子供まで迎え入れるかしら。」「そ、それは・・・な、何か倒産しない策でもあるんじゃない。」「そこよ。そんな都合良くお金が回るわけない。なのに迎え入れた。おかしくないこれ。」「何が言いたいんだよ。」「これを聞いて。」バッグから取り出したのは先ほどの盗聴器。録音機能まであった。「こ、これって・・・」「そう。恐らく行方不明事件に見せかけて外国へ臓器を売り飛ばす計画よ。これでもあなたあの子たちを引き渡すつもり。」「そんな。姉貴が。そんな裏切り・・・」「人はわからないもんだよ。ましてや切羽詰まった人間なら、自分の子供と兄弟の子供、どっちを優先すると思う。」ようやく事の重大さに気付いた井上は姉に電話した。「・・・そういうことだから。姉貴とは絶好だからね。」早速警察に相談することになったのだが・・・「三輪さん大変だ。引き渡さないって今電話が。」「何、馬鹿な。こうなったら多少強引に事を進めるしかないな。」煮え湯を飲まされた彼は、事務所で電話を荒々しく置いた。「たかがデリヘル上がりの女が。立てつこうってのか。面白い、なら子供から攻めるか。」・・・続く。