複雑・ファジー小説

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コンプリヘンシブ
日時: 2025/03/01 03:53
名前: 梶原明生 (ID: BLmVP1GO)

あらすじ・・・混迷を極める昨今の社会情勢。この時代を国や政府が乗り切るためにある専門家によるアイデアが採用された。それが「コンプリヘンシブ プロジェクト」各省庁の専門家でチームを組み、あらゆる事態と事件に対処する。ここまでは従来通り。しかし、ここからが違った。「省庁に限らず、アトランダムに選出されたあらゆるエキスパートに、それぞれのパイプラインとなって心臓部になってもらう。」つまりは壁を開けてお互いを共有し合う前代未聞のチーム作りを許可したわけだ。しかし問題はその土台をどこにするか。最終的に防衛省と警視庁が揉めたが、「まだ国民の多くは警察手帳に重きを置く傾向にある。また、単調的に説明しやすい。」として、やむなく「警察庁、警視庁」に本部を置く事で決定した。かくして、あらゆるエキスパート8人が警視庁別室総合特別対応室に集められた。しかも初日から特別に警察手帳と特殊拳銃が支給された。それぞれクセのある8人だが、国と国民を守るため、日夜あらゆる事案、事態、事件に「コンプリヘンシブ」達が挑んでいく。・・・8人の所属組織は以下の通り。防衛省(特戦、別班?)、警視庁、消防庁、海保、医療機関、マル暴、文科省、芸能界。

Re: コンプリヘンシブ ( No.8 )
日時: 2025/05/19 01:04
名前: 梶原明生 (ID: EjFgzOZO)

・・・とある秘密作戦に従事した記憶を呼び覚ましていたのだ。華奢で小柄な西野京子三曹は、丁度杏珠に似ていた。彼女もまた特殊作戦群隊員であった。そう聞くと「え、そんな華奢で小柄な女性がか。」と思うだろう。実は我々一般人がイメージしている「特殊作戦隊員」は筋肉隆々で背が高い精悍な人と思うだろうが、それは言わば「セイバー組」である。特殊部隊員にはもう一つの派閥、「アビリティ組」がある。字の如く「能力派」と言い、簡単なセレクションだけで入れる者もいて、民間人からの登用もなくはない。学校に例えるなら文化部と体育会系の違いみたいなものか。ただし、アビリティ組は、隊員達に資するサポート的な能力を有していない限りは採用どころかお声すらかからない。西野がその「アビリティ組」隊員であった。彼女の能力がどうしても必要な作戦があり、参加させてたのだが。予期せぬアクシデントが起こった。先に潜入していた隊員が反撃にあったのだ。その中に彼の部下である服部と言う若い隊員もいた。彼は太ももを撃たれる重傷を負いながらも這って危険区域からでていた。実はこの服部隊員と西野は結婚する予定であった。何としても死なせまいと彼も銃を取って走ったのだが・・・「京子、京子ーーーっ」西野の方が額を撃ち抜かれていて即死していた。「下がれ、後退だっ服部と西野を頼む。」他の隊員に叫びつつ、M4A1を構えて射撃して撤退した。「せめて服部が俺を憎んでくれればまだ救われた。」「はい。何ですか服部とか。」「いや、なんでもない。つい昔のことを思い出してな。」天川は不満そうに立ち去って行った。その直後、個室で異変が起こっていた。患者の布川聖子63歳が、急変していたのだ。何かを感じた杏珠が駆け出していた。三輪がが叫ぶ。「東山さん、廊下走らないっ。」「ああ、すみません。・・・あれ、三輪さんに言えばよか・・ああもう。」急ぐのを優先した彼女は布川の病室に駆け込んでいた。「どうしました布川さん、布川さん。確か、この時。ドクターコール、血圧。それから呼吸器・・・」見様見真似だった処置で一様の落ち着きを見せたが、三輪が飛び込んできた。「あなた何してるの、あれだけ勝手な看護処置はしてはいけないとあれほど。」「すみません。でも・・・」そのやりとりの瞬間、天川がやってきた。「経過はどうです。」「あ、先生、落ち着いてはいますが、東川さんが規則違反を。」「しかし、規則違反と言うことは、彼女が先に処置をしたから布川さんは深刻な事態にならなかった。違いますか。」「そ、それは、そうですが。しかし。」無視するように問う天川。「東山。何故気づいた。」「朝、気になってはいたんです。布川さんの心情があまり思わしくなかったようで。もしやと。」「うむ。東山は看護師よりも心理士に向いてるかもな。だが、規則違反もある。しばらく小会議室にて待機だ。」「はい。」悲しくなる表情で後にする杏珠。三輪が不満そうに付け足す。「天川先生はなんだかんだで東山さんを甘やかしてませんか。公私混同してるとしか思えません。今は事なきを得ましたが、今後こんな事が続くようなら。」「そんなことはありません。」冷たく跳ね除ける天川。・・・続く。

Re: コンプリヘンシブ ( No.9 )
日時: 2025/05/24 17:12
名前: 梶原明生 (ID: EPsFuHPE)

・・・それから数日後。天川も藤崎も焦りが見え始めた。「天川、本当にいるのか麻薬王。どれも健全な病院スタッフと患者だぞ。また新田課長に進展なしと報告せにゃならん。情報確かなのか。」「麻薬取締局からの確かな情報です。いくら畑荒らしと思っても、マトリがわざわざ偽情報流すとは思えません。」「だといいんだが。柊子も色々ネットで検索しているが、どれも白だな。部下の一人でも来れば怪しいやつとして調べられるんだが。」コロコン台車をエレベーターに進ませる藤崎。「ああ待って。」平良と杏珠も入って来た。「船が出るぞーっ、てか。大丈夫ですよ。ギリセーフ。」「よかった。」二人はエレベーターに乗った。しかし、一階上がったタイミングで、二人の清掃業者も乗ってきた。杏珠が遠慮する。「あ、いつもご苦労様です。どうぞ。」無言で入る清掃員。平良と杏珠は気が付かなかっただろうが、藤崎は既に気がついていた。動き出すエレベーター。心で呟く。「二人を守りながらは苦しいが、ここで仕留めないと被害はもっと出る。」選択肢は限られていた。全力を尽くすしかない。「最近の清掃業者は規則が変わったんですか。随分と派手な革靴ですね。そんなので清掃できるんですか。」ビクっとした二人は顔を見合わせる。平良も杏珠も何のことやらと振り返るが、清掃員がいきなり杏珠を殴ろうとした。しかし藤崎の前蹴りが速く、腕をへし折られる清掃員。「野郎っ」もう一人がナイフを取り出すが、シーツで巻きつけ抑えこみ、肘打ち。ワゴンに腕を叩きつけてナイフを落とすが、清掃員の足に跳ね返り、平良の眉間スレスレに壁に刺さり気絶する。「し、刺激強すぎーーーっ」「平良さん、平良さん。」杏珠は彼を案じるが、藤崎はそれどころじゃない。腕折れ男がまた復活して立ち上がり、清掃道具の中に隠していた拳銃をとりだし、撃とうとして一発だけ発砲するものの当たらず、藤崎にスライドを握られて反転。逆に銃口を向けられた清掃員は冷や汗タラタラ。「残念。拳銃は鈍器にもなる。」清掃員の頭を殴って気絶させるて同時にもう一人には足刀蹴りを入れた。そこでようやくエレベーターが開く。開いた口が塞がらない患者や看護師達。「このエレベーターは只今故障中により、ご利用できましぇーん。」にこやかに言う藤崎であったが、時既に遅し。しばらくして警視庁の十和田達が訪れた、。「何事ですか。こんな潜入捜査聞いてませんが。あなた方本当に特対室にいたんですか。」藤崎が答える。「ええ、いましたよ。今日が潜入初日でして。それより彼ら、連行しなくていいんですか。」「わかってますよ。後で監視カメラ調べますからね。そのつもりで。」「どうぞご自由に。て言うか十和田さん、我々は同じ仲間ですよ。そう険しい顔で邪険に扱わなくてもいいじゃないですか。それでは仕事がありますので、失礼致します。」「何が仲間だっ、他所もんが。」舌打ちしながら刑事達と病院を後にする十和田。・・・続く。

Re: コンプリヘンシブ ( No.10 )
日時: 2025/05/27 08:51
名前: 梶原明生 (ID: Om7nks4C)

・・・小会議室に呼ばれた藤崎と天川。先の出来事に対する説明を市川が求めてのことだ。無論竹田をはじめ、医師、看護師達も集まっている。「先程はお騒がせして申し訳ありません。はい、あれは我々の捜査とは一切関係ありませんで。たまたま闇バイトで雇われたバカなチンピラが、あー古いか。つまり愚連隊の二人が院長室に現金があると言う噂を流されて犯行に及んだ次第でして。ご安心ください。もう逮捕されましたので、危険はありません。」三輪が耳打ちする「竹田さん、怖いですね。最近闇バイトの強盗とか多いでしょ。まさかそれが病院にもなんてね。」平良が興奮気味に言う。「でも、藤崎さんの格闘技凄かったですよ。パパパーンてこうもう、とにかく皆さんに見せたかったなぁ。」杏珠はそれを聞いて怯えていた。藤崎が気がつく。「どうしました、東山さん。」「あ、いえ。別に。」天川が呟く。「PTSDか。」会議は終わり、またいつもの病院業務が始まる。その頃、先ほどの清掃員に化けた二人組は、コンプリヘンシブ本部にて尋問を受けているところだった。新田と遠藤ががいる。「さて、それではそろそろその沈黙を破って貰おうか。」ふんぞり返ってビクッともしない二人の清掃員もどき。「君達が麻薬組織、コンドルの仲間だってことは調べ済みだ。そして君達が四階に向かっていたこともね。」それにはさすがのチンピラ二人も表情が変わる。「図星だな。悪いが君達は何か勘違いをしている。ここは地下数100メートルの基地だ。ここに法律も弁護士もない。あるのは・・・私達が法律だと言うことだけ。」徐に立ち上がる新田と遠藤。黒い革手袋をハメ始めた。「さぁ、ショータイムだ。いつまで耐えられるかな。・・・」一方で藤崎天川は一つの仮説に辿り着いていた。「なぁ天川。もう気づいていると思うが、奴らボスに会いに行くのにわざわざ拳銃や、ジキタリスの注射針所持してたんだよな。会いに行きますと言うよりは、殺しに行きますってかんじで。」「ええ。しかもコンドルの部下ならありえない行動。そこから導き出される仮説は・・・」二人同時に言う。「内紛と暗殺。」藤崎が首を傾げる。「しかし、患者側にいるとしたら意図的に病気を作り出さなければ、入院は無理だろ。」「誰か協力者がいるとすれば。」言うや否や、小児科勤務で、かつての親友の小杉圭一がやってきた。「おう、久しぶりだな小杉。出張から帰ってきたのか。」「久しぶりどころか、お前一年間どこほっつき歩いてたんだよ。聞いたぜ。警察にいんだって。仙台の医師会から帰って早々物騒だな。ジキタリス注射針、犯人持ってたって?怖いよな。」天川と藤崎の目の色が変わった。藤崎が備品庫でイヤホン使って柊子と交信する。「迂闊だったよ。小児科を対象から外してたなんてな。もう伝わってると思うが、小児科勤務の小杉圭一について調べてくれ。怪しい点がないか。」「特にはないんですが、一つだけ気になる点が。毎月2度に渡って多額のお金が小杉の銀行口座に振り込まれています。しかもその振り込み相手は海外の銀行を経由していて不明です。」「やはりな。引き続き調べてくれ。交信終了。・・・まさかボスが子供とか言うなよな。」最後は独り言で備品庫をでた。天川は自分のデスクに杏珠を呼び出していた。「隠すな。」「へ、な、何をです。」「明らかに様子がいつもと違うだろ。無理する必要はないとあれほど言っただろ。」「そ、そ、そんな先生。いつもの私ですよ。」「PTSD。」「えっ・・・」「心的外傷症候群。だったか。それにかかってる可能性がある。・・・続く。

Re: コンプリヘンシブ ( No.11 )
日時: 2025/05/30 21:38
名前: 梶原明生 (ID: qh2qVUY5)

・・・「正直。あんな暴力初めて見ました。警察っていつもこんななんだって思うと手が震えて止まんなくて。」涙が伝うとその健気な姿に藤崎のあの言葉が蘇る。「愛する人が現れたなら、すぐ愛し返さないと・・・」杏珠の顎をクイっと指で上げ、その涙ごとキスした。「えっ・・・」あまりの突然の出来事にショックがショックで癒される結果に。「これが俺からの特効薬だ。」「す、逸さん・・・」「お前はけっして杏里の代わりなんかじゃない。俺はお前を既に好きになっていた。愛してる、杏珠。」「逸さん。私も・・・」二人はまた再び唇を重ねた。壁際に盗み聞きしていた竹田はバレないように、一人ガッツポーズをきめていた、「よし、よくやった杏珠ちゃん。」その週末、天川の復帰を祝って(実際は復帰でなく、ただ飲みたいだけだろうが。)市川から行きつけの居酒屋で宴会を開くことになった。こんな時だからこそ、結束を固めようとのお達しだ。「えー、それでは医師長兼副院長の私、市川が宴会前のご挨拶をと思いまして。ようやく、天川君が我が月波総合病院に帰ってきてくれました。それと同時に、長らく入院されておられた北田さんが無事手術成功して、退院も近いことも祝いまして、ご挨拶に返させていただきます。それじゃ乾杯。」「乾杯。」皆グラスを合わせて飲み干す。しばらく歓談が続いて、竹田から唐突に発表がある。「はい、ナース長たる私竹田がら、皆さんに報告があります。」市川がビール泡を口に残しながら驚く。「ん、何、何なの竹田さん。」「はい。ついに。・・・ついにあの天川先生と杏珠ちゃんが、お付き合いすることになりました。」「ちょっと竹田さん、何言ってんですか。いえいえいえいえいえっあ、ありえませんよねぇ先生。」天川は無言でレモンサワーを飲む。「もう、先生。本当何もないですよ。」顔を真っ赤にして弁明するも、逆効果に。市川が入る。「東山君、いいじゃないか。そんな恥ずかしがる事じゃないだろ。もう、付き合ってるんだろ。なぁ天川君。」すると徐に立ち上がり、隣に座る杏珠を腕を掴んで立ち上がらせ、急に片腕で抱き寄せた。「仰る通り。三日前、俺と杏珠は彼氏彼女の間柄になりました。今後とも宜しくお願いします。」「え、ええーーーーーっ。」不覚にもみんなと杏珠は同じ叫び声を上げた。小杉が拍手する。「よかったじゃないか杏珠ちゃん。願いが叶ったね。」「はいー。」藤崎と天川は目を見合わせた。宴もたけなわに時が過ぎ、トイレに立った小杉を待ち伏せた。「あれ、天川に藤崎さん。どうしました。」・・・続く。

Re: コンプリヘンシブ ( No.12 )
日時: 2025/06/01 16:43
名前: 梶原明生 (ID: mKkzEdnm)

・・・「それはこっちが聞きたい。小杉、医大時代からの付き合いだ。お前とは共に助け合ってやってきた親友だと思ってたのに。残念だよ。」「ちょっと待って。え、何かのドッキリ。カメラどこ。」「とぼけないで下さいよ小杉先生。私は警察じゃないから率直に言います。あなた、海外の銀行口座お持ちですよね。随分と多額の金額が振り込まれている。しかも振り込み側が不明。何かの報酬。みたいに・・・」「すまない天川。ついオンラインカジノに手を出して。まさかその捜査か。」天川は激昂する。「惚けるなっ。麻薬組織コンドルからの報酬だろ。」胸倉を掴んで壁に叩きつける天川。「お前だけは信じてたのに。まして、お前子供達の命を預かる小児科医だろ。何故加担した。」「お前こそ、エリートの家柄のくせに何故リタイヤした。親友、笑えるね。俺は給食費もろくに払えない母子家庭に育ってきた貧乏学生だった。将来有望で杏里まで奪ったお前が憎かった。」「お前っ・・・まさか。」「ああ、心底惚れてたさ。おまけに彼女はコロナで。世を呪うとはこの事だよ。そんなとき、コンドルのボスから声がかかった。行きつけのバーでな。そこから歯車が狂ったのさ。」「お前っー。」「やめろ天川っ。」さすがに藤崎も止めに入った。「苦しいのはお前だけか。不運なのはお前だけか。」彼を払いのけた後、藤崎は小杉に向き直る。「令状は取ってある。小杉圭一、医師法違反、並びに犯人隠避隠匿の容疑で逮捕する。」手錠を取り、小杉にかけて連行する。裏口に新田率いるチームのバンが止まっていた。彼らに引き渡すと、再び宴会に戻る二人。しかし平良が余計なことを言い出す。「しっかし怪しいなー藤崎さん。杏珠ちゃんを見る目がなーんか悲しいって言うか、何て言うか。」杏珠もそれに便乗してくる。「私も実は感じてました。藤崎さん。何で私をそう言う目で・・・いや、変な意味でじゃないですよ。ただ気になってて。」天川と目線を合わす藤崎。「そうでしたか。やはり見破られていましたか。いや、これは失敬。ただ。東山さん。私の自衛隊時代の部下に似てまして。」「藤崎さん、自衛隊にいたんですか。しかも私そっくりな方が・・・」「ええ。縁あって今は警視庁にいますがね。こう見えて昔は習志野の空挺団にいたんですよ。」「く、空挺団っ。」平良が驚く。「え、そんなに驚くことなの。」「何言ってんだよ杏珠ちゃん。空挺団って言ったら陸自のエリート中のエリート自衛官が集まる最強部隊だよ。」「えっ、そんな所に藤崎さんが。凄っ。」「いやいや、ただの昔取った杵柄ですよ。」「だからエレベーターであんなに。」「お恥ずかしい次第で。」「いえ、あのおかげで私も平良さんも助かったわけで。・・・で、その私に似た人って言うのは。」まさか国がかかった極秘作戦を言うわけにもいかず、随分とオブラートに包んだフィクションを語った。・・・続く。


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