複雑・ファジー小説

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コンプリヘンシブ
日時: 2025/03/01 03:53
名前: 梶原明生 (ID: BLmVP1GO)

あらすじ・・・混迷を極める昨今の社会情勢。この時代を国や政府が乗り切るためにある専門家によるアイデアが採用された。それが「コンプリヘンシブ プロジェクト」各省庁の専門家でチームを組み、あらゆる事態と事件に対処する。ここまでは従来通り。しかし、ここからが違った。「省庁に限らず、アトランダムに選出されたあらゆるエキスパートに、それぞれのパイプラインとなって心臓部になってもらう。」つまりは壁を開けてお互いを共有し合う前代未聞のチーム作りを許可したわけだ。しかし問題はその土台をどこにするか。最終的に防衛省と警視庁が揉めたが、「まだ国民の多くは警察手帳に重きを置く傾向にある。また、単調的に説明しやすい。」として、やむなく「警察庁、警視庁」に本部を置く事で決定した。かくして、あらゆるエキスパート8人が警視庁別室総合特別対応室に集められた。しかも初日から特別に警察手帳と特殊拳銃が支給された。それぞれクセのある8人だが、国と国民を守るため、日夜あらゆる事案、事態、事件に「コンプリヘンシブ」達が挑んでいく。・・・8人の所属組織は以下の通り。防衛省(特戦、別班?)、警視庁、消防庁、海保、医療機関、マル暴、文科省、芸能界。

Re: コンプリヘンシブ ( No.19 )
日時: 2025/07/06 19:22
名前: 梶原明生 (ID: tY8TK.KA)

・・・天川と藤崎は渋く目を見合わせる。「で、治りもしないが、死なない程度に長く入院できるって寸法さ。麻薬王がまさか病院が根城なんて誰も思いつかないしな。」天川が目を細めて言う。「なるほどな。納得だ。」「なぁ、刑事さん。いや・・・何とお呼びするべきか。俺を逮捕して優越感に浸っているつもりだろうが、俺の構築した麻薬ビジネスのネットワークはかなり強固だぞ。俺の支持者は沢山いる。そういつまで俺を犯罪者呼ばわりできるかな。大麻の合法化は既に海外で進んでいる。あんたらの正義なんか脆く崩れる日がくるだろうな。ハハハハハハッ」高笑いする北田を更に細い目で見る藤崎、天川、新田。取り調べ室を出ると、通路で天川は呟いた。「揺らぐわけがない。俺たちと俺の信念が。・・・」同調するようにほくそ笑む藤崎であった。・・・終わり。 次回「海に囲まれた国」に続く。

Re: コンプリヘンシブ ( No.20 )
日時: 2025/07/07 19:43
名前: 梶原明生 (ID: /p7kMAYY)

「海に囲まれた国」・・・・・「今からお前らは最終試験に臨むことになる。ここは水深50メートルの海上だ。この下に沈む船から遺体に扮した人形を救い出せたら合格だ。それができない者は落第。わかったかっ。」「はいっ」海上保安庁所属の訓練艇で、特殊救難潜水士の教官から厳しい檄が飛ぶ。その中に唯一紅一点の海上保安官がいた。松下愛菜である。彼女は同時に横に並ぶ背の高いイケメン潜水士とアイコンタクトを取る。幸せそうだった。女性が潜水士になるのはかなりハードルが高かった。泣きながら訓練を去る女性海保官を何人も見てきた。それでも歯を食いしばり、彼女は数少ない女性潜水士になり、更なる厳しい世界。「特殊救難潜水士」への道に踏み出したのだ。更に教官の叫びは続く。「いいか。お前らのその酸素ボンベはもって50分。つまり40分以内に任務を達成できなければ命はない。そのことを肝に銘じとけ。お前らはカッコ悪い。だが、遭難者にとって唯一の希望だ。それを忘れるなっ。」「はい。」早速ダイバースーツと装備を身にまとい、潜水の準備に取り掛かる。「第一班前へっ。第二班前へ。」次々と海に入る生徒たち。海は人類の母と言うが、時として悪魔にもなりうる。救難潜水士はそのどちらにも対抗できなければならない。松下はギリギリで合格した。バディのイケメン彼氏の助けがなければ合格しなかっただろう。以後、松下は特殊救難潜水士として活躍した。しかし忘れもしない一年前。国籍不明船からの救難信号を受け、人道的配慮から特殊救難隊が出動した。松下とイケメン彼氏、大志田廉も含まれていた。辺りは既に台風の余波が接近していて、かなり危険だった。ヘリからワイヤーで降りることを志願した大志田は勇気を胸に降りて行ったのだが。・・・そのまま帰らね人に。「れーんっ。」松下も降りようとしたためヘリパイロットから制止された。結果不審船の乗組員は全員助からず。悲しみと虚しさだけが残った。検死が終わると、霊安室で大志田と御対面。その時泣き叫びながら松下はある部分を見逃さなかった。銃傷である。胸に一発。心臓部を狙い撃ちされていた。しかも胸の穴は小さく、背中にかけてが穴が広がっている。真正面から誰かに撃たれていたのは明らか。「班長、これは間違いなく殺人・・・」「黙れ。」その表情から触れてはいけないオーラが出ているのは明白だった。以後、この件はただの水難事故として処理された。松下はこの日以来、海上保安庁の体制に疑問を抱き、海保官を辞めてでも真実を突き止めようとしていた矢先、新田が現れた。・・・続く。

Re: コンプリヘンシブ ( No.21 )
日時: 2025/07/13 17:42
名前: 梶原明生 (ID: WfwM2DpQ)

・・・「初めまして松下愛菜さん。」「どうして私の名前を・・・」「申し遅れました。私、警視庁公安部の新田と申します。」「警視庁・・・何故私に用があるんです。」辺りを見回してから話す新田。「大志田廉さんの真相に辿り着きたくはないか。」後は言うまでもなく、いつものスカウト文句で松下をコンプリヘンシブに加入させたのだ。そして現在。海の見えるカフェでふとそんなことを思い出していた松下がいた。「不審船ただ一人の生き残り。」そう呟いて自らの捜査ノートを閉じた。それに合わせるかのように、スマホが鳴る。「緊急呼び出し。」慌ててカフェを後にする彼女。コンプリヘンシブ地下基地のパネルのあるオフィスで指を差しつつ説明する。「集まってもらったのに大変申し訳ありませんが、我々の大切な休日を奪った憎き事件に対処しなければなりません。」藤崎が苦笑い、「新田主任。だいぶ気持ち悪いですよその喋り方。」「そうか。いい線行ったと思ったのにな。さて冗談はそのくらいにしよう。パネルを見てくれ。水島崇22歳。若き海保の海猿潜水士だ。彼が昨日水死体で見つかったが、外部の調査委員会は自殺ではなく他殺と見ている。しかし、松下。お前ならわかると思うが、下手すると警察や自衛隊よりも閉鎖的な組織だ。通常の捜査機関では無理と判断。」松下が割り込む。「だから私達に白羽の矢が立ったわけですか。」「その通りだ。うーん、若い割に古いねー。ま、いいが。とにかくだ、この事件を探るぞ。美山、何か手がかりはあるか。」「SNSのやり取りはどれも普通の青年らしい内容ですね。ただ。」「ただ何だ。」「匿名投稿で海保内で水島崇に上官や先輩からのいじめやパワハラがあったとあります。」「アドレスを辿れるか。」「それが、複数のスマホを経由していて、特定するには時間がかかります。」「だから君がいるんだろ。早く探せ。」「りょーかいっ。」その時松下は立ち上がった。「現場100回ですよね。私がパイプラインになります。海保のパワハラ体質はこの私が体験してきてよく知ってます。行かせてください。」「わかった。なら行ってこい。」「はい。」早速準備して地下駐車場からキャラバンで向かう松下達。中は改造され、必要な機材とモニターが設置されている。海上保安庁第三管区本部に着いた。神奈川県横浜市に存在し、関東の海ほぼ全域を賄っている。同じ「警察組織」の一環である以上、海保からしたら「他人に畑を荒らされる」心境だろう。ただ、そこに元海保官の松下がいるのが違うところだが。待合室に広報官の一人が現れた。「おお、松下か。久しぶりだな。」「相良教官。お久しぶりです。今広報官されてるんですか。」「おお、俺も定年だしな。それよりお前今警視庁にいるんだって。」「はい。」バディを組んだ藤崎が聞いてくる。「こちらは。」「あ、紹介が遅れました。こちらは相良健人教官でして、以前、救難潜水士の頃、教官として私を鍛えてくれた方の一人です。」「そうでしたか。いや、私、警視庁刑事課におります藤崎と申します。」「相良です。ここで話すのも何ですから、食堂へ移りませんか。」・・・続く。

Re: コンプリヘンシブ ( No.22 )
日時: 2025/07/23 07:01
名前: 梶原明生 (ID: 5fsUPV.h)

・・・「はぁ。・・・」何のことやらと着いていく面々。「今日はカツカレーの日なんですよ。どうぞ召し上がってください。」「うわー懐かしい。いただきます。」松下の事情はデータファイルで知っていたので、その明るい振る舞いに藤崎は違和感を覚えた。「ところで相良さん。」「わかっていますよあなた方が派遣された理由。水島崇の遺族会が総理に直談判した件でしょ。繰り返すようで申し訳ありませんが、調査委員会の発表した通り訓練についていけなかった故に悩んだ末の自殺でして、パワハラもいじめもなかったとのことです。」「なら、一人一人に事情聴取しても・・・」「いいじゃないですか。」松下が何故か割り込んだ。「調査委員会が出した答えに間違いはなかった。そうですよね相良教官。」「ま、まぁそうだな。」何も言えなくなる藤崎。そんな時、誰かの視線を感じて左側を見ると、直ぐに視線を逸らした若い海保官がいた。しかし先ずは松下だ。「相良さん。大体のお話はわかりました。ちょっと外してもいいですか。」「ええどうぞ。」松下に目配せする藤崎。人気のない通路で話す藤崎。「松下、お前どうした。現地に行かねばとばかりに意気込んでた君がいきなり何だ。」「海保の潜水士になるのがどれだけ大変かわかりますか。」「何・・・」「ましてや私は女です。水島と言う後輩は男性で恵まれた環境にいたのに。意気地なしなんですよそいつは。」「松下っ」突然の大声にビクつく。普段飄々として穏やかなだけに、藤崎の怒号は尚更響く。「何なんですかいきなり。」「お前まさか彼氏の死の真相を探る妨げになるから、この事件を有耶無耶にして解決を急いでるんじゃなかろうな。」何も言えず目を逸らす松下。「やっぱりな。まだ自殺と決まったわけじゃないんだぞ。とにかくそんな考えは今この場で捨てろ。今はお前の価値観と私怨に付き合ってる暇はない。」「それでも。・・・私にはこれが重要とは思えません。先に車に戻ります。」「松下っ。」怒号にも答えない松下。そんな時、ふと後ろを振り向くと、先程の海保官がこちらを見ていて、すぐさま踵を返す様子に声をかけた。「ああ、ちょっと君。」ビクッとして止まる。「さっき食堂で私達を見てたね。どうして。」「警視庁の方ですよね。水島の件で。」「そうだが、君はもしかして、パワハラの件のSNSの発信者か。」「ここだと何分にも。今日は定時上がりですので午後5時以降であれば。駐車場に向かいます。」「わかった。じゃあそれまで後3時間待つよ。」そう言葉を交わして車に戻った藤崎。斎藤が聞いてくる。「どうしたんです、二人共。」「いいや、どうもしないさ。それより情報提供者にあえたぞ。」「マジですか。」「おお、マジだとも。定時上がりだそうだから、17時以降にここに来てくれるんだと。」「やりましたね。」「だといいんだが。」モニターを見上げながら呟く藤崎。しかし嫌な予感がした彼は松下に尋ねる。「松下、予備の制服がある部屋知ってるか。」・・・続く。

Re: コンプリヘンシブ ( No.23 )
日時: 2025/08/05 12:44
名前: 梶原明生 (ID: WwlU5OLB)

・・・「知ってますけど、・・・まさか。」「そのまさかだよ。」嫌な予感は的中。海保官に化けた藤崎が柊子の指示で海保の施設を廻りはじめた。トレーニングルームに差し掛かった時、一人の海保官が倒れているのが目に飛び込んできた。「おい、しっかりしろっ・・き、君は。駐車場に来てくれるはずだった深見君。誰にやられた。」「ど、ドロレス・・・」「ドロレスがなんだって。おいっ」心臓マッサージを始めたところで、別の女性海保官が悲鳴を上げる。「君、ぼさっとしてないで直ぐに救急車。それからそこの君も、私に代わって心臓マッサージ。」「は、はい。」二人の海保官が手分けして役目を果たすのだが、その隙を突いて消える藤崎。こういう場合、まるで上長のように堂々と振る舞った方がいいことを知っていた。車に戻る藤崎。「これ後で遺失物として警視庁に回しといてくれないか。」松下が目を丸くする。「これ、やっぱり海保官になりすましていたんですか。」「いいや。ただ落とし物を拾ってあげただけさ。それより深見君だがね、毒を盛られたらしい。すぐに救急車を呼んだが、助かるかわからん。そこでこのスマホ。落ちてたから拾ってきた。深見君のものだ」そんなわけないじゃないですか。これ窃盗ですよ。」「いやいや落ちてただけさ。それに事件に関わる重大な手掛かりなら文句はあるまい。敵が無法ならこちらは無茶で叩き潰す。それが我々の流儀だ。」早速警視庁に戻る藤崎達。柊子はスマホを調べ始めた。「間違いないですね。彼がSNSの発信源です。ただ・・・」新田が尋ねる。「ただ何だ。」「一介の海保官がここまで辿れないアカウントを複数作れるでしょうか。」「協力者がいたと。」「はい。」「よーし皆、聞いたろ。働いてくれ。深見のこれまでの経歴、人脈、ここ数日の足取りなんでもいい。美山と手分けしてパソコンと言う利器を使って調べあげてくれ。一番有力な情報を見つけた者にはステーキとスイーツを奢る。」一斉にタイピングを始める要員達。すると早速開口一番に技術担当の伊川が手を挙げた。「はい。防犯カメラの映像に幾つかヒットしましたね。三日前の夜、非番だったのかスターバックスに入る深見を発見。誰かと話してるようです。」「よし、その人物を映せるか。」「あー、残念ながらガラス張りの途切れた所のため顔は分かりません。」もう一人が手を挙げる。「はい、その時間の電子マネーやクレカの使用履歴を調べてみたところ、深見と共に店を出てる女性の使用履歴がわかりました。」「よし、でかした。ステーキは君だな。」伊川が反論する。「ちょっと待ってください。先に手を挙げたの自分ですよ。」「わかった。なら二人共だ。更に調べあげろ。」「了解。」また一斉にパソコンに向かう面々。柊子が手を挙げた。「ドロレスの意味がわかりました。」「ほう、それは何だ、」「このスマホのキーワードだったんです。今開いて中身を見てるところですが・・・」続く。


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