複雑・ファジー小説
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- コンプリヘンシブ
- 日時: 2025/03/01 03:53
- 名前: 梶原明生 (ID: BLmVP1GO)
あらすじ・・・混迷を極める昨今の社会情勢。この時代を国や政府が乗り切るためにある専門家によるアイデアが採用された。それが「コンプリヘンシブ プロジェクト」各省庁の専門家でチームを組み、あらゆる事態と事件に対処する。ここまでは従来通り。しかし、ここからが違った。「省庁に限らず、アトランダムに選出されたあらゆるエキスパートに、それぞれのパイプラインとなって心臓部になってもらう。」つまりは壁を開けてお互いを共有し合う前代未聞のチーム作りを許可したわけだ。しかし問題はその土台をどこにするか。最終的に防衛省と警視庁が揉めたが、「まだ国民の多くは警察手帳に重きを置く傾向にある。また、単調的に説明しやすい。」として、やむなく「警察庁、警視庁」に本部を置く事で決定した。かくして、あらゆるエキスパート8人が警視庁別室総合特別対応室に集められた。しかも初日から特別に警察手帳と特殊拳銃が支給された。それぞれクセのある8人だが、国と国民を守るため、日夜あらゆる事案、事態、事件に「コンプリヘンシブ」達が挑んでいく。・・・8人の所属組織は以下の通り。防衛省(特戦、別班?)、警視庁、消防庁、海保、医療機関、マル暴、文科省、芸能界。
- Re: コンプリヘンシブ ( No.32 )
- 日時: 2025/09/08 16:04
- 名前: 梶原明生 (ID: quQfBDMh)
・・・相浦駐屯地所属の水陸機動団は、「日本版海兵隊」と称される、九州の島嶼部防衛を担う精鋭部隊だ。まさか彼が特戦に行く前はそこの人間だったとは。「救う側と狙う側。どちらの海猿が強いかはわかるだろ。」そう心で叫んで逆に藤崎が赤川を締め上げる。失神寸前で海面に上昇する藤崎。赤川も一緒だ。しかし、SSTの狙撃班にはそれが争っているように見えたのか。あるいは消したかったのか。・・・PSGー1狙撃銃の銃弾が赤川の頭部を貫通した。真っ赤に海面を染めながら、沈む彼を助けることも出来ずにただ狙撃班の方向を睨む。腕を撃たれて手当てを受けていた相良も同じだ。数日後。メンバーは本部のオフィスにいた。天川が椅子の背もたれに背中を預けて気だるく喋る。「なーんかスッキリしない一件でしたね今回は。」斎賀が同調する。「本当っすよ。どうしてこんな。」藤崎は珍しくダンマリだ。新田が入る。「皆、聞いてくれ。たった今報告があった。日勤待機は解けた。政府の見解は容疑者死亡のまま書類送検。大志田、水島の殺人及び深見に対する殺人未遂は全て赤川の公金横領の発覚を恐れての犯行と発表する。」松下が立ち上がる。「はぁ、何ですかそれ。朴や李の組織の話は。奴らの事は闇に葬る気ですか。水島さんの家族には何て。」「松下。」藤崎が首を横に振る。新田が続ける。「そうだな。だが、事件は解決。不要な衝突も避けられたんだ。とりあえずは勝ち星としよう。確かに彼の母親に解決の一報を入れられないのは残念だが。我々にはどうすることもできない。」藤崎が頭後ろに両手をやりながら問う。「赤川から取ったあのUSBはどうなります。」「ん、あれはな。丁重にアメリカさんに渡すことになった。大変助かったと喜んでいたぞ。」「ケッ。大方そうだろうと思いましたよ。まさに漁夫の利とはこの事ですか。美味しいところだけ持っていく。」「まあそう言うな藤崎。全ては丸く収まってくれたんだ。」「はいはい。」そっぽを向く藤崎。「それからな、サプライズがあるぞ松下。お前が探していた不審船の生き残り、今警視庁の食堂に来てる。」「本当ですか。」意気揚々と立ち上がる松下。黒石、天川、そして藤崎たちは、面会する松下を見守った。「あ、な、た、が、マツシタさん。」辿々しい日本語で話す女性。在日朝鮮人で人身売買されるところを命からがら逃げていたのだ。今はコンプリヘンシブの被害者保護支援制度を受けている。「ごめ、ん、なさ、い。私脱北した見、だ、から、か、く、れる、しかなかた。」「もういいのよ。事情はわかってるから。あなたが廉の最後を見たのね。」「は、い。私いしょ倒れたフリ、してた、ら、松下さん名前、言われて、これ、渡して、きた。ずと、返し、たかた。」テーブルに置かれたのは松下に渡すはずだった結婚指輪。・・・続く。
- Re: コンプリヘンシブ ( No.33 )
- 日時: 2025/09/10 00:06
- 名前: 梶原明生 (ID: 1Lh17cxz)
・・・あの日、サプライズがあると言われてデートする予定だった。そんな時非常呼集がかかり、あんなことに。それまで抑えていた感情が溢れんばかりに松下は嗚咽した。「結婚しよう。」そんな廉の声が今になって聞こえた気がした。「松下を頼む。」「藤崎チーフ、どこへ。」「もう二、三片付ける案件があるんでな。」背中で語り、手を振った。久寛警視監のオフィスに向かっていた。「おや、これは新田主任。向かう先は同じですか。」「ああ。不本意ながら。」「それは余計でしょ。じゃあ、ショータイムと行きますか。」通路にspらしきスーツ姿の男達が立ち並んでいる。「警視総監からの接近許可証だ。久寛警視監に会わせてもらおう。」「新田主任、どうやらペンより拳が好みのようだ。」並いるspと格闘戦を繰り広げつつも、オフィスにたどり着く二人。「何だ新田。また私の部下に怪我を負わせたか。お前はとんでもない放蕩野郎だな。」「そりゃ、どっちの話で。これは警視総監並びに法務省、総理大臣からの逮捕許可証です。」「バカな。一体何の罪でそんな話が出る。」「残念ながら、渡したUSBの中に、あなたの協力記録もありました。」「な、何。・・・」閉口する久寛。藤崎が割って入る。「あんた、偉そうに日本の政治家は中国朝鮮に尾っぽを振る売国奴が多いと言ってたそうじゃないですか。人の事言えた義理か。」「うぬぬねっ・・・」何も言えなくなる久寛。そこへ十和田、竹中、塩谷のいつものトリオが現れる。「警視総監からの命令でしてね。後は我々が引き受けます。コンプリヘンシブの方々はお引き取りを。」新田が皮肉混じりに言う。「なるほど、また美味しい手柄だけはちゃっかり警察さんが持って行くわけか。」「警察・・あなたは同じ警察側では。」うっかりしたとした顔を見せる新田を見逃さなかった。「もしかして新田主任、こっち側だったりして。」「行くぞ。」無視するかのように立ち去る新田。翌日、相良と藤崎、そして松下の三人は水島家を訪れていた。「ありがとうございます。これであの子も報われます。」渋柿を食べたかのような顔つきになる三人。松下が言いかける。「実は水島さ・・・」言った矢先彼女の肩を掴み、首を振る藤崎。その矢先、消し忘れていたテレビがニュースを示した。「北朝鮮と中国で極秘に政府高官が処刑されたようです。誰かはまだ不明です。」・・・終わり。 次回「いじめの報酬」に続く。
- Re: コンプリヘンシブ ( No.34 )
- 日時: 2025/09/11 16:25
- 名前: 梶原明生 (ID: 8GPKKkoN)
「いじめの報酬」・・・・・・・・居酒屋で管を巻く女子会仲間がいた。黒石、柊子、松下である。黒石はシラフなまとめ役にならざるおえない。「何が極秘だバカやろー。一人の家族に真実伝えないでコンプリヘンシブだ。ただのこんこんチキだろーが。」「柊子さん大酒飲みなんすね。クラッカーのイメージ崩れる。」「何だと、クラッカーを舐めんなよ。お菓子でも食ってるかって。バカやろー、んなわけあるか。イメージで人バカにすんな。」「誰もバカにしてませんよ。」松下が絡む。「愛ちゃん、私と同じ愛がつく。だからわかるよね。恋人に死なれた私のために飲もう、ね、飲もう。おねーさーん、焼酎ロック追加で。」「もう二人共よしましょうよ、グダグダですよー。」そこへ珍しい客が現れた。内山久美子である。「そう、その通り。私も旦那を亡くしたからわかるわー。」「あれ、オタク誰。」「誰って、失礼しちゃうわ。最初に会ったでしょうが、こう見えて私本部長よ。」「あー、あの口うるさいおばさんですか。」「お、おばさんはないでしょう。本部長に向かって。」「これは失礼いたしさたっ、アレ、旦那は十和田さんじゃ。」酔いが急に覚める内山。「話せば長くなるわ。あれは15年前。新人だった・・・」「あー長々と話されたら酒が不味くなるんで今度ー。」柊子が茶々入れてくる。その頃、内山修吾という少年が同級生に金を渡していた。「ほら、大人しく出せばよかったじゃん。な、修吾ちゃん。」前蹴りを喰らう修吾。先ほどの居酒屋に戻る。「第一さ、あの藤崎てやつさ、日頃ヘラヘラしてるくせに、たまに怒号飛ぶよね。わけわかんねーつうの。威張んじゃねー。」「柊子さんわかる。私怒鳴られたんですよ。そりゃ、あのことで私が悪いのはわかるけど。」「いいのよ。新田も新田だよ。あいつだけはわけわかんねー。」「わけわかんねー。」黒石が盛り上がる三人を宥める「もう三人共グチャグチャ。どうまとめたらいいのよ。」美山が更に盛り上げる。「もう一軒、もう一軒、・・・あれ、スマホ・・・何、緊急呼び出し。」松下、黒石と目を見合わせる柊子。早速オフィスに戻る面々。「こんな時間に呼び出してすまない。さっき起こった事件だ。伊川、モニターに。」噂の新田が指で指示する。「丸の内線内回りの路線、渋谷駅で中学生と見られる男女二人が柵を乗り越えて接触し、全身を強く打って死亡しました。今現在警察が調べを進めています。」新田が続ける。「これがどうも、いじめによる自殺ではないかと見ている。」「自殺、ならうちの管轄じゃないじゃないですか。」柊子がもう一軒いけなかったくやしさからつい漏らした。「ああ。だがそうとも言えないんだな。」「どうしてです。」「今回のいじめが、文部科学省と関わり合いがあるからだ。」・・・続く。
- Re: コンプリヘンシブ ( No.35 )
- 日時: 2025/09/16 07:17
- 名前: 梶原明生 (ID: pY2UHJTN)
・・・「文部って、まさか私の古巣。」「そうだ。今度はお前のパイプラインが必要になる。・・・で、何で必要かと言うと、この自殺が現麻田総理の政権にヒビが入る可能性があるからだ。政府の肝入りで文部科学省を通じて教育委員会に、新しいいじめ対策の打診を行なっていた真っ最中だ。そこでこんなド派手な中学生の自殺が同時に二人も起きたとあれば、現政権は何をしていたと叩かれる。ま、叩く政権がどこかはあえて言わないが。とにかくそれで我々コンプリヘンシブの管轄になると言うわけだ。」藤崎が呆れる。「なんだかんだで保身のために税金投入ですか。」「おいおい藤崎、滅多にそんなこと言うもんじゃないぞ。」「冗談ですよ。どこぞの派閥の意見を言ってみただけですよ。」「あーそうか。・・とにかくだ、各自捜査に当たってくれ。藤崎と美山は文部科学省。天川、黒石と、遠藤さん、松下は翌朝に中学生の家族に聞き込み。俺と斎賀は学校を当たる。いいな。」「了解です。」全員が動き出す。しかし美山だけは・・・「やだ。こんな親父と古巣に行けますかってんだバカやろう。」新田が指摘する。「おい、まだ酔ってんのか。」「酔ってません。酒が怖くてクラッカーできるかってんだ。」「藤崎、とにかく酔いを醒させてから行かせろ。」「了解、それでは早速。」何やら徐にウォーターサーバーに行く。大口径の紙カップに並々と水を注ぎ、美山の前に来たかと思えば、予想通りそれを美山の顔面にぶちまけた。「な、何なのよもうーーーっ。」「これが一番だ。ショックと怒りは一番目が覚めやすい。」「こんなの傷害罪にハラスメントよ。訴えてやるからな。」「はいはい。それじゃ行くぞ。二人の子供が死んでるんだ。」それにハッとする新田。スマホを取る。「やぁ、こんな時間にすまん。弥恵と和弥はもう寝たかなと思ってさ。二人共最近変わりはないか。・・そうか。いや、起こさなくてもいいんだ。ただちょっと気になってな。・・うん、また事件だ。当分帰れそうにない。子供達をよろしく頼む。愛してるぞ。」そう言って電話を切った。翌朝、天川、黒石、遠藤、松下のバディは、専用のSUVで各家庭を訪問していた。天川、黒石組は浅井りなと言う女子中学生の家を訪ねた。「何ですか、先ほど警察の方に話したばかりですが。」「いえ、私達は警視庁の別の部署の者でして。ご協力をお願いできないでしょうか。」「はぁ、わかりました。」母親と父親は何も手がつかないと言った雑然としたリビングに通した。「こんな時に不躾なではございますが、りなさんに関してお聞かせください。いじめの兆候はありましたか。」・・・続く
- Re: コンプリヘンシブ ( No.36 )
- 日時: 2025/09/22 12:42
- 名前: 梶原明生 (ID: wNoYLNMT)
・・・母親が口を開いた。「さっきの刑事さんはあまり聞かなかったのに。あなた方は聞いてくださるんですね。わかりませんでした。あの子については最近悩み事がある感じはありましたが、まさかこんな事に。・・・すみません。」口を抑えて立ち去る母親。「申し訳ありません。事が事ですから、私もまだ夢なんじゃないかと思いたいくらいです。」眼鏡の下を拭う父親。「では、りなさんのお部屋を拝見させて頂いてもよろしいですか。」「はい。」早速調べる天川と黒石。「妙だな。」「天川さんどうしたんです。」「少年課か知らんが、前に来た刑事達。調べたと言うより根こそぎ持って行ってる。まるで捜査と言うより、何かを知られたくないみたいな。」「気のせいじゃないですか。それだけ熱心なんですよ。」「アンティークまで持っていくのがか。」「あ、確かに。あ、ジーナシスのアンティークもなくなってる。この机のこの跡は間違いなくジーナシスのアンティークですよ。」「何だ、そのジーナ何とかは。」「えー、知らないんですか。杏珠さんにプレゼントしたら絶対喜ぶのに。」「あいつの名は出すな。」「あいつって。彼女捕まえてなんですか。そんな事なら私が天川さんに相応しいのに。」「何か言ったか。」「いえ、なーんでもありませ〜ん。ん・・・これ。」黒石が引き出しの裏に違和感を感じた。テープでレシートらしい紙を貼り付けてある。「どうやらお宝発見のようだな。刑事達もそこまで気が付かなかった
ようだな。」「ええ。これ、ロッカールームの暗証番号付きですよね。」「渋谷駅のロッカーか。いくぞ。」「はい。」早速動き出す二人。「ご協力ありがとうございます。私達はこれで失礼します。」一声かけて立ち去ろうとしたのだが。「娘はいつ帰りますか。」「それは私がお答えかねます。詳しくは警視庁までお問い合わせください。」「何を。・・・何を調べるって言うんですか。それで娘が生きて帰ってくるんですか。なぁ刑事さん。」掴みかからん勢いで迫ってくる姿に、黒石はたじろぐが、天川は違った。「浅井さん。私もかつて愛する人を失ったことがあります。絶望のどん底に突き落とされました。だからわかるとまでは言いません。ですが、どうか奥さんを支えてあげてください。あなた方が崩れていく姿が一番辛いのがりなさん自身ですから。」泣き崩れる父親の肩をただ優しく掴む天川。車に戻ると黒石が関心していた。「さすがは天川さん。ベテラン医師だとあんなに人を宥められるんですね。」「違う。」「え、・・・」シートベルトをしながら答え、エンジンをかける天川。「愛する人を失っていない者にはわからない。ただそれだけだ。」助手席に手を掛けバックする。一方、学校側を調べに行った新田班は渋谷佐々木中学校の校長と教頭から話を聞いていた。「ですから、先ほどの警察の方々にお話ししたように、いじめの事実などありませんでしたし、うちの学校にそんないじめを行う生徒などいません。二人の担任から話を聞きましたが、クラスでいじめの兆候すらなかったとのことです。」「随分と早い解答ですね。」・・・続く。
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