複雑・ファジー小説
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- コンプリヘンシブ
- 日時: 2025/03/01 03:53
- 名前: 梶原明生 (ID: BLmVP1GO)
あらすじ・・・混迷を極める昨今の社会情勢。この時代を国や政府が乗り切るためにある専門家によるアイデアが採用された。それが「コンプリヘンシブ プロジェクト」各省庁の専門家でチームを組み、あらゆる事態と事件に対処する。ここまでは従来通り。しかし、ここからが違った。「省庁に限らず、アトランダムに選出されたあらゆるエキスパートに、それぞれのパイプラインとなって心臓部になってもらう。」つまりは壁を開けてお互いを共有し合う前代未聞のチーム作りを許可したわけだ。しかし問題はその土台をどこにするか。最終的に防衛省と警視庁が揉めたが、「まだ国民の多くは警察手帳に重きを置く傾向にある。また、単調的に説明しやすい。」として、やむなく「警察庁、警視庁」に本部を置く事で決定した。かくして、あらゆるエキスパート8人が警視庁別室総合特別対応室に集められた。しかも初日から特別に警察手帳と特殊拳銃が支給された。それぞれクセのある8人だが、国と国民を守るため、日夜あらゆる事案、事態、事件に「コンプリヘンシブ」達が挑んでいく。・・・8人の所属組織は以下の通り。防衛省(特戦、別班?)、警視庁、消防庁、海保、医療機関、マル暴、文科省、芸能界。
- Re: コンプリヘンシブ ( No.24 )
- 日時: 2025/08/08 01:36
- 名前: 梶原明生 (ID: IGWEqUps)
・・・「パワハラ以外に何があるのか?」「あまり知りたくなかったこと。とでも言いますか。水島崇のパワハラやイジメに関する証拠映像がありましたが、それよりも厄介なものが。・・・」柊子と新田は松下をつい見やる。頭を掻きながら彼女を呼ぶ新田。「松下、すまんが来てくれ。それから藤崎と天川は水島崇の実家に・・・」「もう行きましたが。」柊子が答える。「そうか。あー、松下。その、今回の捜査からは外れてもらう。」「何故ですか。今回私がいなければ始まらない捜査のはず。その私が何故。」「何故かは言えない。これは主任命令だ。しばらく自宅待機、まさか逆らう気か。」「くっ・・・」さすがにそれはできない松下。無言で立ち去るが、それを追いかける黒石。「ねぇ、愛菜さん。私もわかる。こんなの理不尽よね。」「あなたにはわからない。」「それは私が元芸能人だから。チヤホヤされてばかりって。」「そこまで言ってない。」エレベーターの扉は閉じた。一方藤崎と天川は水島の実家で母親と会っていた。「あの子の死の真相に近付けるなら、協力は惜しみません。」仏壇の遺影を見ながら言う母親。「ええ、助かります。崇さんは何か調べてる様子はありませんでしたか。何か預かっているものはありませんか。」「いえ。警察の方に全てお任せしたもので、これ以上は何も。」「そうですか。」視線を窓の外に向けた藤崎。「水島さん。あの黒いセダンの車。いつもあそこに停まってるんですか。」「いえ、あんなところに車が停まっているのを見たのは初めてですが。」天川と目を合わせる藤崎。「奥さん、部屋の奥で姿勢を低くしててください。」拳銃を抜きながら構えてる姿に母親は驚愕した。「一体なんなんですか。」「あなたを守るためです。いいから従ってください。」急いで奥の部屋に行く母親。玄関を開けようとしている音が聞こえる。「ウーバーイーツがプロの鍵開けしてお届け。なわけないわな。」「藤崎さん、笑えないっすよこの状況。」「わかってる。手筈通りさ。」シグ226E2拳銃を握る力が増す。数人入ってきたところで叫んだ。「警察だ。手を挙げろ。不法侵入罪だ。」言った矢先二人手を挙げて、三人目が背中向きに拳銃を撃ってきた。間一髪で見切って避け、その隙に3人は玄関を出て車に向かう。「追うぞっ。」藤崎が先頭に出て玄関を出るが、更なる拳銃射撃が彼等を襲う。合間を縫って藤崎が発砲。犯人の一人に銃傷を負わせて倒すも、残り二人は車で逃げ去った。天川が無線連絡を入れる。「現場から黒のセダン逃走。至急緊急配備願いたい。それからすぐに救急車。」しかし藤崎は容赦ない。傷口を握りしめて犯人に雄叫びをあげさせた。「どこの何者だ、言え。誰に雇われてる。」「藤崎さん、不味いですよそんな。」「悪いな。これが特戦の流儀でな。・・さぁ吐け。」・・・続く。
- Re: コンプリヘンシブ ( No.25 )
- 日時: 2025/08/18 09:16
- 名前: 梶原明生 (ID: Mt7fI4u2)
・・・「グワーッ」断末魔の叫びが広がる。「ありがとう。それを聞きたかった。」天川が不思議がる。「どう言うことです。奴は何も喋ってませんが。」「喋る必要はない。拷問は何も言葉を引き出す為ばかりじゃない。あいつかなり耐えてた。つまり素人じゃない。かなり訓練を受けたプロと言うことになる。」「まさか。・・・」「そのまさかだよ。パトカーと救急車来たぞ。」「マスコミには何て。」「そうだな。暴力団の抗争でもあったと遠藤さんに報告してもらうさ。行くぞ。」「はい。」二人は早速車に戻る。本部に帰って来て早速新田に報告する。「一応水島のお母さんには被害者保護プログラムに入ってもらいました。」「そうか。藤崎、天川、大変な災難だったな。」「なーに主任、いつものことで。で、やっぱり奴さんは例の。」「ああ。例の将軍様の国の人間だ。」「やっぱり。しかし益々厄介ですね。単なるパワハラやイジメ問題ならまだしも、国家間となると・・・」「ああ。だがいずれにしろ知らぬ存ぜぬで通すさあの国は。」柊子から緊急伝達がある。「新田主任。表に(仮の本部前に)外事課トップが来てます。」「やーぱりな。嫌な予感当たった。俺の元上司だ。」そう言って上にあがる新田。「これはこれは久寛警視監。何か御用で。」「惚けるな。お前たちがうちの縄張り荒らして好き勝手してるそうじゃないか。コンプリートだか何だか知らんが、下手すると外交問題だぞ。即刻水島崇の件から手を引け。」「左様でございますか。では手を引かせなけれならない何かやましい事があるんですね。」「君はいつもそうだ。はぐらかすかと思えば変なところで人の痛い腹を刺してくる。・・・ところで何だか殺風景だなこの部屋。人もいないし。本当にここが本部か。」「はい。左様でございます。」「チッ・・まぁいい。とにかくこの件から手を引け。警視監命令だ。」「こちらは内閣総理大臣命令ですが。」「何・・・」「我々はプロよりもプロです。この国を蔑ろにするような真似はいたしません。だからこそ任されるコンプリヘンシブなんです。お分かりいただけるでしょうか。」「どうなっても知らんぞ。」怒り心頭に立ち去る久寛警視監。その頃既に藤崎、遠藤、黒石、天川は現場に向かっていた。柊子と伊川の努力により、遂に深見と会っていた謎の人物の特定に成功したのだ。彼らは某アパートに到着し、インターホンを鳴らしていた。「入山銘花さん。配達の者ですが。」しばらく間をおいてガチャリとドアが開く。「はい。」「入山銘花さん、警察な者です。入ってもよろしいですか?」・・・続く。
- Re: コンプリヘンシブ ( No.26 )
- 日時: 2025/08/18 10:13
- 名前: 梶原明生 (ID: f..WtEHf)
・・・藤崎が茶々入れる。「警察なじゃなくて警察の、だろうが。」「またそういう・・・」「どうぞ。」入山の抵抗のない対応に二人は拍子抜けしつつ部屋に入った。「天川、遠藤さん、そのまま裏で待機。」小声で呟く藤崎。席に着くと、開口一番に彼が問い出した。「短刀直入に聞きます。入山さん、あなたが海保官の不正を調べていたハッカーですよね。」「ハッカーって今時・・・私だとしたら、どうって言うんですか。」黒石が何かに気づく。「その点滅してるスマホなんですか。」「くっ・・・」その入山の態度に悟る藤崎。「危ない。」黒石を引っ張って姿勢を低くする。パンパンパンとベランダから銃弾が発砲された。「くそっ、また北の連中か。」シグp226拳銃を抜いてベランダに向かって応射する。遠藤が叫ぶ。「どうしました藤崎チーフ。」「気づかなかったか二人共、侵入者だ。」「何ですって。」覆面した男が現れた。「警察だっ、銃を捨てろ。」叫んだが撃とうとしたのでやむなく発砲。腕に当たって不審者は倒れた。「銃を持つな。命は大事にしろ。」天川が走り寄り、眉間に銃口を向ける。手錠を入山に掛けてからやってきた藤崎が覆面の取られた顔を見て驚く。「相良さん。・・・」何と、覆面男の正体は松下の元上官の相良だった。「お前も北や中国の手先か。」「何か誤解してる。我々は見ての通り警視庁の者だ。北や中国の手先なんかじゃない。それよりその射撃、身のこなし、ただの海保官にしては良すぎる。もしかしてSSTか。」「SST・・・何すかそれ。」天川が尋ねる。「SST、正式にはシーセキュリティチーム。即ち海上保安庁特殊警備隊だ。主に海上におけるテロや船上査察における戦術部隊だ。しかしだとすると辻褄が合わない。あなたにそんな経歴はなかったはず。つまりはだな。」「つまり何です。」遠藤が聞く。「我々と同業者だ。そうですよね相良さん。私が当てましょうか。あなたは監察官室付け潜入特殊部隊の一人では。海保にも監察官室がある。つまりは昔で言う内務調査班だ。その中には秘匿で各管区に元SSTの隊員を潜入特殊部隊員として入れることもあると噂には聞いていたが。まさかこんな近くにいたとは心外だ。天川、手当てしてやれ。」「はい。」応急処置を施して車まで連行した。「あんたらこそ、噂に聞くコンプリヘンシブか。」「ほう、SSTの方にも意識してもらえてたとは光栄だ。で、もうそろそろ話してもらえませんかね。互いに同業者のよしみで。」「ふ、陸さんに同業者呼ばわりされるとは・・・あ、いや、失敬。確かにご推察通り私は監察官室付け潜入特殊部隊員だ。福岡管区のSSTにいた私は40代で体の限界に苛まれていた時、監察官室の一人から召喚された。それでSSTにいた記録は抹消され、関東管区に教官として入った。入山は最近私が雇ったクラッカーだ。」藤崎達は全員顔を見合わせた。・・・続く。
- Re: コンプリヘンシブ ( No.27 )
- 日時: 2025/08/21 00:07
- 名前: 梶原明生 (ID: f9c/TndF)
・・・「で、何を調べていたんです。」「
ふ、ここまで辿り着かれたら黙っていても仕方あるまい。実は数年前からある噂が流れてた。」「それはもしかして・・・」「さすがに察しが早いな。一部の海保官が北や中国に寝返り、便宜を図っていると。密輸に人身売買。麻薬ルートの見逃しや要人の密航に至るまで、手引きしていると。そしてついにその海保官を特定した矢先事件は起こった。」「まさか・・・」「大志田廉を知っているのか。」「まぁ、松下の件なので多少は。」「なるほど。さっきの話に戻るが、最初監察官室は先の話は半信半疑だったが、大志田の事で確信した。で、本腰を入れてた矢先にパワハラによる自殺者が出た。いや、殺害されたと言った方がいいか。だが証拠がない。だから水島の親友だった深見に協力してもらってたが、あんなことに。だが、巨大な敵の尻尾を掴むためには直ぐに動くわけには行かなかった。そこへあんたら登場ってわけだ。」「なるほど。糸口は違うが、互いに目指すゴールは同じってわけですな。・・・そこで何してる松下。」突然の違うセリフに驚く面々。開け放ったドアから松下が現れた。「相良教官、酷いじゃないですか。今まで知ってて何故。」「悪いと思ってる。だが大義を考えろ。あの時話してたらお前は暴走しかねん勢いだった。そうなっていたら、またもう一人の部下を失う羽目になっていたんだ。それにお前は大志田を愛していた。出来ればお前は何も知ることなく、この事件だけ解決したかった。」「本当なんですか。・・・廉が手引きしてたって。私には信じられない。」「無理もない。だが、松下。その前に我々は何であるか考えろ。この日本と言う国は海に囲まれた国だ。その海の番人たる我々海保官が、裏切ったらどうなる。国はおろか、国民の負託に応えられなくなる。」「わかりました。でも廉が、あの廉が。」「落ち込むな松下。ただ一つだけ救いなのは、大志田は組織から足抜けしようとしていたことだ。恐らく消されたのはそれが原因だ。」「でも何故そんなことをしていた廉がいきなり辞めようと。・・・」「原因はお前だ。」「え,・・・」「大志田の事だ。モテてはいただろうが、愛とは程遠かった。そんな時、お前が海保官として入った。そこから奴の動きに変化が生じた。それをよく知っているのは松下、お前だろ。」彼女の脳裏に彼の笑顔と思い出が走馬灯のように巡った。涙が止まらない。「私が気付いていたら・・・」「よせ、お前の責任じゃない。全ては大志田を陥れた連中のせいだ。」その時藤崎に柊子から連絡が入る。「どうした。」「今回の件、北朝鮮や中国が絡んでるんですよね。」「ああそうだ。」「調べてみたんですが、その大志田やその他の海保官が関わっているにしては利益が小さいんです。」「何だって。」「恐らくですが、国レベルと言うよりは、小さい組織レベルの利益率しかないんです。国が関わっていて、この程度の利潤では辻褄が合いません。」「それはいいニュースと捉えていいのか。」「少なくとも国レベルで事を構えるよりは。」「わかった。・・・相良さん、うちと合同で捜査に当たろう。」・・・続く。
- Re: コンプリヘンシブ ( No.28 )
- 日時: 2025/08/26 12:39
- 名前: 梶原明生 (ID: gYh1ADSg)
・・・「わかりました。うちのチームが待機してます。召集しましょう。」こうして合同捜査が開始された。入山は柊子の隣でパソコン作業している。「あなたクラッカーなんですって。」「そう言うあなたは。・・・」「安心しなさい。私も元クラッカーよ。」「へー凄い。よろしく。」「こちらこそ。」笑顔になる二人。相良が車両に入ってきた。「やはり怪しいのは特殊救難潜水士の赤川保通。」松下が食ってかかる。「バカな、赤川さんを知ってます。まさに救難隊のエースですよ。そんな人がスパイだなんて。」「信じたくないのはわかる。だが、水島も深見も、手にかけられた可能性が高いのは赤川以外いないし、やつの金銭感覚もおかしいんだ。海保官にしては、その給料に見合った使い方をしていないばかりか、以前からギャンブルにのめり込んでいて、借金があったのにいつのまにか全部完済してる。不自然過ぎる。だから間違いない。」藤崎はモニターを見て気がついた。「相良さん、赤川動いたよ。」「動いたか。尾行頼みます。」「了解。遠藤さん。」「あいよ。」彼がドライバーとして赤川の車を追跡する。「慎重にな。今までSSTや外事課の捜査の目をくぐり抜けてきた連中だ。少しでも不自然さがあったら接触はおらか、組織の人間は消える。」「分かってますよ。こう見えてもマル暴ですよ。尾行は慣れてますって。」藤崎の一言に返す遠藤。しばらく走ると、赤川の車はあるフェス会場に着いた。「ぬいフェス・・何だそれ。」「あれ、藤崎さん知らないんですか。アイドルも結構好きなぬいぐるみのフェスですよ。」黒石の横槍に困惑の表情。「何とまあ変わった趣味があるようで。」「そうか。」柊子が呟く。「今まで分からなかったはずです。まさか外事課もぬいぐるみフェスで接触しているなんて思いにもよらなかったはず。」「なるほど、じゃあ、例の組織幹部がここに来るってか。だがな・厳つい俺たちが行ってもな。」皆、黒石に目が行く。「え、え、私・・・」自分を指差す黒石。お得意の変装で、メルヘンチックな服で会場に入る。「キャーッこれ可愛い。じゃなかった。仕事仕事。今赤川、メイド服風の女と会ってます。」「ん、この女もしや。・・・元国家安全部の李春明じゃないか。」「何ですって。」「男みたいな名前って学校時代にいじめられたとか。今は北朝鮮の中国大使館付け外交補佐官になっていたはずだが。それが何でこんなとこに。」入山が茶々を入れる。「その情報古いですよ。今は貿易会社朴凛の幹部社員ですね。」「パクリン。今そう言ったか。」「はい。」・・・続く。