二次創作小説(新・総合)
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜
- 日時: 2024/02/13 00:57
- 名前: 紅茶 (ID: 3OoKbooX)
はじめまして紅茶です
本作品はゲームダンガンロンパのオリジナル小説です。
この小説の舞台は希望ヶ峰学園ならぬ勝ち組ヶ丘学園です。
本作に原作のキャラクターを登場させるつもりはありませんが、紅茶の都合の勝手で出てくる可能性がありますがお許しください。
ストーリーに関してはまだまだわかりにくり部分があります(特に学級裁判です)。修正したら良い場所などコメントしてくださると嬉しいです。
ストーリー中に登場する落ち武者というキャラクターは原作で言うモノクマです。本作にモノクマが出てくることはありません。
小説は不定期更新です、遅くなったりすることはあると思います。どうかご理解ください。
episode1 士導瑠香編
登場人物紹介 >>2
prologue 〜旅立ち〜 >>1 >>7
chapter1 アンラッキーリフレイン >>8-17
chapter2 超高校級のドM伝説に栄光あれ! >>18-30
chapter3 精神暗転 >>31-41
chapter4 落ち武者式ソナタ第36楽章〜敗北 >>42-50 >>53-56
chapter5 負け組に咲く悲しみの花 >>57-68
chapter6 絆の旋律と負の不協和音の調べ >>69-78
番外編
一話>>80 二話>>81 三話>>82 四話 >>83
episode0 士導静流編
prologue 「ようこそ勝ち組ヶ丘学園」>>85-87 >>91-92
登場人物紹介 >>88-90
chapter1 ほうき星のように闇に消えて >>93-96 >>98-105 >>107-108
chapter2 負け組より生まれた漆黒の怨念 >>109-116 >>117-125
chapter3 人類史上最もロマンなのは絶対的絶望ではなく絶対的爆発 >>126-134 >>135-139
chapter4 絶望の深淵 >>140-154
chapter5 死と恋のバラード >>155-172
chapter6 「アダムが耕しイヴが紡いだ時誰が負け組だったか」 >>173-185
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.136 )
- 日時: 2018/06/10 21:05
- 名前: 紅茶 ◆wiCxtrVptM (ID: JQeqCE/N)
士導
「宇津木がプールに行ったのにはちゃんと意味があるんだ。なぁ鍵村?」
鍵村
「あぁ。昨日の夜の話だが、貧血で倒れた私は宇津木の見舞いに行ったんだ。そこで宇津木本人から聞いたんだけど、宇津木は毎朝日課でプールに行っていたらしい」
清水
「なるほど。つまりプールにいたのは偶然ではなく必然で、それを犯人も知っていたということだね」
地近
「だけど、宇津木さんの日課を知っているのは鍵村さんだけなんじゃ」
憩崎
「じゃあ鍵村は宇津木を殺した犯人なんじゃねーの?」
柴白
「でも、奈夜ちゃんが犯人ならわざわざ自分から疑われるようなこと言わないと思うけど」
海土
「つーか、そもそもプールにいたことが俺にはどうも納得できねぇ。だってあいつは病み上がりだったわけだろ。いくら毎日行くとしても休むだろふつう。宇津木が【プールに行ってない可能性】もあるんじゃねぇか?」
【プールに行ってない可能性】 ← 『湿った布切れ』
士導
「海土、これを見てくれ」
海土
「あん?何か若干湿ってるが、なんだそれ?」
士導
「プールで泳ぐ時に必ず着るものだ」
捕鷹
「確かにそれは証拠になるな。濡れているということは少なくとも水には浸かったということだ」
黒薔薇
「宇津木さんがプールで泳いでいたとなると逆にプールで殺されたのは可笑しいような気もするが、あれほどの爆発がプールでも起こったなら犯人も濡れているはずじゃないか。でも、今ここにいるメンバーの中に濡れている人間はいないが」
憩崎
「更衣室に入って水しぶきを浴びるのを防いだんだ。爆発までは多少なりとも時間はあるはずだ」
司翼
「いや、そもそも宇津木が正気なら宇津木も爆発する前に逃げるはずだ。だけど宇津木が泳いでいたとなると宇津木を一度プールに沈める必要がある。爆発の時にしろ宇津木を沈める時にしろどっちみち水には触れないといけないんだ」
地近
「てことは犯人はどこかで乾かしたってことだね。乾かすと言えば暖房だよね」
図川
「僕と憩崎くんは清水くんに頼まれて宇津木さんの部屋の暖房を切りに行ったんだ。案の定部屋には暖房がついていたよ」
士導
「いや、でもその後に俺と鍵村が管理室に行ったときにはまだ暖房はついていたぞ。お前らが切り忘れたのかと思っていたが」
憩崎
「俺様たちは確かに消したはずだが、俺らが出て士導が来るまでの間に犯人がつけたってことか」
清水
「実際は憩崎くんが暖房を消さずに戻ってきたんじゃないの?」
黒薔薇
「実際消したのは誰なんだ。図川か?憩崎か?」
図川
「僕は見ていただけだよ。憩崎くんは消したって言ってたけど」
士導
「またお前の策略か」
清水
「ん?」
士導
「消した消してない以前に暖房は爆発の影響で壊れてたんだ。犯人もそれには気づいていたはずなんだ。だけど、華狗也は暖房がついてるから消してきてと言った。だから犯人は暖房がまだついているものだと判断し、暖房をつけたままにしたんだ。まだ乾ききっていない自分の身体を乾かすためにな」
清水
「そしてそれをした人物つまり犯人はもうわかっているよね」
士導
「犯人は
憩崎だな…?」
憩崎
「だからちげーって。だって身体は濡れてないだろ。暖房が壊れたなら一体【何で乾かす】んだよ」
【何で乾かす】 ← 『数個あるモーター』
士導
「そもそも爆発が起こった時点でほとんど乾いていたんだ。暖房とこれのおかげでな」
司翼
「それは宇津木の部屋にあったモーター?何のモーターか分かったのか?」
士導
「あぁ。これはドライヤーのものだ。そしてこのドライヤーは全て更衣室から持ち運んできたものだ」
柴白
「それだけの機材があれば確かに身体は乾かせそうだね」
清水
「さらに裏付ける証拠として憩崎くんは更衣室からなかなか出なかったし、きっとあれはドライヤーを女子更衣室等から戻そうとしていたんだろうね。女子更衣室には宇津木さんの学生手帳があれば入れるし」
士導
「言い逃れはできないぞ。答えろ憩崎!!」
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.137 )
- 日時: 2018/06/25 23:38
- 名前: 紅茶 ◆wiCxtrVptM (ID: X2iPJYSg)
憩崎
「だからちげーってんだ!」
清水
「じゃあ憩崎君は君が犯人ではない証拠を持っているのかい?僕らの意見に対抗できるくらいの証言ができるかい?」
憩崎
「逆にお前らはできるのかよ。この俺様を納得させるような完璧な推理ができるのかっ!」
士導
「わかった。俺の推理でお前を納得させてみせる!」
ク ラ イ マ ッ ク ス 推 理 ! !
act1
まず犯人はプールにいる宇津木を気絶させ、プールの底に沈めたんだ。さらに、宇津木の息の根を完全に止めるために落ち武者に配られた落ち武者爆弾を使いプールの中で爆殺させたんだ。プールの中で爆発させることで音と衝撃を和らいだため寝ている俺たちまでその音が届くことはなかった。
act2
犯人は爆殺後、宇津木がプールにいたことを知られないようにするために宇津木を回収後部屋まで運んだんだ。その時宇津木の運搬に気を取られすぎたのか爆弾の後始末とプールサイドの水の処理をし損ねた。
act3
部屋に戻った犯人は宇津木の身体と自分の身体を乾かすために暖房を入れた。ただ、暖房だけでは朝食までに乾ききらないと悟った犯人はプールの更衣室にあるドライヤーを部屋まで持ち込んだ。しかし、それでも身体は乾くことはなかった。だから、犯人は宇津木の身体が濡れていることを隠すため落ち武者爆弾を使用し全ての証拠を隠滅しようとした。
act4
死体発見アナウンス後全員が部屋に集まった時もおそらく犯人は身体が濡れたままだった。だからこそ犯人は宇津木の部屋の暖房で学級裁判までに乾かそうとした。その時には爆発の影響で暖房は壊れていたにも関わらず華狗也の言葉に惑わされ暖房はついていると勘違いし嘘をついてしまったんだ。それが決定的証拠になるとも知らずにな
士導
「そして、これが可能だった犯人はお前だ!憩崎紫熊!!」
憩崎
「…くっ」
ク ラ イ マ ッ ク ス 推 理 終 了 ! !
憩崎
「何だやるじゃねーか。もう全部わかってたのかよ」
落ち武者
「犯人が決まったように答え合わせの時間に入りましょうか。お前たちはお手元にあるスイッチで投票してください。果たしてその答えは合っているのでしょうかねぇ…」
学 級 裁 判 閉 幕 ! !
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「大正解です。宇津木まりんを殺した犯人は超高校級の中二病憩崎紫熊君でした」
またこの時間だ。みんなの中に落胆と不安が芽生えるこの時間。一瞬とはいえ一緒に過ごしてきた仲間が負け組に堕ちたこの瞬間。
「何でなんだよ。何で宇津木を殺したんだよ」
沈黙を破る俺の声に反応するように固く握った拳が俺に襲いかかる。殴られた俺の頬は湿っていた。
「お前はこうされてやり返そうとは思わないのか?いきなり殴りかかるのは理不尽とは思わないのか!」
憩崎の瞳から透き通った水が頬を滴り、床に落ちていく。その顔は殴られて赤くなった俺の頬とは比べ物にならないぐらいに赤く熱をもっている。固く握っていた拳はいつの間にか力を振りほどき自分の涙を拭っていた。
「運が悪かったんだ。今日の朝俺はたまたま早く起きて特に意味もなくプールに行ったんだ。そこには宇津木がいたんだ。大量の爆弾を持ってな」
「なっ!!」
「宇津木は誰かを殺すつもりだったんだ。その現場を見てしまった俺様は宇津木に殺されかけた。だから仕方なくやり返したんだ。金なんかに釣られたわけじゃない。信じてくれないかもしれないが、お前らと生きたかった。生きてここから出たかった…」
擦れて弱弱しくなった憩崎の言葉が俺たちの耳に染み込んでいく。ドラマならお決まりの綺麗ごとを並べて憩崎にたたきつけてやろうと思ったが、言いたいことを言った憩崎は泣きじゃくり床に倒れこみ聞く耳を持っていなかった。
「違うね。踏みとどまれるチャンスはいくらでもあった。それでも殺してしまったのは負けたからだ。ここから出たいという欲にね」
「清水。お前の言う通りかもしれないが、意外と人って踏みとどまれないんだぜ。お前みたいなやつばっかじゃねぇんだ」
ゆっくりと憩崎は立ち上がる。いつもの威厳など感じさせない穏やかな笑顔が華狗也に効いたのかその一声以降はただ憩崎を見つめるだけだった。
そして憩崎は足を引きずりながら処刑場の方へ一歩ずつ一歩ずつ歩を進め、そして
「落ち武者、早く始めてくれ」
「わかりました。では、張り切っていきましょうか。おしおきタイムの始まりですよ」
俺の身体の震えは完全に消え、最後に無意識に呟いていた。
「…神は…何度でも生き返るって」
「あぁ」
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.138 )
- 日時: 2018/07/07 20:30
- 名前: 紅茶 ◆wiCxtrVptM (ID: X2iPJYSg)
憩崎紫熊くんがクロに決まりました
おしおきを開始します
超高校級の中二病のおしおき
「堕天」
目を開けると俺は大空に向かっていた。
背中にはモーターが取り付けられ、手足は動かすことのできないよう完璧に結ばれている。
「憩崎くん、どうですか。鳥になった気分は?今から君になっていただくのは鳥ではありませんがね」
そう言うと、落ち武者は手元にあったスイッチを押した。
ポチっと
ガタンッ
機械音と同時に俺の背中に取り付けられていたモーターは俺の身体を空中に置き去りにし宇宙に飛び去った。
俺の身体は雲を突き破り、地面に急降下していった。もちろんパラシュートなんかはついていない。
俺様の過去が走馬灯のように蘇る。生きたいという気持ちが高まってくる。
もしかすると運が良ければ全身骨折で済むんじゃないのか、なんて希望まで湧いてきた
「!?」
最後の雲を突き破った俺様の前に無情にも現れたのは、長い槍のようなアンテナだった。
俺の身体はアンテナに急速に近づていく。身体を降下の軌道からずらそうとするが、手足を縛られているからか思ったように動けない。
目の前までそれは近づてい来る。
アンテナなんかじゃない圧倒的絶望。死。
死を前にしてやっと俺の思考が正常に戻る。
「俺はまだ
しにたくねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええええええ!!!!!」
音もなく心臓にアンテナが突き刺さる。
憩崎が完全に止まったのを確認した落ち武者は静かに笑っていた。
「神も醜いゴミに堕ちてしまいましたねぇ、憩崎くん」
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.139 )
- 日時: 2020/03/11 20:14
- 名前: 紅茶 ◆wiCxtrVptM (ID: 6Q1uGoC5)
憩崎の処刑があった数時間後
「どういうことだ清水華狗也」
プールに呼び出された華狗也は呼ばれた声に振り返った。
「やぁ、黒薔薇さん。君から僕を呼んでくるなんて光栄だよ」
いつも顔で黒薔薇の方を見つめるも、普段の冷酷な目をしている黒薔薇には届かなったのか表情も一つも変えない。
「どういうことだ」
「黒薔薇さん、もっと具体的に言ってくれないと答えれるものでも答えれないよ」
「お前は言ったな。中田をそそのかし殺人を起こさせたと。言ってたことと違うじゃないか」
冷酷な目は一層その冷たさを増した。その影響か華狗也の顔から笑顔が消えた。
「そんなことを未だに考えていたとは。確証もない言葉を信じすぎじゃない?それが嘘だったから天岸を殺したの?それとも別の理由?」
「お前は何者だ?お前の過去を一通り調べさせてもらったが調べても調べても何も出てこない。まるで清水華狗也という人間すらこの世に存在していないみたいだ」
はは、と華狗也の顔に笑顔が戻る。と同時にふぅ、と安堵の息も漏らした。まだ僕のことは知られてないのか。まだ僕の正体を暴かれるわけにはいかないからね。やるべきことが残っているわけだし。
「そんなに僕のことを知りたいなら天岸に聞いてから殺せば良かったじゃない」
「天岸を殺したことを知っているのも可笑しな話だ。お前まさか勝ち組の人間か」
そのまさかと言いたいところだけど、もう少し迷ってもらわないとね。
「どうだろうね。仮にそうだとしたら天岸と同じ道を辿ることになるんならなお言えないな。どれだけ情報を掴んでいてもあくまでここは君たちの領地だからさ」
消化不良の顔をする黒薔薇に対して満面の笑みをする華狗也は笑いながらプールを後にした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ゴミの山、そう呼ぶのが正しいだろう。漁っても漁っても出てくるのは虚偽の内容が書かれた書類と今必要としていない情報だけだ。勝ち組が負け組に先手必勝するには必ずつかまなければならない情報。それがどれだけ探しても見つからない。負け組に先を越されて持っていかれてしまったのか。ただ、士導さんも黒薔薇もいない負け組が未だに活動している理由はなんだ。例の彼女に希望を託しているということか。負け組が希望を託すってのも可笑しな話だが。
「松谷さん。手が動いていないようですが」
「考え事をしてた。考えれば考えるほどわからなくてね。そっちはどうだい?」
「負け組に書き換えられた書類ばかりですね。最悪やつらに先に情報を持っていかれた可能性もあるかと」
「士導さんの話によれば、おそらく負け組でも知っているのは黒薔薇だけらしい。だから書き換えられている書類はそもそも無視でいいよ。本当に必要なのは負け組も知らない情報なんだからさ」
ゴミの山を前にして溜め息しか出ない。僕が探しているのは世界を守るために必要な書類なのに答えの書類を知らないのだから、それを探す術がない。
そもそも本当なのか。黒薔薇に目をつけられた負け組を引率するかもしれない女の子がいるって。
chapter3 人類史上最もロマンなのは絶対的絶望ではなく絶対的爆発 完
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.140 )
- 日時: 2020/03/11 00:36
- 名前: 紅茶 ◆VvOwwpM9GA (ID: 6Q1uGoC5)
chapter4 絶望の深淵
コロシアイ学園生活残り20日
「なるほど。そういうことだったのか。彼女には協力者がいたということか。まぁ予想通りと言えば予想通りかな。一人でこのコロシアイを仕組んだとは思えなかったしね」
「ただ君も気を付けなよ。僕らが話しているこの瞬間も見られているかもしれないしさ」
朝時間を告げるチャイムが鳴ると俺たちはいつも通り食堂にいた。重く沈んだ空気は誰も話さないことが物語っている。
当然だ。また仲間が二人も亡くなったんだから。憩崎君もこのコロシアイが始まっていなければ人を殺すことなんてなかったはずだ。全てはあいつが悪い。そう全てあいつが。
なんて思っているいると場の空気なんか察さずにあいつは現れた。
「重い重い。お前たちがそんなだと死んでいった方たちが悲しみますよ」
「…何しに来た?」
「そんなこともう分かっているくせに。焦らす程もったいぶる話でもないのでさっさと発表してしまいましょうか。おめでとうございます。お前たちが踏み込めるエリアをまた少し増やしておきました。そこにはまだ知らない秘密のヒントが隠されていたりいなかったりするので是非探索してくださいませ」
落ち武者はそれだけ言い残すと煙とともに俺たちの前から姿を消した。
重い足を一番最初に動かしたのは華狗也だった。
「行こうよ静流君。止まっていたって良いことなんてないよ。僕らはできることをし続けないといけないんだ」
「確かにそうだね。泣くことなんていつでもできるけど今は清水君の言う通りだよ。私に何ができるかわからないけど協力するよ」
「ありがとう柴白さん。他のみんなもすぐにじゃなくてもいい。気持ちが整理できたら待ってるよ。僕と静流君と柴白さんで先に行っておくからさ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
今度は今まで封鎖されていた地下への階段が解放されていた。その階段を進んでみると教室が3つあり、階段に近い順にA、B、Cと扉に書いてある。
華狗也に無理やり連れてこられた俺だったが、新しい場所に興味がないと言えば嘘になる。
「さて、3つ教室があるね。せっかくだしみんなで1つずつ見ていこうか」
華狗也が言うと教室Aに入っていった。
今までに開放された部屋と違いそこは普通の教室だった。俺が思い描いていた普通に学生生活を送る場所、のはずだった。
そこに何かが置かれているわけでもなくただ使われていない空間が広がっていた。念のためロッカーや机の中も覗いてみるがなにもない。何もなかったことを互いに確認し合った俺たちは次に教室Bに入ったが、教室Bも教室Aと同じような光景が広がっていた。
しかし、最後に入った教室Cには教室の真ん中の机の上に目立つようにして大きな本が一冊置かれてあった。
「勝ち組ヶ丘学園名簿。昔俺が図書館で見たことがある本だな。確かあの時は俺の才能だけ塗りつぶされていたけど」
自分の才能が分かると思いながらその本を開いてみると考えもしないことになっていた。
「俺の名前が…なくなってる!」
いや、と華狗也が横から口をはさむ。
「静流君の名前がなくなっているというより、本自体が別のものに代わってない?」
「うん私もそう思う。確か前は士導君の才能の箇所が白く塗りつぶされていたけど、そんな箇所すら見当たらなくなってる」
「同じ名前の本が二冊あるということはどっちかは偽物だろうね。それがどっちなのかはまだ判断できないけど。それも考えながらお茶でもしない?」
ー食堂ー
地下の教室から持ち帰った本をテーブルの真ん中に置き俺たちは腰をかけた。
華狗也が言ったことが本当だとして、新しく見つけた方が本物だった場合、俺はどうなるのかそればかり考えていた。そもそも勝ち組ヶ丘学園の生徒ですらない。だとしたら俺の才能は思い出せないわけではなく才能自体がないことにならないか。
「静流君そんな怖い顔ばっかしていないでさ。楽しくお茶しようよ。僕が考えるに自分が本当に勝ち組ヶ丘学園の生徒かどうかそんなところで悩んでるじゃないの?」
「…」
「図星みたいだね」
「なぁ教えてくれよ。お前は全て知っているんだろ?だったら俺の才能もわかるはずじゃないのか?」
「なるほどそういうことか。ただ、同じ学園の生徒同士なら僕じゃなくても静流君の才能を知っている人が一人くらいいたって可笑しくないよね。だけど誰も君の才能を知らないのは思い出せないからじゃなく静流君に関する記憶を失っているからだと思う。そして僕もその一人だよ」
確かに今に至るまで誰も俺の才能について語った人はいなかった。仮にこっちの本が本物で俺が勝ち組ヶ丘学園の生徒でなかったとしても同じ超高校級の才能を持つ人間同士なら一人くらい知っていても可笑しくない。華狗也の話に筋は通っている。
「お待たせ。疲れた時にはやっぱりこれだよね」
そう言いながら柴白がトレーから3つのハーブティーをテーブルに置いた。
ハーブティーのフルーティーな香りとミントの香りが俺の頭温かく休めてくれているような気がした。
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37