二次創作小説(新・総合)
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- ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜
- 日時: 2024/02/13 00:57
- 名前: 紅茶 (ID: 3OoKbooX)
はじめまして紅茶です
本作品はゲームダンガンロンパのオリジナル小説です。
この小説の舞台は希望ヶ峰学園ならぬ勝ち組ヶ丘学園です。
本作に原作のキャラクターを登場させるつもりはありませんが、紅茶の都合の勝手で出てくる可能性がありますがお許しください。
ストーリーに関してはまだまだわかりにくり部分があります(特に学級裁判です)。修正したら良い場所などコメントしてくださると嬉しいです。
ストーリー中に登場する落ち武者というキャラクターは原作で言うモノクマです。本作にモノクマが出てくることはありません。
小説は不定期更新です、遅くなったりすることはあると思います。どうかご理解ください。
episode1 士導瑠香編
登場人物紹介 >>2
prologue 〜旅立ち〜 >>1 >>7
chapter1 アンラッキーリフレイン >>8-17
chapter2 超高校級のドM伝説に栄光あれ! >>18-30
chapter3 精神暗転 >>31-41
chapter4 落ち武者式ソナタ第36楽章〜敗北 >>42-50 >>53-56
chapter5 負け組に咲く悲しみの花 >>57-68
chapter6 絆の旋律と負の不協和音の調べ >>69-78
番外編
一話>>80 二話>>81 三話>>82 四話 >>83
episode0 士導静流編
prologue 「ようこそ勝ち組ヶ丘学園」>>85-87 >>91-92
登場人物紹介 >>88-90
chapter1 ほうき星のように闇に消えて >>93-96 >>98-105 >>107-108
chapter2 負け組より生まれた漆黒の怨念 >>109-116 >>117-125
chapter3 人類史上最もロマンなのは絶対的絶望ではなく絶対的爆発 >>126-134 >>135-139
chapter4 絶望の深淵 >>140-154
chapter5 死と恋のバラード >>155-172
chapter6 「アダムが耕しイヴが紡いだ時誰が負け組だったか」 >>173-185
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.151 )
- 日時: 2020/04/13 18:29
- 名前: 紅茶 ◆VvOwwpM9GA (ID: 6Q1uGoC5)
士導
「犯人は…海土じゃないのか?」
海土
「何を言い出すかと思えば、冗談はよしてくれよ」
捕鷹
「犯人は図川を浴場に呼び出そうとしていたことから犯人は男なのは間違いない。だけど、いきなり海土が犯人と決めつけて良いのか?犯人と言うからには【何か証拠】があるのだろうな」
【何か証拠】 ← 『変色したシャツ』
士導
「証拠はこれだ。よく見ると図川が着ていたシャツは黒く変色しているんだ。俺と捕鷹は海土が『パラズン』を制作するところに立ち会っていたんだけど、その時海土は『パラズン』に混ぜる予定だった瓶を割ってしまいその中に入っていた液体をシャツに浴びてしまったんだ」
捕鷹
「確かにそうだったな。だが、その液体を浴びたが海土のシャツは黒く変色していなかったはずだぞ」
士導
「それだけでは変色しないんだよ。あの液体は水を混ぜることで黒く変色するんだ。実際、瓶を割った後、海土が液体を水と混ぜたことで黒く変色していた」
海土
「待てよ。『パラズン』にはその液体ももちろん入ってるんだぜ。そうなると俺以外も全員が所持しているわけだし俺に罪を擦り付けようと自分から【『パラズン』をシャツにかけた】かもしれないだろ」
【『パラズン』をシャツにかけた】 ← 『黒薔薇の証言』
士導
「残念だけどそれもないんだ。なぁ黒薔薇?」
黒薔薇
「そうだな。私はここにいる全員に『パラズン』が使われたかどうか確認していたが、柴白以外の全員はまだ『パラズン』を使わず自分で持っている。その柴白の『パラズン』だが、柴白の近くに爆弾の破片とは違う透明な破片が落ちていた。その透明な破片が柴白の『パラズン』だと考えている。
清水
「柴白さんは、何らかの理由で浴場に訪れそこに『パラズン』を持って行ったんだ。そこで爆発に巻き込まれ柴白さんは吹っ飛ばされた。その時に『パラズン』も割れてしまったんだろうね」
士導
「つまり、あの液体を浴びた可能性があるのは海土以外に考えられないんだ」
海土
「そもそも犯人のシャツと図川のシャツが入れ替えられている前提で話しているがもともと図川のシャツって可能性もあるだろ。大体、あの液体さえ浴びれば黒く変色するわけで、浴びるのは『パラズン』じゃなくてもいいんだ。だから、図川が理科室に入り間違えてあの液体を浴びてしまったのかもしれないぜ」
鍵村
「何かないのか?あのシャツが犯人のものだと確定できる【証拠】は」
【証拠】 ← 『図川が着ていたシャツ』
士導
「図川が着ていたシャツを見てくれ。図川のものにしては少し大きすぎるだろ。図川は超高校級のマスコットってだけあって体格はかなり小さい。それにも関わらず、大きめのシャツを着ているし、それにボタンを掛け違えているんだ。自分が着ていたらボタンを掛け違えていることに気づくはずだ。だけど、ボタンが直されていないってことは犯人が着させたんじゃないのか」
清水
「その大きめのシャツは海土君のものなんだね」
海土
「お前らは間違ってる!あいつが着ていたシャツは黒く変色していたが、俺は浴びただけで黒くはなってなかっただろ」
士導
「そうだ。あの液体は水と混ぜなければ黒くはならない。だから、お前は水に触れたんだ」
海土
「言っとくが俺は水なんて浴びてねぇぞ」
清水
「海土君何か勘違いしてるんじゃないの。水を浴びる必要はないよ。殺された場所は浴場だったんだよ。湿気が水分の代わりをしてくれるし、サウナに行けば汗だってかくはずだからその時は変色に気付かなかったのかもしれないけど、じわじわと変色してきたはずだよ」
司翼
「なるほどな。図川が偶然に浴場にきたと見せかけるために自分のシャツを着せたが、その時は気付かなかったのか」
清水
「海土君何か反論はないの?」
海土
「あ、あるに決まってんだろ。柴白だ。柴白はどうして浴場に来たんだよ。あいつが図川を殺したんじゃないのかよ」
清水
「柴白さんが浴場に来たのは偶然だったってもう結論が出たと思ってたよ。そうだね、柴白さんが犯人ではない証拠があるとするなら。黒薔薇さんは知ってるよね」
黒薔薇
「そいつに言われて答えるのも気分悪いが、そうだな。私は昨日の夜時間になる前に食堂の前あたりで柴白を見てるんだ。さらに付け加えるなら食堂を出た後で浴場に向かってるようだったな。まぁその意図はわからないが」
鍵村
「柴白が夜時間前に食堂に?それから浴場も?」
士導
「どうしたんだよ」
鍵村
「私のせいだ…。私はみんなと話し合った後保健室に寄ったんだ。そこで柴白に」
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鍵村
「今日は忙しくなりそうだ。夜になる前にご飯くらいは済ませておけ。それに昨日は一日中寝てたんだ。できれば風呂にも浸かっておけ」
柴白
「そうするよ。ありがとう奈夜ちゃん」
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鍵村
「私があんなこと言ったから柴白は浴場に…」
清水
「黒薔薇さんが見た柴白さんが最後だったら彼女はその後すぐに殺されたんだろうけど。その時の彼女は凶器となった落ち武者ソードを持ってたの?」
黒薔薇
「いや何も持ってなかったな。厳密には右から見ただけで左手に何かを持っているかは確認できなかったが、落ち武者ソードを持っていたら流石にわかるだろ。これは予想だが、そもそも左手は『パラズン』を握っていて落ち武者ソードなんて持つ余裕はなかっただろうがな」
鍵村
「答えろ海土。お前が犯人なのか」
海土
「…」
鍵村
「黙り込んでんじゃねーぞ!答えろ!」
士導
「落ち着け鍵村。それに海土。お前が答えないなら、今から今回の事件を最初から説明する。その説明に少しでも間違いがあるなら反論してくれ。これで俺は最後にしたいんだ」
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.152 )
- 日時: 2020/04/15 18:34
- 名前: 紅茶 ◆VvOwwpM9GA (ID: 6Q1uGoC5)
クライマックス推理!!
act1
最初に犯人が利用したのは、落ち武者が動機と一緒に俺たちに配ったスマートフォンだ。犯人はそれを使い図川を浴場に呼び出した。犯人は図川が浴場に入った後凶器を持ち続いて浴場に入った。そこで、犯人は図川を落ち武者ソードで殺すつもりがそうはいかなかった。犯人はそこで図川ともみあいすぐに殺すことができなかった。だから、犯人は図川を殴りつけたりして気絶させた。しかし、そこでもみあった結果図川の歯が階段に落ちたんだ。
act2
図川を気絶した後犯人は今回の犯人を誤認させるためにサウナの仕切り板を破壊しようとサウナに爆弾を投げ入れた。そこでも誤算があったんだ。サウナが爆発した瞬間柴白はそこにいたんだ。おそらくは風呂に入ろうとして浴場に入ってから図川の叫び声でも聞いたんだろうな。手に『パラズン』を持っていた柴白はサウナに行ってしまった。そこで爆発に巻き込まれたんだ。
act3
サウナを爆発させた犯人は図川をサウナまで移動させた。そこで初めて犯人は柴白が横たわっていることに気が付いたんだ。だけど、その時まだ柴白は生きていた。まさに犯行の途中だった犯人を目撃してしまった柴白は口封じのために殺され、続いて図川も落ち武者ソードで刺し殺した。
act4
二人を殺してしまった犯人は急いで偽装工作に取り掛かった。犯人が思いついたのは図川のスマートフォンと柴白のスマートフォンを入れ替えることだった。でもその時犯人は気がつかなかったんだ。柴白宛てにメッセージが来ていたことをな。さらに、犯人は図川が偶然浴場に来たことを装うために自分が着ていたシャツを図川に着せたんだ。ここでも、犯人は一つミスをした。自分の着ていたシャツに水を浴びると黒く変色する液体が付着していることを失念していたんだ。
そして、それが可能だった人物。それは海土慎之介!お前しかいない!
クライマックス推理 終了!!
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士導
「これが事件の全貌だ」
海土
「ああ。反論する気力も起きねぇくらい完璧な推理だ。そうだ、犯人は俺だ」
落ち武者
「議論の結果が出たようですので、それでは投票タイムに移りましょうか」
鍵村
「まだだ。まだ聞いていない。柴白を…。二人を…。なぜ殺した!」
海土
「ただ、出たいそう思っただけだ。俺は一刻も早く外に出る理由があるんだ。どうやって出ようか考えている時ちょうど首謀者探しが始まった。全員が首謀者に夢中になっている今だからこそチャンスだと思ったしそれに清水が見たっていう人影に罪を擦り付けられるかもしれねぇ、そう思ったんだ。それ以上は何もない。本当にそれだけだ」
鍵村
「何がそれだけだ。それで得たものと失ったものを理解しているのか!得たものなんて何もなかっただろ。お前の欲に柴白は」
落ち武者
「鍵村さん。言いたいことは投票タイムの後で言ってもらえますか。お前たちは手元のスイッチでクロだと思う人物に投票してください。もうそんなことしなくてもいい気もしますが、一応ルールなのでね」
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「今回も大正解です。柴白さんと図川君を殺した犯人は海土慎之介君なのでした」
静かな裁判場に落ち武者の声が響き渡る。
海土は黙ったまま歯を食いしばっていた。それが自分がしてはいけないことをしてしまった後悔なのか、クロだって決まってしまったことに対してかはわからない。ただ、どんな理由があろうと自分のために海土が仲間を殺したのは事実だ。許されることではない。
だけど、俺は口を開けなかった。どんなに海土を責めても、問いただしても戻ってこない。失ったものはもう戻ってこない。
俺はそう考えていたが彼女だけ違った。
「お前の欲のために柴白は殺されたんだぞ」
「すまない」
「お前がやったことは希望に溢れる才能を持った人間の行為ではない。お前がしたことは”超高校級の負け組”と同じだ!」
「じゃあどうしたらいいんだよ!謝って済む話じゃないのはわかってる。だけど、謝るしかできない俺に他にどうしろってんだ。後の処刑で死ねば許してくれるのか。どうしたらお前の怒りをおさめることができるんだよ!」
外から見てもわかる。鍵村の握りこぶしがブルブルと震えている。そのまま、その手で海土に殴りかかった。
バシッという音が響いた。
「私の怒りはおさまらない。それはお前が死んでもだ」
海土はよろめきながら立ち上がると鍵村の目を見つめて言った。
「お前は俺みたいになりたいのか?違うだろ。俺は憎まれるほどのことをした。それはそうだ。一生俺のことを憎めばいい。だけど、落ち武者はそういうところに付け込んでくるんだ。お前が今やるべきことは生きるってことなんだよ。俺を恨むのも憎むのも生きてなきゃできねぇだろ!」
鍵村の握りこぶしがほどかれ、その場に崩れ落ちた。膝だけじゃない。涙もだ。行き場のない怒りは涙に形を変え、裁判に零れ落ちた。
「さて、話も終わったようですので、そろそろやりましょうか。今回も超高校級のマッドサイエンティスト海土慎之介君のためにスペシャルなおしおきを用意しました」
「鍵村。柴白が最後に呟いたこともお前のことだった」
「それでは、張り切っていきましょう。おしおきターイム!!」
「奈夜ちゃん。ありがとうってな」
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.153 )
- 日時: 2020/04/16 21:40
- 名前: 紅茶 ◆VvOwwpM9GA (ID: 6Q1uGoC5)
海土くんがクロに決まりました
おしおきを開始します
超高校級のマッドサイエンティストのおしおき
「ケミカルパラライズ」
目を開けると俺はそこにいた。
普段俺がいつも両手に持っているもの。
そう、ここはきっとフラスコの中だ。
俺の目の前には落ち武者の大群がいる。全ての落ち武者が右手に同じ容器を持っている。
俺ならばそれが何かわかる。落ち武者が持っているのは俺が作った『パラズン』だ。
先頭の落ち武者が『パラズン』を俺が入っているフラスコに注ぎ始めた。
『パラズン』の効果は浴びると体が硬直してしまう。
全ての落ち武者がこのフラスコに『パラズン』を注ぐってことはつまり一歩もここから動けなくなってしまうってことだ。
「まずい!」
俺は注がれる『パラズン』を浴びないようにフラスコから出ようとするが、足場のないガラスは俺を外に出すことを許さない。
「くそっ!!」
俺にはまだしないといけないことがあるんだ!ここから出る義務があるんだ!
こんなところで立ち止まれないんだよ!
しかし、『パラズン』はフラスコの底の全てに届きわたっていた。
『パラズン』が俺の靴から染み込み既に足に接触していた。
動かない。
その効果を期待して作ったのだから実験は成功だとも言える。俺の発明は確かに成功している。だからこそ、外の世界に出て俺のこの才能を使わなければならない!
だが、『パラズン』は言うことを聞かない。
次々と注がれる『パラズン』は既に腰の近くまできていた。
下半身は全く動かなくなっていた。感覚のかの字もない。
自分の発明品が自分の命を奪い取るきっかけになるとは俺も思いもしなかった。
『パラズン』が注がれる音はもう耳元まできていた。時々水面に跳ねた『パラズン』が顔に当たる度その部位が動かなくなる。
もう笑うことすらできなくなっている。
俺は目を瞑り、これから起こる出来事に備えることにした。
そして、『パラズン』は俺の全身を包み込んだ。
そこから先はもう覚えていない。いや、覚える必要もない。
「さてと、これでできました。超高校級のマッドサイエンティストの『パラズン』漬けでございます」
海土の体は『パラズン』で満たされたフラスコの中でぷかぷかと浮いていた。
超高校級のマッドサイエンティストは毒薬の海をいつまでもいつまでも泳ぎ続ける。
まるで、死んだ魚のように。
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.154 )
- 日時: 2020/04/18 22:08
- 名前: 紅茶 ◆VvOwwpM9GA (ID: 6Q1uGoC5)
海土の最期を見届け、四回目の学級裁判が終わった。
絶望だけが漂う裁判場に俺たちはまた立っていた。生き残った者たちはいずれまたこの絶望を味わうことになってしまう。
もう俺たちはコロシアイなんてしない。いつも同じことを思っていた。だけど、その度に俺たちの思いは踏みにじられる感覚になる。
「お前たちの人数ももう半分を切ってしまいましたね。最初の頃にコロシアイなんてしないと言っていましたが」
俺たちは何も言い返せないままその場にただ立ち尽くすことしかできなかった。今までの俺ならまた同じ感覚に苦しめられていただろう。俺以外もきっとそうだ。だけど、ここまで生き残ってきた仲間たちは違う。
「だからこそだ。俺たちはもう絶対コロシアイなんてしない」
「その言葉を何度聞いてきたと思っているのですか?自分自身の心にも聞いてみてください。何度その言葉に騙され続けてきたか」
「じゃあ実際お前の言う通りになるか見ていればいい」
「君は知らないんだね。団結って言葉をさ。人は苦しい状況になればなるほど信頼し合い団結するんだよ」
「だから何だと言うのです?まぁその言葉が自分たちの胸に返ってきた時はそれはそれで面白いのでこれ以上の言及は避けておきましょう。それではまた明日」
裁判場を後にした俺は自室のベッドの上で永遠と天井を眺めていた。
俺はここから出た後で何がしたい?海土には明確な理由があるようだった。ここから出ることに必死だったから出た後のことなんて考えたことがなかった。そもそもの記憶が失われているわけだから俺自身が何をしていたかなど考えても結論など出ないわけだが。
何故か分からないが俺の体は勝手にベッドを飛び出し海土の部屋に向かっていた。
部屋には至る所に試験管やフラスコが置かれていた。それも揃いも揃って中に見たことのない色をした液体が入っていた。きっと自室で何かの実験をしていたのだろう。むしろそれ以外に何をしていたのか想像もつかない。
ホワイトボードにも専門用語を思われる言葉がたくさん書かれていた。
俺はそのホワイトボードに貼られたボロボロになった紙切れに目が留まった。
「余命一ヶ月の妹がいる…」
そう書かれていた。海土の動機はこれだったんだ。確かに海土はここに来た時から理科室の品揃えに感動し、入り浸っていた。それは科学者としての血が騒いだのではなく、最初から全て妹を助けるための薬を作ろうとしていたんだ。そして、実際に外に出ようとしたってことは妹を助ける薬は完成したってことじゃないのか。この大量の試験管やフラスコの中に完成品が眠っているかどうか俺には分からない。
結局特に薬品に触れることなく俺は海土の部屋を出た。
今日は夜もずっと起きていたから眠気がいつもより早くに襲ってくる。俺はふらふらとした足取りで今度こそ眠るため自分の部屋に向かっていた。その目の先俺が見たのは、誰でもない人影だった。
華狗也が言っていた俺たちの誰でもない人影。俺たちを苦しめている黒幕の正体。
眠気で思考がまとまらないけど、俺はその影に向かって無心に走っていった。人影が角を曲がっていく姿をしっかりと確認した俺はその後に続いて角曲がった。
「あれ?静流君?そんなに慌ててどうしたんだい?」
俺が追いかけた先にいたのは華狗也だった。いやそんなはずはない。
「お前こそこんなとこで何してんだよ。いたんだよ。お前が見たっていう人影がさ」
「え!?それは僕も手伝うよ。僕はこっちを探すから静流君はそっちをお願い」
俺は華狗也に言われた通りまた走り出した。
「お前私を殺そうとしていただろう?」
食堂に腰かけていた華狗也に黒薔薇は投げかけた。
「学級裁判を運営しているんだからわかるでしょ?容疑者にすることは簡単だけど、犯人にするには証拠が不可欠なんだよ」
「今お前について徹底的に調べている。お前が生きていられるのも今のうちだ」
華狗也は笑ったままの顔をやめない。それどころか静かにだが、さらに笑い出した。
「まだ僕のことを探っているの?まぁ仕方ないか。天才がいなくなってるからね」
さらに華狗也は続ける。
「僕を殺したければ殺せばいい。僕の役目は生きることじゃない。導くことだ。たとえ死んだとしてもね役目を全うできるならそれで構わない。そういう風に僕はできてるんだ」
華狗也は立ち上がり黒薔薇を残して食堂を出た。
「勝ち組が勝つ順当すぎるゲームなんて何が面白いんだ。そうは思わないか?」
chapter4 絶望の深淵 完
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.155 )
- 日時: 2020/04/19 21:39
- 名前: 紅茶 ◆VvOwwpM9GA (ID: 6Q1uGoC5)
chapter5 死と恋のバラード
コロシアイ学園生活残り15日
ピンポンパンポーン
「お前たちグッモーニン!朝が来ました。目覚めの時間ですよ」
結局あの人影が誰なのかは分からなかった。華狗也が俺に報告してこなかったことから考えるとあいつも人影の正体が誰なのかはわからなかったのだろう。だけど、正直半分嘘だと思っていたことが本当だった。みんなに言うべきなのか。それともそうじゃないのか。正体が誰かを分かってから言う方がみんなを混乱させなくて済むかもしれないな。とりあえずは華狗也に聞きに行こう。
「静流君も見つけられなかったのか。僕の方もさっぱりだよ。どこかに黒幕しか知らない抜け道があるとしか思えないほど不自然だよ」
「俺やお前が見た人影は本当に黒幕なのか?今まで姿を見せることもなかった黒幕がここに来て二人にも目撃されるなんてなんか可笑しくないか?」
「どうだろうね。それすらも落ち武者の策略だったりしてね。わざと僕らの前に姿を現したり」
華狗也の発言を遮るように俺たちの間に落ち武者が現れる。
「今我の噂をしていましたか?いやーすっかり我も噂されるほどお前たちに受け入れられるようになったとは。学園長として嬉しい限りです。それよりもお前たちはこっちですよね。また学級裁判を生き延びたお前たちに新たな場所についての地図をご用意いたしました。一人一部ずつあるので、順番に取って行ってください。それでは」
俺は落ち武者が置いて行った地図を一部手に取りそれを開いてみる。どうやら新たに開放されたのは勝ち組ヶ丘学園の四階らしい。四階にあるのはプラネタリウムに校長室、それに資料室と植物庭園。
俺が地図を片手に各部屋を探索しに行こうとした時だった。
「ちょっとまて。これだけ人数も減ってるんだし四階を探索し終えた後会議するってのはどうだ?見落としている情報だってあるわけだし」
「それは大いに賛成だよ。というか帰ってきたら僕からも提案しようと思ってたよ。じゃあ一通り見終わったら食堂に集まろうか」
華狗也の一声に全員が頷き、俺たちはその場を後にした。
ー資料室ー
地図を渡された時一番目に残ったのはここだった。俺たちが欲している情報などとっくに黒幕に処分されているだろうがそれでも俺にとってはまだ必要な情報が多く眠っているはずだ。
俺は扉を開いて中を覗いてみる。そこは図書室のように棚に本が積まれていた。これだけ本があるなら図書室はなぜ存在しているのかを考えさせられる。
俺はしばらく資料室の中を歩いてみるが、勝ち組ヶ丘学園に関する資料は図書室と同じようなものしかなく俺の記憶は今までと変わりなさそうな気配がしていた。そんな時だった。
「記憶…操作…?」
勝ち組ヶ丘学園の資料とは少し離れたところにある「記憶操作に関する記述」というタイトルに俺の視線は吸い込まれた。
俺の記憶は他のみんなとは違い思い出せない部分が多い。落ち武者は手違いって言ってたけどこれだけ時間が経っても思い出せないあたり黒幕に意図的に忘れさせられている可能性が高い。もしを記憶を自在に操ることができる術があるとすれば、俺だけが才能を思い出せない理由にも説明がつくかもしれない。そう願う一心で俺は本を開いた。
しばらくして本を読み終えたが中に書かれている記述は全て非現実的で未来に向けての理想が書かれたような内容だった。人の記憶を別の人に移し替えることができるとか、記憶を抜き取るとかそんなゲームの中のパラメータように人の記憶を操ることができるなどあるはずがない。
だけど、他に記憶に関係しそうな本はない。唯一の手掛かりはこの本ということだ。記憶に関してだけじゃない。勝ち組ヶ丘学園に関するものもほとんどない。勝ち組ヶ丘学園名簿だって図書室にあったものと同じだ。中身だって違う内容が書かれていたりしない。
「…は?」
タイトルが同じならば内容だってさほど変わらない。こんな小さい記述見落としても仕方がない。
俺が前に見た勝ち組ヶ丘学園名簿の一番下に新しい欄ができていたのだ。名前や才能だけでなく性別まで全て詳細が不明だが、確かに前に図書室で見た時には書かれていなかった。
俺たちが勝ち組ヶ丘学園に入学した時、人数は17人だった。相変わらず俺の名前は書かれていないが、一番最初に見た名簿には俺の名前もはっきりと書かれていた。今更俺の名前を隠す意味なんてないはずだ。だとするとここに書かれている詳細不明の人物は俺たちの誰もが知らない18人目の高校生なんだ。
俺が昨晩見た謎の人影。あれがこの18人目の高校生だとするとこいつが俺たちにコロシアイをさせている張本人、つまり黒幕ってことになるんじゃないのか。だけど、18人目の高校生の記述が少なすぎる。もっと情報がないと黒幕かどうかの問題ではなく存在しているのかも怪しい。こいつを知っている人物。
校長なら俺たち全員を知っているはずだ。
俺は勝ち組ヶ丘学園名簿をなおし校長室に向かった。
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