二次創作小説(新・総合)
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- ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜
- 日時: 2024/02/13 00:57
- 名前: 紅茶 (ID: 3OoKbooX)
はじめまして紅茶です
本作品はゲームダンガンロンパのオリジナル小説です。
この小説の舞台は希望ヶ峰学園ならぬ勝ち組ヶ丘学園です。
本作に原作のキャラクターを登場させるつもりはありませんが、紅茶の都合の勝手で出てくる可能性がありますがお許しください。
ストーリーに関してはまだまだわかりにくり部分があります(特に学級裁判です)。修正したら良い場所などコメントしてくださると嬉しいです。
ストーリー中に登場する落ち武者というキャラクターは原作で言うモノクマです。本作にモノクマが出てくることはありません。
小説は不定期更新です、遅くなったりすることはあると思います。どうかご理解ください。
episode1 士導瑠香編
登場人物紹介 >>2
prologue 〜旅立ち〜 >>1 >>7
chapter1 アンラッキーリフレイン >>8-17
chapter2 超高校級のドM伝説に栄光あれ! >>18-30
chapter3 精神暗転 >>31-41
chapter4 落ち武者式ソナタ第36楽章〜敗北 >>42-50 >>53-56
chapter5 負け組に咲く悲しみの花 >>57-68
chapter6 絆の旋律と負の不協和音の調べ >>69-78
番外編
一話>>80 二話>>81 三話>>82 四話 >>83
episode0 士導静流編
prologue 「ようこそ勝ち組ヶ丘学園」>>85-87 >>91-92
登場人物紹介 >>88-90
chapter1 ほうき星のように闇に消えて >>93-96 >>98-105 >>107-108
chapter2 負け組より生まれた漆黒の怨念 >>109-116 >>117-125
chapter3 人類史上最もロマンなのは絶対的絶望ではなく絶対的爆発 >>126-134 >>135-139
chapter4 絶望の深淵 >>140-154
chapter5 死と恋のバラード >>155-172
chapter6 「アダムが耕しイヴが紡いだ時誰が負け組だったか」 >>173-185
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.176 )
- 日時: 2022/01/12 01:15
- 名前: 紅茶 ◆nByc8bEJCc (ID: PR3Fak4z)
ー食堂ー
「一応約束の時間だけど華狗也と地近はまだ来ていないのか」
夜時間になる寸前。俺たちは集めた情報を共有しあうために食堂に集まっていた。
俺と鍵村も役に立ちそうな情報を両手いっぱいに抱きかかえそれを雪崩のように机の上に広げた。それと同じように他のみんなも集めてきた情報を机の上に流し込んだ。
しかし、思った通り集められたのは勝ち組ヶ丘学園と書かれただけの書類ばかり。黒薔薇は俺たちを惑わせるためにわざと手がかりに似た中身が空っぽの書類や本を用意したのだろう。今のところ俺たちはやつの思い通りになっていると言える。
これを見つけるまでは。
「これを見てほしいんだ」
食堂にいる全員が覗き込むようにして俺の手元にある本に目を光らせる。
「『記憶操作』?これが何かの手がかりになるのか?」
「ああ。まずはこの本の概要を簡単に説明すると人間の記憶を自由に操ることができるようになる。例えば、入学式で落ち武者が俺たちの記憶を奪ったようにな」
「な!?」
「もちろん、いつでもどこでもできるわけじゃない。何かしらの装置を使うみたいなんだけど、それ自体を見つけることができなかった。だからこの本に書いていることは実践できない。ただ、理論上記憶を操作することが可能だということを証明することはできる」
「じゃあその本を持ってきた理由は?私たちの記憶を戻すことができないなら記憶操作なんてないのと同じだ」
「俺も同じことを思っていた。ただこのページの記述が少し気になってな」
俺は該当するページを全員に見せながら紹介する。
”超高校級の勝ち組は我らの希望。負け組に居場所を知られるわけにはいかない。屈辱的だが、我らの未来を救うためこの力を使う”
「なるほど。これは確かに興味深いな。超高校級の勝ち組。少なくともこの文章から読み取れることは勝ち組は負け組と敵対しているってことだな。それに居場所を知られるわけにはいかないという言葉。そのままの意味なら誰かを記憶を操作して誰かを匿っている…?」
そうこの文章は誰かのための文章であることは間違いない。そして、その誰かの正体というのも俺は薄々勘づいていた。
「この超高校級の勝ち組。こいつは華狗也なんじゃないかと俺は思ってる」
俺たちを救うための希望と読み取るのなら唯一記憶が残っている華狗也以外にいない。
「どういうことだよ。じゃあ清水は記憶を戻す方法を知っていてこの学校のどこかで記憶を取り戻したっていうのかよ。そんなことができるはずがない。記憶を管理できる装置があったとしても黒薔薇がそこを見張らないわけがない。もし、黒薔薇がそれを知ったうえで清水に記憶を戻させたのなら黒薔薇と清水は手を組んでるってことだぞ」
「それは今議論しても仕方ない。この本からは清水のことを記載していると読み取れなくもない。また次の手がかりを見つかった時それと今回の手がかりを照合させてより正確な手がかりに近づけていけばいい。だが、手がかりの見つけ方は工夫したな、士導。私たちは勝ち組ヶ丘学園というワードに固執しすぎていたのかもしれない」
「今日はもう夜時間が来る。もはや夜時間なんて関係ないかもしれないけど疲れを癒そう。また明日同じペアで共有の時間は今日と同じ時間にしよう」
俺の一声でみんなが部屋に戻っていった。時には団欒も必要かもしれないが、今は一秒も無駄にできないってことをみんな理解している。明日からはきっとより効率よく手がかり探せるはずだ。本音を言えば今日記憶操作について華狗也の意見も聞きたかったんだけど。
記憶に関してもまだ情報が不十分だ。俺の記憶にだってまだ取り戻せていない。黒薔薇や落ち武者がここまで頑なに与えなかった俺の記憶。何かの手がかりになるに間違いない。
この学園で起こったことが本当に全て現実ならば、確かめなければならない。落ち武者からのあのメッセージを。
俺は真っ暗な廊下をただ自分の部屋に向かって歩き続けた。
何も見えないがもう歩き疲れた道。ずっと同じことの繰り返しでは前に進むことができない。
俺がこの廊下を自分の部屋に向かって迷いもなく進めているようにこの最後の学級裁判は俺たちの、
いや俺の手で終わらせてやる。
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.177 )
- 日時: 2022/01/13 00:32
- 名前: 紅茶 ◆nByc8bEJCc (ID: PR3Fak4z)
コロシアイ学園生活残り7日
コロシアイ学園生活残り6日
コロシアイ学園生活残り5日
コロシアイ学園生活残り4日
コロシアイ学園生活残り3日
ピンポンパンポーン
「お前たちグッモーニン!朝が来ました。目覚めの時間ですよ。さて、残り日数も少なくなってきましたので、時間を有効に使いましょう」
気が付けば、もうすでに5日も経過していた。この期間も俺たちは遊んでいたわけではない。相変わらず膨大な量の本や書類を相手に日々奮闘していたが、記憶のことはおろか他のヒントになりそうなことも何一つ見つからない。救いがあるとすればまだ目を通していない部屋が数か所あるということだ。
「まずは朝ごはんを食べないと…」
ー食堂ー
目の前の料理には手を付けずに神妙な表情の司翼がそこにはいた。俺が食堂に入ってきたことにも気づかずただ空を見つめている。
「考えことか?」
ゆっくりとした動きで首だけこちらの方に曲げると小さく頷いた。
「そうなんだよな。考え事というか喉に小骨が引っかかったような感覚。お前も何か可笑しいとは思わないか?」
「…正直心当たりはないな」
天井に向かってふぅーと大きな息を吐きだすと次の呼吸と同時に俺に顔を向けた。
「疑問に思ってることは2つある。1つは士導と鍵村が記憶に関する情報を共有してくれてからやけに次の手がかりが見つからない。黒薔薇は全ての部屋のロックを解除するとは言ったが、全ての手がかりを与えるとも言ってない。黒薔薇の手のひらの上で遊ばれているようなな気分なんだよな。そしてもう1つは…」
「コロシアイ学園生活の残り日数だろ?」
そこに鍵村が食堂の入り口から食い気味に割り込んでくる。
そのまま、俺たちのテーブルまで歩を進めると対面の椅子に腰をおろした。
「ああそうだ。いつもアナウンスだと思って聞き流していたが今日それを聞いてふと思ったんだ」
「残り日数がどうしたっていうんだよ」
「忘れたのか?残り日数のルールはそれまでにこの学校を出ないといけないわけではなく、0になるまでに俺たちの中にいる内通者を見つけ出すことだったはずだ。内通者の正体が18人目の高校生の天岸だったことも割れているのに毎日カウントダウンする理由が見当たらない」
「それに最後の学級裁判に関してはタイムリミットは黒薔薇が待つことに飽きるまでと決めているからもう日数なんて関係ない。それなのにまだカウントダウンが生きているということは天岸ではない本物の内通者が私たちの中にいる…」
歯切れ悪そうにそう言うと俺たちはお互いの顔を見つめあった。
「悪い冗談だが、そういうことになるな。ただ、その先もあると俺は思ってる」
「その先…?」
「黒薔薇は黒幕なわけだしもちろん全ての答えを知っている。だけど、これまでも一気に情報を俺たちには寄越さなかった。黒薔薇は自分が決めたルート通りに俺たちが進むように常に調整しているということだ。つまり、ここ最近俺たちが手がかりを見つけられなかったのは黒薔薇が考えるルートから外れていたわけだ」
「なるほど。自分が出したヒントを1つずつ答えていくことで次のヒントを出すように黒薔薇が調整していると。そして、今黒薔薇が私たちに出している問題は毎朝流れるアナウンスの正体に気が付けるか?ということか」
「可能性の話だからな。必ずとは言い切れない。それに…」
突然、俺たちにも聞こえるか聞こえないくらいの小さな声で呟いた。
「今の話は全て俺の勘違いでも構わない。黒薔薇を飽きさせないことが重要だ」
ー植物庭園ー
「静流君、丁度いいところに」
古ぼけた数枚の紙切れを華狗也から受け取ると読み取れる単語をいくつか声に出してみた。
「負け組、記憶、そして殺害。これは誰が見つけたんだ?」
華狗也の指先には俺の視界には存在しなかった地近がいた。
「さっき清水君と植物庭園を歩いてたら偶然見つけたんだ。いつからあったのか分からないくらいボロボロになっているけどね」
確かに紙切れはもう破れてしまいそうなくらいボロボロだ。だが、不自然なくらいほとんどの文字は読める。ずっと昔から置いてあったように見せかけて落ち武者が用意したっていう罠だ。
俺はもう一度紙切れに目を通す。
紙切れは3枚に分かれておりいずれも内容は異なるようだ。
”あのお方は純粋な負け組のはず。両親を殺害してまで負け組を脱走する理由がどこにあったのだ”
”記憶を操作して自ら全てを忘れたと聞く。記憶がなければ容姿が同じだけ別人だ。見つけ次第殺害を遂行する”
”やつだけは違った。今でもあいつを尊敬している。勝ち組を尊敬するなど言語道断。やつも殺害対象だ”
俺が3枚の紙切れを声に出して読み終えた時だった。
隣にいた華狗也が突如としてその場に倒れこんだ。過呼吸の症状に、さらに胸を抑えている。ただの眩暈などではないことは俺にもすぐ分かった。
「どうした華狗也!華狗也!」
俺の声も届かない。華狗也の激しい呼吸音だけが静かな植物庭園に鳴り響いた。
「とりあえず、保健室に連れて行こう!」
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.178 )
- 日時: 2022/01/16 23:59
- 名前: 紅茶 ◆nByc8bEJCc (ID: PR3Fak4z)
ー保健室ー
華狗也を保健室に連れていってから数十分後、ようやく起き上がった。
呼吸はだいぶ安定したように思えるが、顔色はまだいつもの華狗也からは想像できないくらい青ざめていた。
「ありがとう。だいぶよくなったよ」
とても良くなったとは思えない力のない声が俺たちの耳を通り過ぎる。
「まだ安静にした方がいい。俺たちがいたからここまで連れてこられたけど、また倒れられたらその時に俺たちが隣にいるとも限らない。ただ、お前を寝かすのも惜しいからちょっと知恵を貸してくれ」
「どうぞ」
「お前には聞きたいことがいくつもあるんだ。とりあえず、さっき見つけた紙切れだな」
俺はポケットから今にも破れてしまいそうな紙切れを慎重に取り出すと華狗也の目の前に置いた。
紙切れを置いた瞬間、また少し華狗也が喉元を抑えたように見えた。体調は余程良くないらしい。
「改めて読んでみても気になる言葉ばかりだな。文章をそのまま読めば、ある負け組の人間が負け組を脱走、そして記憶を全てなくした。問題は3枚目だ。最初の2枚は1人しか登場人物がいないのに対し3枚目だけは登場人物が2人いる。そもそもこの3枚が繋がっているのかすらも分からないが、1つのストーリーとして考えると脱走した人間は3枚目の『やつ』なのか、『あいつ』なのか…」
「鍵村の言う通り繋がっているストーリーなら、脱走したのは『あいつ』の方じゃないか?ただ、脱走したにも関わらずまだ『あいつ』ことを尊敬し続ける人間が負け組にはいると。それが『やつ』と読み取れる」
でもだから何だというんだ。誰が誰を尊敬しているとか俺たちには関係のない話だ。そもそも俺たちは負け組の人間を黒薔薇しか知らない。黒薔薇以外にも負け組が存在するのかすらも分からない。だからこそ、この紙切れの負け組の人間を黒薔薇と仮定するしかない。
「その『やつ』ってのが黒薔薇だとすると黒薔薇は誰を尊敬してるってことになるんだ?華狗也なら何か知ってるんじゃないか?」
「何人か心当たりのある人はいるけど、今の段階では何とも言えないなぁ」
「なら記憶を操作したって記述の方はどうなの?清水君は記憶が残ってるんだよね?この記述にも心当たりあるんじゃない?」
「記憶に関しては僕もよく分かってないんだ。記憶があるとは言ったけど何故記憶があるのかその仕組みは僕ですらも分からない。僕に細工したのは確かみたいなんだけど」
「先に可能性を一つ潰しておきたい。この紙切れの『あいつ』というのは清水ではないのか?」
「黒薔薇さんの反応を見てたよね。見ただけで分かる僕への圧倒的殺意をさ」
華狗也じゃない…?
心の隅にあった希望の種が割れる音が脳内に響き渡る。
俺は確信していたことがあった。華狗也こそが俺たちの希望だと。この紙切れを見た瞬間こそ気が付かなかったが、先日のことと照らし合わせるとパズルがぴったりとはまったような気がしていた。
華狗也は勝ち組の関係者であることは黒薔薇との会話から間違いはないはずだ。華狗也がこの件を何も知っていないのは違和感だ。
清水華狗也、お前は何者なんだ。
学校の外ってどうなっているんだろう?
ベッドで横になりながらふとそんなことを思っていた。
記憶がないままだけど、このまま外に出たとして本当にその記憶は元に戻るのだろうか?
外に出たら楽しいだろうな。こんな閉鎖された空間じゃなくて開放された世界でコロシアイだってしなくていいただただ平和がそこにあるんだ。
今は奪われている記憶だってきっと元に戻るはずだ。そしたら…
記憶が元に戻る…?
もし記憶が元通りになったらどうなるんだ。
もう人の真似事では生きていけなくなる。存在価値がなくなる。
今のままだからこそ輝けるんだ。役割がなくなるなんて想像したら。
嫌だ。
失いたくはない。やっと手に入れた生きる意味。
才能に自信を持てるようになったんだ。
嫌だ…
この記憶を戻しくない。
僕はこの記憶を戻したくない!!!!!
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.179 )
- 日時: 2022/02/21 00:47
- 名前: 紅茶 ◆nByc8bEJCc (ID: O35iT4Hf)
コロシアイ学園生活残り2日
ピンポンパンポーン
「お前たちグッモーニン!朝が来ました。目覚めの時間ですよ。終わりの日も近づいていますので、色々なことを気にかけながら今日も張り切っていきましょう」
ー食堂ー
この日の俺たちは食堂に集まってこれまでに見つけた手がかりを共有しあうことにした。華狗也だけはまだ万全な状態ではないということで自室に閉じこもっているみたいだが、俺たちに残された時間が多くない。華狗也抜きでも進まなければならない。
数日前にも見たことのある光景がまた俺の目に映し出される。各々が集めた書類を机の上に広げる作業だ。
しかし、その中には前回では見られなかった類のものあった。俺は目の前に置かれた紙切れと本を手に取る。「勝ち組ヶ丘学園名簿」と書かれた本、以前図書館で俺が見かけた時は士導静流の文字がなく隠されたように18人目の高校生が隠されて書かれていた。そして、この本には俺たち一人一人の紹介のページが存在する。当時俺たちは俺の名前がないことばかりに気を取られていたが、今考えればもう一つ可笑しいことがあったじゃないか。天岸死恋のプロフィールがない。
俺の右手に握られた紙切れ。誰かが天岸死恋のプロフィールを抜いたんだ。
「その天岸死恋のプロフィール、私が見つけたのだが特にこれといったヒントを見つけ出すことができなかった。だから、お前に一回見てほしいんだ。もしかしたら、お前なら何かに気付くかもしれない」
確かに捕鷹の言う通りぱっと目を通しただけで手がかりになりそうな記述はない。華狗也や黒薔薇なら天岸について俺たちより知ってはいるだろうが、おそらく教えてくれないだろう。華狗也とは仲間で黒薔薇のスパイとして潜り込んでいる情報から味方と考えて良いと思う。誰が送り込んだスパイなのかという疑問は残るが…。
それにまだ内通者問題が残る。今日も相変わらずカウントダウンは進んでいた。司翼の予想通り内通者は天岸ではなく少なくとももう一人この学園に潜んでいる。落ち武者の言うことが本当ならばこの学園に存在したのは天岸含め18人のみ。つまりこれ以上俺たちが知らない人間出てくることはない。
考え込む俺にトントンと司翼が肩をたたく。
「この前の内通者の件で、進展があった。一度内通者として疑われているお前が本当の内通者であることはおそらくない」
「当たり前だろ!」
「だからこそ、お前にだけは言っておこうと思ってな。これは校長室にあった本の一部のメモなんだが内通者についての手がかりになるかもしれない」
そう言って数文字だけが書かれたメモを俺だけに見せる。
微山麗奈。
「この微山麗奈と名乗る者。こいつが黒薔薇琴音の側近的存在みたいだ」
頭が殴られたように痛む。
やっと一つ問題が解消したと思ったらまたこれだ。聞いたことがない新しい名前。
「黒薔薇の側近?だがもうこの学園には俺たち以外いないんだぞ。名前以外に他の情報ないのか?」
「なぜ負け組が超高校級の才能を語っているのかは分からないが、黒薔薇が超高校級のキャプテンを名乗っていたように微山も超高校級のスモールと自称していたみたいだ。すまない、全て断定できる話ではなくてな。その本を持ち帰ろうとしたんだが、落ち武者の妨害にあってな。途中までしか読めていないんだ」
申し訳なさそうな顔を見せる司翼だが、全く新しい情報だ。名前と才能だけを持ち帰っただけでも十分な成果と言える。
微山麗奈。もちろん俺たちの中にそんな名前の人間はいないし、そんな才能をもつ者もいない。だとすると天岸の時のように死んだと思われている人間の中に実は生きて内通者として暗躍している人間がいるのか?
皆の姿を順番に頭のスクリーンに思い浮かべていく。
同じ手口だと仮定すると落ち武者に殺された人間が候補にあたる。最初は中田、次に春ヶ咲、憩崎、海土、最後に天岸。皆俺たちの前で確実に死んでいた。
「清水なら知っているんだろうな…」
司翼の誰に向かってもいない台詞が虚空を貫いた。
しかし、華狗也に聞いたところであいつはそう多くは語らない。俺たちで正体を暴くしかない。
「本当に黒薔薇の側近ならば、落ち武者とも組んでいるということだよな。ここまで来た仲間を疑いたくはないがその繋がりがあるかを俺たちでしっかり見張ろう、司翼。もうこの件に関しては俺たちだけで何とかするしかない。他のやつがどんな言い訳をしようと俺たちが自分の目で見た光景だけが正義だ」
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.180 )
- 日時: 2022/03/21 17:17
- 名前: 紅茶 ◆nByc8bEJCc (ID: O35iT4Hf)
「この中に微山麗奈が紛れ込んでいるのはほぼ間違いないんだろうな。落ち武者が俺の邪魔をしてきたということは続きを読まれれば正体が明らかになったということだろうからな」
落ち武者にしてはあからさますぎる気もするが、本当に司翼の言う通りなんだろうか…。
俺の脳裏にこれまでの落ち武者の言動の数々がフラッシュバックされる。
落ち武者は最初から俺たちに内通者を意識させていたが、このゲームを通して俺たちに何をさせるつもりでいるんだ。才能を持つ人間を殺したいだけなら入学した時点で全員皆殺しにすればいい。なのにこんなにも手間のかかる殺し方を選択したのはなぜなのか。
その時、全身に電撃が走ったような感覚が俺を襲う。
目的は殺すことではないってこと…?殺すではなくコロシアイをさせることに意味があったんだ。
そして黒薔薇からの最終決戦の予告、つまりもう目的は達成の寸前まで進んでいるということだ。
「だが、紛れ込んでいるのは微山麗奈だけなのか?」
司翼の疑問に思わず首をかしげる。落ち武者の話によると学園には俺たち以外の人間がいない。
「確かに落ち武者は俺たち以外の人間は存在しないと言った。だが、コロシアイのスケールを考えてみろ。一つの学校を使い、丁寧なルールを定めて、そのうえ落ち武者まで管理しないといけない。微山麗奈が内通者として黒薔薇側にいたとしても2人でどうにかなるもんなのか?超高校級の負け組という存在が既に2名以上存在している。例えば超高校級の負け組がそういった組織だったとして、そこに属する人間全員が超高校級の負け組ならば他にも超高校級の負け組がいても可笑しくないはずだ」
司翼の言う通りだった。仮に負け組が他にも存在する場合、一番怪しいのは校長か。俺たちの目の前には決して姿を現さない校長。落ち武者の言うことが本当なら校長は学園内にはいないことになる。
「ただ可能性が一番ある校長、士導源は今ここにはおらず、ここにある本を読んでもその存在については全くの不明なままだ」
「その士導源だが、やっぱり士導の親という線を俺はまだ捨てきれていない。まだお前の才能が明らかになっていない。それは士導源と士導静流が親子だからなんじゃないのか?」
「ちょっと聞きたいんだが、司翼は今自分の親について記憶が残っているのか?」
俺には今両親の記憶はないが、それは落ち武者に記憶を奪われていることの弊害かもしれない。
一瞬そう願ったが、俺の願いは無慈悲にも破り捨てられ、地面に叩きつけられた。
「悪いがしっかり記憶がある。だからこそ、なお親子の説が浮かび上がるんだ。けど、悪いことばかりじゃない。2パターンあると思っている。一つはお前の考えの通り士導源が負け組の一員だった時だ。その時はお前も負け組と何らかの形で繋がっている存在になっているということになる。だが、もう一つのパターンだった時は俺たちにとっては明るい材料になる」
「もう一つのパターン?」
俺はやまびこのように繰り返す。
「ああ。それは士導源が負け組と敵対する組織の一員だった時だ。黒薔薇の発言から敵対する何かがあるのは間違いない。もし、士導源がそこに属していたら?その息子である士導静流も記憶が俺たち他の生徒よりも深く消されているのにも説明がつく。ただその場合、士導源はもう…」
そこで司翼は口を閉ざした。
黒薔薇と敵対していれば士導源はきっと…、もう死んでいる。それならば黒薔薇がこの学園を乗っ取ったことも校長室が空きなことのどちらも辻褄があう。それにどの本からも士導源の正体が隠されているのは負け組が士導源を殺したから。それに天岸死恋の超高校級の秘書という才能。校長の秘書だったという可能性もある。そして、もし天岸死恋が士導源の秘書だったならば天岸と繋がっていた華狗也も士導源について多少なりとも何かを知っているはずだ。
繋がりのなかったパズルのピースが次々と繋がりだしていく。四方を囲まれながらもどのピースも当てはまらなかったパズル。前提を変えるだけでそのパズルは全く別の絵を映し出した。
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