二次創作小説(新・総合)

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敵中横断二九六千光年
日時: 2019/04/20 12:00
名前: 島田イスケ (ID: y0qltvGJ)

個人リメイクによるオリジナルとは別の『ヤマト・イスカンダル編』。
古代進が最初は貨物輸送機のパイロットとして登場します。武装のない輸送機でサーシャを追うガミラスと遭遇、危機を切り抜けカプセルをヤマトに届けるという展開です。

この作では〈人類滅亡まで一年〉の定義を『最後のひとりが死ぬとき』でなく『すべての女が子を産めなくなるとき』及び『すべての子供が白血病に侵されるとき』であり、そのリミットが共にあと一年であるとします。ヤマトが九ヶ月で帰還できるならまだ生きている人のほとんどを救えるのですが、しかし一日遅れるごとに十万の子が病に倒れ、百万の女が出産不能になる設定です。ゆえにヤマトはこの作では、子を救うための船としてイスカンダルを目指します。

なお、同じ作品を二次小説サイト〈ハーメルン〉と〈2.novelist.〉にも投稿しています。

Re: 仮説 ( No.19 )
日時: 2019/06/29 21:29
名前: 島田イスケ (ID: y0qltvGJ)

『「ガミラスは地球人が波動技術をものにするのを恐れていて、それで攻めてきたのではないか」という話はかなり以前から一部に言われていたことではあるんですね』

とテレビが音声を発しているが、古代は毛布を頭から被りベッドに丸くなっていた。これ以上こんなの見てたら気が狂う。特になんだかややこしそうな話はイヤだ、と思えばこうするしかない。テレビを消してやりたくても、電源スイッチ自体がないのだ。きっとこのためリモコンを持っていかれているのだろう。

『そう――波動理論については、かなり前から発見され研究されていたわけです。宇宙船の床に使われる人工重力にしても、タイムラグなしの長距離通信を可能にする技術にしてもその産物さんぶつなわけですからね。この技術が進んだら光より速く進む船が出来、外宇宙に乗り出していけると期待されてきました。同時に軍事的応用が当然のように考えられ、星をも吹き飛ばせる爆弾か大砲のようなものが造れるだろうと言われました』

聞きたくない聞きたくない。もう勘弁してください。

『むろん軍事利用と言っても、この場合、もしも巨大な隕石が地球に落ちてこようとしたときそれを防ぐ目的で研究されていたわけです――そんな兵器は造ってもさすがに他の使い道はないと考えられましたので。十年ほど前に予備的な実験が行われ、一応の成果を上げました。しかし隕石破壊砲や超光速宇宙船が本当に出来上がるのは何十年も先であろうとも言われました』

おれはこの一日で十年老けちまったよう。あしたまでに老衰で死ぬよう。

『そこにガミラスの出現です。彼らの船が波動エンジンを備えているのは明白でした。そしていきなり遊星をぶつけてくるような手に出ましたが、彼ら自身は決して近くへ寄ってこようとはしない……これはまるで蛇が怖くて遠くから石を投げつける子供です。そこでひとつの仮説が立つことになりました。彼らは彼らの船のエンジンを地球人に調べさすまいとして、そうしているのではないか。ガミラス艦のエンジンを地球が手にして調べたならば、波動技術の開発が一気に進むことになる。もし地球が波動エンジンを持ったなら、自分達より強い船を造ると考えているのではないか……』

わかったからもうCM行ってくれよう。

『ガミラスに波動技術があるのなら、〈波動砲〉とでもいうようなもので地球を一瞬に吹き飛ばすこともできるはずです。エネルギーの源である〈コア〉とでも呼ぶべきものを爆弾にして、地球に投げつけてもいい。それで粉微塵です。そうしないのは、それができないからではないか。地球人に造れるかもしれないものが、ガミラスには何かの理由でまったく造れないのじゃないか……』

別にそんなにグダグダとしゃべらなくてもいいじゃないかあ。

『かなり首をひねるような仮定ですが、そうとでも考えなければ辻褄つじつまが合わない。つまり彼らガミラスは地球人が外宇宙へ出るのを恐れ、そうなる前に絶滅させにやって来たことになるのです』

Re: 戦闘開始 ( No.20 )
日時: 2019/07/06 21:55
名前: 島田イスケ (ID: y0qltvGJ)

「そうだ」と沖田は言った。「ゆえに降伏は無意味。やつらは地球人類を最後のひとりまで殺す気でいる」

相原が叫ぶ。「司令部より通信です。『敵空母は月軌道に到達。スクランブルの戦闘機隊と交戦に入った』とのこと!」

「メインに映します」森が正面の大スクリーンに状況を出す。「敵も艦載機を出して迎え撃っている模様!」

宇宙空間で無数の戦闘機同士の闘いが始まったらしかった。対艦ミサイルを抱いて空母に攻撃をかけようとする地球側と、それをはばもうとするガミラス。スクリーンには色分けされた指標が乱れ動いている。

沖田が言う。「四百メートル級の空母ともなれば、対艦ミサイルの一発や二発当たったところでビクともすまい。こちら側の船は出んのか」

また森が、「向かわせてはいるようですが、砲の射程に入るまではまだ距離が……」

「波動エンジンを持たない船じゃ、ガミラスには追いつけないんだ」太田が自分の3Dパネルを見ながら言う。マトリックス画面に地球の船の動きが表示されている。「そもそもスピードが違う……」

「船の強さは、結局は積むエンジンで決まる」島はただ拳を握りしめている。今、操舵手の彼にできることは何もない。「エンジンに力があれば、それだけ船の足を速くすることができる。装甲を厚くして、強い武器を積むこともできる……」

「大艦巨砲主義の復活」南部が対空火器のチェックをしながら言う。「敵が三十キロの距離からこちらを狙える船を持つなら、こっちは四十キロまで届くデカい大砲を船に載せよう――戦艦〈大和〉が出来たときには時代遅れになってた思想が、宇宙時代の今にまた有効になった……」

「空母一隻で仕掛けてきたのは、あるいはそれが理由かも」新見が自分の前の画面に敵空母のデータを出して見ながら、「艦載機を繰り出せば、母艦は〈ヤマト〉の射程に入ることなく攻撃をかけることができる。まともにやったら地球人にかなわぬ可能性を考慮して、あえて小型の艦艇を何隻も出すのは避けた……」

相原が、「けどそんなの、こっちも戦闘機を出すのはわかりそうなもんじゃないか?」

「そうですね。ならばどうして……」

と新見が言いかけたとき、

「待って!」森が叫んだ。「空母がミサイルを発射しました!」

「ミサイル?」

全員がメインスクリーンを見た。状況を示すマップに新たな無数の指標。ガミラス艦から放たれたものが地球に向かっているとわかる。

「数は120! 巡航ミサイルと思われます!」

沖田が言う。「目標はこの〈ヤマト〉か」

「と思います。でもこの距離なら、迎撃が……」新見が言いかけ、それから急に気づいたように、「ああ! ダメよ!」

「どうした?」

「迎撃できない! 沖縄基地がまだあれば、このミサイルは地球に届く前に全部墜としてもらえたはずでした。でも――」

そこで言葉を失くした。だが説明の必要などない。誰もがもう理解していた。巡航ミサイルの攻撃から〈ヤマト〉を護れたはずの基地はもう存在しない。

太田が言った。「やつら、それを計算の上で――」

「司令部から通信です」相原が言う。「『〈ヤマト〉はまだか』と言っていますが――」

沖田は言った。「『待て』と伝えろ」

Re: 巡航ミサイル ( No.21 )
日時: 2019/07/20 23:33
名前: 島田イスケ (ID: y0qltvGJ)

地球防衛軍司令部も、手をこまねいているだけではなかった。迎撃可能な各基地から宇宙へミサイルが射ち出された。しかし、そもそも〈ヤマト〉を造り〈ヤマト〉を護るために存在していた沖縄基地と違い、できることには限界があった。

「三分の二をなんとか撃破に成功しました」オペレーターが告げる。「しかしまだ39基が〈ヤマト〉に向けて進んでいます」

「予想される弾道です」と別のオペレーター。「ミサイルは二手に分かれ、東西から〈ヤマト〉に対して挟み撃ちをかけるようです。さらに一波と二波になり、第一波の22基が間もなく〈ヤマト〉に到達します。〈ヤマト〉から百キロ程度の地点で高度を落とし、地表スレスレにまで降下。そのまま超低空を〈ヤマト〉めがけて飛んでいくと思われます。こうなると地球の丸みのために、〈ヤマト〉からは地平線の陰に隠れて、直接狙って落とすことができません。第一波の〈ヤマト〉到達まで六百秒!」

訂正。やはり、手をこまねいているだけだった。

「〈ヤマト〉はまだ動けんのか!」

Re: 起動 ( No.22 )
日時: 2019/08/17 19:11
名前: 島田イスケ (ID: y0qltvGJ)

「補助エンジンで船体を起こす。総員配置に就け!」

〈ヤマト〉艦橋で沖田が叫ぶ。傾いている床と壁がガタガタ震え出していた。艦底後尾の二基のサブエンジンが、唸りを上げて始動のための予備回転を強めているのだ。それだけで船は前へと進もうとし、後ろの土を吹き散らす。船の舷腹げんぷくを覆っていた赤錆の板が軋みを上げて、ところどころに一枚また一枚と剥がれて下に落ちてゆく。そしてギャンギャンと音高く金属の震えるを響かせるのだ。揺れる大地に亀裂が広がっていく。沈没船がなおも地中に潜ろうとでもするかのように、土を押しやる舳先へさきが前へのめっていった。

艦橋からも赤い錆とも土くれとも、海の生物の成れの果てともつかないものが落ちてゆく。かろうじて壁にへばりついていた梯子はしごやパイプのたぐいが、つたが剥がれるように曲がりながら離れて落ちる。甲板をなんとかいていた木々も、爪楊枝つまようじをブチ撒けたようにバラバラと崩れ出していた。

「補助エンジン始動準備よし!」

機関室で徳川機関長が叫ぶ。その声はマイクを通して艦橋の沖田に届けられるとともに、傍目はためにはまるで脳波でも測るかのようなメーターのランプの色を変えさせるのだ。

「了解!」沖田は言った。「補助エンジン、始動!」

「補助エンジン始動!」徳川がレバーを引いた。

その時、地面が割れた。艦首を覆っていた鉄屑が爆発するかのような勢いで弾け飛び、内にいた刃物のような鈍色にびいろ巨魁きょかいを浮き上がらせた。まさに斧のようないかりが、その両側に付いている。

巨大な船が、かつて沈んだ軍艦をまゆをかむるようにして地にうずまっていたのだった。いまヒナ鳥がみずからのタマゴの殻を破るように、隠されたうちの姿を覗かせてゆく。かさぶたのような廃物が、まだ横にかしいだままの甲板を雪崩を打って滑っていった。

何よりも、艦橋だ。もともと原型をとどめていたのが不思議なものであるだけに、かなりの部分、実はそれらしく作り上げた張りぼてであったのかもしれない。ビルの建設工事用足場のようなものがガラガラと崩れ、現代の戦闘艦にふさわしく多角形にザク斬りされたフォルムの城をそこに出した。間違いなくそれは22世紀末の地球で最も進んだ宇宙軍艦だけが持つものだった。

あるいは、たとえ載せたくても、波動エンジンを積まない船には決して搭載が許されぬか、他にあまりに多くのものをあきらめねばならないか――それがまだ、モウモウと上がる土煙つちけむりと赤錆の板と、それに何より土に埋もれて大部分、姿を見せない宇宙船の上にかしいで突き立っている。船はオモチャのゼンマイ自動車が穴にはまってしまったようにジタバタ暴れもがいている。エンジンが後ろに土を吹き飛ばし、艦橋よりも高く空へ巻き上がらすのだ。

「噴射を止めろ! これでは眼が見えなくなるぞ」沖田は叫んだ。「傾斜復元。船体起こせ!」

「船体起こします!」島が復唱。レバーを握った。

巨体を揺らしつつ、船がゆっくり姿勢を取り戻し出す。ただ背をまっすぐにするだけだが、それは意外に容易たやすいことではなさそうだった。まだ身に多くまといついている残骸が、ガリガリとあちらこちらで船をこする。船とまわりの土との間に出来る隙間に落ち込んで、そこで動きを邪魔するのだ。

「巡航ミサイル、低空飛行に入りました!」森が叫んだ。「レーダーから消えます!」

消えた。22のミサイルが。大気圏突入後、ほぼ半数ずつに分かれてそれぞれ横に広がりつつ、〈ヤマト〉を目指していたものが。スクリーンにもう指標はひとつもない。

だが、見えないだけなのだ。今、〈ヤマト〉は真下に棲む22本の歯を持つサメにガブリと食われようとしている。それらはまだ地平線の下。地球の丸みの陰にあって、直接見ることもできない。あと一分で姿を現し、その十秒後ドカーンだ。

南部が歯を食いしばる。「船が起きなきゃ砲が撃てない――」

いや、もちろん〈ヤマト〉のすべての砲台は、宇宙空間で強い横Gを受けながらでも支障なく動くように造られている。だから船が傾こうが寝ていようが別に発砲できないということはない。だが問題は別にあった。ミサイルを近距離で迎撃しようとするならば、連射砲や対空ビームのたぐいで弾幕を張り、じかに狙って当てるしかない。だが〈ヤマト〉の対空砲は、多くが船の真横より上を向くように作られている。艦底部にあるものは今は土の中なのだから、まったく使うことができない。

船がかしいでいる側はいい。しかしその反対側は、この状態で、地表スレスレを来るものを狙うことができないのだ。ほとんど船の設計上の欠陥に等しい話であるが、しかし今更、それを言ってどうなるというものでもなかった。

〈ヤマト〉はガクガクと揺れている。元々このような起こし方は予定にないことだった。メインエンジンがまだ外部の電力供給を受けている。だから今は空に浮かび上がるわけにいかないのだ。

そうでなければ、補助エンジンだけで充分、離昇りしょうが可能だというのに――。

「ミサイルが地平線に現れると予想されるまであと十秒!」森が叫んだ。「九、八、七……」

「起きろ!」と島。

「六、五、四……」

「頼む!」と南部。

「三、二……」

そのとき島が叫んだ。「傾斜復元完了!」

「一……」

南部も叫ぶ。「全対空砲! 各個に目標を捕捉!」

「ゼロ」

「てーっ!」

次の瞬間、轟音が響いた。もしこのとき高い空の上にいて、この光景を見ることができれば、そのとき〈ヤマト〉を中心にまるで自転車の車輪スポークのような放射状に広がる光が目に映ったことだろう。あるいは、もし遠い地平から望遠鏡で覗いていれば、連射ビームの照り返しと冷却剤の煙とで〈ヤマト〉の艦橋が妖しくライトアップされたように感じられたかもしれない。そして〈ヤマト〉の内部では、パルスビームの反動とガトリングモーターの回転で壁がビリビリ震えていた。各射撃手の眼にすれば、地平線に光のシャワーをブチ撒けているようなものだった。

壮烈な弾幕に、ガミラスの巡航ミサイルは一基また一基と弾頭を射抜かれ地に墜ちていった。五秒ばかりの斉射の後、〈ヤマト〉に届いたミサイルはついにただの一発もなかった。

静寂が戻る。赤い地平に見えるのは、遠く、東の方角に、屋久島の宮之浦岳みやのうらだけがひとつだけ。

戦艦〈大和〉が沈んだ場所からおよそ二百キロの距離にある二千メートルのその山は、海が干上がったぶんだけ高くその威容をそびやかせている。〈ヤマト〉からは充分にそのいただきを見ることができた。

森が言う。「すぐ第二波が来ます。数は17」

「はっ、何度来たって同じさ」南部が言った。「この〈ヤマト〉の対空防御能力なら――」

「待ってください。今データの解析が出ました!」新見が言った。「次に来るのは――」

メインスクリーンにが表示。ミサイルはミサイルらしいが、まるでソフトクリームのように先がねじれた形状をしている。

新見は叫んだ。「ドリルミサイル! 沖縄基地を殺ったやつです!」

Re: 巡航ドリルミサイル ( No.23 )
日時: 2019/08/25 09:29
名前: 島田イスケ (ID: y0qltvGJ)

正確に言うと、それは〈第二波〉ではなかった。〈ヤマト〉を狙うミサイルは、一波も二波もすべて同時に発射されていたのである。

120のミサイルのうち、100基が通常の巡航ミサイル。残り20が地中をドリルで掘り進むタイプのものだった。〈巡航ドリルミサイル〉とでも呼ぶべきそれは通常のミサイルよりはるかに重く、速度が遅く、宇宙にいる間に迎撃されやすい。実は〈第一波〉の通常ミサイルはわざと撃ち墜とされることでドリルタイプのミサイルを地上へ送り届けるための犠牲の役をになっていたのだ。

その犠牲は報われた。20のドリルミサイルのうち、17基が無事大気圏内に入り、かつて海底であった地面の上スレスレを縫うように一点に向けて進んでいた。再び東西に分かれて並び、全周からサメのあごで喰いつくように〈ヤマト〉に襲いかからんとして。

その姿は、やはりまた、地球の丸みの陰にあって今の〈ヤマト〉には見えずレーダーにも映らずにいた。


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