二次創作小説(新・総合)
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- 敵中横断二九六千光年
- 日時: 2019/04/20 12:00
- 名前: 島田イスケ (ID: y0qltvGJ)
個人リメイクによるオリジナルとは別の『ヤマト・イスカンダル編』。
古代進が最初は貨物輸送機のパイロットとして登場します。武装のない輸送機でサーシャを追うガミラスと遭遇、危機を切り抜けカプセルをヤマトに届けるという展開です。
この作では〈人類滅亡まで一年〉の定義を『最後のひとりが死ぬとき』でなく『すべての女が子を産めなくなるとき』及び『すべての子供が白血病に侵されるとき』であり、そのリミットが共にあと一年であるとします。ヤマトが九ヶ月で帰還できるならまだ生きている人のほとんどを救えるのですが、しかし一日遅れるごとに十万の子が病に倒れ、百万の女が出産不能になる設定です。ゆえにヤマトはこの作では、子を救うための船としてイスカンダルを目指します。
なお、同じ作品を二次小説サイト〈ハーメルン〉と〈2.novelist.〉にも投稿しています。
- Re: 雑踏 ( No.9 )
- 日時: 2019/04/26 18:46
- 名前: 島田イスケ (ID: y0qltvGJ)
西暦2192年。古代進はその日、横浜の街にいた。あちこちで多くの人が叫んでいた。
「侵略者ガミラスとの戦いに加わる者を求めている! いま志願すれば戦闘機パイロットでもなんでも好きに志望できるぞ!」
と叫ぶ軍の募集。しかし多くの人々は、目もくれずに通り過ぎていた。中には『志望できるってだけだろ』と言い捨てていく者もいる。パイロットなど『なりたい』と言えばなれるものではないのは誰でもわかることだった。
一方、反戦の旗を振る者。
「人類が宇宙艦隊を持ったことが侵略者を呼んだのです! 武器を捨てればガミラスは去りまーす!」
狂気の主張以外の何物でも有り得なかった。やはり普通の人々は、顔をそむけて通り過ぎる。
さらにまた、道行く人を捕まえて小冊子を渡そうとする一群もいた。
「ガミラスの遊星で地球人類は滅びますが、神を信じる者だけは高い世界に甦ります。この聖なる活動にあなたも参加しませんか?」
信じる者が救われた例はもちろんないのだった。ガミラスが太陽系の果てに現れてから一年。まだ多くの人々は、この戦争に深い関心を寄せていなかった。ある意味ではそれは正常であるのかもしれなかった。何しろ、ひどいのになると、こんなことを叫ぶ者までいたのである。
「騙されるなーっ! 政府は嘘をついているーっ! 宇宙人などいるわけがなーいっ! すべては人を地下に押し込めようとする政府の陰謀だーっ!」
世界各地で地下都市建設が始まっていた。しかしやはり多くの人は、本当にそこに住まねばならなくなるとは信じられない気持ちでいた。不安げに空を見上げながらも、異星人が本気で地球人類を絶滅させようとしているという話にまだ実感を持てず、まさか自分の頭には落ちてこないのではないか――それとも、自分が行かずとも、誰かがなんとかしてくれるのではないか。ガミラスなどいずれは石を投げるのに飽きてどこかへ去ってくれるのじゃないか――そんな考えを捨てられずにいるようだった。
遊星が落ちる落ちると言われながらも冥王星と地球は遠い。一月ほど前最初の遊星が届いたが、落ちたのは海の上だった。それから砂漠。山の中……死者も世界でまだ百人いるかどうかだ。学者はいつか狙いが正確になるかもしれないなどと言う。そりゃあ学者はそう言うだろう。
人々は駅を出て、横浜の街や港に繰り出していく。古代はひとりポケットに手を突っ込んで、雑踏の流れに身を任せていた。このとき古代は高校生。数日前に帰省して今日また軍に赴いていった兄の古代守のことを考えていた。
「お父さんお母さん、行ってまいります」そう言って兄は出て行った。それから、「進、父さんと母さんをよろしくな」と。
あれが軍人てもんなのかな、と思った。まるで別人を見るようで、あれが兄貴の守とはちょっと信じられない気がした。戦争へ行くってことは、戦場で死ぬかもしれないということだろうに。それも宇宙で。タマに当たるか爆発で吹き飛ばされるか、真空の宇宙空間に投げ出され息ができずに死ぬのかもしれない。不気味なエイリアンに襲われて血を吸われて死ぬなんてこともまるきりないとは言えまい。家族や地球、人類を護るためなら怖くないというものなのか。
案外そんなものかもしれない。しかし、ガミラス――やはり、いまひとつピンとこない。異星人の地球侵略なんてもの、やはり何かの冗談なのと違うのか。そんなもので死んだらただのバカじゃないのか。
そう思っていた。と、群集がざわめいた。誰もが急に空を見上げる。
「ああっ!」
人々が叫び出す。古代も見た。空に小さく光り輝くものがあった。それは煙を吹きながら、みるみるこちらに向かってくるようだった。
ここのところのニュースで連日、繰り返し映像で見ているものと同じだった。
「ガミラスの遊星だーっ!」
誰かが叫ぶ。街は悲鳴に包まれた。人々が思い思いの方向にてんでバラバラに逃げ惑い出す。しかしどこに逃げるというのか。この横浜に落ちるのならば――。
違った。それは煙の尾を引いて、街の上を過ぎていった。北から来て、南の方へ。その方角には――。
まさか、と古代は思った。また海にでも落ちるんじゃないのか。そうだろう。だってあれだけ大きな海に突き出てるだけの小さな半島――。
まず最初に光が見えた。次に地響きが街を揺るがした。音はだいぶ後になってからやってきた。南の空が赤く変わっていく光景を古代はただ茫然と見た。
それが日本に落ちた最初の遊星爆弾だった。
- Re: 個室 ( No.10 )
- 日時: 2019/04/27 16:43
- 名前: 島田イスケ (ID: y0qltvGJ)
どうしておれはまだ生きてるんだろう。
古代は思った。本当は、おれはあのとき三浦の家で親と一緒に死んでいるはずなのかもしれない。ただフラフラと横浜を歩いていたため助かったのだ。でもそれを『助かった』と言えるのか。死ななかっただけじゃないのか。
行く場所がなく軍に入った。戦闘機のコースに入れられ、このまま死ぬのだろうなと思った。宇宙戦闘機のパイロットが長く生きられるはずがない。これがそういう戦争なのは、すぐに理解できることだ。
それでもいいや、と思っていたら整列中に、古代お前は前に出ろ。ハイと叫んで進み出ると補給部隊に配属とくる。あのときズラリと並んでいた他の候補生達のおれを見る眼が忘れられない。成績では自分はかなり上であったはずなのに。
あのときの訓練仲間はみんな死んでしまっただろう。おれだけがポンコツロボットを供にして、ずっと今日まで〈がんもどき〉を飛ばしていた。その結果が……その結果が……。
基地を燃やしたあの炎。無人機に突っ込んだ〈コスモゼロ〉。
気にするな、君のせいではない――あの真田という男は言った。
そうだろう。そうなのだろうさ。おれのせいじゃあねえよ。なあ。すべてはあの得体の知れぬカプセルのためだ。おれはただ、それを運んだだけに過ぎない。責任なんか、別にひとつも……。
いいや、違う。そもそもおれが、おれなんかが生きているからいけないんじゃないか! 落ちこぼれのがんもどきパイロットひとりのために、一体どれだけ死んだというんだ? おれはこんなことのために今日まで生き延びてきたというのか?
今は話をする相棒もいない。アナライザーは『こんなセコハンでも役に立たなくはないだろう』と言われて連れていかれてしまった。
そして自分は、
『今は貴様にかまっているヒマはない』
そう言われて今の小部屋に押し込まれ、外から鍵を掛けられてしまった。渡されたのは少しばかりの携帯食と、電気炊飯器みたいな蓋付き便器。
士官用の個室のようだが、ずいぶんと狭い部屋だった。壁から引き出す式のベッドと机。壁に埋め込みのテレビがある。後は棚があるだけだ。ベッドは体が浮くのを防ぐベルト付き。ドアは完全密閉式で、気圧差で開かなくなった場合の非常弁が付いている。空調ダクトにものものしい注意書き――これはまさしく宇宙戦闘艦艇の船室以外の何物でもない。
なんなんだこれは。あの沈没船は張りぼてで、内側に宇宙船があったのか。それも、かなりデカいのが。しかし何もこう床まで傾けなくていいんじゃないのか? わざわざこんなことをするのに、一体ぜんたいどんなわけが。
便器を手に考えてしまった。わからん。床を傾けたら、そりゃあトイレも使えないよな。ここで働いてる連中、みんなこいつで用を足しているのかしらん。
――と、不意にテレビが勝手に点いた。今まで何をしたところでまったく起動しなかったのだが、
『緊急ニュースを申し上げます』
映ったのはニュース・スタジオ。キャスターが言った。
『国連及び日本政府より、市民の皆様に重要なお知らせです。本日、地球防衛軍は侵略者ガミラスとの最終決戦兵器として宇宙戦艦〈ヤマト〉を発進させると発表しました。詳細については――』
「はん?」と古代は言った。「やまと?」
- Re: 第一艦橋 ( No.11 )
- 日時: 2019/05/01 00:44
- 名前: 島田イスケ (ID: y0qltvGJ)
宇宙戦艦〈ヤマト〉――その第一艦橋では、艦橋勤務のクルー達が発進準備の手を止めて、メインスクリーンに映る放送を見上げていた。同じものが艦内じゅうにいま流されているはずだ。
操舵長の島大介が言った。「やはりこっそり発進というわけにはいかなかったな」
「当然だろ」砲雷長の南部康雄が応える。「ここまで状況が絶望的じゃね。『座して死を待ちましょう』とは市民に言えないじゃない」
「だからって、コスモクリーナーのことまで公表するのかな」航海長の太田健二郎が言った。「この船の行き先をガミラスに教えるようなものだけど……」
「でも、言うしかないんでしょうね」通信長の相原儀一が言う。「地下の有線放送と言っても、言えば必ずガミラスに伝わることになる。イスカンダルへ行くと知ったら敵はその先で待ち構える。でもどうせ、やつらはとっくに知ってるはずというんなら……」
「民衆をなだめるのが優先てことね」船務長の森雪が言った。「『放射能は必ず除去できます』と。でも、本当にそう考えているのかしら」
「まずないでしょう」戦術長の新見薫が言った。「〈ヤマト〉に次ぐワープ船の建造を地球政府があきらめているはずがありません」
太田が言う。「けど、例の〈コア〉っての、イスカンダルは一個しか送ってこなかったんだろう」
「ああ。でもわかってたことさ」と島。水に浮く船でパイロットと言えば水先案内人であり、操舵士はただ舵を動かすだけの人間だが、宇宙船でのそれは飛行機の機長に近い。航海士の太田はナビゲーターであり、この島の方が実質的な航海の長だ。「それでも見本が一個あるなら、調べてそれと同じものを作る望みがないわけじゃない――」
「ただし、その調べる時間ももうなくなった」と南部が言う。砲雷士の役は説明するまでもあるまい。
「とは言っても――」と森が言う。船務士とは船の運航管理役だ。艦橋ではレーダーなどのオペレート業務をすることになる。「そんなの、元々たいして期待はしていなかったんでしょう。〈ヤマト〉はどうせ、明日あさってにも出航しなきゃいけなかったんだし。二日や三日つついたくらいで何かわかるようなものなら、イスカンダルに教わらなくても地球で作ってるんじゃない?」
「そういうことなんだよな」と相原。通信士とはこれまた説明の必要はなかろう。「でもだからって、ワープ船を自力で建造する望みを地球が捨てるはずがない。波動エンジンの作り方だけはわかったんだ。足りないのが〈コア〉だけとなれば、なんとかあと一年のうちにそれを作ろうと考える」
太田が言う。「そうすれば、エリートだけが逃げることができるから」
島が言う。「それだ」
「例の〈サーシャの船〉というのも、回収に動いているはずです」と新見。宇宙艦艇で戦術士とは情報の分析役だが、彼女はこの二十代ばかりの若い艦橋クルーの中でも最年少だ。「それに何より、この〈ヤマト〉が〈スタンレー〉を叩いたら、ガミラス艦の捕獲が可能になるかもしれません」
森が言う。「『しれません』、でしょう? 実のところ、それってどうなの」
太田が言う。「とにかくこれまで、残骸さえまともに手に入れられなかったんだからね。もし生きてるガミラス艦を捕獲できたら、それはそのままエリートの逃亡船になるんだし」
南部が言う。「まあともかく、生きてるにせよ死んでるにせよ、ガミラスの船を調べられれば、地球が〈コア〉を作る望みも高くなるっていうことだ。するとやっぱり政府が〈ヤマト〉に望んでるのは、イスカンダルへ行くよりも冥王星を叩き潰すことなのかな」
島が言う。「おれは〈スタンレー〉に行くのは反対だ」
「現実的になれよ」と南部。
「そっちこそ。エリートだけが地球を逃げてどうするんだ。だいたいいくら波動砲でも、星を丸ごと壊せるほど冥王星に近づけない算定なんだろ。地球の船でそこまで行ったものはないんだし。みんな途中で殺られてるんだ」
「だからそこは、君の操艦技術でさ」
「軽く言うな!」
「まあまあまあ」と森。「無理なようなら〈スタンレー〉は迂回する計画でしょう。地球政府もできることなら人類全部救けたいはずよ」
太田が言う。「人類を……か。ぼくらにほんとにそんなことができるんだろうか」
相原が言う。「できますよ。太田さんが道を間違えなければね」
「ちぇっ」とまた太田が言った。それで一同がちょっと笑った。
- Re: 艦長室 ( No.12 )
- 日時: 2019/05/07 19:24
- 名前: 島田イスケ (ID: y0qltvGJ)
沖田十三は宇宙戦艦〈ヤマト〉艦長室で、画面に映る無数の顔と向き合わされていた。〈彼ら〉は沖田はそっちのけで、自分達の議論に夢中になっている。
『だから〈コア〉を輸送機でそのまま運ばせるべきではなかったのだ!』
『それがいちばん早かったのだから仕方があるまい。今更それを言ってどうする』
『「早かった」だと! 結局、〈コア〉を調べる時間はなくなってしまったではないか。これでは急いだ意味がない!』
『いや、元々イスカンダルの使者が生きて着いていた場合、我らに〈コア〉を調べさせてくれたとは思えん。逃亡船を造らせてくれるつもりはないようだからな』
『だから最初の申し出で……』
『それを言うな』
『やはり〈七四式〉なんかで直接持って来さすのでなく、火星へ行かせ……』
『いいや。やつらは基地を爆撃するだけでなく、同時に〈七四式〉も襲ったという。短時間に二重の手を打ってきたのだ。もっと時間を与えていたら、どれだけ多くの手を出されていたかわからん』
『フン。沖縄基地を殺られた責任逃れのつもりか』
『タラレバを言ってどうなるという話をしてるんだ! 〈サーシャの船〉が追われた時点で、我々に時間などはなくなっていたのだ。〈ヤマト〉に〈コア〉が届いただけでも良しとするべきではないのか!』
沖田に発言権はない。怒鳴り合う者達の声を、座って聞かされるままだ。
『この期に及んでこんな会議は不毛だとは思わんのか!』
『きのうまでとは状況が違う!』
『いいや、同じだ! どのみち〈コア〉を二日や三日調べたところでどうなるわけもなかったのだからな!』
『それは貴様の思い込みだろう!』
『貴様こそなんの根拠があって!』
『まあ待て! こうなったからにはだな、わたしが前から言ってる案を採ってみてはどうなのかな。つまり、〈ヤマト〉の波動砲で冥王星を吹き飛ばしてから、イスカンダルに行くのでなく地球に戻ってこさせるのだ。そして〈ヤマト〉を手本にしてワープ船の増船を図る――』
『フン。たった半年くらいでそれができると思ってるのか』
『それに〈ヤマト〉一隻で冥王星を叩くのは無理だ。たとえ波動砲でもな。仮に星は吹き飛ばせても、その後、艦隊に取り巻かれ〈ヤマト〉は沈められてしまうよ』
『しかしそれではなんのために波動砲を積ませたかわからん』
『それでも〈ヤマト〉を戻すことはできん。「エリートだけが逃げようとしてる」と民衆に叫ばせるだけだ。実際そうだったから、ああして床を傾けたまま船を造っていたのだからな』
『その通りだ。やはり〈ヤマト〉はイスカンダルに向かわすしかない……』
『しかしそれは非現実的だ!』
『だからそれをこの期に及んで言ってどうすると言ってるんだ!』
『どうだろう。こうなったら何日か船の発進を遅らせて、〈コア〉をじっくり調べるというのは……』
- Re: 機関室 ( No.13 )
- 日時: 2019/05/07 19:22
- 名前: 島田イスケ (ID: y0qltvGJ)
「間違いなくあと数時間で敵が来るものと思われる。ここは艦長の言われるように、すぐに〈ヤマト〉を発進させる以外にない」
と技師長である真田志郎は言った。あの後にいくばくかの睡眠を取って、多少は体を回復させている。
宇宙戦艦〈ヤマト〉機関室。真田は機関長の徳川彦左衛門ほか、多くの者達を前にしていた。横でカメラを回している技術部門の人間もいる。全員が放射能防護服を着込んでいた。
真田がいま手にしているのは、古代進が運んできたカプセル。しかし今では、古代進がタマゴの黄身のように思った内部の丸い物体が赤い光を発している。
「〈コア〉に〈火〉を入れた」真田が言った。「もうこいつを止めることはできない」
徳川が言う。「これが波動エネルギーの源だというわけだな」
「はい。一度〈火〉を点けたら、速やかに炉に納めなければならない。そして釜の口を閉じたら、二度と取り出すことはできない。この物体を直に見るのはこれが最後です」
彼らのすぐ前にある船のメインエンジンは、まるで巨大な原子炉を横倒しにしたようなものだった。あるいは、大昔の蒸気機関車を何倍にもしたような……真田はその中に入り、銀行の大金庫のような扉を開けてカプセルを納めるべきところに入れた。そのようすをカメラを持つ技術部員が動画に収める。また、真田の防護服にも、頭の横にカメラが取り付けられてピントや絞りを動かしていた。
技術者や機関員らが、モニター画面でその作業を見届ける。後ろで数名の保安部員がサブマシンガンをいつでも撃てるように手にして全員を見張っていた。もし万が一この中に狂信的宗教の信者が紛れ込んでいて、地球人類を滅ぼせば自分は神の下に行ける、などと考えていたりするならば、今がその目的を遂げるチャンスなのだ。真田の手からカプセルをひったくればいい。それで地球は太陽系ごとこの宇宙から消滅する。
あるいは、保安部員の中に、ガミラスのスパイがいるかもしれない。もしくは、当の真田自身が精神に異常をきたして――万が一どころか、兆にひとつの可能性まで考慮して準備を重ねたうえで、全員がこの場に臨んでいた。
ゆえに、作業が果たされるのを確かに画面で見届けて、真田が庫から出てきたときは一同がホッと肩を下ろした。放射能防護服越しでもそれがよくわかるほどだった。保安部員らも構えた銃の銃口を下ろす。
「さて、エンジンが力を出すまで六時間はかかると見られる。敵の心配は他に任せるとして、我々が取り組むべきは出力を上げていけるかどうかだ。莫大な外部電力を必要とするわけだが……」