SS小説(ショートストーリー) 大会【平日イベント】

第15回 SS小説大会 開催!〜 お題:自由(または森) 〜
日時: 2020/07/09 22:26
名前: 管理人 ◆FiOOrlVc7Y

【第15回 SS小説大会 参加ルール】

■目的
基本的には平日限定の企画です
(投稿は休日に行ってもOKです)
夏・冬の小説本大会の合間の息抜きイベントとしてご利用ください

■投稿場所
毎大会ごとに新スレッドを管理者が作成し、ご参加者方皆で共有使用していきます(※未定)
新スレッドは管理者がご用意しますので、ご利用者様方で作成する必要はありません

■投票方法
スレッド内の各レス(子記事)に投票用ボタンがありますのでそちらをクリックして押していただければOKです
⇒投票回数に特に制限は設けませんが、明らかに不当な投票行為があった場合にはカウント無効とし除外します

■投稿文字数
400文字以上〜1万5千字前後(1記事約5000文字上限×3レス記事以内)
⇒ざっくり基準目安ですので大体でOKです

■投稿ジャンル
SS小説、詩、散文、いずれでもOKです。
⇒禁止ジャンル
R18系、(一般サイトとして通常許容できないレベルの)具体的な暴力グロ描写、実在人物・法人等を題材にしたもの、二次小説

■投稿ニックネーム、作品数
1大会中に10を超える、ほぼ差異のない投稿は禁止です。無効投稿とみなし作者様に予告なく管理者削除することがあります
ニックネームの複数使用は悪気のない限り自由です

■大会期間、結果発表等
第15回SS小説大会 2020年7月5日から2020年10月30日まで
          優秀作品発表…2020年11月7日(トップページ予定)
          お題(基本)…自由 、お題(思い浮かばない人用)…森 

■その他
ご不明な点はこの掲示板内「SS大会専用・連絡相談用スレッド」までお問い合わせください
http://www.kakiko.cc/novel/novel_ss/index.cgi?mode=view&no=10001

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平日電車やバスなどの移動時間や、ちょっとした待ち時間など。
お暇なひとときに短いショートストーリーを描いてみては。
どうぞよろしくお願い申し上げます。

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60seconds ( No.2 )
日時: 2020/07/10 00:46
名前: 美奈

こんなこと、初めてだった。

夫を早くに亡くしてから、こんな気持ちになることはなかった。
亡くしてからは、ずっとずっと、胸が苦しくて。何かがつかえたような感覚が残り続けた。歩いているだけで涙が出てきて、呼吸が浅くなって。
それを他人に見られまいと、太陽に照らされてはたまらないと、いつも下を向くようになった。

だから、”全身に衝撃が走るような恋”なんて、ないと思っていたのに。
いつも通り下を向いて通勤電車に乗っていたら、強烈な視線を感じた。
思わず顔を上げると、多くの人間に押しつぶされながらもこちらを見る彼の目に、吸い込まれそうになった。

毎朝、1分くらいの出来事。お互いの電車が停車した時だけに見られる、彼の目。
たった60秒の逢瀬。
…逢瀬は流石に大げさだろうか。


知らない人と目が合うのは気まずいはずなのに、彼の時は違った。妙な言い方だけど、自分の一部みたいな。そんな気がした。
1分間も見つめ合うことができたのは、きっと互いに何の嫌悪も感じなかったから。
目が合ったからって、笑顔や会釈を求められるわけじゃない。車両同士の対面だから、言葉だっていらない。そんな関係性は普段の対人関係にはないもので、だから新鮮で。私は電車に乗ったら、必ずドアの近くを確保した。蠢く人々を必死でかき分けて。
時が経つにつれて私は、例の駅に電車が滑り込む前から、彼を探すようになった。停車しなきゃ分かるはずがないのに。
私は自然と、前を向くようになっていた。朝に期待するようになった。太陽を受け入れるようになった。
たった60秒で、人生はこんなにも変わるんだ。そう思った。

池袋方面に向かう私とは反対に、渋谷方面に行く人だってことは分かっている。
でも、どこから来たのだろう。何歳なのだろう。何をしている人なんだろう。誰と暮らしているんだろう。名前は何て言うんだろう。私は、彼の目にどう映っているのだろう。
その目からは表情がうまく読み取れなくて。でもだからこそ、想像を掻き立てられた。電車を降りても、彼のことで頭がいっぱいだった。とにかく姿を見られれば、明るい1日が保証されていた。毎日毎日、私たちは見つめあった。
たった60秒を、毎日。



まだまだ残暑が厳しい季節だった。

電車内のモニターが、一斉に黄色と赤の画面に変わる。
『急停車します。ご注意ください』
例の駅に着く前に、電車は急停車した。

これでもかというくらいに人間を詰め込んだ電車が、急速にスピードを落としていく。
ただでさえ身動きが取りづらかったのに、私はさらに押しつぶされた。
苦しい。
…たちまち、蘇る。
何かがつかえたような、あの感覚。

何事だ、という雰囲気が全体に広がり始めた時、アナウンスが聞こえた。

ー内回り電車で人身事故が発生したため、急停車いたしました。従って、外回りもしばらく運転を見合わせます。ご迷惑をおかけいたします。

彼に会いたいがために運転再開まで結構粘ったのだけど、いよいよ職場に間に合わなくなりそうだったので、仕方なく振替輸送を使った。
結局、彼を見られなかった。
1日中不安だった。彼が今どこで何をしているのか、そればかりが気になった。
たった60秒、見なかっただけなのに。

主要な路線だったので、その日の事故はニュースになった。
40代の男性が、心不全で線路に転落したようだった。


翌朝、電車は何事もなかったかのように動いて、例の駅に着いた。
彼はいなかった。どんなにくまなく探しても、いなかった。
もしかして、人混みをかき分けられなかった?定位置を確保できなかった?今日は早朝から会議があった?それとも、有給を取った?昨日私に会えなくて、嫌になった?
ねぇ、どこ?どこにいるの?姿を見せて。…お願い、姿を見せて。
たった60秒が、永遠のように感じられた。


電車を降りてから、急に胸が苦しくなった。呼吸も浅くなって、なぜか涙まで出てきた。
…あの時と同じ。また、私を苦しめ始める。
どうして?
どうしてまた、始まるの?
どうして彼は、いなかったの?

呼吸は難しくなるばかりで。良くなる兆しが見えなかった。ホームの柱に寄りかかり、何とか体を支えた。
すごく努力してスマホを取り出して、休むと職場に連絡して、自宅にUターンした。
他人に見られまいと、太陽に照らされてはたまらないと、下を向いて歩き続けた。


やっと自宅に着いて、倒れ込むように中に入った。
そのまま、なぜか取り憑かれたように夫が使っていた書斎に向かう。
書斎に入ると少しだけ、呼吸が楽になった。

机の引き出しを開けて、もうとっくに失効した夫の免許証を取り出した。
…あぁ、そろそろまた、命日だね。


裏に書かれた、臓器提供の意思表示。



”心臓”に書かれた丸が、静かに滲んでいった。

壊れた私の話 ( No.3 )
日時: 2020/07/10 13:05
名前: 優羽

なんで私は生きているの?





なぜ生物がいるの?





なんで地球があるの?




なんで宇宙はあるの?






なんで生命があるの?




なんで雲ってあるの?






なんで関わりがあるの?





狂ってるってなに?








なにが正しいの?












なんで殺しあいがあるの?








なんで愛しあうの?









分からない……







分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない









「…この子…もう駄目だわ……」







言葉ってなに?






文字ってなに?




感情ってなに?








そんなのがあるから
















この世界が壊れるんだ

彼女を追い越したい ( No.4 )
日時: 2020/07/13 16:20
名前: 紫葉





『高等学校生美術展入賞 千賀咲 玲』

『高等学校生美術展特選 大島 奈緒』

___________また先輩に負けた。

これで何回目だろうか。確かに、先輩の方が私より経験を積んでいて絵の知識も多いのは事実だ。けれども、負けると言うのは悔しい。だって私は先輩達にも負けないぐらいの力を着けたい。でも…それは上手く現実にならなかった。


タッ


「千賀咲さん。」

「…先輩。」

夕日の当たる方向に顔を向けると_____案の定、先輩が居た。…あぁ。老若男女が見ても、ほぼ完璧と言える容姿。絵の才能。…おまけに誰からも好かれる性格。今の私には到底追いつけない。そんな彼女が目の前に居てか、私は密かに劣等感を噛み締めていた。






「どうしたのよ。そんな暗い顔しちゃって。」

ガコン、と自販機が鳴り缶ジュースがコロリと落ちてくる。それを彼女の華奢な手が拾い上げ、私の手元に優しく置いた。

「いや…いつまで経っても先輩に追いつけなくて。最初っからもそうでしたけど、今回もそうだったじゃないですか。先輩は特選だったのに、私は入賞で。何と言うか…せめて貴方の横に並びたいのに、同等の絵を描くことも出来無い。それがやっぱり心に引っかかるんですよ。」

あまりにも冷え過ぎたのか、缶ジュースは結露を零しており私は自然と手が冷気に覆われるのを感じた。

…でも。愚痴を言ったって、絵が上手くなる訳では無い。そもそも、そんな人間なんてこの世には存在しない。こんな憂鬱な感情が吹き飛ばなんて___ホント、嫌なもんだ。

「それについて悩んでたの…。やっぱり千賀咲さんはストイックね。」

「ええっ、そんな。ストイックなんかじゃないですよ。私は出来る限りの事をやっているだけです。…だって、才能に恵まれなかったから。」

…自分でこんな事を言っていると、悲しくなる。
けれども。私は自分の事を責め続ける_________何でこんな…矛盾したことを私はしてしまうのだろう。

無情にも、空気は何も答えない。
そばにある木も、私の脳も。
けれども、私の隣に居る…先輩は答えた。

「今の貴方は十分素敵なのよ。それに、どの大会でも必ず入賞している。こんな凄い事、他の人には出来ないわ。貴方は私の事を凄い凄いと言っているけど、実はそうじゃないわ。私だって何回も賞を逃したことがある。でも、貴方はそうじゃない。だから貴方も来年の今頃には凄腕になっているわよ。」

そう言うと、彼女はニコッと笑う。
















「___________追いつけるはずないでしょう。私達人間が貴方達に。貴方は___________貴方達の部類は機械なんですから。」

私は彼女___________いや、私は“アンドロイド”に
向け、声をかけた。

西暦21xx年の今。世界は人間によく似たアンドロイドを生み出す事に成功した。それと同時に、アンドロイドにも人間と同じく人権が与えられ、人間と共存するようになった。

しかし。これは幸せな事では無かった。
人間よりもアンドロイドの方が知能が高いのは当たり前だ。それに加えて、今のアンドロイドは人間的思考力も携わっている。アンドロイド達は人間と同じように芸術を生み出し、数々の賞を総嘗めにした。そして、アンドロイドは瞬く間に脚光を浴びる事になったのだ___________

「…私達が作ったものを追い越せないなんて。悔し過ぎる。」

私は合金で作られた彼女の前で、呟いた。

百鬼夜行 ( No.5 )
日時: 2020/07/16 16:33
名前: 夢兎



 ゴーン
 ゴーン
 ゴーン
 

 寺の鐘が鳴り響くのと同時期、そのやけに低い重低音で目が覚めてしまった私は、もぞもぞとベッドから起き上がりました。

 今は七月。
 ガンガンにクーラーをかけていたのにタイマーのセットを忘れていて、エアコンの口はしっかりとしまっていました。
 湿気と埃にむせた私は、水を飲もうと一階に降りることにしました。

 外は真っ暗、当たり前です。今は夜なのですから。
 でも、小学五年生である私は夜の九時以降に起きたことなど全くなかったので、夜の新鮮な空気にすっかり興奮していました。

 そして幼稚だと思われるかもしれませんが、その時はまだお化けという不可解な存在も信じていたので、『お化けに見つからないように』となるべく急ぎ足で階段を降ります。

 キッチンでコップにお茶を注ぎ、喉を満たします。
 そしてこれからもう一度布団に戻ろうか、それともちょっと夜更かしをしてみようか迷いました。
 ママに見つからなければ、こっそりテレビを見ても漫画を読んでもいい。
 だって、夜はまだまだ始まったばかり。こんなに楽しい事って他にない!



 ですが私の目論見は外れます。
 ぺた、ぺたと足音を立てて、誰かがキッチンに乱入してきたのです。
 大人はいつも遅く練る癖に、起きるのは無駄に早いのだから困ったものですね。
 しかし、私の目の前に姿を現した人はママやパパではありませんでした。



 「ッ!? ママァァァァァーーーーーーーーッ!!!」
 「ちょ、ちょ、しーッ!」


 突然私の腕を掴んできた、謎の人物の行動にびっくりして声を上げると、そいつはギョッとしたように目を見開き、私の口を塞ぎました。
 こっちがモゴモゴしていると、謎の人物は軽く肩をすくめます。


 「いいかい? 大人って怖いんだぜ。もし呼んでたら俺はあっというまにピチャンだ」
 「………ピチャンって?」
 「消滅するかもしれないね」
 「しょうめつ!? ご、ごめんなさい、モモそんなことしないわ!」


 小学生の私には、「消滅」という漢字はまだ書けませんでしたが、意味は知っていました。
 なので、この不思議な人物を消さないでよかったと心から思いました。
 


 「あなたはだあれ? 私、花鶏モモっていうの。花に、ニワトリって書いて、あとりよ」
 「俺? 俺の名前は『ももき』さ」
 「どういう字を書くの?」
 「『百』に『鬼』って書いて百鬼だよ。君はアトリって言うんだね」
 「そうよ。珍しい苗字ってクラスで話題になったもの。モモキくんはどこの学校なの?」


 
 「……うーん。夜の、定時制の学校だよ」
 「ていじせい? それはなに?」
 「ある時間だけ開いている学校さ。俺の場合は夜」
 「難しいのね。もしかして中学生?」
 「うん、一応…生前は」
 「じゃあ先輩ね!」


 百鬼くんのお話は、今となって考えてみれば追及するべき点はいくつもあったのですが、当時小学生だった私はそんなことどうでもよく、彼のことはただの不思議な男の子としか思ってませんでした。
 不思議、その単語が小さかった私にはどんなに刺激的だったか、今でもよく覚えています。


 「ねえ、モモキくんのその名前は苗字なの?」
 「苗字だよ」
 「名前は何て言うの?」
 「名前はないよ」
 「変ねえ」
 

 「……アトリは幽霊とか妖怪って信じる?」
 「信じるわ。だから怖くなるし不思議にも思うもの」
 「その考えは素敵だと思うよ」
 「なら嬉しいわ!」


 
 たくさん、たくさん楽しい話をしました。百鬼君は本当に不思議な子でした。
 例えば、一緒に『ゆびすま』をやろうとしても請け負ってくれないのです。握手もしたくないようでした。潔癖症の子はいくらでもいます、無理強いはしません。





 百鬼くんは次の夜も、その次の夜も家に来ました。
 私たちは沢山のお話をし、沢山の喜びを共有し、沢山の不思議を学びました。
 でも、どれだけ会話を交わしても、百鬼くんのことについては全く分かりませんでした。


 「ねえモモキくん。モモキくんは、一体何者なの?」
 「ただの中学生だよ」
 「中学生だったら夜遅くにこんなところに来たりしないわ」
 「来ちゃいけなかった?」
 「そんなこと言ってないじゃない」



 「………中学生って不思議ね」
 「大人にも子供にも不思議なところはあるよ」
 「そういえば私の学校に七不思議があるのよ。とっても不思議なお話なの」





 「まず一つ目。校庭で死んだ男の子の霊がいる」
 

 

 「二つ目、音楽室のピアノが鳴る」




  百鬼くんは、何も言いません。



 「三つ目、放送室から聞こえる謎の声」





 「四つ目。アカシックレコード…っていうものがあるらしいわ」





 「五つ目、校長先生は不老不死」





 「六つ目、繁殖池にはネッシーがいる」







 「七つ目」




















 「数十年前、一人の生徒がクラスメイト全員を殺害した…」







 






 「……………」
 「ただの噂よ。低学年のうちはまた信じてたけど、さすがに今はどうかなって疑ってるの」
 「………」
 「確かあだ名はモモ。多分女の子よね。どういう理由で殺害したのか、私は分からないけど」






 「…………女の子って、どうしてわかるの?」



 「だってモモよ。女の子よ絶対」
 


 「………………その子は、…………だよ」


 「何て?」





 百鬼くんは、質問には答えてくれませんでした。
 ただただ悲しそうな瞳で、じっと私の顔を見つめるだけでした。
 どんな言葉をかければいいのか、その時の私には分かりませんでした。


 


 百鬼くんには、それから一度もあっていません。
 私が大人になった今も、彼の姿を見ることはありませんでしたが、彼が何者だったのか、今となってようやく分かりました。


 もしかしたら、彼と会えるのは子供の時だけなのかもしれません。
 みなさんも、彼に会えることがあるかもしれない。
 そんな時は、ただ黙って彼の話を聞いてあげてほしいと思います。









 例えその人が、人殺しだったとしても。
 

メランコリーワールド ( No.6 )
日時: 2020/07/29 17:27
名前: 夢兎

 そっと開いたドアの向こうに小さな泣き顔一つ
 散らかった記憶の欠片
 傷ついた君の涙が光る

 階段では狐が躍る
 鏡はほのかに揺らめいて
 床に散らばる思い出のキャンバスと
 深夜零時を告げる時計の音

 ずっとあやまりたくて
 キミの手首に触れた
 でもまだちょっぴり怖いんだ
 あの日の呪いがまだとけずにいる


 それでもどんなに苦しい時も
 君のおどけた声一つで心の棘が消えていく不思議
 それでもまだ不安だらけだ
 大丈夫私がいるよ 君の近くにずっと 見えないけどちゃんといるから


 そっと開いたドアの向こうに小さなラジオと不思議一つ
 散らかった本は白黒
 さあ不思議を探しに行こうぜ


 遠くでは鎌の音が響き
 誰かのあざ笑う声が聞こえる
 でもその過去の奥にはきっと明るい日が刺すから


 それでもどんなに苦しい時も
 君の明るい声一つで悲しみなんて吹き飛ぶ不思議
 それでもまた貴方に会いたいんだ
 大丈夫僕がきっと 君の近くにずっと 見えないけどちゃんといるから



 あの日の記憶
 誰かの傷痕が残り膿はまだ消えない
 ラジオのノイズ
 紅茶の匂い
 恋の感触と苦い記憶と
 誰かが消えるそしてまた何かがそっと息をしている

 
 それでもどんなに苦しい時も
 君のおどけた声一つで心の棘が消えていく不思議
 それでもまだ不安だらけだ
 大丈夫私がいるよ 君の近くにずっと 見えないけどちゃんといるから

約束」 ( No.7 )
日時: 2020/11/11 16:59
名前: 四ッ谷 霧果

「木苺を取ってきて」
冷たい風が吹き雪が窓については溶けていく冬。
継母は大きなかごを棚から出しこういった。
「まだ冬よ。」
何を言っても行けの一点張り。

(ああ、この人は新しい人形を見つけたんだ)

「一個じゃだめよ。かごにいっぱいですからね。」

継母は私を外に追い出し鍵まで閉めた。
木苺を取るには森の奥の奥に行かなければならない。
木苺なんてないと分かっていながらも森の奥へ進んだ。

もう何分歩いただろう。
雪はだんだん強くなり森は暗くなった。
防寒具なんて持ってはいない。
手足はジンジンと痛み、手に至っては感覚がない。

(ここで死ぬんだな)

ふと母を思い出した。
母は優しくいつもニコニコとしていた。
そんな母とお菓子を作るのが好きだった。

どこからかいい香りがする。
母のシチューの香りによく似ている。

「母さん、、?」

森の奥に小さな光が見えた。
家だ。
そこに母さんがいるような気がした。

「母さん、、、母さん、、、!」

夢中で駆けた。

家に近づき戸をたたく。
そこで我に返った。
あの母さんはもういないと。

うつむき雪道をとぼとぼ歩いた。

もう帰る家はない。











「ねぇあなたどうしたの?」

どこからか声がして目が覚めた。
先ほどの家の薪小屋で寝ていたようだ。
声の主は少女だった。
この家の子らしい。
少女は衰弱しきった私を見て驚き家に招いてくれた。
少女はヘレンといい両親を火事でなくしここに一人暮らしをしているそうだ。

「お風呂に入ればいいわ」

ヘレンはタオルケットを一枚出すとお風呂を勧めてくれた。
久しぶりのお風呂は気持ちがよかった。

「、、おふろ、ありがとう。」

ヘレンは微笑み
「どういたしまして。」

といった。
その笑顔は母にそっくりだった。
よく見ると笑っていない顔もそっくりだ。

「シチュー食べるでしょ。昨日作りすぎたの。」

「、、、いただきます」

ヘレンのシチューはとてもおいしかった。
母さんの味に似てる。

「、、ごちそうさま。」

気づけば皿のシチューはなくなっていた。

「、、おいしかった。」

「ありがと。」

ヘレンはどういたしまして。と紅茶をすすった。

「どうして知らない人にやさしくするの?」

なんとなく気になった。
ヘレンはうーんと少し悩んだ後
私の目をしっかり見て

「カミナ知らない人じゃないから。」

といった。

「そう。」

ヘレンはまた紅茶をすすった。
変わった人だなぁ。
うん?

「何で私の名前知って、、!!」

ヘレンのほうを見ると体がうすくなっていた。
ヘレンは笑ったままだ。

「何でも知ってるよ。カミナのことなら。」
「そんな格好してるのに男の子、、とか。実は泣き虫とか。寂しがり屋とか。」

まさか、まさか、まさか、、、

「母さん、、、?」

「正かーい。」

ヘレンは母さんがよくする口調で言った。
おどけているような口調。

「ごめんね。おいていって。」
「一人寂しかったね。」

一つ一つの言葉がしみこみ涙があふれ出てくる。

「なんで、なんで、おいていったんだよ。」

「ごめんね」

「僕これからどうすればいいんだよ。」
「生きて。」

「住む場所ないよ。」
「ここでいい。」

「一人だよ。さみしい。」
「裏の一本道を通れば町に出る。」

「母さんとがいい。」
「もう、大丈夫でしょ。」

「おいてかないで。」
「ずっと空から見てる。」

ヘレンは、母さんは涙を流しながら最後に

「生きて。地に根を張って、踏ん張って。そのときがきたら私が迎えに行くから。」

と言った。




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「今日、母さんと命日だね。まだ、空から見てる?」

雲ひとつない空を見上げながら母さんに聞く。
返事の代わりに心地いい風が吹いた。

「僕、結婚するんだ。」

花びらが舞った。

「この人と。」

僕の手の先には麦わら帽子が飛ばないように抑えながら空をみつめるひとがいる。
彼女は息を大きくすうと聞いたこともないような大きな声で

「幸せにしてもらいます!!」

と叫んだ。
僕が笑うと彼女は正しいことを言っただけよとおこった。
僕も負けてられない。

「幸せにします!!!」

彼女に負けない声を出したつもりだったが彼女はまだまだねと笑った。

「「まだむかえにこないでね!!!」」

もちろん。と鳥が鳴いた。

恋雪 ( No.8 )
日時: 2020/11/16 03:35
名前: skyA/スカイア


 なんでこんなに心臓が、心が、うるさいのだろうか。とまらない。止まってくれない。

 ふわふわした雪が、静かに舞い降りる。冷気をまとって、ふわり、ふわり、と。

 マフラーのなか、顔を埋めた。こんなに寒いけど、こんなにあたたかい。

 きみのせいだ。

 こんな気持ちにさせたのも、全部、ぜんぶ、きみのせいだ。

 嫌われたくないって思っているのに、普通に振る舞えない。つかもうとしては、はなれていく。まるで、雪みたいだ。

 雪が静かに、手袋にすとんとおちる。

 しんしんと、どこからか聞こえそうな音。

 実は、雪の妖精さんがいたりして。そんなあるはずのないことを考えて、わくわくどきどきしたりする。

 そんな、静かな雪。

僕の絵の具 ( No.9 )
日時: 2021/01/30 20:31
名前: ぶたの丸焼き

「『僕』は優しいね」

「いつもありがとう」

 母さんの言葉が、僕をこの世界に繋ぎ止めてくれる。

「お礼なんてしないでよ。僕がそうしたいだけなんだから」

 優しい桃色で、僕は母さんに笑いかける。

 僕の絵の具は、四色ある。

 赤と、青と、黄と、白。黒と茶色を作るのは、とっても大変。練習だって、したことないし。

 他の色でも、まだまだ僕は、下手くそだ。

 だけど、僕は黒いキャンバスに、汚い色を塗りたくる。

 そうすることでしか、僕は、僕として、生きることが出来ないから。
______________________

 僕はその日、全てに絶望した。僕の存在価値が無くなった日。

 僕が、僕として、存在できなくなった日。

「ねえ、『僕』」

「なに?」

「話があるの」

 母さんは僕に言った。その顔は真剣そのもので、僕は悟った。

 真面目な話をするときは、藍色を使う。三色をバランスよく混ぜなくちゃ。

「もしかして、父さんの話?」

 母はこくりと頷く。

「まだあの人とは話はしていないの。だけど、……離婚しても良い?」

 僕は用意していた言葉を母さんにあげた。

「うん。僕は良いよ。母さんの人生なんだから、好きに生きて」

「本当に?」

 母さんの瞳は揺れていた。

 何度も何度も、どうしてそんなに尋ねるの?

 嘘なんて吐いて、どうするんだ。

「『僕』、それは『僕』の本心?」

 僕はいつも胸の内を秘めている。時には嘘だって吐く。それを母さんは知っている。

 僕は暖かな橙色でそっと言った。

「本心だよ。僕は父さんと家族でいたいとは思っていない」

 そう。嘘ではない。だって、

 僕は、なにも思っていないのだから。

 父さんと家族でいたいと思ってはいない。家族でいたくないとも思わない。母さんが何をしようと構わない。幸せになろうが、不幸になろうが。

 どうでもいい。

 どうだっていい。

 なんなら、面倒臭い。

 僕の絵の具は万能だ。赤に青に黄。そして、白。どんな色でも作ることが出来る。
 幼い頃から使い続けてきたから、もう、残り少なくなってしまったけれど。

 僕のキャンバスは、黒色だ。真っ白なキャンバスを、絵の具が乾きもしないうちに、汚く塗りたくってしまったから。

 下手くそ。下手くそ。下手くそ。

 絵の具は取れない。真っ白なキャンバスには、戻らない。


 しろいろ、だったっけ?


 ボクは、ナニイロ?


 あれ。

 ない。ない。ない。ない。ない。








 ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。

 絵の具が、ない。

 まだだ。まだなんだ。まだ、母さんとの会話は終わってない。

 使いすぎた?

 赤と、黄と、白。

 柔らかな色を作る絵の具が、もう、ほとんど残っていない。

 そんな。

 青じゃ駄目だ。青は『賢』。優しい色には使えない。

 駄目だ。駄目だ。

 まだ、僕は、絵の具がなくちゃ。

 僕は僕でいられない。

 ボクは、ぼくを、見つけてない。

 そんな。

 それじゃ、僕は、









 どうやって生きればいいの?

白い部屋 ( No.10 )
日時: 2021/02/08 08:27
名前: muteR

いつの間にか、君が僕に住み着いた。




辛(つら)い、苦(くる)しい、そんな気持ちはなくなったんだ。

大きく息を吸い込めば、まだ少し咳で苦しくなった。






そのたびに君が僕にどんどん侵略していくのだと分かったんだよ。

その内僕は、白いお部屋から出られなくなった。

何個も何度も僕は沢山の白い人たちに囲まれて、



まぶしいくらいの明かりの中で、
白い台に寝かされた。



眼が覚めたら白い人たちも、僕を白い部屋に閉じ込めたパパもママも、
ずぅっと下に見えたんだ。

おはよう、世界。僕は今日から子供になった。

好きなんですもの ( No.11 )
日時: 2020/12/12 09:26
名前: 烏

私は、幼い頃から特別でした。
人を見る目が厳しかったのです。特に、容姿を見る目が。
この世界は、美しくない人でいっぱいでした。
美しくない人を見ると、嫌気がさすのです。
私が獣を見る目で美しくない人を見ると、その人は怒りました。
私は怒った意味が分かりませんでした。
ダッテ、美しくないものが美しさを否定される、それは当たり前でしょう。
美しくないものは、“美”について文句を言う権利はないのですから。
美しくないものが目に映るということが苦しくなってきました。
私は悩みました。どうすれば美しくない人を消すことができるのか、と。
私は決意しました。私の家は大金持ちでしたから、資金を集めることは簡単でした。
美しい者を見つけ、自分の周りに置いて行く。
そう、私は美しい者だけでつくられた組織をつくったのです。
私はその組織の頭領として、組織を指揮しました。
美しく無い者は、見つけた次第殺しました。
私の組織は頭の良いものも多かったので、殺した痕跡が残らない毒の製造など簡単なことでした。
ある日、私が朝コーヒーを飲んでいると “上級幹部が銃弾に撃たれて死亡”という知らせが入りました。
上級幹部はとても美しい者の集まりでしたから、
死亡したと言う知らせは大きなものでした。
誰が殺したのか調べると、驚きの情報が手に入りました。
上級幹部を殺したのは私の弟だったと言うのです。
弟は、容姿だけで人を決めつけてはイケナイ、と言う人でした。
私の弟という理由で殺すのはやめておきました。
しかし、弟が私たちが“美しくない者”を殺したところを発見し、警察に通報すると言いました。
今回ばかりは弟であっても殺さなければなりませんでした。
弟を殺したのが5年前なので、弟は5年も復讐のチャンスを窺っていたと言うのです。
私は弟に向けて追っ手を放ちました。
その後、弟を銃殺したという知らせが来ました。

私は、美しい者を常に求めていました。
けれど、美しい者とともにベットに入ったことはありませんでした。
私は組織で1番美しい男を選び、ともにベットに入りました。
とても美しい男子が生まれました。
私が死んだら彼に後を継がせるつもりです。
彼は、世の中を美しい者で満たしてくれるはずです。
テレビで、“容姿の基準が上がった”というニュースをやっていました。
30年前に“美人”と言われていた顔が、今では“普通”レベルの顔になっていると言うのです。
私は腰を抜かしました。
私の組織は日本国内で600万人余りの美しくない者を殺しましたから、
美の基準が上がっていてもおかしくないのです。
私は途方に暮れました。

ああ、どうすれば世界が美で満たされるのだろう、と。


Aporonn ( No.12 )
日時: 2020/12/21 12:39
名前: muteR

冷たい床 冷たい目 隙間風 

それが僕の生まれた場所 僕の全て 僕の生まれた意味

球体関節 廃墟に似合わない美しい服 黄金硝子の目

それが僕の姿 僕の全て 父の愛しい僕


父さんは言った、「御前は最高傑作」なんだと、
兄弟たちは言った、「おまえは化け物」なんだと、

僕は最高傑作でもない、化け物でもない、

こんなに、こんなに美しい僕。
白い陶器の肌 滑らかな金の糸で作られた髪

ゆっくりと立ち上がれば 球体関節は音も立てず

誰も居なくなった廃墟から 美しい人形が姿を現す
金の髪 金の瞳 金刺繍のひらひらとした服





アポロン アポロン 嗚呼 神の姿の模造品


輝くばかりの その姿は 見るもの全て 虜にする
価値が 分からぬ 愚かな俗物 、壊れてしまえ

アポロン アポロン 嗚呼 気高き太陽神


ひたすらに 悲しい その姿は 哀れなただの 絡繰人形


居場所は とっくに 存在しないのに 
探して 探して ただ進む

自分の価値も分からずに 自分の定義も分からずに

     自分がなにかも分からずに


主が作った この体 白い陶器の この体

ひたすら歩き 続けても 球体関節は 壊れもせず




アポロン アポロン 嗚呼 神の姿の模造品

輝くばかりの その姿は 見るもの全て 虜にする


アポロン アポロン 嗚呼 気高き太陽神


ひたすらに 悲しい その姿は 哀れなただの 絡繰(からくり)人形

嗚呼 我が主は 一体何処へ

私は 行くのだ 気高き 故郷へ 


森 ( No.13 )
日時: 2021/02/13 16:00
名前: アロハン

青々としていて、地平線のはるか向こうまであるのではないかというぐらいの森。
森の周りは石レンガの塀で囲まれていて、中に入れないようになっている。
森には人を襲う凶暴な動物がいるかららしいが、一説には森の中では何か、極秘の施設
があるためだとか言われている。 確かに定期的に森にトラックが入って行ってるし、
凶暴な動物がいるからという理由にしては塀周りの警備が厳しすぎる。 ある程度の
信憑性はあるだろう。 そこで、この話を信じた人々が森を管理する団体に真相を公表
するように求めた。団体は、森には何もないと答えたが、これに納得できない一部の
過激派が団体の施設に入り込んだ。火炎瓶や猟銃などの武器を装備しており、施設は大混乱
に陥ることになった。 警察、軍も出動したが、全く手に負えず、結果団体は森に関する全ての
資料を公表することになった。予想通り、その資料には極秘施設の情報も載っていた。
どうやら兵器開発を行っていたらしい。これならトラックが入っていくのも、警備が厳しい
ことも納得できる。 これにて騒動は収まったが、ある日男が警備の隙をついて森に
侵入したところ、その後彼は悲鳴と共に施設に連れていかれ、今もそこで廃人状態で
実験体として生かされているという。

一色の集まり ( No.14 )
日時: 2021/02/24 17:59
名前: 春海

放課後の美術室。照りつけるような陽光を木の葉が遮り緩和する。
柔らかな光が葉っぱの淡い色を透かして美術室の床と、僕の白いままのキャンバスを彩っていた、その色は浅緑。
瞬間、僕の頭の中で浅緑が溶けた。溶けてのまれた。萌黄、若緑、灰緑、深緑。
いろんな緑が混ざり合って、僕の頭の奥の、また奥の方まで溶かした。
油彩画用筆を執り、パレットにあるだけの種類の緑をゆっくりと丁寧にチューブから押し出す。

今、この緑を描きたい。今、この緑で真白いキャンスバスを染め上げたい。今、今、今。
僕は無造作に筆をパレットの緑に押し付けて、そのままキャンパスに線を描いた。
右に、左に、下に、上に。流れるように筆を滑らせる。
もっと、もっとだ。もっと出来る。僕なら出来る。
 
 僕は無我夢中で絵を描き続けた。でも、絵を描いていたと云うよりは塗っていたに近いのだと思った。
だって完成した絵は下から順に、萌黄、浅緑、若緑。そして唐突に海松色などがてんでバラバラに塗られている。
濃いから薄いに、薄いから濃いにとか、そういう順番とかでも無い。
緑色という種類のたくさんの集まり。一色の集まり。
 ただ、とても綺麗だった。これを僕が描いたのなんて信じられないくらいにとても美しいみどりいろ。
生乾きのキャンパスに描かれた一つの緑の線を指でなぞってみる。
キャンパスに触れた指は当たり前のように色が付いた。

 椅子から立ち上がって僕は軽く伸びをしてみた。背骨がコキリと二、三回音を立てる。
目までかかった前髪を掻きあげてスタスタと窓に歩み寄る。
ガラッと勢いよく窓を開けると校庭を走っていた運動部の元気の良い声が美術室にも響き渡った。
 しばらくは空を流れる雲を目で追っていたが、ふと校庭に視点を落とす。
バドミントンのラケットを持って素振りの練習をしている女子数人の和気あいあいとした様子を眺めていると僕に気がついたのか、大きく手を振り笑顔で僕の名前を呼んでくれた。
なんで僕だと分かったのか少し疑問に思ったけど、放課後まで残って絵を描いてる美術部員は僕しかいないからかと納得した。
にこりと微笑んで手を振り返したら、挨拶をしてくれた女子数人から黄色い歓声が上がった。


うんちとは何か ( No.16 )
日時: 2021/04/30 06:15
名前: おしり中毒

「人がうんちをするのは何故だと思う?」

我らがボスにそう問われた。もちろん排便しなければ人は死ぬからです、と答えたがボスは難しい顔をしたままだ。
「ではボスは理由を知っているのですね?」
「ああ、だがお前にはまだ早かったみたいだな」
俺は納得がいかなかったが、ボスはかつて一国を救ったほどの英雄だ。きっといずれ分かる日が来る。

俺は仲間と共に世界各地に派遣され、仕事を着々とこなしていた。今までもそうだったしこれからもそうだ。俺たち傭兵は戦争の手助けや対テロに精を出す犬であって、犬が人間になる事はない。
だがある日、ボスの補佐をする参謀が俺たちを外に招集し、こう述べた。
「俺達は犬だが犬には犬の矜持がある。俺達は新たな価値を己の中に生み出すことにした。そう、新しいビジネスが始まるんだ。」

新しいビジネスとは抑止力を生み出す事、ただそれだけだった。
俺は無学だからどんな意図がそこにあってその行為にどんな価値があるのかが分からなかった。だがそれにもいずれ慣れる。

抑止力を生み出すための仕事は前とそう違わないものだったが、唯一前と違ったのは戦争を起こさない為の仕事に限られたことだ。俺たち傭兵はどこの国にも所属していない根無し草だったので、どんな国でも金さえあれば一つの抑止力になり得た。
犬は犬でも犬種は変わったようだ。

そして参謀の予見は的中し、世界は強力な兵器の保有よりも傭兵の数を重視するようになっていった。俺たちの様な雇われを抑止とするビジネスが増えて来たのだ。
何でも兵器は民間人を脅かす可能性があるのに対し、傭兵は敵対する者にしか害を与えないからだと言う。


一年が経ち新たな環境に慣れてきた頃。
ボスがある依頼を断ったそうだ。それ自体はさして珍しい事ではなかった。俺たちを何でもする奴隷か何かと勘違いした馬鹿共が戦争に俺たちを利用しようとして断られる事が何度かあったからだ。
しかし今回は違う様で「荒廃を秩序とする抑止力ではなく、平和を目指す抑止力」を謳い文句に依頼をしに来たと言うのだ。それもかなりの大金を用意して。
素晴らしい理想だが同時になんと胡散臭い台詞だろうか。ボスが断ったと言うのなら尚更だ。

数日後、再び先の依頼を頼みに男が門を叩いた。警備に当たっていた俺は子供を連れているのを確認した。「今度は戦争孤児を引き合いに出すか…臭い奴らだ」そう思っていたが今回の示談でボスは依頼を受けたそうな。
依頼内容はとある大国の身の潔白を調査するというもの。意外だと思ったのも束の間、調査を依頼された場所は駐屯場だった。やはり裏があるか。

俺は仲間3人と共に調査を依頼された駐屯場に潜入した。
ヤクか、人身売買か、それとも・・・。そういった余念が頭を廻り続ける。それも駐屯場の大型監視塔に辿り着いたときに確信となった。
塔内には男が3人、大量に積まれた段ボール、陸路と海路が描かれたパネルがあったのだ。
男3人を制圧するとパネルを確認する、何かしらの物資を運搬しようとしていることは火を見るよりも明らかだった。
次に段ボール。これには検視薬が大量に入っていた。それを見た兵器に人一倍詳しい仲間の一人が急速なボスへの通信を求め、こう呟いた。
「こいつらの抑止力は史上最悪の兵器だ・・・!」

男の内一人のポケットに入っていたマップ付き通信機を見やると、いくつかの地図がインプットされていた。それもご丁寧にメモ付きだ。
通信機を見る限り、あらゆるまばらな地域からランダムに様々な兵器の部品や試行の為に使われる薬がある地点に集められている。これも恐らく中継地点に過ぎないだろう。
潔白を証明する任務は罪の左証確認の任務へと変わった。

地図で確認できた中継地点に5人の仲間が派遣された。結果はやはり集められた部品群の整理と次の目的地への輸送で、この中継地点の他にも4つの中継地点が存在していたようだ。
完全に黒だがボスは依頼の報告をしなかった。どうやらその兵器を押収するらしい。
依頼人の魂胆はつまりそういう事だったか。

極悪な兵器にはそれはそれは莫大な金がかかる。それが国を守ると信じて違法な量を隠して所持するのが大国の常套句だ。これは大国のトップたちには暗黙の了解なのだろうか、その実態を知る由はない。
この極悪な兵器を傭兵数人分の金額にかさ増しするだけで手に入るとなれば実行に移す事は想像に難くないが。

中継地点の先は廃工場だったらしい。
廃工場には俺も派遣されるので気合が入る。依頼人は時間がかかり過ぎていることに疑問を抱き始めている事だろう、急がねばならない。

廃工場付近には比較的新しいフェンスやバリケードが多く設置されていた。もう真っ黒どころかベンダブラックである。
工場内部への侵入は難しかった。その防御布陣は相当なものでつけ入る隙など僅かにも無い。
そこで仲間6人で工場を包囲して単独の制圧を目的とした。じりじりと工場周囲を制圧し、内部へ2人1組の3組で侵入することに成功。
俺たちはそんじょそこらの傭兵とはわけが違うのだ。

そしてすぐに内部で恐ろしいものを発見する。全長5mはある巨大なポッドとそれを内包出来るであろう巨大な装甲車だ。
一目で異常な兵器である事が見て取れる。兵器に詳しい仲間はボスに通信を行った。
「こちらA3、ボス、やはり工場内で作られている兵器は自動操縦機能を搭載した超大型戦車です。それも積まれるのは間違いなく…核です」

「嘘だろ、あれは自動で核を飛ばす戦車だって?」
「いいや嘘じゃない、それを可能にしたんだ。しかもいやらしい事にあの装甲は核でもない限り破れないだろうな…。」
あんなものがあっては危険だ。強力な抑止にはなるが、それは均衡を崩すだけだ。
だがこれをどう片付けるか…。

そこでビデオ放送が始まった。工場内に置かれた巨大モニターに見覚えのある顔が映る。
依頼人だ。

「どういうことだ…!?」
俺の問いに仲間が答える
「マッチポンプだったんだよ!アイツ、潔白を証明するという目的に裏なんてなかった!」
そこでさらに衝撃的な発言が聞こえた。
「このシステムにはこの核は発射された核に対してだけ発射する迎撃システムだ。だがその効果はそれだけに留まらない、爆発した核には特殊な仕組みを施してあるのは周知の事実だろう。
この仕組みは爆破後の核に化学反応を発生させ、風を巻き起こすのだ。
その風は対になる核の低空にある方向に吹く事になる。この戦車の発射性能は至極高い、間違いなく先の核の上空で爆発を起こす。
つまり先に発射された方向に核の二次被害が起こるのだ、それも2倍の威力になって。」

「君たちにも言っているのだよ、依頼人である私を裏切るとは商売人としてどうかと思うがね」
「バレてるだと!?」
「この罪はこの戦車という処刑人に頼もうか。」
「ボス!こちらA3!俺たち…」
そこで大勢の兵士に囲まれ、俺たちは降伏した。

連れてこられた施設の一室で脚を組みながら依頼人は言う。
「最初から実験場は君たちと決めていた。この迎撃システムの効力が本物であることを他国に示さなければ抑止力としての価値はないからな。」
全身を縛られた俺は思ったことを思わず口に出す。
「アンタ正気か!?そんな事をして罪に問われないとでも思ってるのか!?」
「いいや核を撃つのは私ではない、他国だ。」
どういうことだ…?

「このシステムは一種の報復、核を発射したと判断した場合にのみ発動する。例えばA国がBという名の団体にハッキングしてC国に偽装した核ミサイルの情報を送信したとしよう。そしたらC国は核を迎撃しようとして核ミサイルを発射する。
するとどうなる?そう、勘違いしたC国は団体Bに核ミサイルを発射することになるわけだ。」

「は!?この兵器となんの関係が・・・」

「撃てんよお偉いさんには。核を撃つという事はその地区に住む者たちを皆殺しにするということに等しい。正当防衛は成立してもその名は核を放った悪人として未来永劫歴史に刻まれる。
誰しもが自分の名誉を守るため、確実に国民を守る迎撃よりも、不確かな避難指示を国民に出すだろう…。
そこでこの兵器が核の情報を受信してシステムを発動するのだ!不確かな人間ではない、機械は確実に核を撃つ!誰も罪をかぶる事は無い、核を撃ったのはこの兵器なのだからな…。」

「…既にハッキングは完了ってわけか…!」

「君の通信機のおかげでね。」

終わった…。俺の不手際だ。この兵器が発動しようがしまいが俺たちは皆殺しだ。
そして歴史には「大国に核を撃ったキチガイの大罪者共」と名を残す事だろう…。
「君たちはもう用済みだ、ここで処刑としよう」
一斉に銃が俺たち6人に向けられる。ボスや仲間達への謝罪の念の中で俺たちは死ぬのだ。

そこに爆音が鳴り響く。施設は大きく揺れ、大勢の兵士たちが銃を向け一室を瞬く間に制圧する。
「何者だ!?」
兵士たちの奥からスーツを着た男が現れ、依頼人にこう言い放つ。
「ご苦労だった。君の持つ迎撃システムは我が国が利用する。」
この男は間違いなく偽装した核の情報を発信した大国のお偉方だった。


お偉方の目的は兵器の奪取らしいが…そう考えていると依頼人が口を開く。
「これを奪って何になる?このシステムは指定された全ての国を対象にしている。君たちの国が持とうと我々が持とうとそこに違いはない。こんなことまでして何を求めているのだ?」
お偉方は答える。
「知れた事。この兵器を全世界に配備する。我が国の名のもとにな。この作戦は機密、大統領にも伝えていない…。全て私の手柄だ」

狂っている。抑止力とはなんなのか、結局名誉を優先する点では依頼人の意見は正しいと言わざるを得ない。だがこれで俺たちは一時的に助かった。後はこのお偉方の意向次第である。
すると、突然発砲音が鳴り響く。
依頼人が撃たれた。
「君はこいつら犬どもに殺された。原因などない。こいつらは多くの民が済む我が国に核を撃つようなキチガイ共だからな」

こいつ…やりよった…!こいつも実験を行い、その抑止力を他国に見せつけるつもりだ!それも俺たちを利用して…!

依頼人の兵士は常にお偉方の兵士に銃口を向けられていて手が出せない。仮に手を出せたとしても戦争になるか、俺たちが終わるか…。最悪な結果しかない。
今の国は腐ったカビだ。抑止力に安心しきった者たちの上に立つ馬鹿共がその力を利己に使うだけ。
過剰な抑止力など冷戦の引き金でしかないのだ…。

そうやって心底お偉方を馬鹿にしていると縄が外された。
「どこへでも行くと良い。君たちが何を言おうとも、もう無駄だからな。」
そう言い残してお偉方と兵士たちは去ってゆく。

と、そこにヘリの音が。それも無数にだ。
音のする方に目をやるとそれは見慣れたヘリだった。
仲間の通信機からボスの声がする。
「助けに来た!」

戦闘班のほとんどがその場に参戦していた。ボスもだ。
その圧倒的な戦力にお偉方たちは降伏するしか手がない。

俺たちは状況を手早くボスに伝えた。参謀と連携してハッキング内容の修正に取り掛かる。偽装された核の情報を消すのだ。
だが、そのハッキングされた内容を見て参謀と情報処理班は絶句した。
「情報が発信されたのは…20分も前だ!」
第一声は絶望的な言葉だった。


大国は核の情報が偽装のものなど知る由もなく、迎撃をするか否かで議論が伯仲していた。
残された時間は僅か20数分程度。結論を迫られた大統領は答えを出す。

「無駄だ!誰も核を撃てない!システムは間違いなく発動する!」

手当をされていた死にかけの依頼人は笑いながらそう口にした。
しかし現実はそう上手くいくものではない。何の根拠もない彼の見通しは実に甘かった。

「迎撃を行う!みなで悪人の名を背負おう。」
大統領はそう決断した。誰も反対などしなかった。する時間すらなかった。

「情報は消せたか!?」
ボスの問いに対し返ってくるのは「いえ、まだです!恐らく…短くてもあと15分ほど!」という残酷な回答だった。
大統領が後5分の状況まで待っていられるハズもない。仲間はまだ基地内だ。脱出は間違いなく間に合わない。

するとボスが仲間たちにシステム中枢の破壊を命じた。
そしておもむろにお偉方を掴み「大統領と話をさせてくれ」と言い出した。
最初はふて腐れた態度だったが「許可しないのであれば銃で四肢を切断する」という発言に青ざめ、大統領に連絡を入れた。


「大統領!電話です!」
「電話?それどころではない!」
「それが…相手は我が国を救ったあの英雄です!」
「なんだと!?」

ボスが大声で大統領に言いかける。
「大統領!その核の発射情報は偽装だ!迎撃はしないでくれ!」
「その声は…。いや、君が本物かどうか分からん、証拠となるものはあるか!?」

するとボスは衝撃の発言をした。
「俺は授与式の場で盛大に屁をこき!うんちを漏らした!そのうんちを大統領!アンタの手に塗った!あの場には俺とその他数人の関係者、そしてアンタしかいなかった!わかるはずだ!」

大統領は沈黙する。そして数秒後、口を開いた。
「……みな!核の情報は偽装だ!迎撃は中止とする!」
大統領の周囲はどよめくが、事情を聞いて押し黙った。

「ありがとう大統領!おかげで助かった!」
「君にはこの国だけでなく私と部下まで救ってもらった。礼を言うべきは私だよ」

これで迎撃はどうにかなった。あとは兵器の中枢を破壊するだけだが、その装甲は硬く、本体を取り外すのにも時間がかかっていた。
俺はケジメをつけるため中枢を破壊しに向かう。本体はあらゆる部品と接続、連結していたため、そこに銃を乱射し本体を取り出すと、銃を構えて待機している攻撃班たちの元に投げつけた。
次の瞬間、本体は蜂の巣となり爆発、炎上しだした。

「やった…!」
だが本体の接続は完全には途絶えていなかった。僅かな電力がギリギリのラインで生き残っていたのだ。完全に壊したと思っている攻撃班は銃撃の手を止めた。それと同時に大統領から通話が入る。
「まだ核の情報が消えないんだが、大丈夫か!?」

それを聞いたボスは凄まじいスピードで本体の元へ向かうと手榴弾を投げつけ、本体は爆発に巻き込まれた。今度こそ完全に壊れたのだ。

「大統領!これを!」
「核の情報が消えた!やったのか!」

抑止力を求めた結果に生まれた破壊者は消え、平穏が戻った。



ボスはすっかり疲れを癒した俺を呼び出し、こう質問した。
「人は何故うんちをすると思う?」
俺は迷わず答えた。


「栄養補給の結果生まれたうんちをため込めば人間の体が持たないからです。」

詩 小説 ( No.17 )
日時: 2021/08/13 12:42
名前: 妻田 夢

   小説

小説ってなんだろう
なんのためにあるんだろう
それは頭の中に浮かぶもう一つのストーリー
小さな説と書いて小説
1つが沢山分かれてく
今日も作られる沢山のストーリー

誰か自由を ( No.18 )
日時: 2021/09/02 11:34
名前: ねむねむ  ◆ImDwVl1n2.

「私に自由をくれ。」

彼女がそう言ったとき、僕は驚いた。
彼女は金も権力も持ち合わせている。
不甲斐なくて申し訳ないが、僕という彼氏もいる。
僕が彼女を縛り付けているのだろうか……
そんな不安を彼女は見抜いたのだろうか。
詳しく話してくれた。

「私は周囲の期待にいつも怯えていた。
 期待に応えられなかったら、どうしようと。
 仕事は早く正確にこなして、信頼を高めて。
 そうすればするほど、周囲にどんどん期待されて。
 正直、その期待が重かった。
 怖いんだ。
 きっと社長なら大丈夫だからと言われるのが。
 責任をすべて負わなければいけない立場が。
 全部、こわい……」

社長っていいよなー、すごい儲かってそうだし。
そう思っていた、僕の浅はかさを突き付けられた。
僕がしてあげられること、それは何なのだろう。
救ってあげたい。その重みから。
「社長」でも、僕にとっては彼女なのだ。
か弱い、一人の女の子なのだ。
男として、救ってあげたいと思うのは、何もおかしいことではない。
それがたとえ、身分に格差があったとしても。
どうすればいいんだ、どうすれば彼女を救ってあげられるんだ。
必死に考える。

「だから、私は自由が欲しい。
 みんなが当たり前に飲んでいるジュースだって飲んでみたい。
 社長だから、そういうのを飲んでいたらかっこ悪いと思われる。
 そうやってずっと思っていたんだ。
 たまには休みを取って、君と二人で野原でピクニックとかだってしたいんだ。
 あいにく料理は下手でね。上手な君に任せてしまうが。
 そんな平和でのどかな日を、一日でいいから過ごしたいんだ。
 でも明日には決済だの会議だの、たくさんの予定が詰め込んである。
 とても休みたいなんて言えないんだ……言えないんだよ……」

社長って、大変なんだ。と改めて思った。
今までも社長は大変だと思ったことがあった。
でもそれでもその分儲けがすごいし、と気に留めていなかった。
本人にとってそれがどんなに苦しいか、知らなかった。
考えもしなかった。

僕は、彼氏失格だ。

「愛する人を手に入れることができて、私は十分幸せなんだ。
 だけど、その次を求めてしまう。
 一緒にお出かけしてみたい、と。
 我儘なんだ、私は。」

僕は、うつむいていた顔をあげて言った。

「僕は、君の彼氏だよ。
 我儘を言われる立場であり、言われたいとも思う。
 君はずっと我慢してるんだろ?
 じゃあ、僕には我慢しなくていい。
 僕は、君のそんな我儘を、喜んで受け止めるさ。
 一日くらい休んだって、社員のみんなはいいと思うと思うよ。
 だって、一番近くで君の仕事を支えてるんだ。
 君がどんなに大変か、分かってると思う。
 それで、さ。僕と一緒に、ピクニックに行こう。
 行きたいんでしょう?ほかにも行こう、二人で、たくさんのところに。
 美味しいサンドウィッチを作ってあげるよ。」

彼女は目を見開いている。そんな彼女の驚いた顔も、好きだ。
だって、彼女は僕の彼女だから。
心から愛する、大切な人だから。

ずっと一緒。

独りじゃない。

大好きだよ。

一番近くで、君と過ごす。

一生、この手を離さないから。

笑って。

君の笑顔が、何より大好きだから。

未来へ向かって...... ( No.19 )
日時: 2021/10/03 09:39
名前: シズク

「ねぇ、私、ちゃんと卒業できたよ。」

明るい笑顔で、桜の木を見上げる。
今日、私は卒業した。
卒業できたのはサクラのおかげと言ってもいい。
そう、私がサクラと出会ったのは、入学してすぐのことだった。

入学式の翌日......

「おはよう!」
「ねえねえ、昨日のあれさぁ......」

みんなすっかり打ち解けている。
同じ小学校からきた子かな。
私は引っ越してきたばかりだったから、クラスにあまり馴染めなかった。

一日が終わる頃には、もういくつかのグループができ始めていた。
誰とも話せていないのは、私だけみたいだ。
話しかけようともしたけれど、私とは話したくないようだった。

そうして一週間が過ぎ、私はクラスで何と無く避けられるようになった。
どうやって話しかけたらいいんだろう。
今更聞くことも出来ずに、惨めな自分を責めた。
休み時間は、校庭の桜の木の下で過ごした。
桜からは、寂しさを紛らわしてくれるような、そんな暖かい感じがした。

そんな時だった。
「何か悩んでる?力になれたらいいな!」
いつの間にか、同い年くらいの女の子が隣に立っていた。
「あの、あなたは?」
驚いて思わずそう聞いた。
「私はサクラだよ!この桜の木に宿る精霊。困ってる中学生を助けるのが仕事。」
サクラの話は、普通なら信じられないような話だったが、
その時はなぜか、本当のような気がした。

それから、私はサクラと毎日話すようになった。
私が友達作りに悩んでいることを話すと、こう言ってくれた。

「凛らしい言葉で話しかければいいの。
気を使いすぎなくてもね、案外仲良くなれるものよ。
自分なりの方法を見つけてね。」

その言葉を聞いて勇気が出た。
実はそのころ、隣の席の女の子が気になっていたのだ。
自分と同じアニメキャラクターが好きだと話していたのを聞いたことがある。
頑張って話しかけて見ることにした。

「あの、おはよう!私、凛っていうの。よ、よろしく。」
「私は美智香。こちらこそよろしくね!」

話してみると、優しくて面白い人だな、と思った。
その時から、私は、友達に話しかけられるようになった。
親友も2人できた。あの時の美智香と、同じアニメが好きだった彩音。
サクラには感謝してもしきれない。

私に親友ができた時、サクラは、
「もう私はいなくても大丈夫だね。これからも楽しく過ごしてね!」
と言っていた。
それきり、サクラには会えていない。
でも、この桜の木の中に、サクラはいると思うんだ。
「ありがとう!サクラ!私、サクラのおかげで、高校でも頑張れるよ!」
桜に向かって叫び、歩き出す。
この先に待っている、明るい未来へと......

彼岸花 ( No.20 )
日時: 2021/10/07 21:58
名前: 92

母はよく彼岸花を育てていた。私が幼い頃に一度だけ彼岸花を育てる理由を聞いたことがある。
その時母は、「彼岸花はね、あの世とこの世をつなぐ花。お父さんとお母さんを繋ぐ花。だから、お母さんはこの花を育てるの。」と、少し悲しげに言った。それ以来、聞かなかった。数日前、母が死んだ。だから、彼岸花を思い出した。私は彼岸花を育てる。悲しげで、美しい花を。いつか、娘に理由を聞かれることを待ちながら。
母と父と、私を繋ぐ花。それを私は、大事に育てる。いつの日か、私が死ぬまで。

仕事 ( No.21 )
日時: 2021/10/16 20:10
名前: りんごもなかじゃんぼ

私の仕事は、案内。
人々を、その人が望むところへ、案内する。
今日はしばらくは暇だった。
ぼーっとしていると、なにやらここへはじめて来た人が迷っているご様子だった。
「何かお困りですか?」
「最初はどこに行けばいいですか?会員登録はどうすればよいですか?」
相手の顔は見えない。
見ようとしてはいけない。犯罪になってしまうから。
「会員登録は不要です」
「そうなんですね」
「まずはこちらへ行ってみてください、沢山の作品が読めますよ」
「ありがとうございました」
そんな言葉を残し、相手は去っていった。

次の人は、何回もこちらに来ているようだ。
「何かお困りですか?」
「お困りですか?じゃねーよ。管理者を呼べ」
文面からして、怒っていると思われる。
「管理の者は、只今不在です」
「じゃあお前がやれ」
「何をですか?」
「俺の出禁を解けよ」
ここは窓口なので、本館を出禁になっている人でも入ることができる。
「了解いたしました」

「やっぱり判断力に欠けているね、君は」
管理している人が、私に向かって語りかけている。
私は何と答えればよいのか、分からない。
そのような事は教えられていない。
「荒らしの対処について学習しようか」
私の仕事は、とある小説投稿サイトの案内。
管理している人は多忙のため、代わりとして私が作られた。
皆様は私のことを、
AIチャットボット
と言うらしい。

西の魔女、東の魔女 ( No.22 )
日時: 2021/10/31 22:55
名前: 氷菓子

この世界を創ってるのは
西の魔女と
東の魔女なんだって

西の魔女と
東の魔女が
死んだら
どうなるかな?


結、

黒美、

西の魔女と、

東の魔女。

喧嘩半分、仲良し半分。
半分半分。
命も半分こ。

世界は戦争によって壊れていって、
……
結が愛する世界のために命を捧げた。
彼女はいつもの作り笑いを浮かべながら「橋」を渡っていく。
彼女は崩れ落ちた。
半分だけ。

半分だけじゃ生きれない。
二分の一 + 二分の一 が一かは
わからない。

どうなったのかなんてその世界の誰にもわからない。
だって

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