SS小説(ショートストーリー) 大会【平日イベント】

第15回 SS小説大会 開催!〜 お題:自由(または森) 〜
日時: 2020/07/09 22:26
名前: 管理人 ◆FiOOrlVc7Y

【第15回 SS小説大会 参加ルール】

■目的
基本的には平日限定の企画です
(投稿は休日に行ってもOKです)
夏・冬の小説本大会の合間の息抜きイベントとしてご利用ください

■投稿場所
毎大会ごとに新スレッドを管理者が作成し、ご参加者方皆で共有使用していきます(※未定)
新スレッドは管理者がご用意しますので、ご利用者様方で作成する必要はありません

■投票方法
スレッド内の各レス(子記事)に投票用ボタンがありますのでそちらをクリックして押していただければOKです
⇒投票回数に特に制限は設けませんが、明らかに不当な投票行為があった場合にはカウント無効とし除外します

■投稿文字数
400文字以上〜1万5千字前後(1記事約5000文字上限×3レス記事以内)
⇒ざっくり基準目安ですので大体でOKです

■投稿ジャンル
SS小説、詩、散文、いずれでもOKです。
⇒禁止ジャンル
R18系、(一般サイトとして通常許容できないレベルの)具体的な暴力グロ描写、実在人物・法人等を題材にしたもの、二次小説

■投稿ニックネーム、作品数
1大会中に10を超える、ほぼ差異のない投稿は禁止です。無効投稿とみなし作者様に予告なく管理者削除することがあります
ニックネームの複数使用は悪気のない限り自由です

■大会期間、結果発表等
第15回SS小説大会 2020年7月5日から2020年10月30日まで
          優秀作品発表…2020年11月7日(トップページ予定)
          お題(基本)…自由 、お題(思い浮かばない人用)…森 

■その他
ご不明な点はこの掲示板内「SS大会専用・連絡相談用スレッド」までお問い合わせください
http://www.kakiko.cc/novel/novel_ss/index.cgi?mode=view&no=10001

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平日電車やバスなどの移動時間や、ちょっとした待ち時間など。
お暇なひとときに短いショートストーリーを描いてみては。
どうぞよろしくお願い申し上げます。

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微睡みと泡沫 ( No.1 )
日時: 2021/08/21 10:53
名前: 蜂蜜林檎

深い深い森に旅人は迷い混んだ。苔蒸した岩に滴る水の音。遠くで囀ずっている小鳥の声。それらはどれもかすれてよく聞こえない。
旅人は餓死寸前だった。歩いて、歩いて、さ迷って。もうどのくらいたったのだろう。痩せこけた頬と細い手足が全てを物語っている。だんだん薄れていく意識の中で 「死にたくない」 とだけ願い、旅人は気を失った。


旅人が目を覚ますと、そこは小さな小屋。いつの間にか傷は癒え、疲労感も消えている。辺りを見回していると、一人の少女がドアから入ってきた。少女の手には少しの食料と綺麗な水の入った瓶が抱えられている。

「もしかして助けてくれたのか ?」

旅人が尋ねると、少女は微かに上下に頭を動かした。旅人は、その少女に見覚えがあった。

──森に現れる美しい少女。その声を聞くと、息の根を止められてしまう

村に代々伝わる恐ろしい童話。子供の頃に聞いた、うっすらとした記憶。その童話に出てくる少女にそっくりなのだ。こんなところで死ぬなんて嫌だ、と、ただただ焦る。逃げるしかない、と覚悟し、申し訳ないと思いながらも旅人は少し頭を下げて、礼を言ってからその場を去ろうとした。
だが、服の裾を引っ張られ、思わず立ち止まる。冷や汗が頬を伝い、心臓の音がうるさく響く。殺されるかもしれないという恐怖と、危機感と、焦りとが心に襲い掛かった。
振り向くと、少女は首を横に振っていた。 「行かないで」とでも言いたいかのように。そしてキッチンからシチューの入った鍋を持ってきて、旅人につき出す。大きめに切り揃えられた沢山の野菜。濃厚な白いクリームから美味しそうな匂いが立ち上る。その瞬間、旅人のお腹が鳴り、こんな状況ではあるが思わず照れ笑いを浮かべた。

「分かった。食べるよ」

旅人がそう言うと、少女は目を細めて微笑んだ。木の皿に大量に盛り付けられたシチューを食べると、体が温まり、体力が復活するのが分かる。シチューを食べる旅人を、少女はずっと微笑んで見つめていた。

少女は森のいろいろな所に連れていってくれた。綺麗な水が流れる清流。美しい花が咲き誇る花畑。ウサギやリスの群れや、時々生命ならざるものも見えた。森の神秘に触れ、旅人は「夢を見ているのではないか」とうっとりする。

「ずっと……ここに居たいなぁ」

それは本心だった。ずっとずっとこの森にいたかった。
何気なく溢した言葉。その何気なく溢した言葉に、少女は力強くうなずく。

『ここに居なよ』

そう旅人には聞こえた気がした。


二人はお互いに惹かれ合い、恋に落ちた。
言葉は交わさないけれど、心は通じあっている。
毎日が楽しかった。満たされていた。
ずっと、このままでいたかった。


旅人は青年から大人になっていった。少女は変わらぬまま。


やがて旅人は年をとり、動けなくなった。

「お前は変わらないな」

旅人は笑みを浮かべながら少女の頭を撫でる。
その姿は祖父と孫のようにも見えた。

「俺は……もう長くない。だから最後のお願いだ」

心配そうに見つめる少女の目には、涙がたまっていた。

「お前の声を聞かせてくれ」

少女は躊躇った。できるだけ長く一緒にいたかった。
……でも。

「大好き。貴方を愛してる」

「うん。俺も」

少女は泣いた。何度も。何度も。
石のようになった旅人を抱きしめながら、何度も泣いた。
旅人の目からは、一筋の涙が流れていた。

それは泡沫の如く一瞬で、この世の何よりも美しかった。

60seconds ( No.2 )
日時: 2020/07/10 00:46
名前: 美奈

こんなこと、初めてだった。

夫を早くに亡くしてから、こんな気持ちになることはなかった。
亡くしてからは、ずっとずっと、胸が苦しくて。何かがつかえたような感覚が残り続けた。歩いているだけで涙が出てきて、呼吸が浅くなって。
それを他人に見られまいと、太陽に照らされてはたまらないと、いつも下を向くようになった。

だから、”全身に衝撃が走るような恋”なんて、ないと思っていたのに。
いつも通り下を向いて通勤電車に乗っていたら、強烈な視線を感じた。
思わず顔を上げると、多くの人間に押しつぶされながらもこちらを見る彼の目に、吸い込まれそうになった。

毎朝、1分くらいの出来事。お互いの電車が停車した時だけに見られる、彼の目。
たった60秒の逢瀬。
…逢瀬は流石に大げさだろうか。


知らない人と目が合うのは気まずいはずなのに、彼の時は違った。妙な言い方だけど、自分の一部みたいな。そんな気がした。
1分間も見つめ合うことができたのは、きっと互いに何の嫌悪も感じなかったから。
目が合ったからって、笑顔や会釈を求められるわけじゃない。車両同士の対面だから、言葉だっていらない。そんな関係性は普段の対人関係にはないもので、だから新鮮で。私は電車に乗ったら、必ずドアの近くを確保した。蠢く人々を必死でかき分けて。
時が経つにつれて私は、例の駅に電車が滑り込む前から、彼を探すようになった。停車しなきゃ分かるはずがないのに。
私は自然と、前を向くようになっていた。朝に期待するようになった。太陽を受け入れるようになった。
たった60秒で、人生はこんなにも変わるんだ。そう思った。

池袋方面に向かう私とは反対に、渋谷方面に行く人だってことは分かっている。
でも、どこから来たのだろう。何歳なのだろう。何をしている人なんだろう。誰と暮らしているんだろう。名前は何て言うんだろう。私は、彼の目にどう映っているのだろう。
その目からは表情がうまく読み取れなくて。でもだからこそ、想像を掻き立てられた。電車を降りても、彼のことで頭がいっぱいだった。とにかく姿を見られれば、明るい1日が保証されていた。毎日毎日、私たちは見つめあった。
たった60秒を、毎日。



まだまだ残暑が厳しい季節だった。

電車内のモニターが、一斉に黄色と赤の画面に変わる。
『急停車します。ご注意ください』
例の駅に着く前に、電車は急停車した。

これでもかというくらいに人間を詰め込んだ電車が、急速にスピードを落としていく。
ただでさえ身動きが取りづらかったのに、私はさらに押しつぶされた。
苦しい。
…たちまち、蘇る。
何かがつかえたような、あの感覚。

何事だ、という雰囲気が全体に広がり始めた時、アナウンスが聞こえた。

ー内回り電車で人身事故が発生したため、急停車いたしました。従って、外回りもしばらく運転を見合わせます。ご迷惑をおかけいたします。

彼に会いたいがために運転再開まで結構粘ったのだけど、いよいよ職場に間に合わなくなりそうだったので、仕方なく振替輸送を使った。
結局、彼を見られなかった。
1日中不安だった。彼が今どこで何をしているのか、そればかりが気になった。
たった60秒、見なかっただけなのに。

主要な路線だったので、その日の事故はニュースになった。
40代の男性が、心不全で線路に転落したようだった。


翌朝、電車は何事もなかったかのように動いて、例の駅に着いた。
彼はいなかった。どんなにくまなく探しても、いなかった。
もしかして、人混みをかき分けられなかった?定位置を確保できなかった?今日は早朝から会議があった?それとも、有給を取った?昨日私に会えなくて、嫌になった?
ねぇ、どこ?どこにいるの?姿を見せて。…お願い、姿を見せて。
たった60秒が、永遠のように感じられた。


電車を降りてから、急に胸が苦しくなった。呼吸も浅くなって、なぜか涙まで出てきた。
…あの時と同じ。また、私を苦しめ始める。
どうして?
どうしてまた、始まるの?
どうして彼は、いなかったの?

呼吸は難しくなるばかりで。良くなる兆しが見えなかった。ホームの柱に寄りかかり、何とか体を支えた。
すごく努力してスマホを取り出して、休むと職場に連絡して、自宅にUターンした。
他人に見られまいと、太陽に照らされてはたまらないと、下を向いて歩き続けた。


やっと自宅に着いて、倒れ込むように中に入った。
そのまま、なぜか取り憑かれたように夫が使っていた書斎に向かう。
書斎に入ると少しだけ、呼吸が楽になった。

机の引き出しを開けて、もうとっくに失効した夫の免許証を取り出した。
…あぁ、そろそろまた、命日だね。


裏に書かれた、臓器提供の意思表示。



”心臓”に書かれた丸が、静かに滲んでいった。

壊れた私の話 ( No.3 )
日時: 2020/07/10 13:05
名前: 優羽

なんで私は生きているの?





なぜ生物がいるの?





なんで地球があるの?




なんで宇宙はあるの?






なんで生命があるの?




なんで雲ってあるの?






なんで関わりがあるの?





狂ってるってなに?








なにが正しいの?












なんで殺しあいがあるの?








なんで愛しあうの?









分からない……







分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない 分からない









「…この子…もう駄目だわ……」







言葉ってなに?






文字ってなに?




感情ってなに?








そんなのがあるから
















この世界が壊れるんだ

彼女を追い越したい ( No.4 )
日時: 2020/07/13 16:20
名前: 紫葉





『高等学校生美術展入賞 千賀咲 玲』

『高等学校生美術展特選 大島 奈緒』

___________また先輩に負けた。

これで何回目だろうか。確かに、先輩の方が私より経験を積んでいて絵の知識も多いのは事実だ。けれども、負けると言うのは悔しい。だって私は先輩達にも負けないぐらいの力を着けたい。でも…それは上手く現実にならなかった。


タッ


「千賀咲さん。」

「…先輩。」

夕日の当たる方向に顔を向けると_____案の定、先輩が居た。…あぁ。老若男女が見ても、ほぼ完璧と言える容姿。絵の才能。…おまけに誰からも好かれる性格。今の私には到底追いつけない。そんな彼女が目の前に居てか、私は密かに劣等感を噛み締めていた。






「どうしたのよ。そんな暗い顔しちゃって。」

ガコン、と自販機が鳴り缶ジュースがコロリと落ちてくる。それを彼女の華奢な手が拾い上げ、私の手元に優しく置いた。

「いや…いつまで経っても先輩に追いつけなくて。最初っからもそうでしたけど、今回もそうだったじゃないですか。先輩は特選だったのに、私は入賞で。何と言うか…せめて貴方の横に並びたいのに、同等の絵を描くことも出来無い。それがやっぱり心に引っかかるんですよ。」

あまりにも冷え過ぎたのか、缶ジュースは結露を零しており私は自然と手が冷気に覆われるのを感じた。

…でも。愚痴を言ったって、絵が上手くなる訳では無い。そもそも、そんな人間なんてこの世には存在しない。こんな憂鬱な感情が吹き飛ばなんて___ホント、嫌なもんだ。

「それについて悩んでたの…。やっぱり千賀咲さんはストイックね。」

「ええっ、そんな。ストイックなんかじゃないですよ。私は出来る限りの事をやっているだけです。…だって、才能に恵まれなかったから。」

…自分でこんな事を言っていると、悲しくなる。
けれども。私は自分の事を責め続ける_________何でこんな…矛盾したことを私はしてしまうのだろう。

無情にも、空気は何も答えない。
そばにある木も、私の脳も。
けれども、私の隣に居る…先輩は答えた。

「今の貴方は十分素敵なのよ。それに、どの大会でも必ず入賞している。こんな凄い事、他の人には出来ないわ。貴方は私の事を凄い凄いと言っているけど、実はそうじゃないわ。私だって何回も賞を逃したことがある。でも、貴方はそうじゃない。だから貴方も来年の今頃には凄腕になっているわよ。」

そう言うと、彼女はニコッと笑う。
















「___________追いつけるはずないでしょう。私達人間が貴方達に。貴方は___________貴方達の部類は機械なんですから。」

私は彼女___________いや、私は“アンドロイド”に
向け、声をかけた。

西暦21xx年の今。世界は人間によく似たアンドロイドを生み出す事に成功した。それと同時に、アンドロイドにも人間と同じく人権が与えられ、人間と共存するようになった。

しかし。これは幸せな事では無かった。
人間よりもアンドロイドの方が知能が高いのは当たり前だ。それに加えて、今のアンドロイドは人間的思考力も携わっている。アンドロイド達は人間と同じように芸術を生み出し、数々の賞を総嘗めにした。そして、アンドロイドは瞬く間に脚光を浴びる事になったのだ___________

「…私達が作ったものを追い越せないなんて。悔し過ぎる。」

私は合金で作られた彼女の前で、呟いた。

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