Je vis 作者/知都 ◆REIE6EkrCY

1 [白い世界の中]



8月の初め──...。
夏休みなだけあって、皆が活動し始める時間も遅い。

だけど窓から見えるグランドでサッカーボールを追う彼等だけは活動し始めるのも早い。

「オイッ、岡井ー!気合入れてけぇ!」

コーチらしき人の声が私のいる2階まで響く。

──私もあんな風に空の下で走り回れたらいいのに...。

私は生まれ持った病気のせいで、12年間の殆どを病院で過ごしてきた。

蝉の鳴き声がする。

私の過ごしている病院は、1階の高さが低いから、2階も低い位置にある。

上からする蝉の声はうるさいものだ...。


私はもう一度窓から彼等を眺めた。

私は青空の下で過ごす事も、学校に行く事も出来ない。

私の居場所は大嫌いな薬の臭いが飛び回る白い世界だけ──...。