Je vis 作者/知都 ◆REIE6EkrCY

5 [対面]
壁に掛けられた時計にチラリと目をやり、すぐにまた視線を窓の外に戻した。
既に時刻は21時30分。
随分前に消灯時間は過ぎている。
外だって、活気も無くなり街灯のほのかな明かりが路地を照らしている。
私はベッドに体を倒し、静かに目を閉じた──……。
カーテンの隙間から光が差し込み、目が覚めた。
ボサボサの髪の毛を傍にあった櫛(クシ)で梳(ト)き、蒸しタオルで顔を拭いた。
今日、雅ちゃんに会える。
あのヒーローの事を、なにか教えてもらえるかも知れない。
「彩綺ちゃん、雅ちゃんも起きたから来てもらおうか?」
看護婦さんが病室に入ってきて言った。
「そうして貰えますか?」
「えぇ」
ワクワクした気持ちを、私は必死に抑えようとしていた。
「雅ちゃんです!」
彼女を見て驚いた。
髪の毛はストレートで、少し茶色がかかっている。顔も整っていて、いわゆる“美人”ってやつだ。
「は、初めまして。朝野 彩綺です」
「何よ!まさか、悠を私から取る気じゃないでしょうね!」
少し図星でビックリした。
けれど、その後の言葉の方が、余計ビックリした。
「悠はね、私の婚約者なのよ!」

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