Je vis 作者/知都 ◆REIE6EkrCY

4 [命の諦め]



私は一度、自分で自らの命を諦めた。
そして何度か自ら命を殺める事も考えた。

けれど──あのヒーローが私に命を諦める勿体無さを教えてくれた。

自らの命を絶てば、あのヒーローに逢えなくなってしまう。

母親に会うより──父親に会うより──ヒーローに逢いたい。

また迷い込んできてくれるなら病気が治らなくてもいい。そう思った。


「やだわぁ、土塗れの男の子がこの病室に入ってったでしょ?」

看護婦さんが花瓶の水を入れ替えながら私の顔を見ずに言った。

「あぁ、サッカーのユニフォームを来た子ですよね」
「そう!あの子、病院で遊んでるのかと思って追い出そうとしたんだけど
雅ちゃんが帰らせないでって煩くて」
「雅ちゃん?」

本当は゛雅ちゃん゛が誰か大体の見当はついていた。

けれど、詳しく聞いたらヒーロ──岡井 悠の事を少しぐらい知れるかも知れないと思った。

「サッカーのユニフォームの子の幼なじみらしいのよ」
「幼なじみ──...?」

幼なじみだなんて嫌だった。
幼なじみだとすると、ヒーローとだいぶ仲が良いだろう。

「あの、会わせてください!雅ちゃんに!」
「え?」
「友達になりたいんです」

看護婦さんは少し顎に手をあてて考え、言った。

「まぁ、いいわよ」

けれど──...。

この時雅ちゃんに会わなければ良かった──...。