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*52*
俺は混乱したまま、もう一度霞をみた。そして、試しに声をかけた。
「あの、葵さんだったりする?」
ちょっとした、いたずらごころで言ってみた。絶対、彼女は霞なのだから。
すると、霞はまた硬直した。そして、ゆっくりと口を開いた。
「え、ばれてた?」
この短い言葉、俺には衝撃的だった。今まで霞と思ってたやつは……多分、葵だったのだろう。つまり、やっぱ俺は霞を殺しちゃったらしい。
「てことは、葵さんは知ってるんだ?」
このことは、俺が霞を殺したことを知ってるよな?ということをさしている。なぜ、そう言わなかったかというと、鈴がいるからだ。
「うん」
少し険しい顔になると、葵さんは頷いた。
(うっわ、やべぇ。俺、どうなるんだろ。)
あ、でもよく考えたら、葵はそのことを知っていて誰にも言っていない。なら、二人の秘密でおわらそーっと。
「ねぇ、『葵』さん。あれ、どうしてる?」
「私の家の、奥の棚」
「流石だね。じゃ、問題ないか」
「うん。私、あの人嫌いだったから。死んでも別に構わない」
そう言い残すと、葵さんは玄関に向かって、歩いて行った。きっと、なりすましていたのがばれ、少し動揺したのだと思う。
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