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■些細な嘘から始まった ■【遂に完結!】
作者: 碧  (総ページ数: 77ページ)
関連タグ: 殺人 複雑  
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*64*

【第十一話 】

パーティーが、始まった。
空は黒くなり、月が私達を照らしている。
そろそろ10時。私は、眠たい目をこすりながら、パーティー会場にいた。
会場には、人が沢山いた。赤いドレス、青いドレス、黒いスーツ……そして、豊かな色彩を包み込んでいる黄色い壁の会場。
隣には、一斗がいた。霞を殺した人間。そして、私は葵。霞になりきった人間。私達だけは、私服で来ていた。しかし、一斗は普通の俳優はあまり着ない安っぽい服をきていた。なぜだろうか。
私は、赤いワンピース。鈴のところへいってからそのままだからだ。
すると、突然隣にはから声が聞こえた。
「あ、あいつみたことある」
一斗が指差した人物。確か、有名な企業の社長だ。私と一斗の撮影したドラマ【江戸物語】のスポンサーをしてくれた企業である。
そして、その社長と仲良さげに話している男。彼は、日子さんの夫であり、光の父である坂本 寿樹だ。
二人をぼーっとみていると、社長がこちらを向いた。私は、はっと目を逸らす。だけど、その時はもう遅かった。社長は、細くて厳しそうな秘書と共に、私のところへ歩いてきた。
「やぁ、こんにちは。君が如月 霞ちゃんか。きれいだねぇ、ほんとに」
と、いいながら、拍手を求めてきた。あわあわ、私はどうしたらいいのか分からない。だから、そういうのに慣れている一斗に助けを求めようと、手を差し伸べながら隣をちらりとみた。だけど、そこにいるはずの一斗はいなかった。
周りをぐるっと見回す。いなかった。社長がくる前はいたのに。
(逃げやがったな、あの優男)
「はい、ありがとうございます」
にこっと笑いながら、社長に答える。社長はにこにこと笑顔だ。スーツを着込んでいて、見た目は40代くらい。かなり若そう。寿樹さんと同じくらいの歳だろうか。
「いやいや、どういたしまして。 さて、突然で驚くと思うんだが。 ちょっと提案があってね」
「なんですか?」
「それはね、その、うちの息子を君の……」
その時だった。

プツンッッ!

何かが切れたような音がして、パーティー会場は、真っ暗になった。本当に、いきなりだった。
「どうしたのかしら……」「もう! なんなんだ! これは」「落ち着いてください! 落ち着いてください!」
いろんな人の怒りを含んだ声が聞こえる。その他に、使用人の慌てる声もする。
どうしたのだろうか。こんなところで、停電なんてことは……。
すると、私にまた災難が降りかかってきた。頭になにか硬いものがぶつかってきたかと思った瞬間、私の意識はそこで途絶えてしまった。

意識が戻ると、声が聞こえた。
聞き慣れた男の声もする。

……だめだな、こりゃ。
……おい、お前助けてやれよ。
……いや、無理だろう。
……はは、分かってるよ。
……てか、この娘生きてんのか?
……一応、力加減したし、生きてるだろ。
……そうか。じゃあ、この男は?
……ははっ、しらねっ。


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