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■些細な嘘から始まった ■【遂に完結!】
作者: 碧  (総ページ数: 77ページ)
関連タグ: 殺人 複雑  
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*73*

「おい」
そして、後ろから声がした。 私は、振り向く。
そして、その目に映るのは……清水だった。彼が、ヒーロー。
この物語で、私を助けてくれる人だった。
「よし、 葵だな。 あと、四分」
そういった、彼は。 あれ? おかしい。彼は、白咲葵のことは知らないはず。
なんで? もしかして、……寿樹さんの協力者?
逃げる! だけど、無理。 力で大人に敵うわけないし、私には逃げる強い精神もなかった。
「そーいやさ、 これ」
清水さんが、優しい笑顔で写真を見せる。つい、その笑顔につられて、写真をみてしまった。
そこには、もう……死んでいる光の姿があった。ひどい。 こんな、知らせ方があるだろうか。
あっけに取られていると、 清水の携帯がなる。 新しくきたメールを開けると、また私にそのメールについた写真を見せた。
想像していたとおり。 一斗がしんでいた。 なんということだ。 ほんとに二人はもうこの世界にいない。
「……」
私は、もうボロボロ。 心も、体も。
「あ、きたね、 五十秒前。 四十九、四十八……」
清水がカウントするのを、黙って聞くしかなかった。
きっと、誰かが助けてくれる。
「五、四、三、……」
助けてくれる。ほら、登場してよ!ねぇ。
「一。 はい、終わり」
清水は、果物ナイフを取り出した。
ナイフが、私に突き刺さる。ぐさっと。心臓部に驚くほどに正確な位置で。
清水は、優しい笑顔のまま、楽しそうに私の体を切り開いて行く。 まぁ、当然の報いか。 ……私の気は、絶ってしまった。

皆さんに質問したい。 人は……こんなにも簡単に人が殺せるのだろうか。それに、楽しそうに。知っている人を。
私は、殺せるのだろう、と思う。だって、私も殺せたから。
殺す。 これだけ残虐な響きの言葉が他にあるだろうか。だけど、この言葉があるからこそ、 人を殺すことに躊躇しなくなる人間がいるのだ。 この、殺すという事がどれだけ重いか、ということも考えずに。 この言葉は、世界に存在しなければいけないものだ。「殺された」を、この言葉以外で言い表すとしよう。「死にさせられた」?「亡くならせられた」? 意味がわからないだろう。 「殺された」なら、意味は通る。
そして、この言葉は悪い言葉だ。 だけど、生まれた。 なぜ生まれたか。 それは必要があったからに決まってる。
誰かが、人を殺した。 それを、誰かが後世に伝えるために殺すという言葉を作ったのだ。
この言葉は悪い。 貴方も、滅多につかってはいけないものだ。だけど、この残虐な言葉には、昔の人の考えが入っているように私は思う。遺族が、人を死なせることがどれほど悪いことかわかるように。という思いを込めている。そうじゃないだろうか。 私、白咲葵は、そう考えた。
私は、そう考えていたのだ。だけど、人を「殺した」。
私は、とても悪い人だ。 それは、分かっている。
だから、皆さんに伝えたい。
絶対に、人を殺すな。 絶対に。私のようになるな。

死の間際、私は、こんなことを考えていた。
ま、自分の考えが正しいかは、わからないけど。

【第十二話 END】

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