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【 第十三話 】終わり。そして、楽しみへと。
「本当に、 意地悪ねぇ、貴方は」
「なにをいうんです、 日子。 わたしは、日子のいる場所を教えたじゃないか。 それに、私に協力したお前も、意地悪じゃないか」
「私は、病院にいたわ。 手紙を順に部屋において行きながら。 途中でばれそうになったけれど、良かったわ。 乙が居て」
「結局、あいつに任せたんですか」
「えぇ、彼は嬉しそうに葵を追いかけて行ったわ」
「それは良かったな」
葵が清水に殺られたころ、日子と、寿樹は家で話していた。
すべては、終わった。 邪魔者も消えた。 いま、いるのは、日子と寿樹だけだった。 赤坂もしんだ、紫音もしんだ。
やっと、きたのだ。 この日が。
「そろそろかしら?」
「あぁ」
寿樹は、ポケットからボタンのようなものを取り出した。
そこには、「世界が終わるボタン」と、汚い字でかかれていた。
このボタンは、大人四人が作り出したものだった。
雄一、紫音、日子、寿樹が高校生の頃の話だ。
ある休み時間。
雄一がいったのだ。
「なぁ、面白いもの作ろうぜ?」
彼はそういったものの、作りたいものは、特に決まっていなかった。すると、彼の親友だった寿樹はこういったのだ。
「そうだな、作るか。 世界を終わらせるボタンとか、どうだ?」
雄一は、驚いた。そして、初めて親友に恐怖を覚えた。なにをいっているんだ、この親友は。
だけど、日子はいった。
「それ、いいわね。 でも、できるの? そんなことが」
日子は、肯定してしまったのだ。
「あぁ、出来るんだよ。 この頃、いいものを見つけてね」
そういい、寿樹が取り出したものは、「台本」と書かれた無地のノートだったのだ。
「なに、これ? 」
「台本だよ。 この本に未来を書き込むと、思った通りに未来が動くらしい」
そういいながら、寿樹は試しにノートに「一時に、 先生の頭にりんごが降ってくる」とかいた。一時まで、あと二分。
二分後。 教室の中だから、りんごが突然降ってくるなんて、ありえなかった。だけど、先生の頭には落ちてきたのだ、りんごが。
それで、三人は信じこみ、
「なら、ここに書いていけば、世界を終わらせるボタンも作れるのか」
と喜んだ。
だけど、一人の女だけはちがった。
「ねぇ、そんなことしたくないよ。 やめよ?」
そういい、首を傾げる美少女は、紫音だった。この学校一の美少女である紫音は、黒い髪を腰まで伸ばしていて、いかにも純潔であった。
その美少女にそう言われて、雄一の心は揺らいだ。
「そ、そうだな…… やめようぜ?」
すると、日子は不満そうにいった。
「えぇー、始めようっていったの、雄一じゃんか!」
寿樹も、日子に肯定するように頷く。
やばい、村八分にされる。 それが嫌だった雄一は、紫音にこういった。
「大丈夫だ、紫音。 作るだけで、世界を終わらせたりしないから、な?」
笑顔でそういうと、紫音は黙って頷いた。
それで決定したボタン作り。 「台本」を書くのは、一番文章を書くのが上手い日子に決定。費用は金持ちの寿樹が出した。雄一と、紫音は比較的なにもやらなかった。
しかし、順調には進まなかったのだ。四人が25歳になったある日。
紫音が、やはりやめよう、とまたいい出したのだ。 その時には、大部分は出来上がり、あとは押す部分のボタンを作るだけだった。
紫音がやめよう、といい出した理由。それは……寿樹との子供の誕生だった。名前は、霞。
子供ができた紫音は、ボタンを作るのが嫌になったのだ。
だけど、彼女の否定は聞きいれてもらえない。
そして、三年後。
また、紫音には子供ができた。今度は、好きだった雄一との子供、葵だった。
やがて、紫音はおめでた婚で、雄一と結婚した。
二人とも幸せに暮らしていた。 霞は、児童相談所に預かってもらっていたのだ。
二人とも葵を可愛がっていた。そして、葵の14歳の誕生日、紫音は殺された。