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■些細な嘘から始まった ■【遂に完結!】
作者: 碧  (総ページ数: 77ページ)
関連タグ: 殺人 複雑  
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雄一は、急いで病院へ運んだ。
検査もしたが、どこも悪いところはない。外傷もなかった。
なぜ、死んだのか、と医者も首をかしげた。
でも、雄一はわかってしまった。 これは、「台本」の力であると。
雄一は、葵は適当な施設に放り込むと、日子と寿樹に協力することを決意した。自分は、殺されたくなかったのだ。最愛の人が殺されたとしても。
「協力させてくれ」
二人にそういうと、すぐに迎え入れてくれた。でも、協力しなくとも、ボタンは仕上がっていた。
やがて、日子と寿樹も結婚していたことを知った。そして、二人の子供は、光という男の子だったということも知った。葵と、同い年だった。
いつか、巡り会うかもしれない。 雄一はそう思っていた。
しばらくしたある日。
雄一は、霞のことを思い出した。散々迷ったが、会うことにきめた。児童相談所へいく。すると、 霞は、一人で何処かへ行ってしまっていたのだ。どこへいったのか、分からないままだった。
雄一は、悲しかった。だけど、自然と涙は出なかった。霞がいなくなったことも、日子の台本なのだろうか、と虚しくなったからだ。この木のざわめきも、虫の鳴き声も、すべては日子の台本の中なのだ。
そして、二年後。雄一は高校の教師となった。ある日、テレビをぼぅっとみていた時だ。
「はーいはーい、如月霞でーす!」
笑顔の女が、画面にアップで映る。 あの目の下の黒子……見覚えがあった。彼女が、白咲 霞だったのだ。
雄一は、嬉しかった。 彼女が生きていて、誰かと一緒に過ごしていたことがわかったことが。
そして、葵のことも思い出す。霞のことで有頂天になった雄一は、適当に選んでいた施設へ向かう。 が、そこはつぶれていた。ちゃんと選んでいなかったのがいけなかったのだ。また、絶望した。葵が、どこにいるか分からないのだ。彼は、葵のことは諦めた。
霞さえ、居たらいい。
そして、一年後。 ある女の子が自分の勤務している丸菜学園にくることがわかったのだ。彼女の名前は、如月 葵だった。 霞と、同じところにいたのだ。
そして、彼女の入学式。 雄一は、葵に手紙と鍵を渡したのだ。 「この住所へ行くように」と。自分がやったとは言いたくなかったから、ある人からの伝言だ、と言って置いた。彼女は、きっと雄一の言う通りにしたのだろう。 三ヶ月だった頃には、彼女の名前は白咲葵へと変わっていた。
なぜ、白咲に変わったのかは謎だった。
雄一は、わざと葵に冷たい接し方をした。そのうち、彼女は雄一から離れていった。

そして、夏休みになる。雄一の元へ、一人の男がきた。
それは……懐かしき親友、寿樹だった。仕事によって、しばらく会えてなかったのだ。
「久しぶりだなぁ」
積もる話もあり、一時間を軽く、過ぎた。そして、寿樹はいきなりこう言ったのだ。
「そろそろ、ボタンを押したいんだが」
雄一は、頷いた。 そうだな、と。
ここで、雄一は最愛の人ーー紫音に嘘をついてしまったのだ。
それから、今までの物語の通りだ。 江戸物語で霞を殺してから、ボタンを押す計画は始まった。 一斗と、清水、水城を犠牲にしたのは、ほんとうに悪かった。



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