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作者: モンブラン博士 (総ページ数: 198ページ)
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*10*
「お前さんが作ったクロワッサン、いただくよ」
そう、彼が注文したのはぼくが作ったクロワッサンだったのです。
ぼくは嬉しさのあまり涙を流してしまいました。
するとおじさんは穏やかな顔で微笑み、
「わしはきみの喜ぶ顔が見れてよかった。
じゃあこれ、出会えた記念だよ」
おじさんがぼくに渡した金額は、なんと1万円!
慌てて引き止めようとしますが、おじさんは振り返らず、どこかへ行ってしまいしました。
また、会えるでしょうか……?
☆
しばらくしてもうひとりお客さんがやって来ました。
「おっちゃん元気にしてるか!遊びに来たぜ」
やって来たのは近くの高校に通う常連客の相沢さん。
彼は、学生服を見事に着崩し、ズボンからYシャツをだし、学校指定のブレザーの前は開け、ネクタイもゆるゆるで、いかにも反抗期まっさかりと表現したほうがよさげな恰好をしています。
ですが、彼はこんななりをしていますが、心は優しくて、意外と頼りになるいいお兄さんです。
「俺はここのお菓子ほど旨いもんは食ったことねえな」
彼はそんな褒め言葉を口にしながら、今買ったばかりの『アルバスのレモンキャンディー』をひょいと口に放り込みます。
すると二階から彼の声を聞いたヘンリーさんが降りてきました。
「おお、英士か。学校はどうしたのじゃ?」
「もう、就活には疲れたよ、おっちゃん、ここで雇ってくんね」
彼がだるそうな声で言いますと、ヘンリーさんは少し考えるしぐさをした後答えました。
「そうじゃなあ…お前さん、何か特技はあるかの?」
「特技?」
思ってもみなかった答えに彼は少しすっとんきょうな声をあげました。