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作者: 美奈 (総ページ数: 63ページ)
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2ー2
しかし地獄がやって来る。
家に帰ったら夕飯が……舞の大嫌いな、吐きそうなほど嫌いな、死ぬ程嫌いなグリンピースご飯だった。グリンピースを米の中に突っ込むという暴挙をやってのけた母親は、たまにその最悪な料理を平気な顔して出すのだ。それでブツブツ文句を言っていたら、母親がキレだした。
「グリンピースくらいなんで食べられないわけ?こーんなちっこい豆、胃の中入ればさっさと消えるでしょっ!!!それ以上文句を言うなら小遣いは渡さないっ。それより、そろそろ働いて社会勉強しなさいよ、社会はグリンピースより厳しいわよ。グリンピース如きで耐えられなくて、これから生きて行けるのあなた?上司に労働基準法無視したノルマ課せられて過労死する方がグリンピースよりよっぽど厳しいしキツいわよ」
舞も怒りを抑えきれなくなり、思わず応酬する。嫌いな物は嫌いだ。仕方ないじゃない。
「だって、グリンピースご飯、殺したいくらい嫌いなこと知ってるでしょっっ!!!あの妙に濃い緑色がまた毒々しいのなんのって。緑黄色野菜の仲間入りする価値ないでしょ、あんな究極にパッサパサした食べ物!水分もないわけ!!!胃に入るまでが長いんだってそもそもっ!食道から胃までほんっと長いんだから人間の体ってのは。グリンピース食べるのと過労死どっち取るって言われたら絶対過労死でしょ!体内にグリンピース入るんだったらグリンピース入らないで死んだ方がマシよっ!…ほんっと、憤りを感じるわっ、憤りをっっっ!!!」
「…だって、冷凍食品のグリンピースが余ってたのよぉっ!!!しょうがないのよ!主婦には主婦の事情ってもんがあるんだからっ。グリンピースなんかでそんな饒舌になる意味がわからない。こんなに滅多斬りにされるグリンピースの気持ちにもなりなさいよほんと。かわいそうに」
「自分で食べてよそのくらい!主婦の事情なら主婦だけで解決してよ、第三者巻き込まないでくれる?娘を思いやらないなんて、誠に遺憾この上ないっ」
「ブツブツ言ってないで食べなさぁぁぁいっ!ピーチクパーチクピーチクパーチクピーチクパーチクピーチクパーチク、ほんっとうるさいわねぇっ、あんたって子は!憤りだとか遺憾云々だとか国会議員とか何だかがテレビでよくなんか喋ってる言葉を並べてるだけで説得力の欠片もないし…もうっ、今月から小遣いなし!」
「いいよ、小遣いなくっても!!!米とその気色悪い豆を混ぜるなっつってるの、おぞましいことこの上ないわっ、身の毛がよだつってこういうこと言うんだよ多分」
そこで昨日、もうスネなんてかじらないっ、そんな事を言うなら自分で金を稼いでやる!と決意したのだが、どこで働くかが問題だった。
とその時。
「…あ」
たまたま見かけたイタリアンレストランの求人広告を思い出したのだ。あそこなら、とりあえずすぐ雇ってくれそう。
だって、生き残り争い、際どかったもんね。
そんな訳で舞はそのレストランに行って面接を受けた。