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＊紹介文／目次＊

1

雨が、降っていた。
土砂降りの雨だった。
細い一筋の流れが、坂を下って行く。
その流れは、少しずつ、本当に少しずつ、太くなっていって。

騒めきが、聞こえる。

「あれ…なん…だ？」

雨音で声が消されてしまう。

ーあの流れは何か、だって？

知る訳、無いじゃないか。領らないよ。

そう、知らないんだ…。

・・・・・・・・・・・・・・・

雨の中、座ったままで。
口を、動かした。
けど、声など出なくて。出せなくて。
…でも。
その声は、
届かなくて良い。
自分への、戒めだから。

10～ 20～ 30～ 40～ 50～ 60～

＊25＊


5ー5
・・・・・・・・・・・・・・・

「え、それって付き合ったってことじゃないのぉー？！」

「いや、そういう訳でもなくて、好きです、とか言われたわけでもないし」

「いや、それは好きですどころか、愛してますレベルの言葉だと思うよ！舞、良かったじゃん！生粋の馬鹿が恋をした！」

「最後の一言、余計だなぁ。…まぁでも、湊先輩ほんと恰好いいし、良い人だし、そんな人に言ってもらえて良かったかも。迷惑かけてばっかだったけど」

真琴は、昨日の舞に起こった出来事を喜んでくれた。それは嬉しい。でも、舞は父が心配だった。

父に昨日の事を話したら、喜ぶだろうか。
娘に彼氏ができたら、どういう反応をするんだろう。
舞は、そんな事を考えていた。

「ほらっ、スープ零すよっ！」

「あ…」

舞は飲んでいたスープを傾けて零した。考え事をしていて、スープの事はそっちのけだったのだ。

「やっぱ、純粋な阿呆だね、私…」

それを黙って首肯する親友が恨めしかった。