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cynical【完結】
作者: 美奈  (総ページ数: 63ページ)
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*24*

5ー4
平謝りの舞に、大丈夫だからと声をかけ、シフトが終わった舞を別室に呼び出した。
まだ自分はシフトが終わっていないが、少しの時間ならばれない筈だ。

「あの、さっきは本当にごめんなさい…。怪我してて大変な中仕事に来たのに、また同じような所を怪我させるなんて本当に馬鹿ですよね……」

「いいよ、そんなこと。ただの切り傷なんだから。……それより、ありがとう」

泣きそうな顔をしていた舞は、えっ、と湊を見上げた。
…元々可愛いとは思ってたけど、近くで見るともっと可愛かったんだ。

「今まで一人ぼっちだった俺の事ちゃんと見てくれて、気遣ってくれてありがとう。…ほんと、冗談抜きで嬉しかったんだ。君だけだったんだ、そうしてくれたの」

舞は黙って続きを待った。

「…そうやって、ちゃんと見ててくれてたっていうのを知ったから、今度は俺も…ちゃんと、君を見ててあげたいんだ」

「お皿持ってると危なっかしいからですか…?」

不安げに問うてくる舞に、いやいや違うよ、と湊は優しく笑った。

「側に、いてほしいからだよ。裏切らないで、離れないで、ほしいから」

驚いた様子の舞を、湊は構わず抱きしめた。

「…そんな事言われたら、すごく嬉しいですよ…誰が離れられるって言うんですか。……先輩、馬鹿ですよ…」

さらにきつく抱いてから舞を解放した湊は笑った。

「そうだな…生粋の馬鹿は、俺かもな」

涙をごしごしこする舞の頭をぽん、とたたいて、湊はシフトに戻った。

舞は生粋の馬鹿なんかじゃない。純粋な阿呆でもない。

…4年間一人で苦しみ続けた俺を救った、救世主だったんだ。

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