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＊紹介文／目次＊

1

雨が、降っていた。
土砂降りの雨だった。
細い一筋の流れが、坂を下って行く。
その流れは、少しずつ、本当に少しずつ、太くなっていって。

騒めきが、聞こえる。

「あれ…なん…だ？」

雨音で声が消されてしまう。

ーあの流れは何か、だって？

知る訳、無いじゃないか。領らないよ。

そう、知らないんだ…。

・・・・・・・・・・・・・・・

雨の中、座ったままで。
口を、動かした。
けど、声など出なくて。出せなくて。
…でも。
その声は、
届かなくて良い。
自分への、戒めだから。

10～ 20～ 30～ 40～ 50～ 60～

＊37＊

8ー6
雨が、降っていた。
土砂降りの雨だった。
細い一筋の流れが、坂を下って行く。
その流れは、少しずつ、太くなっていって。
鮮紅から、少しずつ黒みを帯びて行って。
湊はぺたんと座り込んだまま、茫然としていた。雨に打たれているということすら、よく分からなかった。
…騒めきが、聞こえる。

「あれ…なん…だ？」

雨音で声が消される。

ーあの流れは何か、だって？

知る訳、無いじゃないか。領らないよ。

そう、知らないんだ…。


…あれも、紅いなぁ。

彼は近づいて来る、一台の赤灯を回した車を、ただじっと見つめていた。