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cynical【完結】
作者: 美奈  (総ページ数: 63ページ)
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*48*

10ー2
「舞、ご飯食べに行こう」

「分かった、ちょっと待ってて」

真琴と舞は、同じ病院で働いていた。真琴は研修中の外科医だ。消化器外科が専門である。23歳とまだまだ若いが、才能はピカイチで、女神扱いされているほどの腕前だ。本人はこの状況を嫌っているが。

思えば、真琴とは小学校から職場まで、全部一緒。
一生の友になりそうだと思って、舞は真琴の後を追いかけた。


「湊先輩と、会ったの?」

真琴は一度も湊に会ったことはないが、彼のことを湊先輩と呼ぶ。

あの裁判から、7年の月日が経った。彼は今年の春、刑期を終えた。でもまだ、舞は湊に逢っていない。

「いや、まだ…」

「…そっか。でも湊先輩なら、絶対戻って来るよ。舞の話聞いてる限り、大切な人を一人置き去りにするような人じゃないよ」

「うん、私もそう、信じてる」

とその時、真琴の携帯が鳴った。ごめん、と片手を挙げて真琴は電話に出た。

「はい。もしもし。ー若い、ですか。…はい、……あ、はい、分かりました、すぐそちらに向かいます」

真琴が電話を切る。少し慌てたようだった。

「真琴、どうしたの?」

「あぁ、なんか若い男性が救急車で運ばれて来て、どうやら消化器に原因がありそうなんで来い、って話だったの」

「分かった。行ってきな。今は私がお金払っといてあげるから」

「ごめん、ありがと」

そう言って、真琴は急いで店を出て行った。

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