オリジナル小説、ライトノベル、二次創作小説、ss小説、イラスト投稿なら「小説☆カキコ」

＊紹介文／目次＊

1

雨が、降っていた。
土砂降りの雨だった。
細い一筋の流れが、坂を下って行く。
その流れは、少しずつ、本当に少しずつ、太くなっていって。

騒めきが、聞こえる。

「あれ…なん…だ？」

雨音で声が消されてしまう。

ーあの流れは何か、だって？

知る訳、無いじゃないか。領らないよ。

そう、知らないんだ…。

・・・・・・・・・・・・・・・

雨の中、座ったままで。
口を、動かした。
けど、声など出なくて。出せなくて。
…でも。
その声は、
届かなくて良い。
自分への、戒めだから。

10～ 20～ 30～ 40～ 50～ 60～

＊49＊

10ー3
・・・・・・・・・・・・・・・

あれから、7年の時が過ぎた。
牢屋の鍵が外された。
刑期は終わった。

少し、というか、刑期満了の2ヶ月くらい前から腰が痛いが、気にせず刑務所を出た。狭い牢屋に7年も居続けた所為だと思った。家へ帰ろう、と言っても帰る当てもなく、とりあえず久々の外の世界を歩き回ろうとした。

服役中は、伯父と文通をした。伯父に世話になるのはやめることにした。伯父の社会での立場が危うくなるのは、今まで4年間育てられた身として、やはりいけないと思ったのだった。
昔の父親への考えも改めた。服役中、舞の母親から聞かされた。
父は、死の直前に逢えない、と言っていたことを。
湊はその真意を悟った。父も反省していたことをはじめて知ったけれど、知った時期が遅かった。
もう、彼は人を刺して、人としての道を踏み誤った後だったのだ。