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＊紹介文／目次＊

1

雨が、降っていた。
土砂降りの雨だった。
細い一筋の流れが、坂を下って行く。
その流れは、少しずつ、本当に少しずつ、太くなっていって。

騒めきが、聞こえる。

「あれ…なん…だ？」

雨音で声が消されてしまう。

ーあの流れは何か、だって？

知る訳、無いじゃないか。領らないよ。

そう、知らないんだ…。

・・・・・・・・・・・・・・・

雨の中、座ったままで。
口を、動かした。
けど、声など出なくて。出せなくて。
…でも。
その声は、
届かなくて良い。
自分への、戒めだから。

10～ 20～ 30～ 40～ 50～ 60～

＊51＊

10ー5
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「大丈夫ですか、私の声聞こえますか？」

真琴はストレッチャーに乗せられた若い男に絶えず声をかけていた。当の彼は手で鳩尾付近を押さえている。
…あれだろうか。
真琴は、自分で予想した病名を他の医師に伝えた。
その医師は、黙って首肯した。


少し痛みが和らいできて、湊は少しずつ、ゆっくりと目を開けた。

見知らぬ風景。先程までいた高台でないことは解る。
目だけきょろきょろしていると、若い女性が近づいて来た。…女医。ってことは、ここは病院。

「大丈夫ですか？何か、体のあちこちが痛そうで、倒れていたので救急車を呼んだ、って言ってましたよ、背広を着た男性が」

「あ、そうなんですか…。知らない方に迷惑をかけてしまったみたいてますね…。先程目覚めました、ありがとうございました、と伝えて下さい」

はい、とその女医は言った。

「ちゃんとした応答ができるようですね。では、はじめに名前を教えていただけますか？」

「えっと……神田、湊です」

女医は、明らかに驚いたようだった。目が完璧に見開いて、口もぽかんと開いている。

「あの…姫川舞と、お知り合いですか？」

湊は訳が分からず、ただこくんと頷いた。
こっちが驚いた。
なぜ。
なぜこの女医は、舞を知っているのだろう。

「あの、なぜ………？」

そう言いかけた時には、女医は既に部屋を出ていた。