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＊紹介文／目次＊

1

雨が、降っていた。
土砂降りの雨だった。
細い一筋の流れが、坂を下って行く。
その流れは、少しずつ、本当に少しずつ、太くなっていって。

騒めきが、聞こえる。

「あれ…なん…だ？」

雨音で声が消されてしまう。

ーあの流れは何か、だって？

知る訳、無いじゃないか。領らないよ。

そう、知らないんだ…。

・・・・・・・・・・・・・・・

雨の中、座ったままで。
口を、動かした。
けど、声など出なくて。出せなくて。
…でも。
その声は、
届かなくて良い。
自分への、戒めだから。

10～ 20～ 30～ 40～ 50～ 60～

＊52＊

10ー6
ノックする音がした。失礼します、と声がして、ドアが開いた。
開いたドアの向こうにいた女性を見て、湊はもっと驚いた。

「久しぶり。湊に逢えるの、ずっと待ってたの」

優しい目をした舞が、そこに立っていた。面立ちも変わらず、可愛らしいままで。でも大人になったから、美しくもあって。
少し微笑んだ彼女を、湊はしばらく見つめていた。

「…こんな形で、会うことになっちゃったか」

「いいんだよ、そんなのは。とにかく、ずっと待ってたから、嬉しいんだ。逢えるって信じてたけど、やっぱりそれが現実になると、もっと嬉しさが倍増しちゃって」

「俺も、やっと逢えて嬉しいよ。…またこの俺の手で、もう一度舞を幸せにできるように、頑張る」

舞はベッドから上半身を起こした湊をゆっくり抱きしめた。
湊の手が、強く抱きつく舞の頭をずっと撫でていた。