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cynical【完結】
作者: 美奈  (総ページ数: 63ページ)
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*7*


2ー7
初日だし、今日は5皿くらい割るかなぁ、と思っていた。
しかし今日は店長からの接客マニュアルの説明がほとんどで、3皿しか運ばなかった。そしてその3皿全て、割らずに運ぶことができたのだ。生粋の馬鹿にしては上出来だろう。フォークの入っている引き出しに指を挟んで内出血を起こしただけだ。真琴に自慢してやろう。
舞は元気良く初仕事を終え、店を出ようとした。が、舞は急に立ち止まった。
舞はずっとその方を向いていた。
同い年くらいのはずなのに。
慣れた手つきで、3皿くらいを片手だけで持っていく。七分袖の制服から覗く腕がたくましい。私なんか、両手に2皿で何とか…って感じだったんだけどなぁ。それに注文時の接客態度、特に笑顔がずば抜けて良い。
長身で、細くてスタイル良くて。落ち着いた声音に、悩殺の笑顔。
嘘でしょ。客までキュン死してるじゃん。

「…え………す、すごい…」

何度も瞬きをして彼を見ていた舞だが、

「おいっ、舞ちゃん?どうした?何か事故った?」

突然店長の声がかかり、彼女はいえ、と首を振る。

「…あの、今あそこで皿を運んでいるあの男の人、何歳なんですか?」

「ああ、湊くんは高2だよ。17、かな。あの子はすぐに仕事を覚えてね、今ではすごく重要な人材だねぇ。この店が残ったのは、多分もしかしなくても、イケメン湊くんファンのお客さんが多かったからだと思うよ」

「1つしか年違わないし…」

「そうだよ。舞ちゃんのたった一個上だからね。神田くんを見習って、君も早く仕事覚えてねぇ」

舞は少し曖昧に頷き、お疲れ様でした、と言って店を出た。
舞は湊の雰囲気に少し違和感を覚えた。でもそれは、自分よりずば抜けて仕事ができるからなのかもしれない。
頑張るぞ、と気合を入れた。

湊もいつものように悩殺の笑顔を振りまきながら、淡々と働いていた。
彼女にずっと見られていたことなど、全く知らずに。

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