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フェアリーテイル ―雪国の氷―  完結
作者: ハヤチ  (総ページ数: 65ページ)
関連タグ: FAIRYTAIL グレイ・フルバスター 二次創作 微グロ 
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二話「懐古」


「お母さん、お母さん。」

黒髪の母にしがみつく、幼き頃のグレイ。
母―― 癒はグレイを持ち上げた。

「どうしたの?」
「どうしてお母さんの顔には変な模様があるの?」

いつもは優しく笑う癒が、珍しく顔を曇らせる。
そして、切なげに笑った。

「この模様は貴方にもできてしまう恐れがあるの。
 最初は足に、そして最後には顔にね。
 貴方はこれをつけたら駄目よ。」

そして癒とグレイは指きりげんまんをした。





「…。」

朝になったらしい。
とても幼い頃の夢、平和だったあの頃の夢。
それを何故ここで思い出すか。
グレイは苦笑した。

(もうあの日は来ないのに)

知っているからこそなるのかもしれない。
テントから出ようとした瞬間、ナツが腕を引っ張る。
振り向くがナツは寝ているらしく、恐らく夢での行為だろうと察した。

「…このままでも、いっか。」

だんだんナツに甘くなっている気がする。
顔を見ると、悲しそうな顔だった。

「イグニール…。」

グレイはその名を思い出す。
火竜イグニール、ナツの育ての親だ。
やはり、似ているのか。この男とは。

「…グレイ、何処にも行くな…。」
「へ……!!?」

いきなり自分の名前を呼ばれ、ドキリとする。
ナツの腕の力が強くなってきていた。

「お前、は…仲間だ…。」
「…!!」

ナツの一言で、一気に涙腺が崩れた。
ああ、本当にこの男は。

「…っほんと……に、寝てるのかよ…。」

一番言って欲しかった言葉を言われ、涙が溢れる。
それを拭い、神の神話の本を取り出した。

『メモリーは、代償を記憶とする。』

昨日、エルザとナツでこの内容を呼んで驚愕した。
良い思い出を欲しがる子供の神様。
思い出とは、とても深い記憶だ。
それを失えば、自我さえも失うかもしれない。

「…?グレイおはよ…。」
「な、ぁ、ナツっ…。」

涙をボロボロ流していたグレイに、ナツは驚き、慌てふためく。
最終的には、泣き声も抑えきれないほどグレイは泣いた。

今のグレイの頭に浮かぶのは、楽しかった良い記憶。
母や父との思い出。
昔のリオンとウル。
今のギルドの生活。
今のリオンとの仲。
ロキと話していた事。
そして―――最強チームの事。










「どれも、失いたくねぇよぉ……!!!」

その泣き言にナツは戸惑いを隠せない。
今のナツに出来る事は、グレイの体を強く抱きしめることだった。

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