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*60*
「いいんだ、もう。」
「グレイ!」
グレイの制止の声は冷たい。
だが、グレイ自身も震えていた。
「は、やく…レイガを連れてけよ…。」
「…ありがとう、グレイ。」
レイガは大人しく車に入ろうとする。
すると立ち止まり、グレイを見た。
「そうだ…思い出した。」
「えっ?」
「『お前』の手につけてるブレスレット。俺が、あげたんだな…。」
「!!!!」
レイガは最後に笑う。
車の入り口で、最後に。
「ありがとう。」
と言い残して。
―妖精の尻尾―
ナツ達はギルドに帰り、お祭り騒ぎだ。
だが、ジュビアだけはきょろきょろと辺りを見ている。
どうしたのか、と聞くと。
「グレイ様が、いないんです。」
どうやら、他の皆も何処に行ったのかは知らないらしい。
ナツは、グレイの匂いを追っていった。
―河川―
色々な思い出のあるこの河川はグレイにとっても癒しの場所だった。
グレイは、イスバンにいた自分を思い出す。
―――――
『なぁ、そこのお前。』
『!…んだよ。』
いきなり話しかけられた。
今まで誰もグレイに話しかけるものなど、少なかったのに。
『俺さ、最近引っ越したんだ。』
『へー、で?』
『俺はレイガ!お前は?』
『グレイ。』
『へー、グレイか!由来は?』
『しらねぇよ。』
『えー、つまんねーな…。そうだ!!』
レイガはグレイの肩をつかむ。
『俺が決めてやるよ!グレイだろ?』
『お、おう。』
『灰か…どんなに暗く、黒くとも綺麗なものを生み出せる…ていうのは?』
『!…綺麗な、ものを…。』
レイガはグレイが満更でもない様子を見て、笑顔になる。
そして、自分の両腕につけていたブレスレットを片方外し、グレイの手につけた。
『これで、よし!』
『?何だよ、これ。』
『これで、俺達は友達な?』
『えっ…。』
『綺麗だろ?これなら、絶対にお前を忘れない!』
『…ああ、友達だよ。』
―――――
「…………。」
何時の間にかグレイの目から涙が溢れていた。
グレイは体操すわりを支えていた腕をギュ、と強くする。
「レイガ…………。」
何時の間にか、涙は地面にも落ちていた。
グレイは小さく声を出しながらそこで静かに泣いた。
「…。」
ナツはその様子を木陰で見ていた。
静かに、見守る様に。
「…なんて伝えっかな…。」
とにかく、今はそっとしておいた方がいいのだろう。
そう考え、静かにその場を去って行った。
四話・終
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