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*10*
何十日も過ぎた頃…
夢を見た。
「ハァッ、ハァッ…!!」
走る。少年はただ、道を。
終わりがあるのか無いのかも分からず、走る。
「みん、な…!!」
ほんの十分前まで平和だった町は、跡形も無く絶望しかなくて。
それを思うと苦しくなった。
いつのまにか化け物― デリオラが後ろにいる。
まるで自分を殺そうとしているかのように。
「や、だ…!」
死にたくない。
その思いしかなくて、走った。
そこで夢が覚めた。
グレイは体を起こし、冷たい頬を触る。
少し濡れている。
また、泣いていた。
「………夢…だよなぁ…。」
正直、生々しい。
感覚も、匂いも、足の疲れも、夢のままだ。
意識しすぎるとこうなるというのは知っている。
そう思い込んでしまう。医学にも確かだがあったはずだ。
「ギルド行かなくちゃな…。」
行かなくてはギルドの皆がうるさい。
心配性も程々にして欲しい。
こんこん、とドアを叩く音がする。
グレイはすぐに服を着替え、、カチャリとドアを開けた。
「よぅ!!迎えに来たぞ!!」
「…は?」
いきなり仲間の訪問、正直驚いた。
だがナツは笑顔で入る。
後ろにはルーシィ、エルザ、ハッピーがいた。
「ギルドに中々こないもの!心配したわよ?」
「まぁ待て、昨日の戦いの後だ。よほど疲れていたのだろう?」
グレイは小さく頷く。
戦いの後で疲れたのは嘘だが、疲れていたのは確かだ。
―何処か―
「儀式の準備を加速させなさい!!」
エーガの命令が部屋全体に響く。
暗く広い部屋は、宇宙のようで、深海のようだ。
「エーガ、静かにしてくれ。」
「…あんたはのん気ね、ガーレ。」
ガーレと呼ばれた男女不明の容姿は、タバコの吸殻を投げ捨てる。
「しょうがないだろ?退屈なんだから。」
「大丈夫、いずれすごく面白い奴らが来るしね。」
「ふーん…。だあーってよ、ギル。」
ギルと呼ばれた少女は、特有のはね毛をピコリとゆらす。
そしてすぐにニコリと笑った。
「楽しみだねー!」
そして一瞬で、真剣な顔つきへと豹変する。
「他人の運命を引き裂くのが、ね…。」
儀式まであと10日間。