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四話「脅迫と希望」
あれから何時間だろうか。
グレイは目を覚ました。
何時の間にか苦しく縛られていた縄は緩まり、苦しさは無くなっていた。
「あ、目ぇ覚めた??」
「っ!!!」
ルドがグレイの顔を覗き込む。
先ほどの恐怖もあり、グレイは血の気がひく。
「さ、行こっか。」
ジャラリ、と音がする。
何時の間にか両腕に魔力抑制装置がついていた。
これでは魔法も使えない。
魔法が使えない魔導士は、ただの人間だ。
「屋敷…?」
しばらく歩けば、屋敷が見える。
見るからに怪しい屋敷に、グレイは思わず後ずさりした。
…が、ルドに止められる。
「行かないの。」
「っ、はぁぁ…!」
魔力抑制装置に魔力を流す。
魔力抑制装置は限界に達し、バキャリと音をたて、地面に落ちた。
「なっ!」
「氷古龍の…」
ルドは防御の体勢に入る。
周りの部下がルドを守るように円になった。
「嵐豪!!!」
膨大な魔力がルドに向けられる。
パシュンッ
「へ……?」
「僕の部下は、強いんだ。中には魔力を打ち消す者もいるよ。」
グレイは地面に膝をつく。
あまりに膨大な魔力のため、グレイが倒れてしまったのだ。
「そ、んな……。」
「抵抗するなら、イスバンの神様に仲間消してもらうよ?」
「!!ま、待て!!やめろ!言う事っ、言う事聞くから!!!」
グレイは顔を上げ、叫ぶ。
その姿を見て、ルドは微笑みを浮かべた。
「じゃあ、地下に行こう?」
「行くっ!行くから、あいつ等を巻き込まないでくれ!!」
グレイは力の出ない足を必死に動かす。
だが、先ほどの魔法で踏ん張った足は動かない。
「っくそ!」
「しょうがないなぁ、コイツ屋敷の地下に連れてって。」
後ろに居た部下達は無言で動く。
グレイの四股を拘束し、鳩尾を殴って気絶させた。
「あぐっ……!」
グレイは屋敷の中に連れ込まれた。
白い肌は、どんどん暗闇に包まれていく。
「さてと、グレイの穢れを増やさないとね。あ、あそこにも行かないとな。」
ルドはウキウキしながら、屋敷に入って行った。
―ナツ達の居場所―
「っと、ルーシィ。ココは何処だ?」
ナツはグレイの匂いを必死に感じ、直感のまま進んでいた。
そればっかりだった為、ここがどこだか分からない。
「えーと、ここは『クロユリの都』ね。良かったじゃない、列車乗らなくて済んだのね!」
ルーシィの言葉に、ナツは目を光らせる。
だが、その喜びもエルザの重い一言と共に消え去った。
「私達は今どんな状況か分かるか?向こうが神に頼み私達を消すかもしれん。」
そんな答えにナツは息を止める。
向こうはもうグレイが手に入っている。
つまり、こちらはもう用済みと言う事だ。
そんな悩みが頭の中を回る時、とある会話が聞こえた。
「はあ〜ぁ…。」
「どうしたよ。」
「メモリーだっけ?そいつに願い事しようと行こうとしたんだ。」
「おお、でどうよ?何か忘れちまったのか?いい思い出。」
「あそこは昔に神が決まり創って、東洋の一族の頭首しか願えねぇんだって。」
「「「「!!!」」」」
ナツ達は驚く。
神がいない、という事に。
会話は、まだ続いた。
「ほーぉ、その一族って、何?」
「えーと、『氷昌の一族』つったかな。」
みーつけた、氷昌のグレイ!
二ヶ月前の赤毛の少女の言葉を思い出す。
氷昌の一族の頭首。
「グレイ…?」
「っ、速く行くぞ!!」
嫌な予感がする。
エルザはそう呟いて、走り出した。
グレイの匂いはまだまだ薄い。
近くには居ない。そう思い、ナツとルーシィとハッピーも走り出した。
大丈夫、助けてあげるから。
皆を、傷つけたくないから。
どうか、無事で居て欲しいんだ。
どうか、俺を放っといて欲しい。
―ずっと笑顔で居て。
―永遠に俺を忘れて。
―お願いだから……っ!
四話。終
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