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五章『くるくる狂り』
一話「助けて欲しくて、助けたくて」
「……。」
暗い部屋に、グレイは座っていた。
不思議な冷たさが漂う。
「やあ、おきた?」
「!!」
グレイの体はビクリとする。
恐怖感が体に染み付いてしまっていた。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い。
「じゃ、早速だけど。」
ルドが横に移動する。すると奥に何十人の人が居た。
見覚えの顔もある。確か死刑囚だったはずとグレイの思考が働く。
「全員、もう死んじゃうんだ。ならここで死ぬほうがマシだろ?」
「…まさか、俺にこいつらを殺させるのか?」
震える声を抑える。
信じたくないのに、一気にそれは崩れた。
グレイの傍に日本刀が置かれる。
「君は剣もできるって聞いたけど?」
「っふざけんな!人を殺すなんてできるかよ!」
「じゃあ、仲間どうする?」
ルドは目を細めた。
背筋が凍る、とはまさにこのことだろうとグレイは知った。
「っやるか、ら…。仲間には手をだすな…!!」
「うん。さ、やっちゃって!」
人がこっちに来る。
グレイは泣きながら刀を人に向けた。
ざしゅっ、ぽたぽた。 ぶんっ、ぐしゃり。
「はーっ、はーっ、はーっ…!!」
「あはははは!!さすがグレイ!!辺り赤まみれだよ?」
グレイはぼやける意識で周りを見わたす。
赤、赤、人、人。
グレイの意識は目覚めた。
「は、は…。」
急に笑いがこみ上げてくる。
感情の無い笑いが部屋に響いた。
「あはっ、ははは、 ふ、ぅ…。」
同時に悲しみと苦しみが充満した。
その声は殺人鬼みたいで、子供みたいで。
「あは、はは…あ”あああ”あああああ”ああああ”あああああ!!」
笑いは絶叫にかわる。
その声は、いつものグレイの低い声とは裏腹に甲高い声だった。
ルドが耳をふさいでいる。
「沈静剤うって。」
「了解。」
5人がグレイの体、腕をおさえ注射をする。
グレイの叫びは小さくなっていった。
助けて、欲しい。
それがグレイの願いだった。