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*29*
「…うぅ……」
ナツは目を覚ます。
先ほどまで感じていた疲労感は嘘のようだ。
辺りを見わたすと、医者に掴みかかっているエルザが見えた。
それをなだめるルーシィ。
何が起こっているのか把握しきれない。
「ナツ!起きたか!寝ている暇はないぞ!」
「は………?」
何が、とナツは問う。
エルザは悔しそうに、言った。
「グレイが、あの雪山の時の金髪に連れ去られた…!!」
「……………!!!!」
衝撃を受ける。
医者が言うには、グレイの血を多量の水で薄めて使うと、ナツ達の体は治ったと言う。
そのとき、グレイが金髪と宿を出るのをみた、という事らしい。
「…俺達、何日寝てたんだ?」
「一週間…だそうだ…。」
足場が無くなる気分になった。
「じゃ、じゃあギルドの皆は!!」
「先ほど伝書鳩が届いた。」
ナツに紙を渡す。
ミラの字だろう、綺麗な字で書かれていた。
『5日経ったけど異常なし。もしかしたらばれているかも…。』
ナツは壁に拳を叩きつける。
悔しさと怒りが混ぜ合わされて、気持ち悪い。
「いかねぇと!!」
「ナツ…、もう一週間も」
「アイツを放っとくのかよ!!俺は行くぞ!」
ナツの言葉にルーシィとハッピーも頷く。
「ナツの言う通り!グレイは私たちの仲間よ!」
「あい!オイラだって、グレイを助けたいんだ!」
エルザはため息をつく。
そして、綺麗な緋色の髪をゆらした。
「ならば、行こう。仲間の下へ!!」
「「「おお!!」」」
仲間を助けるべく、まずはあいつ等の居場所を見つけないと。
ナツは、自慢の鼻で、グレイのにおいのする方向へ走り出した。
―馬車内―
「大丈夫?」
「うるさい。」
グレイはうるさいの一点張りで、何も話そうとしない。
だが、それでもルドは笑いグレイの縄をきつくした。
「あぐっ!!」
苦しげな声が漏れる。
ルドは、笑みをさらに濃くした。
「やだなぁ、僕の加虐心を増やさないでよ。」
「うああっ!!!」
ギリギリと縄が締まる。
グレイは苦しく身をよじった。
「あーもう、もっと虐めたいなぁ。そうだ!爪でも剥がす?」
「ひっ……」
脅威じみた発言にグレイは後ずさりする。
その反応にルドは大笑いした。
「あははは!!やらないよ、道具もないしね。」
「…!ふっう……。」
泣くのを堪えて、グレイは目をつぶった。
苦しい縄を外したがるが、無駄に終わる。
ルドはまだ強く締め付けてくる。
ゴキッ
「っア”ああああ”あああああ!!!」
「あ、やっちった。」
脱臼する音だ。
グレイは堪えていた涙を一気に流す。
もうやだ。苦しい…。
痛みに耐え切れず、グレイは気絶した。
三話・終