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*18*
ルーシィの泣き言に苦笑し、造型魔法でテントを造る。
エルザは持ってきたシートや布団を用意し、食材をだした。
「火はナツがいるから良いわね〜。」
「ああ、それにグレイもいるしな。造型魔導士がいると融通がきく。」
そうか?とナツとグレイは顔を見合わす。
そうして、少し楽しげな食事の時間は過ぎていった。
「はぁっ…。はぁっ…!!!」
ああ、またこの夢だ。
「やだ、やだよぉ…!!」
連続再生されている夢だ。
「誰か、誰か…!!」
もう、昔なのに。
誰も、俺の手なんて掴んでくれないのに。
「――安心しろ…。」
え?
いつもならここで終わる、のに。
「俺らがついてる!!!」
…ナツの声…?
安心できる、ナツの声…。
グレイは目を覚ます。
いつもなら痛みがあったが、今回は全く無かった。
隣を見ると、グレイの手を握って寝ているナツ。
寝ているナツの顔は、いつもより幼く見えた。
「…心配してくれたのかな…?」
ああ、我ながら自分らしくない、と自嘲気味に笑う。
外を氷越しに見る。
まだまだ朝は明けそうにもない。
(いつも、なら。)
夜を見れば、グレイはどうしようもない恐怖に駆られていた。
だが、隣に仲間という温もりがあるだけで。
(こんなにも、怖くないのか。)
グレイはもう片手で、ナツの手を握る。
そして一言呟いて、眠りに落ちた。
「たとえば、永遠に目が覚めなくても、お前は助けてくれるだろ?」
ああ、らしくない。
一話・終
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