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二話「忘れない」
「はぁ…。」
男女判別不明の人間、ガーレは外に居た。
崖っぷちのところで月を眺めているのだ。
「……何も、思い出せない。」
ガーレは哀しい人間だった。
記憶を忘れているのだ。
すべて、すべての記憶を。
ただし、一つの単語は耳に張り付いている。
「グレイ…か…。」
ガーレは目を瞑る。
記憶を探るが、やはり何も思い出せない。
グレイという単語が頭に残っているのだ。
「儀式を成功させると、お前は死ぬ…のか…?」
ガーレは思わず手を握り締める。
おかしい、自分はこの道を選んだはずだ。
今まで震えもしなかった手が、今ここで震えている。
「…やはり、駄目だ。」
ガーレは映像ラクリマを見る。
そこに映るのはナツ達だ。
「彼らなら、この作戦を…阻止できるかもしれない。」
そんな淡い期待を抱き、ガーレはナツ達の所へと向かった。
―マグノリア・妖精の尻尾―
「…どうして、こんなことになったんだろうね…。」
静かにミラジェーンが呟く。
皆の顔は欝気味だった。
マカロフは静かにうなり、顔を上げた。
「ナツを信じねばのぉ。なぁに、アイツならグレイを殴ってでも連れて帰るじゃろ。」
その言葉に、皆は顔を上げる。
「そう、ですね。グレイ様も弱い精神を持ち合わせていません!」
「ああ、ナツの鉄拳喰らえば目ぇ覚ますだろ!!」
「ルーシィが、大変そうだな!」
「エルザが両成敗してくれるよな!」
それがあの最強チームだ!
全員の声がそろう。
何時の間にか、全員の顔は笑顔だった。
「…グレイ、大丈夫?ぶっつづけで、魔導四輪なんて疲れるだろ?」
「平、気だ。」
今、グレイは魔導四輪を2時間動かしている。
汗の量も徐々に増えてきていた。
「…あ、ガーレ。」
「え…?」
グレイが顔を上げる。
すると、いきなり目を見開いて魔導四輪をとめた。
「うおっとっ…。」
「!!ル、ルド?」
ガーレの目が見開かれる。
裏切った事がバレたのかと、ガーレは不安になった。
グレイが口を開く。
「レイガ!!!!」
ガーレ、それは偽名の物語。