完結小説図書館

<< 小説一覧に戻る

SOUL COLOR(消えない罪)
作者: 璃蘭  (総ページ数: 53ページ)
関連タグ: SOUL COLOR  
 >>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック

10~ 20~ 30~ 40~ 50~

*21*


ⅡⅩ、善意

保健室にて―神前美波―

 此処は…何処だろう?私はベッドから起き上がった。
「あ、気が付いたの?」
 椅子に座って読書していた楓ちゃんが私の近くに駆け寄った。
「此処は…?」
「学園の保健室。窪田先輩が幻視魔法を使ってくれたお陰で、美波を診てくれたのよ。」
「そうなんだ…。ごめん、また迷惑かけちゃって…。」
「迷惑なんかじゃないわよ。だって私、美波が心配なんだもの。前に直人が言っていたわ。『もし美波さんに何かあったら、すぐに駆け付けます!』ってね。」
「…ありがとう…。」
 私は、もう感謝で一杯。本当の姿…人間ではない姿でしか見えないのに、優しく接してくれる。何度も迷惑かけちゃっているのに、助けてくれる。
 ふと、楓ちゃんが私の手に触れた。
「私はね、小さい頃からずっと鳥になりたいって思っていたの。」
「鳥?どうして?」
「私、家があんなんだから、散歩するにも絶対誰かが一緒にならないと駄目だったの。それに、家の中でも必ず監視の目がある。だから、そんなものに縛られずに大空を羽ばたく鳥が羨ましいと思っていたの。」
「楓ちゃん…。」
「でも、美波は…翼をなくして急に飛べなくなってしまったのよね…。」
「うん。私が原因だけど…。」
「それで分かったの。いくら自由に飛べる鳥も、行動を誤れば飛べない鳥になるって。
 でも美波は違うわ。いくら自由に飛べない鳥だって、正しい行動を取れば飛べる鳥になる。私は、そう思う。」
「でも、私は正しい行動がよく分からない。私はそれで呪いにかかって、『掛橋』も失った…。」
「正しい行動はいつもしているじゃない。私達の為に、第1に動いてくれる。それが例え間違っていたとしても、美波は恐れずに動いてくれる。それは皆に迷惑をかけたくないから…そうでしょ?」
「うん…。」
「だったら充分よ!善意を捧げられているじゃない。皆の為に恐れず行動している…。私には多分できないかもね。」
 楓ちゃんが優しく微笑んだ。その時…何処からか声が聞こえた。
「楓よ、そなたはグレイスに希望を与え、グレイスはそれにより善意を注いだ。これにより、3つ目の『掛橋』…人間界と魔界、そして天界の『掛橋』が繋がれた。しかしまだ実体としては繋がれない。
 グレイスよ、そなたの呪いは部分的に解けた。そなたが解いたのだ。自ら念じてみよ、本来の姿に一時的に戻る事ができるであろう…。」
 私と楓ちゃんは辺りを見回すけれど、そこには誰もいなかった。それに、声も聞こえなくなった。あの声は、私が儀式をした時に聞いた声だ。なんで私の名前を知っているんだろう…?
「あの声…美波の危機を知らせてくれたのと同じ…。」
「え?楓ちゃんも聞こえたの?」
「うん。誰かは分からないけれど…。」
 3つも「掛橋」が繋がれた。という事は…私のしていた事は間違いじゃなかったんだ…。
「良かったね!美波!」
「うん!!」

 あれから、行方不明になった生徒達は無事に学園に復帰した。もちろん祐樹君のやった記憶はない。
 そして、祐樹君はいつものように学園に現れた。魔界の「掛橋」が不安定だから、暫くいるみたい。旧校舎も閉鎖されなくなって、霧隠も再開!!

20 < 21 > 22